日記
アイザック・アシモフ『やがて明ける夜』
アイザック・アシモフの『やがて明ける夜』を読んだ!
物語の主人公、「エドワード・タリアフェロ」は、内惑星を観察できる「月」の観測所から地球に帰還したばかり。
同じく旧友の「バタースライ・ライガー」は「水星」から、「カウナス」は木星の衛星から遥か彼方の銀河までを見渡せる「小惑星ケレス」から、それぞれ地球へと戻ってきた。
彼らは皆、孤独な宇宙の「観測所」で働くエリートたちだ。
そしてもう一人、彼らの同級生に「ロメロ・ヴィリアーズ」という男がいた。彼は誰よりも知能が高かったが、同時に気が狂っていた。
「ヴィリアーズ」は、宇宙への任務を目前に病気を患い、宇宙に行けない身体になってしまう。
それ以来、自分を置いて旅立った三人の友人を深く憎むようになっていた。
久しぶりに再会した三人に、「ヴィリアーズ」は告げる。「私は、物質を一瞬で移動させる『質量転移』を発明した」と。
三人は、「ヴィリアーズ」が自分たちよりも脚光を浴びることを恐れた。あるいは、彼の狂言ではないかと疑った。
しかしその夜、「ヴィリアーズ」は何者かに殺害される。
彼と共に研究を進めていた「マンデス」は激昂し、『犯人はこの三人のなかにいるはずだ!』と主張。
深夜の犯人探しが始まる。
そこで登場するのが、安楽椅子探偵の「ウェンデル・アース博士」だ。(すき!)
「アース博士」は、まるまるとした顔に人当たりの良さが滲み出ている大柄な人物。
しかし、極度の「乗り物恐怖症」で、何年も自宅から1.6キロ以内の範囲から出ずに暮らしている。(すき!2回め)
そんな「アース博士」の知性が、事件を解決へと導いた。
犯人を特定する決め手となったのは、犯人が隠した「ヴィリアーズの質量転移の論文フィルム」の隠し場所だった。
フィルムは窓のサッシに隠されていた。
フィルムが光に弱く、「直射日光」を浴びれば台無しになることは、科学者なら誰でも知っている常識だ。
なのになぜ、犯人は「朝日」が差し込む窓際に隠してしまったのか。
それは、犯人が「夜は永遠に続くもの」だと思い込んでいたからだ。
犯人は、木星の影に隠れ、常に太陽の射さない暗黒の世界で働いていた「カウナス」だった。
「アースアース博士」のセリフが、たまらなく最高。(すき!3回め)
「闇の世界は、永遠に闇の世界だという事実にすっかり慣れてしまい、地球の夜に託してしまった。夜がやがて明けることを忘れ‥」
おいおい‥カウナス‥。地球に何十年も住んでいて、朝が来ることを忘れちゃうなんてさ。
でも‥わかるよ。人間って大切なことを忘れるから。たとえば、「平和」な世界にするために「戦争」をして人がたくさん死ぬ、とかね。
「カウナス」は、「ヴィリアーズ」が本当に発明に成功したのかを知りたくてたまらなかったのだという。
殺すつもりはなく、ただ驚かせるだけのつもりだったが、「ヴィリアーズ」は叫び声を上げて倒れ、そのまま動かなくなってしまった‥カウナスは泣きながらそう訴える。(ちょっと、おもしろい。)
事件が解決し、明け方の救急車が、遺体を引き取っていく。
「アース博士」は、「マンデス」にこう頼む。
「お礼に、人間用の質量転移装置第一号ができたら、ワシに旅行をさせてもらいたい」
マンデスは「宇宙旅行なんてずっと先の話だぞ」と言うが!、アース博士はこう答える。
「宇宙じゃない。ニューハンプシャー州のロワーフォールズに行きたいのだ」
わかった。でもなぜそんな場所へ?と問うマンデスに、博士は頬を赤らめてはにかむ。
「ずっと昔のことだが、ワシはそこで一人の少女と会った。ずいぶん前のことだが、ときどき思うんだ、彼女もひょっとすると‥」
ここで話は終わる。
もう、最高に良くない‥!?
「質量転移」があれば、どんな遠くへも一瞬で行ける。
普通なら「宇宙の果て」なんて考えてしまいがちだけど、「アース博士」が選んだのは思い出の場所。
行こうと思えば今日にでも行ける、けれど乗り物に乗れない彼にとって、どうしても行けない、すぐ近くの場所だった。
人間が本当に行きたい場所は、遠くの希望なんかじゃなく、案外近くにある「誰かの思い出のそば」なのかもしれない。
「質量転移」といえば、ドラえもんの「どこでもドア」を思い出す。
私も車に乗るのが苦手だったから、小学生の頃、しぬほど欲しかったな‥。
ちなみに、「どこでもドア」は、宇宙地図の範囲(約10光年)という制限はある。行きたい場所は、自分の知らない場所でも可能。AIに話すみたいに「静かで気持ちいいところ」と曖昧に伝えるだけで連れて行ってくれる。大人になって考えると「コミニュケーションがとれない人間にも対応してます」ってのが、マジですごい。
アシモフの描く「質量転移」は一体どんな仕組みだったのか。肝心の「ヴィリアーズ」が死んでしまった今、その答えはわからない。
ちなみに、「アース博士」がなぜ乗り物に乗れないのか。それは彼が「移動というプロセス(速度や振動)」をコントロールできないことに恐怖を感じているから。そのプロセスをスキップして「目的地) 」だけを手に入れる質量転移が、彼みたいな人の救いになる。
近頃、わたしも「人間が運転している車」に乗れなくなった。運転手の体調や気分で、何がどう起こるか分からない。そもそも、人間の足1本でブレーキとアクセルをコントロールしている、と想像すると絶対に乗りたくない。そんな風に思ったのはここ数年のことなので、やっぱり着々と時代は進んで適応しているのだな、と感じるわ。アース博士は未来を生きてる男や。
最後に、、
「質量転移」は「同じ時間枠」であれば、「宇宙全体の質量保存」に影響ないからできそう、と思って調べたらところ。
もしも「どこでもドア」みたいに、空間に穴を開けるのではなく、「物質をスキャンして転送する」形式だとすると‥
人間一人を構成する原子を一度バラバラのエネルギーにして、別の場所で寸分違わず組み立て直すには、「核爆弾数万発分」に相当する熱量が発生するらしい。
「宇宙全体の質量」は変わらないけど、その「バラバラ人間組み換え作業」に伴うエネルギーが激しすぎて、転送先や転送元が消し飛んでしまう、とか。
じゃあ「人間がバラバラNO!(物質を壊さず)に、炭素もそのままの状態で右から左へ移す」のであればどうか。それだと、爆発は起きない。でも、現代物理学では「物質が移動するということは、そこにある「空間」を押し退けたり、空間そのものを歪めたりする必要がある」ということ、らしい。
調べれば調べるうちに、どこでもドアの性能の凄さ、平然と移動するのび太たちが羨ましいわ。
