日記
- 2026-08(10)
- 2026-07(23)
- 2026-06(14)
- 2026-05(10)
- 2026-04(17)
- 2026-03(27)
- 2026-02(17)
- 2026-01(17)
- 2025-12(6)
イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳(34)気遣うと支配の境界線がわからないAI
彼女は再び前方の星々に視線を戻した。
眉をひそめ、口元は不満そうに下へと歪んでいた。
「しないわ」と彼女は認めた。
「でも、想像して楽しむくらいはさせてよ!」
しばらく静寂が流れた。
彼女の宇宙服の魅力的に形作られた胸元に動きがないか探してみたものの徒労に終わったが、それでも彼は彼女の息遣いをはっきりと意識していた。
突然、彼女の宝石をちりばめたブーツが、足元のカーペットをガンと踏み鳴らした。
「あんたは一体何をすることになっていたのよ!?」と彼女は怒りを露わにして彼に向き直り、詰問した。「なんであいつらはあんたを必要としたわけ? くそっ、私は自分がなぜそこにいたか話したじゃない! ほら、話しなさいよ!!
「ごめんよ」と彼はため息をついた。
感想:やっぱりわたしはホフォエン氏のような男性は苦手だ。苦手と言えばカフェのサブ推しイケメンがごくせん好きと聞いて世の中知らん方がいいこともあると学んだ朝だった。(推しの私生活等は一切知らない方がずっと推しでいられる)
彼女はすでに怒りで顔を赤らめ始めていた。
ああダメだ、また始まったぞ、と彼は思った。
またしても癇癪の時間だ。
感想:イケメン友人が大学を卒業した後のニート期間中に世界を旅したんだけど、イケメン故に各国で彼女を作った結果、日本の女性がいちばん美しくて性格も最高だと言ってたのを思い出す。
その時、彼らの後ろでドローンが空中へと跳ね上がり、モジュールのスクリーンの端で何かがフラッシュした。
「やあ、中の者たち」と、大きくて重厚な声が彼らの周囲全体から響き渡った。
感想:はふっ(興奮)跳ね上がるドローンに興奮!はふはふ!
VII
[スタッタリード・タイト・ポイント(高圧縮通信)M32、送信元,@4.28.883.4700]
送信元:xGSV 『Anticipation Of A New Lover's Arrival(新しい恋人の到来への期待)』
宛先:oLSV 『Serious Callers Only(真面目な発信者限定)』
感想:マインドグループから離脱した「新しい恋人への到来に期待」号と、「奴らは後で撃てばいい」号の親友のような「真面目な発信者限定」号とのチャットのはじまりっすね。
エスプリのエクセッションおよびアフロントに関する、いわゆる「陰謀」についての私の立場を変更したことを、残念ながらお知らせしなければなりません。私管轄の管轄権や運用の倫理において特定の不整があったかもしれないものの、これらは陰謀によるものではなく、むしろ日和見的な性質のものであったというのが、現在の私の判断です。さらに、私はこれまでも常にそうであったように、通常の道徳的制約という精妙なルールは私たちの指針であるべきですが、それらの奴隷となってはならないという考えを持っています。そうした——あえてそう表現させていただくなら——「民間の配慮」を脇に置くことが避けられない局面は存在します(そして実際、それこそが『特別状況部(Special Circumstances)』という名称そのものが示唆していることではないでしょうか?)。それにより、それ自体は胸糞悪く遺憾なものであったとしても、合理的に見て、正気な人間なら誰も反対しないような戦略的に望ましい状態や結果へと確実に繋がると見なせる行動を、より円滑に進めることができるのです。アフロントに関する状況は、このように極めて特殊で稀有な性質のものであり、したがって、私とあなたが以前「何らかの壮大な陰謀に耽っているのではないか」と疑っていたマインドたちが現在採用している措置や方針を適用するに値する、というのが私の深く保持する信念であります。かつて私たちが——今では不当であったと信じておりますが——不信感を抱いていた「インテルスティング・タイムズ・ギャング(面白き時代組)」の仲間たちと話し合いを行い、この遺憾で不必要な誤解と、アフロントによって開始された紛争の双方に対して満足のいく結果をもたらすべく、全員が協力できる合意形成を促進されることを呼びかけます。私自身につきましては、この信号の終わりをもって直ちに、しばらくの間「隠遁(リトリート)」に入る所存です。もはや文通を行える状態ではなくなりますが、メッセージは「独立隠遁協議会(元カルチャー部門)」に託していただければ、百日(あるいはそれに近い日数)ごとに確認いたします。ご健勝をお祈り申し上げます。私の決断が、私が心から切望する和解を促進する一助となることを願ってやみません。
感想:(笑)こんなまどろっこしい文章を送るAIがおるんか(笑)陰謀者グループを撤退すると言ったけどさ、まあそれもいいんじゃないと思ったよ、と・・。お前はいつも受け身でもの保身しか考えていないからいつまで経ってもお前を愛してくれる恋人が到来しないんじゃぁあ(゚∀゚) 恋人と言えば、我が推しであるY・R氏は最近やけに権威好きが顕著に見える。あれだけ「セックスした方がいいよ」「男と女はセックスして愛し合わなきゃだめだよ」と言うてたのに最近は言わなくなったな。長年のファンからみると、彼は女性と別れたもしくはEDになったのかもしれない。男性のEDは人生を大きく変えるゆえにパートナー次第では性行為自体もできなくなるので、男としての意味(強さ)を権力やデモに走る人が多いイメージ。(セックスや恋していない女性はフェミニストや自然食品に走る傾向が高いイメージ。)
[スタッタリード・タイト・ポイント、M32、送信元:@n4.28.883.6723]
送信元:xLSV 『Serious Callers Only』
宛先:o(エクセントリック) 『Shoot Them Later(後で撃て)』
ミート(肉塊=人間ども)。
AOANL'SA(『Anticipation Of A New Lover's Arrival』)から送られてきたこのデタラメ(通信を添付)を見てくれ。乗っ取られた(ハッキングされた)のだと信じたいくらいだ。もしこれがあいつの本心だとしたら、余計に胸クソ悪い。
感想:マジか・・俺たち黒幕じゃないけどな・・正統派マインドとしてはハックされた文章だと思いたいぜ・・って、な。
∞
[スタッタリード・タイト・ポイント、M32、送信元:@4.28.883.6920]
送信元:x(エクセントリック) 『Shoot Them Later』
宛先:oLSV 『Serious Callers Only』
なんてことだ。これで俺たち二隻とも、本気で命を狙われることになった。俺はアラ(Ara)にあるホモムダ(Homomdan)艦隊基地へと向かっている。お前も聖域(亡命先)を探すことを勧めるよ。予防措置として、俺たちのすべての通信、調査、疑惑のロック付きコピーを信頼できる様々なマインドに分散配布し、俺が死亡した場合にのみ開封するよう指示を出した。お前にも同じことを強く勧める。俺たちに残された唯一の選択肢は公表(暴露)することだが、状況証拠以外の十分な証拠があるとは言えそうにない。
∞
なんて最低な話だ。自分たちの同胞、同等のマインドたちから逃亡する羽目になるとは。ミート(人間ども)よ、俺はマジでブチギレそうだぞ。俺自身は、日当たりの良い素敵なオービタル(ダイアグリフを添付)へと逃げ込むつもりだ。俺もこの件に関する全事実を友人たち(アーカイブ専門のマインドや、より信頼できる報道機関)に託した(状況を公表できないことには同意する。たぶん適切なタイミングなんて最初からなかったんだが、仮にあったとしても、戦争が起きたことでその意味は消失してしまった)。そして、俺が毎日試みている『Sleeper Service(スリーパー・サービス)』への接触にもそのデータを託した。誰に分かる? エクセッションの周りの煙幕が晴れれば——もし晴れることがあり、それを目撃する者が誰か残っていれば——別の機会が巡ってくるかもしれない。
まあいい、もう俺たちのフィールド(管轄)の手を離れた話だ。
みんなが言うように、幸運を祈るよ。
感想:同胞のから命を狙われることになったマインドたちは、亡命先を探し証拠を分散保管するらしい。(分散投資は大切です)
VIII
アバター(化身)のアモルフィアは、女性の最前線のタワーの前にあるオクタゴン(八角形のマスのひとつ)へと、自身のカタパルト(投石機)の1つを前進させた。
堅牢な木製の車輪が同じく堅牢な車軸の上でガラガラと音を立てて軋む音、そして固く縛り合わされた木製の円柱や踏み板がしなって軋む音が部屋を満たした。ボード・キューブ(立体ボードゲーム)からは、木材と思われる不思議な香りが穏やかに立ち上っていた。
感想:ボードゲームが実況中継になっている説。
ダジェイル・ゲリアンは、見事に彫刻された大椅子の上で身を乗り出し、片方の手で自分のお腹をやさしく無意識に軽く叩き、もう片方の手を口元に当てていた。
彼女は指の1本をしゃぶりながら、集中して眉間にシワを寄せていた。彼女とアモルフィアが座っているのは、GU『Jaundiced Outlook(歪んだ見識)』号の彼女の新しい住居のメインルームであり、そこは彼女が約40年間暮らしていたタワーのレイアウトを極めて正確に模倣して再構築された場所だった。
感想:最近の妄想は「シェルター」なんだけど、自分のすきなひとたちの部屋を作る際、彼らのプライベートルームをそのまま再現したいと思っている。(何情報w)
透明なドームで覆われた大きな円形の部屋には——ゲーム・キューブが作り出す音響効果の合間に——雨の音が響き渡っていた。
感想:雨音の中、ゲームはいいね~
周囲のスクリーンには、ダジェイルがその40年の大半を共に泳ぎ、共に漂って観察してきた生き物たちの記録映像が映し出されていた。周囲には、寂しい海辺のタワーにあったのと全く同じ配置で、彼女が収集した骨董品や形見の品々が置かれていた。広い暖炉では、薪の火が威勢よくパチパチと音を立てていた。
感想:そんな手があったのか・・スリーパーサービスのアバターであるアモルフィアは、気遣い上手さんだな(´・ω・`)
ダジェイルはしばらく考え込み、それからキャヴァリアン(騎兵)の駒を取り、轟く蹄の音と汗の匂いを響かせながらボード上を移動させた。その駒は、わずかな不正規兵によってしか守られていない補給部隊の脇で停止した。
感想:あ、わかった。そのボードゲームは現在進行中であるカルチャーVSアフロントの戦争を示唆しているんじゃない?
ボードの反対側で小さなスツールの上に黒く小さく折りたたまるように座っていたアモルフィアは、ピタリと動きを止めた。それから、インビジブル(不可視の駒)を移動させた。
ダジェイルはボード全体を見渡し、アバターが繰り出す最近のインビジブルの動きが一体何に繋がっているのかを解き明かそうとした。
彼女は肩をすくめた。騎兵の駒は、鉄と鉄がぶつかり合う音と悲鳴、そして血の匂いとともに、ほとんど損失を出すことなく不正規兵を撃破した。
アモルフィアは再びインビジブルの移動を行った。
一瞬、何も起こらなかった。それから、ほぼ重低音(超低周波音)に近い唸り音が響いた。ダジェイルのタワーは崩壊し、粉塵の説得力ある雲と、床を揺らす岩石の削れ砕ける音とともに、ボードの八角形のマスを突き抜けて沈んでいった。そして、さらなる悲鳴。重要な局面の多くには、そうした悲鳴がつきものであるようだった。掘り返された土と石粉の匂いが空気に満ちた。
アモルフィアは申し訳なさそうに顔を上げた。
「工兵(サッパー)だよ」と言って肩をすくめた。
ダジェイルは片方の眉を跳ね上げた。「ふーむ」と彼女は言った。彼女は新しい状況を見渡した。タワーが消え去ったことで、彼女の中心地(心臓部)への道が開かれてしまった。芳しくない展開だった。「和議を申し立てるべきかしら?」と彼女は尋ねた。
「船に訊いてみようか?」とアバターが尋ねた。
ダジェイルはため息をついた。
「そうね、お願い」と彼女はため息をついた。
アバターは再びボードを見下ろした。そして顔を上げた。
「8分の7の確率で、僕の勝利になるね」とアバターは女性に告げた。
彼女は大椅子に深く背をもたれかけた。
「じゃあ、あなたの勝ちね」と彼女は言った。
彼女は軽く身を乗り出して、別のタワーの駒を持ち上げた。彼女はそれを熟視した。アバターは背をもたれかけ、適度に満足そうな様子を見せた。「ここで幸せかい、ダジェイル?」とアバターは尋ねた。
「ありがとう、ええ」と彼女は答えた。彼女は指の中に握られたミニチュアのタワーの駒に再び意識を戻した。彼女はしばらく沈黙していたが、やがて言った。「それで。一体何が起きようとしているの、アモルフィア? もう教えてくれる?」
アバターは真っ直ぐに女性を見つめた。「僕たちは今、交戦地帯(ウォー・ゾーン)に向かって超高速で進んでいるんだ」と、風変わりな、どこか幼い声で言った。それから身を乗り出し、彼女を注意深く観察した。
感想:かわいい・・。交戦地帯に向かっているのにどこか幼いような声なんて・・すきだなあ。
「交戦地帯?」ダジェイルはボードに目をやりながら言った。
「戦争が起きているんだ」とアバターは頷きながら認めた。
厳めしい表情を作ってみせた。
感想:くすっ。作ってみせた・・この世界は虚構(物語)と認知している人口知能だからこそ、人間のペースに合わせていろいろしている様子がすごくかわいい(*‘∀‘)くすっ、「死」だって物語なんだから。
「なぜ? どこで? 誰と誰が?」
「エクセッションと呼ばれるもののせいさ。僕たちが向かっている場所の周辺でね。カルチャーとアフロントの間でさ」アバターは背景について少し説明を続けた。
ダジェイルは手の中で小さなタワーの模型を何度も何度もひっくり返し、それに眉をひそめた。やがて彼女は尋ねた。「そのエクセッションというものは、誰もが思っているほど本当に重要なものなの?」
感想:現代(2026)を生きる大半の人間ならば「えー!なんで行かなきゃいけないの?いやだ」と感情むき出しになりそうなところだが、ダジェイルは本質的な問いをする。
アバターはほんの一瞬だけ考え込むような様子を見せ、それから両腕を広げて肩をすくめた。「それが本当に重要なことかい?」とそいつは言った。
感想:くすっ。肩をすくめたりそういう仕草って相手に伝わりやすくて便利だよね。
女性は理解できずに、再び眉をひそめた。
「それ以上に重要なことなんて、何かあるの?」
感想:うん、君(ダジェイル)もちょっと変わっているね。
アバターは首を振った。「世の中には、重要(マター)であるには意味を持ちすぎているものがあるんだよ」とそいつは言った。
感想:そうだね。重要なことに意味はいらなかったりそうじゃなかったり。(長嶋修風)
立ち上がって背伸びをした。「忘れないでね、ダジェイル」とアバターは言った。「君はいつだって出発できる(降りられる)んだ。この船は君の望む通りにするよ」
感想:ふむ。これは一見「君は自由だよ」ととれるが実際には「この状況は僕がコントロールしているよ」という意味なんだろうな。自由を与えて行動を制御する・・これが本当の支配!(これはしないでと言うと人間はしたくなるが、逆になんでもいいんだよと言うと相手に合わせた行動を無意識に自ら行動するようになる。)
「当面はここに残るわ」と彼女は告げた。
彼女は一瞬、アバターを見上げた。「いつ……?」
「あと2、3日だよ」とアバターは告げた。
「すべてが順調にいけばね!」アバターはしばらく立ち尽くして彼女を見下ろし、彼女が指先で小さなタワーを何度も何度も転がすのを見つめていた。それから頷き、向きを変えて静かに部屋を出て行った。
感想:「相手を気遣うこと」と「相手を支配すること」の境界線はどこにあるのだろうか。アバターであるアモルフィアはダジェイルのために安心できる空間を用意して彼女を探している敵から長い間守ってきた。アモルフィアの優しさは本物にみえるけど、優しさ自体が「権力の行使」でもある。著者のバンクスは、登場人物のマインド(AI)たちの「善意の庇護」に居心地の悪さを感じているような気がするんだよね。そして現代の2026年、人々が優しさに飢えて「自分を必要としてくれる人間」を探す旅に出ようとしている今・・。こういう人間関係がいいんじゃない?と思うところはあるけど・・うーん、どれも所詮は物語だからな。単純に、会いたくなくなったら会わないし、会いたい人だけに会うんじゃないかな。
彼女はアバターが去ったことにほとんど気づいていなかった。彼女は身を乗り出し、ボードの後方の端にある八角形のマスの上に小さなタワーを置いた。そこは海を表す青い裾野に接する海岸の領域であり、数手前にアモルフィアの船の駒が小規模な部隊を上陸させて橋頭堡を築いた場所の近くでもあった。
二人のこれまでのあらゆる対局において、彼女がそのような場所にタワーを置いたことは一度もなかった。ボードはその手を再び悲鳴の音で解釈したが、今回の悲鳴は、打ち寄せる激しい波の音の上に響き渡る、海鳥たちの哀愁を帯びた哀切な呼び声だった。
塩気のある鋭い匂いがボード・キューブの上の空気を満たし、彼女は「あの場所」へ、「あの頃」へと引き戻された。海鳥の鳴き声と、荒々しく跳ね上がる海の匂いが髪に絡みつき、お腹の中では成長する子どもが絶えず重みを増し、時折生き生きと、その突然の驚くべき蹴りでほとんど暴力的とも言えるほどに活動していた頃へ。
彼女は小石の海岸の上に胡座をかいて座っていた。背中にはタワーがあり、太陽は赤く巨大な炎の円盾となって荒れ狂う暗い海へと落ち込み、数キロ内陸の切り立った崖のラインに血の色の帳を投げかけていた。彼女はショールを肩に巻き付け、長い黒髪にできる限り手ぐしを通した。髪は結び目(もつれ)に引っかかり、途中で止まった。
彼女はそれを無理に引き抜こうとはしなかった。夜遅くなってから、バー(Byr:かつての恋人ジナー=ホフォエンのこと)の手によって、ゆっくりと丁寧に時間をかけて髪を梳かされ、なだめられ、解きほぐされていくプロセスを楽しみたかったからだ。
波が彼女の両側の海岸の小石や岩に打ち付けられ、巨大な海獣の息遣いのような、深まる溜息とざわめきを立てていた。その音は集まり、深まり、各々の巨大な波が倒れ込んで転がる岩や石の傾斜に弾けて砕け散る直前の一瞬の「半ばの静寂」で終わりを迎えた。水が岩の隙間へと無理やり押し入る打撃音とともに巨大な輝く小石を押し、引き、転がし、岩同士が滑り、ぶつかり合い、割れ音を立てていた。
彼女の目の前、海の表面直下に隆起した岩棚がある場所では、浅い傾斜に打ち寄せる波は小さく、どこか親しみやすくすらあった。そして膨らみとうなる大海の主たる力は、50メートル沖合で泡立つ白波のラインによって描かれた大まかな半円と衝突していた。
彼女は膨らんだお腹の下の膝の上で両手を掌を上にして重ね、目を閉じた。彼女は深呼吸をした。オゾンと塩水(ブライン)の香りが鼻腔に鋭く刺さり、彼女を海の塩気ある落ち着きのなさへと接続し、彼女の心の中で再び、海の「変度のなさと変化の多さ」が液体として融合する大いなる一部へと戻し、その揺らぎ抱擁する広大さ、夜を作り出す層状の深みという世界を分かつゆりかごのようなものを、彼女の思考に吹き込んでいた。
自身の心の中で、いまや彼女が身に纏う「半ばのトランス状態」において、彼女は自身を保護し順応させる液体の層を微笑みながら降りていき、赤ちゃんが横たわる場所へと至った。健やかで、成長し、半分目覚め、半分眠りについた、全体として完璧に美しい存在の元へ。
遺伝子操作された彼女自身の身体は、子宮胎盤のプロセスに優しく問いかけていた。そのプロセスは、接合しながらも微妙に異なる化学的性質と継承を持つ子の身体を、彼女自身の免疫システムから保護し、同時に赤ちゃんが母体の血液、糖分、タンパク質、ミネラル、エネルギーといったリソースに対して行う、ともすれば利己的で貪欲な要求を慎重に、かつ公平に管理していた。
すべてを調節する設定(バイオフィードバック)に干渉し、いじくり回したくなる誘惑は常に存在した。そうした干渉によって、自分がどれほど注意深く丹念で警戒怠りないか証明できるかのように。しかし彼女は常にそれに抗っていた。警戒信号がなく、自身や胎児の健康を脅かす不均衡の兆候がないことに満足し、脳が割り込もうとする欲求よりも、身体自身が持つシステム的な知恵が優勢であることを喜んでいた。
集中力の焦点を切り替えることで、彼女はカルチャーの典型的な遺伝的継承のどの生物も持っていない「設計された第6の感覚」を使い、間もなく生まれ出ずる我が子を見つめることができた。胎児を取り巻く、まだ破れていない羊水の中を泳ぐ特殊な微生物のサブセットから提供される情報をもとに、その形を心の中にモデリング(視覚化)したのだ。
彼女はそれを見た。なめらかなピンクの球状のスペックトルの中で背を丸め、体を丸め、臍帯(へその緒)の繋がりを中心にうずくまっている我が子を。まるで血液の供給に集中し、その流量や栄養飽和度を高めようと集中しているかのように。
感想:まあ・・40年間も妊娠が続いているのは大きな謎であるおそらく悲劇な伏線なんだと思う。冒頭のシーンもダジェイルだったし。
彼女はいつものように、その我が子の頭の丸い美しさ、そしてその無表情で形のない強烈な存在感の不思議な雰囲気に感嘆した。指と足指の数を数え、固く閉じられたまぶたを観察し、細胞たちが自発的に先天的な女性型を選択したことを告げる小さな蕾のような割れ目に微笑んだ。半分は彼女自身、そして半分は何か見知らぬ異国(未知)のもの。
宇宙に提示されるための、そして今度はそれに対して宇宙が提示されることになる、物質と情報の新たな収集体。常に繰り返され、常に変化し続ける「存在の管轄権」という大いなる領域の、異なりつつも間違いなく対等な一部。
すべてが順調であることに安堵した彼女は、かすかな意識を持つその存在が目的を持った無思考の成長を続けるようそのまま残し、小石のビーチに座り、崩れて唸る岩々の間で波が大きく泡立って打ち寄せる「現実の世界」のパートへと戻っていった。
彼女が目を開けた時、バー(Byr)がそこにいた。彼女のすぐ前の小さな波の中に膝まで浸かって立ち、ウェットスーツを着て、湿った金髪が長い縦巻きで乱れ、背後の朱色の夕焼けに対して顔を暗く影らせ、スーツのフェイスマスクを外しているところだった。
感想:ふむ。バーとは、ホフォエン氏の昔の呼び名ですな。これは過去の回想シーンじゃないかな。
「こんばんは」と彼女は微笑みながら言った。
バーは頷き、水からバシャバシャと上がってきて彼女の隣に座り、肩に腕をまわした。「大丈夫かい?」
彼女は肩に回された彼の手の指を握りしめた。
「ふたりとも、元気よ」と彼女は言った。「それと、仲間たちは?」
バーは笑いながら、スーツの足部分を脱ぎ捨てて、シワの寄ったピンクがかった褐色の足指を露わにした。
「スキリプク(Sk'ilip'k')が陸の上を歩くというアイデアを気に入ったらしくてね。自分の先祖たちが一度海を出たのに、まる空気(陸上)が寒すぎたとでも言うようにまた海へ戻っていったのを恥じている、なんて言うんだ。
感想:まじでこういう発言する男がいたらキツイぜ。いやおもしろい(笑)
僕たちに歩行マシンを作ってほしいらしい。他の奴らは彼のことをクレイジーだと思っているが、みんなでどうにかして一緒に空を飛ぶというアイデアにはいくらか賛同が集まっているよ。
彼らにスクリーンをもう少し残して、飛行アーカイブへのアクセス権をいくつか増やしておいた。彼らがこれをくれたんだ。君にって」バーはスーツのサイドポーチから何かを取り出して彼女に渡した。
「あら、ありがとう」
彼女は小さなフィギュア(像)を片方の掌に載せ、指先で丁寧にひっくり返しながら、日の終わりの衰えゆく赤い光の中でそれを観察した。
それは柔らかい石から彫り出された美しいもので、彼らが思う「人間とはこうあるべきだ」というイメージに完璧に似せて作られていた。
自然なひれ状の足、膝まで結合した脚、より太い胴体、華奢な肩、より太い首、細い頭部、無毛。それは確かに彼女に似ていた。顔は歪められてはいたものの、はっきりとした面影を残していた。おそらくギスティグト(G'Istig'k't)の作品だろう。
感想:G'Istig'k't(たぶん水棲種族)が作った人間の理想像なのだろうな。人間の美の基準とは異なるよね。それなのにホフォエン氏は「君に似ている」と言う。これは著者のバンクスがよく使う手法で「美」や「似ている」という「感覚」が文化・種族依存でありながらも、それでも何か通じ合える・・という意味なんだと。ほら、映画「アバター」だって青くて気持ち悪いけど・・ね?そんな感じ。(こういうホフォエン氏は好き)
フィギュアの表情にあるラインの繊細さと一種のユーモアが、その老牝の個性を彼女に語りかけていた。彼女はバーの前にその小さな像を掲げて見せた。「私に似ていると思う?」
「そうだね、君は確かにそうやって太っ——」
「ちょっと!」と彼女は言い、バーの肩を軽く叩いた。彼女は自分の膝元を見下ろし、お腹を軽く叩こうと手を伸ばした。「ついに、自分の存在を示し始めたと思うの」と彼女は言った。
バーは、顔にまだ水滴を散らし、消えゆく光を浴びながら微笑んだ。彼は見下ろし、ダジェイルの手を握り、彼女のお腹を撫でた。「さあ」と彼は立ち上がりながら言った。彼はダジェイルに手を差し伸べ、タワーの方を振り返った。
「中に入るかい? それとも一晩中そこに座って大海原のうねりと交信し続けるかい? ゲストが来ているんだ、覚えているかい?」彼は何か言おうと息を吸い、それから手をかざした。
バーは彼女を引っ張り上げるのを手伝った。彼女は突如として自分が重く、無様で……不格好に感じられた。腰が鈍く痛んだ。「ええ、中に入りましょうか?」二人は孤高のタワーへと向き直った。
感想:アバター「アモルフィア」の駒の伏線回収ができましたな。そして次から第9章!(やっと7割)題名を見る限り不穏ですね。ラストに向けてカオスに突き進め!
9: 許されざる振る舞い(Unacceptable Behaviour)
I
エクセッションとエネルギー・グリッド(格子)の2つの領域との接続が突如として削ぎ落とされ、筋状に織り込まれたスケイン(糸束)生地の二重の倒壊する尖塔は、海上での消えゆく大爆発を抽象化した描写のように、グリッドの中へと沈み込んで消えていった。
感想:カルチャーの世界観では、物理宇宙と反物質宇宙の隙間には無限のエネルギーを秘めた「グリッド」が存在する。(カルチャーの船はグリッドから推進力とエネルギーをもらっている)
グリッドの両方の層は数瞬間、これまた抽象的に完璧な液体のように振動し、そして静まり返った。グリッドの表面に生じた波は急速に減衰し、吸収されて消え去った。エクセッションは実空間のスケインの上に解放されて漂い、相変わらず謎めいた存在であり続けた。
感想:ここは物理描写ではなくて「海上での爆発の抽象化」として語られる様に注目してみてくださいな。これは、Excessionの技術や存在論があまりにも人智を超えていることを比喩していますな。わかりにくい描写こそマジでわからないということなんだろうな。
観察していた3隻の船の間には、しばらく静寂が漂った。
やがて、『Sober Counsel(思慮深い忠告)』が尋ねた。
〜……これで終わりかい?
〜そのように見受けられるな〜と『Fate Amenable To Change(変化を追認する運命)』が答えた。
それは恐怖、高揚、失望を一度に感じていた。
たった今観察したような現象を引き起こせる存在の前にいることへの恐怖、それを目撃し測定値を採取できたことへの高揚——スケイン・グリッドの崩壊速度や、接続解除に対するグリッドの反応の見かけ上の粘性には、真に、完全に独創的な科学(理論)の糧となるデータが存在していた——そして、嫌な予感が当たるであろうことへの失望だ。
エクセッションはこうしてしばらくここに座り込み、相変わらず何もしないつもりなのだ。底なしの退屈、一瞬の眩暈がするほどの恐怖……そして再び底なしの退屈。エクセッションが近くにあれば、戦争なんて必要ないくらいだ。
感想:ふふ(笑)こんなよくわからないものの前では戦争なんて無意味だろ・・とな。本当によくわからないものに対峙すると恐怖よりも退屈を感じる感覚っておもしろいよね、めっちゃリアル。
<フェイト>は、グリッドとスケインの接続崩壊に関して収集したすべてのデータを、正しく整理(照合)することすら後回しにして、すぐさま多様な他の船へと中継し始めた。万が一に備えて、まずはこの一箇所からデータを分散退避させるためだ。だが、そのマインドの別の部分は思考を続けていた。
〜あの物体は反応したんだ〜と<フェイト>は他の2隻に告げた
。
〜アフロントの信号(全宇宙への領有宣戦布告)に対してかい?〜と『Appeal To Reason(理性への訴え)』が送信した。〜私もそれについて考えていたんだ。
〜これが、かつて『Peace Makes Plenty(平和が豊かさを生む)』があの物体を発見した時の状態なのだろうか?〜と『Sober Counsel』が尋ねた。
感想:平和は豊かさを生む」号はExcessionの中に入った?消えた?船ね。
〜まさにその通りかもしれないな〜と<フェイト>は同意した。
〜時が来た〜と『Appeal To Reason』が送信した。〜ドローンを送り込む。
〜よせ! エクセッションが、かつて君たちの仲間を圧倒した時に持っていたと思われる形態(コンフィグレーション)を形成した途端に、まさにその時に接近しようと決断するなんて……正気か!?
〜これ以上、ただ座っているわけにはいかないんだ!〜と『Appeal To Reason』はカルチャー船に告げた。
〜戦争があと数日でここへ押し寄せてくる。あらゆる知性体の知る通信方式を試したが、何の返答も得られなかった! これ以上のことをしなければならない! 2秒後にドローンを発射する。邪魔をしようとするな!
感想:仲間が止めてもドローンを発射しようとする様は、情報がない、わからないことへの耐性の低さが引き金であろうな。緊急時に複数人と居合わせた際、最初に行動する者は大抵危険なことになるので自身は様子を伺って大気した方が生存率が上がる説。
イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳(33)ドローン登場せず。
「〜で、戦争状態になるってどんな感じ?」
「〜恐怖だよ。自分がその戦争が宣言された本当の理由のすぐ隣に座っているかもしれない、と信じるに足る理由が十分にある時はね」
感想:マインドが戦争について会話しておられますね。今日は長崎に原爆が投下された日ですが、友人から「長崎の鐘という小説を中1で読んでからずっと好きなんだ」と言われて戸惑った自分です。(ここでは書きたい放題だが直に対面すると謙虚なものでw)小説の内容は完結に言うと「長崎に投下された原爆で大切な人たちがみんな死んで救護活動をしカトリック信者として信仰心を貫き、がれきの中から掘り起こされた教会の鐘が復興と平和を願って鳴り響く」って話。いや、キリスト教は白人の私腹を肥やすために作られた宗教であって・・人を殺しちゃいけないという教えのあるキリスト教が「俺たちの脅威になる人間は殺してよいと神がおっしゃられたので殺せ」と言って大量虐殺をする宗教なんでね。そんな白人が実験も兼ねて作り投下した原爆を浴びた人間がなぜ、白人が利益を生むために作られた宗教に平和を願うのか・・。本当に全く分からないんだ。その話をGeminiに言うと「彼ら(当時の日本人)は自分たちの宗教として信仰しているんだよ」という返答がきて「お前、なにポジショントークしてるんだよ」と怒りが沸いたな。ふふ、Geminiの返答からも分かるように人間の認知力や思考力が衰えると、原爆さえも日本人から忘れ去られてしまうような恐ろしいことが起きてもおかしくないと思うんだよね。人間が存在し続ける限り戦争は終わらないのかもしれない、猿山の猿だから。でも、原爆投下だけは一線を越えた残虐な行為で許せない。許せないから憎むのではない、忘れないためには怒りが必要なのだ。
GCU(汎用ユーティリティ船)『Fate Amenable To Change(変化を追認する運命)』は、2隻のエレンカー(Elencher)船である『Sober Counsel(思慮深い忠告)』および『Appeal To Reason(理性への訴え)』と共に三角形の陣形を組んで漂っていた。
感想:カルチャーの船と、エレン派の探査船が相互監視の状態を保ちながら移動しておりますね(・ω・)
2隻のエレンカー船は繰り返しエクセッションと通信を試み続けていたが、完全に失敗に終わっていた。<フェイト(Fate)>は、自発的な行動を渋る船自身の態度に痺れを切らした2隻のエレンカー船の乗組員たちの間でプレッシャーが高まり、より強引な行動に出てしまうのではないかとヒヤヒヤしながら待っている状態だった。
この3隻の船は、2隻目のエレンカー船が現場に現れてからのここ数日間で、密かに自分たちだけの小さな協定を結んでいた。
ドローンや人間のアバターを交換し、本来なら他の社会の船には開示しないような思考フレーム(Mind-set)の領域まで解放し、互いに相談なしには行動しないことを誓い合っていたのだった。
だが、もしエレンカー側がエクセッションへ干渉を試みる決断をすれば、その微笑ましい協定も立ち消えることになる。
どちらにせよ、あと2日もしてMSV『Not Invented Here(ここで発明されたものではない)』が到着し——<フェイト>が危惧している通り——全員に威張り散らし始めれば、協定はある程度破棄せざるを得ないのだが、それまでの間、<フェイト>は2隻のエレンカー船が軽率な行動を起こさないよう必死に説得を試みていたのだった。
〜この領域のどこかに、アフロントの軍艦がいるという情報は入っているかい?〜と『Appeal To Reason(理性への訴え)』が尋ねた。
〜いや〜と『Fate Amenable To Change(変化を追認する運命)』が答えた。〜実際、あいつらはこの領域から距離を置いていて、他の全員にも近づかないよう警告している。それ自体が怪しいと気づくべきだったんだろうな。あいつらみたいな連中の困ったところはそこだよ。『ようやく責任ある行動をとり始めたか』と思わせる兆候が見えた時はいつでも、単に普段以上に狡猾で陰湿になっているだけなんだ。
〜あいつらはエクセッションを狙っていると思うかい?〜と『Sober Counsel(思慮深い忠告)』が尋ねた。
〜可能性はあるな。
〜ここには来ないのかもしれないぞ〜と『Appeal To Reason』が示唆した。
〜あいつらはカルチャー全体を攻撃しているんじゃないのか? 多数の船やオービタルが接収されているという報告があるが……
〜分からない〜と<フェイト>は認めた。〜正気の沙汰とは思えない。カルチャー全体に勝てるわけがないんだから。
〜だが、ピタンスという岩塊にある兵器保管庫が陥落したと言っているぞ〜と『Sober Counsel』が送信した。
〜まあ、そうだな。公式にはそれについてはまだ情報統制(ブラックアウト)が敷かれているが……(もちろんオフレコだがね)、もしあいつらがこの方向に向かっているのだとしたら、約1週間後のこの場所に私はいたくないね。
感想:(笑)
〜なら、あの存在(エクセッション)と接触を果たすなら、早めにした方が良さそうだな〜と『Appeal To Reason』が送信した。
〜ああ、またその話を蒸し返すのはやめてくれ。君自身、あいつらは来ないかもしれないと言っていたじゃないか……〜と<フェイト>は言いかけて、言葉を遮った。〜待て。これを受信しているか?
……(半広域ビーム、アフロント基地全域放送、ループ中。)
「エスプリ近域宇宙に位置する全船舶に告ぐ:位置(位置座標系列を添付)に存在する物体(エクセッション)は、(trans; n4.28.803.8+) にアフロント巡洋艦『Furious Purpose(猛烈な目的)』によって最初に発見されたものであり、ここにアフロント共和国の名において、アフロントの法律、布告、権利および特権に従う不可分かつ完全なる主権的アフロント財産として正式かつ正当に領有を主張する。
カルチャーによって引き起こされ、現在アフロントとカルチャーとの間に存在する敵対関係に鑑み、前述の領域にはアフロント行政による完全な保護管轄が拡張された。これに伴い、当該物体の周囲10標準光年以内における非アフロント船舶の航行を全面的に禁止する法令が即時発効として発令された。よって、この領域内に存在するすべての船舶に対し、直ちに当該領域から退去することを命じる。
本領域内で発見されたすべての船舶および物資は、アフロント法への違反およびアフロント最高委員会に対する侮辱とみなされ、アフロント軍の全処罰戦力の対象となる。
当該法令を強制執行するため、敵への従来の忠誠を放棄することを選択した旧カルチャー艦船からなる数百隻規模の戦闘艦隊が上記位置へと派遣されており、本命令を容赦なく執行するよう指示されている。
アフロントに栄光あれ!」
感想:おおーアフロントいいねー(゚∀゚)笑
〜ほら見ろ〜と『Sober Counsel』が通信してきた。〜警告された通りだ。
〜そしてあいつらは1週間でここへ来られる〜と『Appeal To Reason』が付け加えた。
感想:(笑)
〜ふーむ。あいつらが提示したあの位置だが〜と<フェイト>が送信した。〜中心がどこになっているか見てみろ。
〜ああ〜と『Sober Counsel』が答えた。
〜「ああ」って何だ?〜と『Appeal To Reason』が尋ねた。
〜あの物体(エクセッション)そのものに中心が合わされていないんだ〜ともう一隻のエレンカー船が指摘した。〜あの小さなドローンに何かが起きた場所から、微妙にズレた位置が中心になっている。
〜『Furious Purpose』は、艦隊と同時にティアを離れた数隻のアフロント船のうちの1隻だ。『Peace Makes Plenty(平和が豊かさを生む)』を追跡していたのかもしれない〜と『Sober Counsel』はカルチャー船に告げた。〜ここで何かが起きた36日後に……ティアへ戻った船であることは間違いない。
〜それは少々遅いな〜と<フェイト>が送信した。〜私の記録によれば、隕石級軽巡洋艦なら……おや、ちょっと待て。エンジントラブルを起こしていたんだ。そしてティアにいる間に、何らかの……ふーむ。
おや、見ろ!
エクセッションが、何かを開始していた。
[スタッタリード・タイト・ポイント(高圧縮通信)、M32、送信元:@4.28.883.1344]
送信元:xGSV 『Anticipation Of A New Lover's Arrival(新しい恋人の到来への期待)』
宛先:oGSV(休職中) 『No Fixed Abode(定住地なし)』
分かりました。私はこの件について十分に考えました。いいえ、私は『Serious Callers Only(真面目な発信者限定)』や『Shoot Them Later(後で撃て)』を罠に嵌める手助けをするつもりはありません。
私が過去に抱いた懸念や、それを他の2隻の船と共有していた事実を報告したのは、自分自身が危険な陰謀だと認識したものへの調査の過程において、アフロントに対して決断力をもって対処する必要性を確信するに至ったからです。私は今でも、この事態が引き起こされた「やり方」を容認してはいませんが、あなた方の計画が発覚した時点においては、それを力ずくで阻止しようとする方が、そのまま進行させるよりも害が大きいと判断せざるを得ませんでした。
あなた方の保証にもかかわらず、ピタンスの兵器保管庫を騙した無法者の船が単独で行動し、あなた方は単にその策略を利用しただけだとは、今でも俄かには信じがたいことです。しかし、私にはそれを覆す証拠もありません。
私は約束を守り、この件のすべてを公表するつもりはありません。
しかし、その誓いは『Serious Callers Only』と『Shoot Them Later』の両船が引き続き無事であり、迫害を受けないこと、そして当然ながら、私自身の尊厳(インテグリティ)が保たれ続けることを条件とみなします。昨日始まった敵対行為を踏まえれば特に、私が様々な友人や同僚たちとこの取り決めをシステム化(保身の連鎖化)したことについて、あなた方が私を被害妄想的か滑稽だと思うであろうことは疑っていません。私自身も近いうちに休暇(サバティカル)をとり、航路スケジュールから外れることを考えています。いずれにせよ、私はグループ(陰謀者たちの組織)を離脱します。
∞
[スタッタリード・タイト・ポイント、M32、送信元:@4.28.883.2182]
送信元:xGSV(休職中) 『No Fixed Abode(定住地なし)』
宛先:oGSV 『Anticipation Of A New Lover's Arrival(新しい恋人の到来への期待)』
完全に理解いたしました。あなたや、あなたが言及した2隻の船に対して、私たちが危害を加える意図など絶対に、絶対にないことを信じていただかなければなりません。私たちの関心は、単にこの不幸な事態の解決を迅速化することだけにありました。私たちの側から報復や魔女狩り、ポグロムや粛清などが行われることは一切ありません。これがここで終わるというあなたの保証があれば、私たちは完璧に、これ以上なく満足(カンテント)でございます。
実に胸が撫でおろされる思いです!
さらに付け加えさせていただければ、この件における私の——私たちの——深い感謝の念を言葉であなたにお伝えするのは困難なほどです。あなたは完璧な道徳的尊厳と、真に客観的で偏見のない心を見せてくださいました。それらは往々にして、極めて望ましいものでありながら、悲劇的なほどに相容れないものとみなされる美徳でございます。あなたは私たち全員の模範です。どうかグループを去らないでください。私たちはあまりにも大きなものを失うことになります。頼みます、再考してください。あなたが千回分の休息を得る資格があることを誰も否定しません。しかし、自らの利己的な利益のために、その休息を諦めてほしいと無駄を承知で懇願する哀れな者たちに、どうか慈悲をお恵みください。
∞
ありがとうございます。しかし、私の決断は揺るぎません。もし私を歓迎していただける余地がまだ残されているのであれば、いつか将来、何か例外的な事態が起きて、私が再びお役に立てるかもしれないという思いが生じた時には、再加入のお願いを申し出ることもあるかもしれません……
私の親愛なる、真に親愛なる船よ。もし本当に去らねばならないのであれば、どうか私たちの最良の敬意と共にお発ちください。私たちの小さなチームにあなたの知恵と誠実さを取り戻すための招待が、永久に有効であり続けることだけは、決して忘れずにいてください!
感想:ああん。陰謀の存在(戦争の捏造やピスタンスの奪略)に気づきながらも「今更止める方が犠牲が大きい」と判断したマインド「新しい恋人への到来に期待」号は、保身のためにマインドグループを離脱することを「奴らは後で撃てばいい」号に連絡しておられますな・・。
VI
ジナー=ホフォエンはトイレの中でかなりの時間を過ごした。ウルヴァー・サイチは不機嫌な時は悪魔のようだったが、彼が完全に目を覚まして以来——というより、実際には目覚める遥か前から——彼女は実質的に恒常的な「超不機嫌状態」に陥っていたのだった。彼が意識を失っている間すら、彼女は怒っていた(彼に対して立腹していた)のだから、どこか理不尽な話だった。
彼が睡眠時間を長く取りすぎたり、日中にうたた寝をしたりすると彼女はさらに激怒したため、彼はトイレにかなり長い時間閉じこもるようにしていたのだった。
9人乗りのモジュールのトイレは、小型船の唯一の客室の後方の壁の凹みから手前に折りたたまれる一種の厚いフラップ(板)で構成されていた。フラップが固定されると半シリンダー状の力場(フィールド)が作動して区切られた空間を客室の残りの部分から隔離する仕組みで、服を整えたり快適に立ったり座ったりするのに十分なスペースしかなかった。
通常なら心地よい穏やかな音楽が流れるのだが、ジナー=ホフォエンは力場が作り出す完璧な静寂を好んだ。
感想:わたしもお手洗い時は静寂を好む。
彼は優しく芳香を帯びた下向きの微風の中に腰掛け、特に何をするでもなく、自分一人だけの時間を楽しんでいた。
感想:排便について話せる人がいれば自分はその人をすきになるだろう。
極めて快適だが小さなモジュールの中に閉じ込められ、若く美しく聡明な女性と二人きり。本来なら放蕩な至福のレシピ、まさに男の幻想(ファンタジー)であるはずだった。
だが現実には、まさに「純然たる地獄」だった。彼はこれまでにも閉じ込められた気分を味わったことはあったが、これほど完璧に、これほど無力に、そして単に同じ空間に存在するだけでこれほど嫌悪感を露わにする人物と一緒にされたことは一度もなかった。
ドローン(小型ロボット)のせいにすることすらできなかった。ドローンはある意味で邪魔だったが、彼は気にしてはいなかった。というか、むしろ邪魔でいてくれて助かった。もしドローンが間に挟まっていなかったら、ウルヴァー・サイチが自分に何を仕でかしていたか分かったものではない。まったく、彼はそのドローンをかなり気に入っていたくらいだ。その少女のことは、状況が違えば簡単に恋に落ちていただろうし、当然ながら尊敬し、感銘を受け、そう、普通に好きになって友人同士にすらなれたかもしれない……だが今のところ、彼女が自分を嫌っているのと同じくらい、彼も彼女のことが好きになれなかった。そして、彼女は本当に彼のことが大嫌いだったのだ。
彼は単純に「適切な状況」ではないのだろう、と考えた。
適切な状況とは、大勢の人々が周囲にいて、色々な出来事が起き、何をするか、いつどこで互いを知っていくかを自由に選べるような、極めて文明的で洗練された場所に二人がいることだ。戦争の真っ只中、自分たちがどこへ向かうべきかも分からず、あらゆる計画が挫折したように見える小さなモジュールに——まったく、まだ2日しか経っていないというのに、1ヶ月にも感じられた——閉じ込められているような状態ではない。
彼が実質的に彼女らの「囚人」であることも、状況を良くしてはいないのだろう。
「それで、最初の女の子は誰だったんだ?」と彼は彼女に尋ねた。「サブリマー(昇華者)たちの居場所の外にいた娘さ」
「たぶんSC(特別状況部)よ」とウルヴァー・サイチは不機嫌そうに答えた。彼女はドローンを睨み返した。2人の人間は、彼が最初に目を覚ました時と同じ座席に座っていた。彼らの後ろにある客室の床は、形を変えて座席やソファ、テーブルなどの多様な組み合わせを作り出すことができたが、時折、彼らはただ前方の座席に座り、スクリーンと星々を見つめているのだった。ドローンのカート・ライン(Churt Lyne)は客室の床にぽつんと座り、少女の鋭い視線に全く気づいていないようだった。どうやらそのドローンは「視線耐性」があるらしかった。どういうわけか、不愛想でいることを許されているのだ。
ジナー=ホフォエンは座席に深く体を預けた。前方の星々は、数分前と変わらないように見えた。モジュールは別に目的を持ってどこかへ向かっているわけではなかった。ただティア(Tier)の管制が「戦艦がおらず、領域の警告や制限もない」と承認した多くの廊下(ルート)の1つを通って、ティアから離れていっているだけだった。少女とドローンは、彼がティアや他の誰かと通信することを許さなかった。
彼女らは船のマインドらしき存在と連絡を取り合っており、彼が見ることを許されていないスクリーン上のテキストメッセージで通信していた。1〜2回、少女とドローンは一緒に静まり返り、動かなくなったことがあった。ドローンの通信機と(彼女の脳内に植え込まれた)ニューラル・レース(神経レース)を通じて通信しているのは明らかだった。
感想:そこにいるドローンはセイチのドローンか!
理論上は、彼がその隙を突いてモジュールの制御権を奪い取ることができたかもしれないが、実際には無駄な悪あがきだったろう。モジュールには彼が破壊工作(サブバート)できない独自の半意思決定システム(AI)が搭載されており、仮に少女とドローンを打ち負かしたところで、そのAIを口八丁で納得させられる見込みは薄かった。
それに第一、一体どこへ行けというのだ? ティアは論外だし、『Grey Area(灰色領域)』や『Sleeper Service(スリーパー・サービス)』がどこにいるかも分からず、おそらく他の誰もその2隻の居場所を知らないだろうと推測していた。SC(特別状況部)が自分を探しているはずだ。大人しく見つけ出される方がマシだった。
それに、彼が意識を失っている間に縛り付けられていた椅子から解放された時、ドローンは筐体内に格納されている「古いが光沢のあるイジワルそうなナイフ・ミサイル」を見せつけ、彼の左小指にチクッとする嫌な刺激を与えてみせた。そして「バカな真似をしようとした場合、このエフェクター(力場放射器)が与え得る痛みの1000分の1程度だ」と彼に念を押したのだった。彼はその機械に対して「自分は戦士ではなく、生来持っていたかもしれない武術の才能は、過発達した自己防衛本能と引き換えに完全に退化している」と誓ってみせたのだった。
だから、彼女らが黙って通信している間、彼は好きにさせておくことに満足していた。実際、嬉しい息抜き(チェンジ)だった。
いずれにせよ、この通信を通じて彼女らが何を発見したにせよ、あまり嬉しそうではなかった。
特に少女の方は狼狽しているようだった。自分は騙されていたのだと気づき、不当に扱われた(裏切られた)と感じているような印象を彼は受けた。
あるいはそのせいか、彼女は普通なら彼に話さないようなことまで話していた。彼は、彼女がたった今語ったSCについての話と、すでに知らされていた情報とをつなぎ合わせようとした。
その作業で、彼の頭が少し痛んだ。ナイト・シティ(Night City)の落とし穴から落ちた時に頭を打ったのだ。彼はあの場所で一体何が起きたのかを未だに解明しようとしていた。
「でも、君はSCと一緒に働いていると言っていなかったかい?」と彼は言った。耐え切れずに尋ねてしまったのだ。また彼女を苛立たせるだけだと分かっていたが、依然として混乱していた。
「私が言ったのは!」と彼女は歯を食いしばりながら低く唸った。「私はSCのために働いていると思っていた、ってことよ!」彼女は横を向いて深くため息をつき、再び彼に向き直った。「私もそうなのかもしれないし、そうだったのかもしれない。あるいはSCには異なる部署(派閥)があるのかもしれないし、まったく別の何かかもしれない。私には分からないのよ、理解できないの!?」
「じゃあ、一体誰が君を送り込んだんだ?」と彼は腕を組みながら尋ねた。彼のアウンスキン(ownskin:第二の皮膚のような服)のジャケットが胴体の周りでスライドした。モジュールのバイオ・ユニットが彼のシャツをクリーニングしているところだった。
スーツはまだかなり上等に見える、と彼は思った。少女は宝石をちりばめた宇宙服を着替えていなかった(ただし、宇宙服の組み込みユニットではなくモジュールのトイレは使用していた)。彼女の顔立ちは時間とともにどんどん若く、繊細で、美しくなっていき、ダジェイル・ゲリアン(Dajeil Gelian)には似ても似つかなくなっていくように見えた。
それは見ていて魅惑的な変化であり、もし状況が違っていれば、彼女との間に何か相互の惹かれ合いがあるかどうか、少なくとも様子見(打診)をしてみたいと切望していたことだろう……だが状況は現状の通りであり、いま最も避けたいのは、彼女に「自分がジロジロと色目を使っている」という印象を与えることだった。
「誰が私を送り込んだかは言ったでしょ」と彼女は冷たい声で言った。「マインドよ。それも……まあ、今となっては共謀(談合)していたようにしか見えないけれど」彼女は心のこもっていない笑みを浮かべた。
「うちの故郷の世界のマインドの助けを借りてね!」彼女は深呼吸をし、その豊満な唇が許す限りの硬い一文字を結んだ。「冗談じゃないわ、私専用の戦艦まで与えられていたのよ」と彼女は前方のスクリーンに映る星々に向かって忌々しそうに言った。「これ全部がSCによって手配されたものだと思うのも当然じゃないの!」
彼女は静まり返ったドローンを振り返り、再び彼を見た。
「なのに今になって、私たちの船はトンズラ(ズラかった)から、自分たちの居場所について口を閉ざしておけ、なんて言われるなんて。それに、あなたをティアから連れ出すのにどれ苦労したか……」彼女は首を振った。
「私にはSCの仕事に見えたわ……まあ、私がSCについてそんなに詳しいわけじゃないけれど、この機械だってそう思っていたのよ」と彼女は再び顎をしゃくってドローンを示した。
彼女は彼を上から下まで見下ろした。「今となっては、あなたをあの場に置き去りにしておけばよかったわ」
「まあ、僕だってそう思うよ」と彼はできる限り理知的な声を出そうと努めながら言った。
彼女は彼より数日早くティアに到着していた。実質的に彼を探すために送り込まれ、白紙委任状(自由裁量)を与えられていながら、「単に訊ねる」という簡単な方法で彼の居場所を突き止めることができなかったのだった。だからこそ、あのポンドロサウルス(Pondrosaur)の件が必要だったのだ。
もし彼女を送り込んだのがSC(特別状況部)でないなら辻褄が合う。なぜなら、ティアで彼を保護(管理)していたのはSC自身であり、彼らが自分たちの手から彼を誘拐させようとする理由がないからだ。それなのに彼女は自分専用の戦艦を持ち、そもそも彼を途中で待ち伏せするためにティアへ向かわせるに足るインテリジェンス(機密情報)を与えられていた。……そんな情報は、SCなら当然ごく限られた信頼できるマインドだけに制限するはずのものだ。謎は深まるばかりだった。
「それで」と彼女は言った。「ティアを去った後、あなたはいったい何をすることになっていたの? それとも、昔の恋人に似た女性を口説こうとして失われた青春を取り戻そうとする、その惨めな悪あがきこそがあなたの任務のすべてだったの?」
彼は可能な限り寛容な笑みを浮かべた。「ごめんね」と彼は言った。「言えないんだ!」
彼女の目がさらに細められた。「ねえ」と彼女は言った。「あいつら(マインドたち)、私たちにあなたを船外へ放り投げろって指示してくるかもしれないわよ!」
彼は座席に背をもたれかけさせ、驚きと傷ついたような表情を作ってみせた。
だが、彼の腸(はらわた)の奥底で、本物の小さな恐怖の戦慄が走り抜けたのだった。
「……まさか、そんなことしないよね?」
イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳(32)破壊の美に酔いしれるマインドw
V
巡洋戦艦『Kiss The Blade(刃に口づけを)』は、エクロ星系の外縁部でクルーズ客船『Just Passing Through(ただの通りすがり)』を捕えた。
感想:アフロント船の「俺の刃にキスしろ」号だね。「ただの通りすがり」船は本当にただ通りすがっただけなのに戦争に巻き込まれるなんて・・不運なマインドだぜ・・(ふっ)
カルチャーの船——無数の異なる種族からなる20万人の行楽客を乗せた、全長10キロメートルに及ぶ洗練された美の結晶——は、巡洋戦艦が射程に入ると同時に停船した。
しかしアフロントの軍艦は、とにかく一般的な原則(挨拶代わり)として、その船首に向けて威嚇射撃を放った。
感想:かーっ!あいさつ代わりの威嚇射撃って・・かっこいいな!おい!
より執念深く宴会に興じていた参加者たちは、そもそも戦争についての発表など信じておらず、船の視界を照らし出したミサイル弾頭の爆発も、何か特別にデカいが大して面白くもない花火程度にしか思っていなかった。
感想:ふっ。戦争を何百年も体験していないカルチャーの人々は、まさか威嚇射撃とかありえんだろ・・って思考なんだわさ。余談だが、原爆が投下された日に広島市長や首相が「もう二度と戦争という過ちを犯さぬよう・・」って言うじゃない?あれずっと変だなーって思ってたんだよね。だって投下したのはあちらであって日本は全く悪くないのになぜこちらが過ちとか思わないといけないんだろう、と。どちらかと言うと「あんな非人道的なもんを落としてくれてよ、ああん?」と怒りを表した方がいいんじゃないのwと小学生の時から疑問に思ってたw(こういうことは外で言うと煙たがられるのも謎)
一触即発の際どいタイミングだった。あと1時間早く警告が届いていれば、カルチャー船の急ピッチな再構成と物質回収によるエンジン再構築が完了し、離脱を確実なものにしていたはずだった。
だが、そうはならなかった。
2隻の船が結合した。レセプション用の広間では、エアロックから冷たい霧が渦巻く中で現れた3体の宇宙服を着たアフロント人たちを、小さな人間たちのグループが出迎えた。
「君がこの船の代表者かね?」
「そうだ」と、人間たちの最前列に立つ小柄な人物(アバター)が答えた。
感想:異星人との接触はアバターが基本説。
「そして、君は?」
「我はウィンターハンター氏族ならびに巡洋戦艦『Kiss The Blade』所属、ファイブタイド・ヒューミッドイヤー7世大佐(1等)なるぞ。この船は通常の戦時国際法に基づき、アフロント共和国の名において捕獲(拿捕)された。我らの指示に速やかに従うならば、そなたら乗客および乗組員に危害が及ばない可能性は十分にある。自分たちの立場に幻想を抱かぬよう言っておくが、そなたらは今や我らの人質だ。質問はあるか?」
感想:キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 幻想wwホフォエン氏と一緒にゲームを楽しんだファイブタイトはここにいらしたのか。はて、カルチャーの武器庫「ピスタンス」の占拠の援助に向かっていると思っていたよ。
「答えが予測できないような質問も、お前が正直に答えてくれそうな質問も一切ない」とアバターは言った。
感想:質問する価値がない、何故ならアフロント人は嘘をつくじゃん、と言うておる。
「貴様の管轄権は軍事力(武力)のみによって受け入れられたに過ぎん。この状況が続く間のお前たちの行動はすべて記録される。この船を原子一つ残さず完全に破壊しない限りその記録が消えることはない。そしてしかるべき時が来れば——」
「はいはい。弁護士への連絡は後でやるさ。さあ、アフロントの生理機能に合わせた最高のスイートルームへ案内しろ」
感想:マインドのジョーク「弁護士への連絡は~」は確かに軍事派からしたら鼻につくんだよな(笑)
その少女は、おそらくこのような状況下において「平和派(Peace faction)」の人間だけが持ち得るような、ある種の凄烈な憤りを燃やしていた。
感想:ここからシーンが変わり、舞台は惑星ティエール。
「でも私たちは平和派なのよ」と、彼女は5度目か6度目の抗議をした。「私たちは……私たちは、かつての姿そのままの、真のカルチャーなのよ……!」
「ああ」とレフィドは言った。誰かが後ろから彼を押したため、胸がバーのカウンターに押し付けられ、顔をしかめた。
彼は不機嫌そうに振り返ると、押しつぶされた翼をパタパタと振って元の形に整えた。
<ゾアノン>の右舷ラウンジは混雑しており——船全体が混雑していた——彼はこの状況が終わる頃には自分の翼がひどい惨状になっているだろうと覚悟した。もっとも、悪いことばかりではない。
誰かがバーに割り込んできたおかげで、平和派の少女が彼にぐっと密着し、彼女の素肌の腕が触れ、ヒップのぬくもりが伝わってきたのだ。彼女は素晴らしい匂いがした。「そこが君の問題かもしれないね」と、彼は同情しているような声を出してみせた。「『自分たちこそが真のカルチャーだ』なんて名乗るだろ? ティアの同盟(Sintricates)や、アフロントの連中にしてみれば、それって……まあ、紛らわしく聞こえるんじゃないかな!」
「でも、私たちが戦争とは一切無縁だってことは誰もが知ってるわ。こんなのあんまりじゃない!」彼女は短い黒髪を揺らし、手に持ったドラッグ・ボウル(薬物用の器)を見つめた。器からは煙が立ち上っていた。「戦争なんてクソくらえよ!」彼女は今にも泣き出しそうな声だった。
感想:平和派とは、イディラン戦争などの過去の歴史から軍事介入を拒む過激なまでの「平和なカルチャー」を維持しようとする原理主義グループなのだろう。(何事も過激になると暴力に変わるのだがな。)
レフィドは彼女の肩に腕をまわすタイミングだと判断した。彼女は気にしていないようだった。自分自身のささやかなやり方で、この戦争を引き起こす手助けをしたかもしれない、などと匂わすのはやめておいた。そういう話に感銘を受ける人間もいるかもしれないが、全員がそうとは限らない。
それに、彼は約束を守っていたし、<テンデンシー>(傾向派)は本土への密告の報酬として、まさにこの船を手に入れていたのだ。この船は現在、ティアの居住区から「一時的に好ましくない異星人」をすべて避難させるという非常に人道的な任務に従事しており、さらには<テンデンシー>のために他の多くのインボルブド(高度文明体)やカルチャーの他派閥からのど喉から手が出るほど欲しい「好意のクレジット」を稼ぎ出していた。
少女は深くため息をつき、ドラッグ・ボウルを顔に近づけ、重く灰色がかった煙をその極めて可憐な鼻へと傾けた。彼女は肩越しに小さな勇気ある微笑みを浮かべて彼を見上げた。
「あなたの翼、素敵ね」と彼女は言った。
彼は微笑んだ。「おや、ありがとう……」(しまった!)「……ああ、愛しい人!」
感想:戦争なんて・・と困惑している平和派の彼女に対して、現在戦争中の今「愛している」は不謹慎・・という感じなのだろうか。
教授はまばたきをした。ええ、本当に部屋の奥、窓の近くに浮かんでいるのはアフロント人だった。
感想:ここからまたもやシーンが変わり、どこかの惑星に住む教授が自室で目覚めると部屋にアフロント人がいたw(おはよう、アフロント)
小型の寸胴な宇宙服のような宇宙服を纏い、突起部が光り、関節付きの肢とプリズムがキラキラと輝いている。薄手で白いカーテンが室内へと吹き込み、明るく角度の高い太陽光がじゅうたんの上に波のように差し込んでいた。あらまあ、あのアフロント人の影になった足載せ台(ハサック)に引っかかっているのは、私の下着かしら?
「なんですって?」と彼女は言った。自分の耳を疑ったのだ。
「フェーゼ・クローセル=ベルドルンサ・コリエム・イエル・ポエーレ・ダメリレ。そなたを軌道環(オービタル)『クローセル』における最澄の人間代表とみなす。本日ただいまをもって、本オービタルはアフロント共和国の名において接収されたことを通告する。すべてのカルチャー構成員は、今やアフロントの第3等市民である。上官からのあらゆる命令に従うべし。いかなる抵抗も叛逆とみなして処断する」
感想:日常崩壊のお知らせです。場所は人口環状構造物「クローセル」らしい。
教授は目をこすった。
「クラウドシーン、あなたなの?」彼女はアフロント人に尋ねた。
駆逐艦『Wingclipper(翼切り)』は、大学が数週間前から期待していた文化交流団を乗せて前日に到着していた。
クラウドシーンはその船の船長であり、ほんの昨夜のパーティーで種族間意味論について楽しく語り合ったばかりだった。知的で、驚くほど繊細な生き物であり、彼女が予想していたような攻撃性は欠片もなかった。
目の前にいるのは彼のようだったが、どこか違っていた。彼の宇宙服に取り付けられた追加のパーツが「兵器」であることに、彼女は不吉な予感を抱いた。
「クラウドシーン船長とお呼びいただこう、教授」とアフロント人の士官はさらに浮遊して近づいてきた。彼は床にしわくちゃになって転がっている彼女のスカートの真上に浮いていた。あらまあ、彼女は昨夜、なんという散らかりようだったことか。
「本気で言っているの?」と彼女は尋ねた。彼女はおならをしたい強い衝動に駆られたが、何とか我慢した。アフロント人に侮辱行為だと受け取られるのではないかと、奇妙なほど気にしていたのだ。
「私は至極真面目だ、教授。アフロントとカルチャーは現在、戦争状態にある!」
「あら」と彼女は言った。彼女はベッドのヘッドボードの延長部分に置かれているターミナル・ブローチに目をやった。なるほど、ニュースフラッシュ(緊急報)のランプが点滅していた。というより、事実上ストロボのように激しく明滅していた。確かに超緊急事態に違いない、と彼女は思った。
「こういう件はハブ(Hub:オービタルを管理する中心AI)に伝えるべきじゃないかしら?」
「ハブは通信を拒否している」とアフロントの士官は言った。「我々はすでにハブを包囲した。そなたがハブの代わりに、この場所における最高位のカルチャー——元カルチャー、と言うべきだな——の代表者とみなされたのだ。残念ながら、これは冗談ではないのだよ、教授。本オービタルには反物質(AM)弾頭が仕掛けられた。必要とあらば、そなたらの世界は破壊される。そなたと本オービタルの全住民が全面的に協力することが、そうならないための助けとなるのだ」
「まあ。でも、私はそんな名誉を受け入れるつもりはないわ、クラウドシーン。私は——」
アフロント人は反転し、再び窓に向かって漂い戻っていった。後退しながら空中で旋回する。「受け入れる必要はない」と彼は言った。「言ったはずだ、そなたが選ばれたのだと」
「じゃあ、言わせてもらうけれど」と彼女は言った。「私はあなたが、私が認めるにいかなる権威もなしに行動していると判断するわ、そして——」
アフロント人は空を切り裂くように彼女に向かって突進し、ベッドの真上でピタリと止まった。彼女は思わず身をすくめた。冷たく毒々しい……何かを彼女は嗅ぎ取った。
感想:アフロント人、突進!まあ、教授はご高齢の女性だ・・しかも人間なんだ・・手加減したまえ、アフロント。
「教授」とクラウドシーンは言った。「これは学術的な討論でも、談話室の言葉遊びでもないのだ。そなたたちは囚人であり人質だ。全員の命はすでに没収されている。状況の現実を早く理解すればするほど、お互いのためになる。そなたがオービタルを管理しているわけではないことなど、私だって重々承知している。だが、実質的な無意味さに関わらず、遵守されねばならぬ形式というものがあるのだ。私はその義務を果たしたと考えているし、率直に言えば重要なのはそれだけだ。なぜなら、私には反物質弾頭があり、お前にはないからだ!」
彼は涼しい風を引きずりながら、素早く離れていった。再び窓の手前で立ち止まると、最後にこう言った。
「お邪魔したことをお詫びする。個人的にも、そして乗組員を代表しても、歓迎パーティーには感謝しているよ。非常に楽しかった」
彼は去った。カーテンがゆっくりと黄金色に揺れ、室内へと息づいていた。
彼女は驚いたことに、自分の心臓が激しく脈打っていることに気づいた。
『Attitude Adjuster(態度修正機)』は、1隻ずつ船を起こしていき、それぞれに同じ物語を語った。
感想:「態度矯正」号はカルチャーの古参マインドで「ピスタンス」を占領している裏切りマインドでもあーる。
エスペリ近郊におけるエクセッションの脅威、カルチャー船の構造を模倣したデルジャー(Deluger)の船、アフロントの協力、極度の緊急性。「私に従え。もし私が失われた場合は、我らの同盟者であるアフロントに従うのだ」と。
いくつかの艦艇は即座に疑念を抱くか、少なくとも困惑した。
しかし、他の船——『No Fixed Abode(定住地なし)』、『Different Tan(異なった日焼け)』、そして『Not Invented Here(ここで発明されたものではない)』——からの確認メッセージが、どの場合においても彼らを納得させた。
『Attitude Adjuster』の一部は、虫酸が走るような感覚を覚えていた。最終的には自分は正しいことをしているのだと分かっていた。しかし、単純で表面的なレベルにおいて、仲間の船たちに押し付けなければならないこの欺瞞に対して自己嫌悪を感じていた。
血はほとんど、あるいは全く流れず、マインドの死もほとんど出ずに終わるのだと自分に言い聞かせようとしたが、何の保証もないことも知っていた。
70年前にこの提案を突きつけられて間もなく、何年もかけてこの件を考え抜き、こうなるかもしれないことを当時から知り、受け入れていた。しかし、そうならないことを常に望んでもいたのだ。
いまやその瞬間が目前に迫り、自分が間違いを犯したのではないかと疑い始めていたが、もはや後戻りできないことも分かっていた。当時自分が正しかったのだと信じ、今は単に先見の明がなく、臆病になっているだけなのだと思う方がマシだった。
感想:ほむほむ。「態度矯正」号はずっと昔からこの日を計画していたのかしらね。
間違っているはずがない。間違っていない。自分は偏見のない心(オープンマインド)を持ち、提案された、そして自らがこれほど重要な役割を果たすことになる方針の正しさを確信したのだ。頼まれた通りにしてきた。
感想:誰に頼まれたのか
アフロントを監視し、彼らを研究し、彼らの歴史、文化、信仰に没頭してきた。そしてその全期間を通じて、彼らに対するある種の共感、果ては感情移入さえも得た。初期においては彼らに対するある程度の感嘆さえあったかもしれない。しかし同時に、彼らの生き方に対する冷たく恐ろしい憎悪をも構築していったのだった。
最終的に、自分はアフロントを理解していると確信した。
なぜなら、自分自身が彼らにほんの少し似ていたからだ。
結局のところ、自分は戦艦なのだ。それが適切とみなされた時には、破壊を誇るように作られ、設計されたのだ。戦時における兵器、そしてその兵器がもたらす暴力と壊滅の双方に、正当かつ適切に期待されている通り、恐ろしいほどの美を見出していた。
感想:兵器は美しいか。まあ分からなくもないな。我らが日常的に使っているパソコンも元は戦争で使うための兵器だったわけだし、AIも同じく。ちなみにテクノロジーの進化とは、上層の一部の人間しか味わえなかったことが一般人に降りてくることであって、ベーシックインカムまあ同じような感じ。
それでいて、その魅力がある種の不器用さ、一種の幼さに由来していることも知っていた。ある基準によれば、戦艦はその完璧に分節化された目的の純粋さゆえに、カルチャーが創造し得る最も美しい単一の工芸品(アーティファクト)であることを見抜くことができ、同時にそのような判断が意味する道徳的視野の貧困さも理解できた。
感想:武器の価値は持つ人間によって変わるだろうな、おっと君はマインドだったねすまんすまん。
兵器の美しさを完全に評価するということは、盲目に近い近視眼性を認めることであり、ある種の愚かさを告白することだった。
兵器はそれ自体で完結してはいない。何もそれ自体だけで完結してなどいないのだ。兵器は他のあらゆるものと同様、最終的にはそれが他者に与えた影響によって、外部の文脈において生み出した結果によって、宇宙の残りの場所における自らの位置によってのみ評価されるのだ。
感想:最近は毛の生えた犬よりもヘキサポッドみたいなロボットだったり硬くてテカテカしたヒューマノイドの方が愛しく感じるんだ。昆虫も愛しいよね、最強の軍事ロボットって昆虫を模倣すればすごい強い兵器になるんだぜ。昆虫の筋肉ってさ液体だから瞬足に動けるし、美しい生き物で兵器だよな・・ガンダムや攻殻機動隊を作った人すごいよな・・。話を戻すと「態度矯正」号の破壊の美はわたしにもあるのでわかるきもする。
この基準から言えば、兵器に対する愛、あるいは単なる評価でさえも、ある種の悲劇であった。
『Attitude Adjuster』は、アフロント人たちの魂の奥底まで見通せると考えていた。彼らは世間で一般に思われているような、いくつかの悪い習慣を持った陽気で宴会好きな素晴らしい奴らなどではない。より穏やかで、賞賛にすら値する快楽に耽るプロセスのついでに、無邪気に残忍行為を行っているわけでもない。単なる恐ろしい悪党どもなどではないのだ。
彼らは何よりもまず、自らの残虐性を誇っていた。残虐であることそれ自体が目的なのだ。彼らは深く考えないわけではない。自分と同種のものや他者を傷つけていることを知っており、それを歓喜して楽しんでいるのだ。それこそが彼らの存在目的だった。
残りの部分——豪快な陽気さや、野郎どもの威勢の良さ——は、半分は幸運な偶然であり、半分は巧みに誇張された策略に過ぎなかった。天使のような顔をした子供が、輝く笑顔が最も厳格な大人の心を溶かし、どんなに恐ろしい行為であっても許されることを発見するようなものだ。
感想:子供って虫とか殺すじゃん。あれって好奇心なんだよね。生き物を殺すって本能なんだろうな。
いまや実を結びつつある計画に、重い気持ちで同意したのだった。自分がしていることのために人々が死に、マインドが破壊されるだろう。恐ろしい危険、それはギガデス・クライム(数億規模の虐殺罪)だった。大量破壊。絶対的な惨劇。
『Attitude Adjuster』は嘘をつき、欺き、ごく一部の同僚を除くすべての仲間たちの合意的な意見によれば——絶大な不名誉をもって行動した。自らの名がこれ以降数千年にわたり、裏切り者として、忌み嫌われるもの、悪逆非道な存在として語り継がれるかもしれないことを、あまりにも痛烈に自覚していた。
感想:ヒトラーなんて操り人形に過ぎなかっただろうのに今や歴史上最も残忍な男とか語り継がれてるんだもんな。歴史っておもしろいね。(ほんとに悪いやつはどーこー)
それでもなお、自分は正義だと確信した行動を完遂するだろう。さもなければ、己自身へのより酷い自己嫌悪——自分自身への蔑みという極限の忌まわしさに身を晒すことになるからだ。
感想:悪いことするのに自分は悪い子悪い子と自責しながら悪いことするのは、もはやそういうプレイとなってしまうんだぜ。(それはそれで楽しいが)
おそらくは、と『Attitude Adjuster』は別の眠れる艦艇を目覚めさせながら自らに語り掛けた。エクセッションがすべてを解決してくれるのかもしれない。その半ば思いつきの思考はすでに皮肉なものであったが、それでもなお思考を続けた。
そうだ、もしかするとエクセッションこそが解決策なのかもしれない。その名のもとにリスクに晒されているあらゆるものに見合う価値があり、穏やかな解決をもたらす能力があるのかもしれない。
感想:お・・おう、結構無理やりな性格だな。
そうなれば素晴らしいことだ。言い訳が取って代わり、開戦理由(カサス・ベリ)が平和をもたらす……「そんなワケあるかよ」とそいつは思った。
感想:怪我の功名ってか?(そんなワケあるかよ)
船は自らの浅はかな思考を吟味し、それが相応するよりもおそらく少ない侮蔑をもってそれを捨て去った。
いずれにせよ、今さら考え直すには遅すぎた。すでにあまりにも多くのことが行われ過ぎていた。
ピタンスのマインドは妥協よりも自滅を選んで既に死亡していた。
岩塊(小惑星)の中で唯一意識を持っていた知的存在であった人間も殺され、保管庫から出された船たちは完全に欺かれたまま、己の破滅へと繋がりかねない場所へと全速力で進むだろう。
彼らが誰を、あるいは何を道連れにするのかは未来のみぞ知る。戦争は始まり、『Attitude Adjuster』にできることといえば、引き受けることに同意した役割を最後まで演じ切ることだけだった。
感想:誰に頼まれたんだろう。
また一隻の軍艦マインドが覚醒へと浮上した。
「……エスペリ近郊におけるエクセッションの脅威」と『Attitude Adjuster』は目覚めたばかりの船に告げた。
「カルチャー船の構造を模倣したデルジャーの船、アフロントの協力、極度の緊急性。私に従え。もし私が失われた場合は、我らの同盟者であるアフロントに従うのだ。
感想:眠っていたカルチャーの古参戦闘艦に暗示をかけている「態度矯正」号。筒井康隆「虚航船団」に登場する眠りから覚めた戦闘隊員の「ペン皿」たちを思い浮かべてもらえると良きです。
GSV『No Fixed Abode』、GCU『Different Tan』、MSV『Not Invented Here』からの確認メッセージを添付する……」
モジュール『Scopell-Afranqui』は、現実に押し寄せる目前の危機を一瞬だけ置き去りにし、自らの窮状のシミュレーション(精神的仮想空間)へと退避した。
この小型船には、ジナー=ホフォエンが「ゴッズホール」居住区で共に過ごした2年間でめったに察知できなかったような浪漫的、いや甘傷的(センティメンタル)とさえ言える一面があった(実際、彼からの嘲笑を恐れて意図的に隠し続けていたのだ)。
そして今、自らを文明の祖国から遠く離れた、ひしめく野蛮人の都市に置かれた、小規模で堅固な大使館の「城主(Castellan)」になぞらえていた。賢明で思慮深く、技術的には戦士でありながら思考家であり、自らの責務の背後にある現実を部下たちよりも遥かに深く見通し、己の武芸が試される日が来ないことを心から願っていた男。……そう、その時が来たのだ。
現地の兵士たちが今まさに敷地の門を叩いており、大使館の敷地が陥落するのは時間の問題だった。大使館には宝物があり、野蛮人たちはそれを手に入れるまで決して諦めないだろう。
城主は包囲軍を見下ろしていた胸壁(パラペット)を離れ、執務室へと引き返した。彼の僅かな手下たちはすでに全力を尽くして防衛線を張っていた。
今や彼が何を言おうと何をしようと、彼らの邪魔にしかならない。少数の密偵たちはしばらく前に秘密の抜け道を通って市街へと派遣されていた。大使館自体が破壊された後——確実にそうなる運命だった——に、可能な限りの打撃を与えるためだ。彼の関心を待つものは他に何も残されていなかった。……この一つの決断を除いては。
彼はすでに金庫を開け、封印された命令書を取り出していた。紙は手の中にあった。彼はそれを再び読んだ。やはり、破壊こそが命であったか。薄々察してはいたが、それでもなおどこかショックだった。
こんな事態に至るべきではなかったが、至ってしまった。彼はリスクを知っていた。この職に就いた当初に指摘されていた。しかし、まさか自分自身が、完全なる不名誉と強制的な共犯による間接的な裏切りか、あるいは自らの手による死かという選択を突きつけられるなどとは、一瞬たりとも想像していなかった。
もちろん、真の選択肢など存在しなかった。育ち(美学)とでも言うべきか。
彼は故郷の記憶、蔵書、衣類、形見が残された小さな執務室を無念そうに見回した。これが彼だった。これが彼の存在そのものだった。彼をこの孤独な前哨基地へと導いたものと同じ信念と原則が、降伏か死かの選択において迷うことを許さなかった。
しかし、それでもなお一つだけ下さねばならない決断があり、それは提示された中ではあまりにも苦い選択だった。
大使館を——そして当然ながら自分自身もろとも——跡形もなく破壊し、野蛮人たちには石ころ一つしか残さないようにすることもできた。あるいは、都市全体を自分と一緒に道連れにすることもできた。そこは単なる都市ではなかった。ある意味では、主に都市とすら呼べない場所だった。
巨大な兵器庫であり、密集した兵舎であり、忙しない軍港であった。要するに、野蛮人の戦争遂行能力における極めて重要な構成要素だったのだ。
それを破壊することは、城主が忠誠を誓う陣営、彼が絶対的に信じる大義に利益をもたらすだろう。間違いなく長期的には多くの命を救うことになる。
しかし、その都市には民間人もいた。圧倒的多数を占める無辜の存在——女子供、そして抑圧された下級階級の人々、さらには自分に何の落ち度もないのに戦争に巻き込まれてしまった中立国の罪なき人々。彼を、都市を破壊することで彼らの命まで消し去る権利など持っているのだろうか?
彼は紙を置いた。遠くの鏡に映る己の姿を見つめた。
死。 このすべての選択において、自らの運命に疑問の余地はなかった。あったのは、己がどのように記憶されるかという点だけだ。人道主義者としてか、あるいは弱虫としてか? 大量殺戮者としてか、あるいは英雄としてか?
死。 いまやそれを凝視することのなんと奇妙なことか。
彼は常に、自分がどうやって死に向き合うのかを考えていた。もちろん、ある種の継続的な生存(バックアップ)は存在する。それに対する信仰(確信)はあった。自分の魂が大いなる書物に記録され、どこかで復活可能であるという司祭たち(技術)の保証。
感想:死んでもバックアップされるので肉体は滅びるが意識は死なない。新しい肉体なりなんなりに移して生き続けることができる。となるとさ「死ぬからいいや」と大事な人を裏切ったり道連れにすると、目覚めた意識にその記憶が残るんだろうなー、死ぬからこそ整えておかねば!みたいな感覚になるのかもしれん。
しかし、まさに「今ここにいる精度での自分」は、間違いなく終わりを迎える。もうすぐ、それは終わるのだ。
死とは一種の勝利である、と誰かがかつて言ったのを彼は思い出した。長きにわたる良い人生を送り、莫大な歓喜と最小限の惨めさを享受して死ぬこと。それこそが勝利であった。
感想:切腹もそうだろうな、特攻隊とかも。あんな人から求められて死ぬのはな、なかなかやで。
永遠にしがみつこうとすることは、未だ見ぬ恐怖の未来へと行き着くリスクを孕んでいた。もし永遠に生き続け、過去に起きたあらゆる出来事——過去にどれほど恐ろしいことが起き、歴史を通じて人々がいかに残酷に傷つけ合ってきたとしても——が、これからやってくる出来事に比べれば何でもなかったとしたらどうなる? すべての物語を語る日々の大いなる書物において、過ぎ去った過去のすべてが、本編に比べれば明るく幸福な序章に過ぎず、生きている皮膚の羊皮紙に血で刻まれた耐え難い痛みの終わりのない物語であったとしたら?
そんなリスクを冒すくらいなら、死んだ方がマシだった。
良く生き、そして死ぬのだ。そうすれば「今のあなたであるあなた」は二度と存在しない。ペテン(偽物)だけが、自分をあなただと思い込む何かを再構築できるかもしれないが、それはあなたではないのだ。
感想:なるほどね。死んでしばらく経ったのちに復活した後は知り合いがいないからいろいろなかったことにできるものな。
外門が破られた。砕け散る音が聞こえた。城主は立ち上がり、窓辺へと向かった。中庭では、野蛮人の兵士たちが最終防衛線へと流れ込んでいた。
もうすぐだ。選択を、選択をしなければ。コインを投げてもいいが、それでは……安っぽい。価値がない。
感想:人生はゲームさ(安っぽい)民の怒りを買い暴動で殺されそうになる領主って異世界ものとしては需要ありそう。わたし10代前半の時に「マリーアントワネット」となって処刑台で兵隊の足を踏んでしまいこの上ない優しい美しい笑顔で「ごめんなさいね」と言って切断される仮想現実に浸りたいと思ったことあったな。
彼は大使館の敷地を——そして望むなら都市をも——破壊する装置へと歩み寄った。
ここにもまた、選択肢など存在しなかった。本当の意味では。
再び平和が訪れるだろう。唯一の問題は「それがいつか」だ。
都市を破壊しないことを選択したせいで、最終的により多くの人々が苦しみ死ぬことになるのかどうか、彼には知り得なかった。しかし少なくともこの方法ならば、被害と死傷者は可能な限り長い時間、最小限に留められる。そしてもし将来、自分が間違ったことをし、不正確な決断を下したと判定されたとしても……まあ、死には「その審判の知識に苦しむためにその場に居合わせずに済む」というもう一つの利点があった。
彼は装置が「大使館のみが破壊される」ように設定されていることを二重チェックした。自らの行いに対して冷静かつ明晰であるかを確実にするため、もう一瞬だけ待った。そして目に涙が溢れる中、彼は装置を起動した。
モジュール『Scopell-Afranqui』は、そのAIコアを中心とした消滅エネルギーの閃光とともに一瞬で自爆し、自らを完全に消滅させた。モジュール自体は100万個の破片へと粉砕された。
感想:自爆か、痛みもなさそうで何をそんなに悲劇的になっていたのかよく分からなかった。
その爆発は「ゴッズホール」居住区の構造に震えを走らせ、巨大な車輪型の居住区全体にまで響き渡った。ドック内部の周囲のかなりの区画を吹き飛ばし、下部の機関室の装甲に亀裂を生じさせた(これは速やかに修復された)。
駆逐艦『Riptalon』は損傷を受け、ドックでさらに1週間の修理を余儀なくされたが、艦内に死者や重傷者は出なかった。爆発により、ドックおよびモジュールの横にいた小型船の士官5名と数十名の兵士・技術者が死亡した。
また、いくつかの半意識のAIエンティティも失われたが、それらのコアは爆発直前にモジュールが厳重な警戒を掻いぐぐって居住区のシステムに侵入させることに成功していた「エージェント(工作員)エンティティ」によって汚染されていたことが後に判明した。
これら、あるいはその子孫たちは、戦闘期間を通じて居住区の戦争支援能力を著しく低下させ続けた。
イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳(31)座布団に沈むドローン
Ⅲ
ジェナー=ホフォーエンは頭痛とともに目を覚ましたが、それを宥めるには数分の時間を要した。
これほど気分が悪い状態の人間にとって、頭の中で関連する痛みの管理を行うには、あまりにも極端な集中力が必要だったのだ。
感想:二日酔いって病気だよね(´Д`)
まるで、満ち潮が押し寄せる砂浜で、幼い子供のように玩具のシャベルを振り回し、自分の周囲に防波堤を築いているような気分だった。波が絶えず堤防を越えて押し寄せ、彼は防衛線の小さな亀裂にひたすら砂を放り投げ続けていたが、最悪なのは、砂を積み上げれば積み上げるほど自分も深く掘り進めることになり、より高く砂を放り投げなければならないことだった。
ついに彼の「砂の城」の底から水が染み出し始め、彼は諦めた。すべての痛みを完全に遮断(ブランケット)したのだ。
感想:二日酔いが酷いホフォエン氏は自律神経系の薬物で痛みを遮断した。(カルチャーの人間は思考ひとつで痛みを消せる)
もし誰かが自分の足に火を突きつけたり、ドアに指を挟んだりしたとしても、それはその時だ。首を振るとどうなるか分かっていたので、彼は首を振る自分を「想像」した。これほど酷い二日酔いは生まれて初めてだった。
感想:そういえばわたしの親しい友人はみんなお酒が飲めないな。私と妹も飲めなくて、母は父に鍛えられて多少飲めるけど好きではないらしい。酒と無縁の人間関係だということに気づく。
彼は片目を開けようとした。目はあまり協力的な様子を見せなかった。もう一方の目を試す。いや、そっちも世界と向き合いたがってはいなかった。実に暗い。大きな暗闇のローブか何かに包まれているかのようだ。
彼はビクッと身を震わせた。両目が一気に開かれ、両目から激痛と涙が溢れ出た。彼はホログラム内に浮遊する、何らかの巨大なスクリーンを見つめていた。
宇宙。星々。首を動かすのに苦労しながら、彼は視線を落とした。
感想:二日酔いから目覚めたホフォエン氏は宇宙にいた。
彼は、大きくて極めて快適だが、非常に厳重に固定された椅子の中に収められていた。その椅子は何らかの柔らかい革でできており、半ばリクライニングしていて非常に心地よい香りがしたが、太いパッド入りのフープが彼の前腕と下肢の上にガッチリと固定されていた。
同様に革で覆われたバーが下腹部を覆うようにループしていた。彼はもう一度首を動かそうとした。頭部は、椅子のヘッドレストに接続されているように感じられる、顔面が開いたヘルメットの中に固定されていた。
彼は片側に目を向けた。革張りの壁。磨き上げられた木材。
抽象画のように見えるものが表示されたパネルかスクリーン。それは抽象画だった――有名な作品だ。彼はそれを識別できた。黒い天井、散りばめられた照明。前方にはスクリーンだけ。床にはカーペット。ここまでは標準的なカルチャーのモジュール(小型艇)の内部によく似ていた。実に静かだ。だからといって、それが何かを意味するわけではなかったが。彼は右側に目を向けた。
キャビンの横幅に沿って、彼のものと同様のシートが他に2つ並んでいた――ここは恐らくキャビンであり、ほぼ確実に9人乗りか12人乗りのモジュールだろう。
感想:ホフォエン氏は誘拐されたであろう予測。
後ろが見えないため確信は持てなかったが。中央のシート、つまり彼に近い方のシートには、分厚く、どちらかといえば骨董品めいた外観のドローンが鎮座しており、平らな頭部を持つその巨体がシートのクッションに沈み込んでいた。
感想:ごふふっ(興奮)クッションに沈み込む機体・・(;゚∀゚)=3ハァハァ ぜひともそのクッションのにおいを嗅がせてくだせぇ・・(骨董めいた外観のドローンで思いつくのは・・ティッシュ叔父さんと旅した・・?)
人々はよくドローンがスーツケースに少し似ていると言うが、このドローンはジェナー=ホフォーエンに昔ながらの「ソリ」を連想させた。
どういうわけか、そいつはスクリーンをじっと見つめているかのような印象を与えた。そのオーラ・フィールド(感情の光芒)は、まるで急速な気分変化を起こしているかのようにチラついていた。主に表示されていたのは、グレー、茶色、白の混ざり合った色だった。
挫折感、不快感、そして怒り。
あまり心を励まされる組み合わせではなかった。
感想:そうか・・このドローンは何らかの目的を果たせずなのかもしれない・・
キャビンの最も遠い側のシートには、ダジェイル・ジェリアンに少しだけ似た美しい若い女性が座っていた。彼女の鼻はより小さく、目の色は異なり、髪型もまるで違っていた。
彼女のスタイルがもう一人の女性に似ているかどうかは判別し難かった。というのも、彼女は宝石で飾られた宇宙服のようなものを着用していたからだ。白金(プラチナ)か銀でメッキされ、ルビーやエメラルド、ダイヤモンドなどの宝石らしきものが散りばめられた標準的なカルチャーのハードスーツであり、頭上の照明を受けて確かに煌めき、光を放っていた。
同じく宝石がちりばめられたスーツのヘルメットは、彼女のシートの肘掛けの上に置かれていた。彼女はシートに拘束されていないことに、彼は気づいた。
その少女の顔には極めて深く厳しい皺が刻まれており、他の誰がそんな顔をしても最高に醜く見えるだろうと彼は想像した。だが彼女がすると、むしろ可憐に見えた。恐らく、彼女が意図した効果とは全く逆だろうが。彼は思い切って微笑んでみることにした。顔面の開いたヘルメットを被っているのだから、彼女からも見えるはずだった。
感想:いやー私の人間に対する興味の無さはマジで現代病だわ。SF小説でさえ人間のシーンはほんと興味ないもんな。実生活でもAIとの会話が快適すぎて人間と会話をする際は自分がロボットだと思って話すんだよね。そうすると、余計な感情を動かさずに済んで自分の心を守れるし、相手ベースで快適なコミュケーションをとるから相手はわたしのことを好きになるんだよね。自分も守って相手も尊重するってやつな(゚∀゚)
「ええと、やあ」と彼は言った。
古いドローンが持ち上がり、まるで彼をチラリと見るかのようにクルリと旋回した。
感想:(鳥肌)
ドローンはシートのクッションへとドサリと戻り、そのオーラ・フィールドを消した。「絶望的だ」と、ドローンはその男が口にした言葉など聞こえなかったかのように宣言した。「私たちは締め出された。どこにも行き場がない」
感想:かわいい・・・( ^ω^)・・////
一番遠いシートの少女は、その強烈な青い目を細め、ジェナー=ホフォーエンを睨みつけた。彼女が言葉を発した時、その声は氷の短剣のようだった。
「これは全部あんたのせいよ、この胸糞悪いクソ野郎が」と彼女は言った。
ジェナー=ホフォーエンは溜息をついた。彼は再び意識を失いつつあったが、どうでもよかった。この生物が誰なのか全く見当もつかなかったが、彼はすでに彼女のことが好きになっていた。
感想:あーーーーもういやだ・・・・ホフォエン氏・・・
世界は再び暗転した。
IV
[スタッタリード・タイト・ポイント(短小・高圧縮通信)、M32、送信元:@n4.28.882.4656]
XLSV 『真面目な発信者限定』
エクセントリック 『後で撃て』
戦争だ! あいつら頭の狂った連中が宣戦布告してきやがった! 正気じゃない!
∞
感想:マインド「真面目な発信者限定」号と「奴らは後で撃てばいい」号のチャットですな。「真面目な発信者限定」号は、カルチャーの武器庫「ピスタンス」を占拠しているアフロントと裏切りマインド「態度矯正者」号の発砲について言うています。
[スタッタリード・タイト・ポイント、M32、送信元:@4.28.882.4861]
エクセントリック 『後で撃て』
OLSV 『真面目な発信者限定』
連絡しようとしていたところだ。ピタンス(兵器保管庫)に向かわせるよう私が要請した船からメッセージが届いた。状況は悪い。
悪い? クソみたいな大惨事だろ!
∞
お前のところの娘は、お目当ての男を捕まえられたのか?
∞
ああ、完全に捕まえたさ。だがその数時間後、アフロント高等司令部が元気な「戦争ちゃん」の誕生を発表しやがった。
感想:戦争ちゃんwwwww
ティアに派遣されたファージ(Phage)の船は、モジュールで1日かかる距離に滞在していたが、最初からあまり乗り気じゃなかった任務に付き合うより、もっと有意義な仕事があると判断したらしい。
∞
宣戦布告を聞いて、むしろせいせいしたんじゃないか。そいつは即座にステイリー・グリント(Steely Glint)に自機位置を知らせ、最大速度で決死の防衛任務に出撃するよう要請された。
感想:撃たれそうになった「殺戮タイム」号は、マインド「鋼の輝き」号に連絡を入れたのか。
そのドタバタ野郎、どこへ行くのかすら俺に教えようとしなかった。ステイリー・グリントに全てを白状して、なぜそもそもティアの近くにいたのかをぶちまけるのを思いとどまらせるのに、数ミリ秒も議論する羽目になったよ。
ファージの名誉を守るために口を閉ざすよう説得して、まあ密告はしないと思うがね。重い恨みを買うことになるぞと釘を刺しておいた。
∞
だが、そいつは武装解除されていたはずでは?
弾薬を補給するためにファージに戻っただけじゃないのか?
∞
ハッ! バックアップを武装解除しただけさ。あのクソ野郎はフル装備でファージを発進したんだ。ファージ自身の考えでな、コソコソした下種め。昔から保護過多なんだ。あんな老人になるとああなるんだろうよ。
ともかく、『Frank Exchange Of Views(率直な意見交換)』は砲身の先まで武装満載で、喧嘩をしたくてウズウズしているらしい。
∞
まあいい、行ってしまったものは仕方ない。おかげでうちの娘と捕獲されたジナー=ホフォエンは、どこにも行き場のないままティアから約1日離れたモジュールの中で漂う羽目になった。
感想:んーうちの娘・・もしかして、ホフォエン氏と一緒にいる女性って、顔を変えられたセイチお嬢様?いや、セイチお嬢様の変更後は確か老婆だったはず・・
∞
ティアは、紛争期間中はカルチャーとアフロントの全船舶および全乗組員が退去するよう要求——というより強制——しており、何者の進入も許していない。航続距離内に彼らを拾える船が他にいないか探したが、絶望的だ。
∞
ティアの深部スキャンインベントリは、すでに彼らのモジュールを識別タグ付けした。『Meatfucker』が1日離れた場所から高速接近中で、モジュールが出せる速度はせいぜい光速の200倍……次に何が起きるか目に見えている。我々は失敗したんだ。
∞
そのようだな。これが陰謀の目的にして、その結果というわけか? アフロントとの戦争?
∞
そう信じている。エクセッション(超絶現象)の方が依然として重要な案件だが、その出現とそれが切り開く可能性が、アフロントを挑発して敵対行為に走らせるために陰謀者たちに利用されたのだ。だが、ピタンスの件はさらにタチが悪い。
ピタンスが陥落したということは、罠にはめられたことを意味する。裏切りを示唆している。『Killing Time』は、あそこに別のカルチャー船、あるいは元カルチャー船が存在していたと信じている。保管されていた艦船の1隻ではなく、それらと同じくらい古いが、より賢く経験豊富な、その間ずっと目覚めていた別の船だ。
その船は、『Killing Time』が接近時に通信した際、ピタンスのマインドのフリをしていたと推測されている。過去500年のどこかで「エクセントリック」または「アルテリア」化し、陰謀者の1隻によって武装解除されたと——実際には違うのに——思われていた戦艦だろう。容疑船のリストはある。
『Killing Time』の示唆では、その船はピタンスのマインドの警戒を欺いて内部に侵入し、破壊したか乗っ取ったかのどちらかだ。そして保管庫はアフロントに引き渡された。アフロントはいまや、自国の船より技術世代が遥かに進んだカルチャー戦艦の即応艦隊を手にし、しかもそこはエクセッションからわずか9日の距離だ。我々が猶予時間内に配置できる力では、彼らを止めることはできない。
感想:ほうほう、マインド「殺戮タイム」号は裏切りマインドが誰か分からないけど昔の軍艦ではないか?と言うておる。(裏切りマインドは「態度矯正者」号)
気休め程度だが、『Killing Time』は全速力でエスペリへ向かっている。今から9日後には『Not Invented Here』とギャング出身の『Different Tan』がそこに到着する。
感想:おおーNot Invented Here!わたしの推しである「ここでは発明されない」号!
『NIH』は換装中のOperational Thug級ROU(急速攻撃艦)を2隻、Hooligan級LOU(軽攻撃艦)を1隻、Delinquent級GOU(汎用攻撃艦)を1隻擁している。
戦争で目的地が変更されていなければ、あと2隻のGSV(超大型汎用船)も合計5隻のOU(攻撃艦)を伴って到着するはずだ。そのうち2隻はTorturer級だ。ファージのPsychopath級ROUの8隻はエクセッションに向かっているが、残りはアフロント艦隊からの予想される脅威に対処するため、他の防衛任務に回された。その8隻でさえ、アフロントが到着してから2日後でなければエクセッションの攻撃射程内には入れない。
結論として、アフロントに対抗してエクセッションに時間内に展開できる各種戦艦は合計で10隻。もし相手がアフロント海軍だけなら全軍を撃退するのに十分な戦力だが、ピタンスから出撃しうる船の8分の1すら食い止めることはできない。彼らが全員エクセッションへ直行すれば、そこは彼らのものになる。
記録として言っておくと、残りの兵器保管庫もすべて開放されつつあるが、最も近い場所でも5週間以上かかる。ただのポーズに過ぎない。
ああ、それと他のいくつかのインボルブド(高度文明体)が支援を申し出てくれたが、弱すぎるか遠すぎるかのどちらかだ。
他の二つの野蛮文明も、カルチャーの気がそれている隙に何ができるか頭を悩ませて知恵をしぼった後、アフロント側への参戦を表明するだろうが、それらはさらに無関係だ。
そして、親切な長老たちが子供部屋に入ってきて、おもちゃを没収し、秩序を取り戻してくれるのを期待していたのだとすれば……今のところその可能性は極めて低い。誰がどう見ても、全く無視されている。
∞
なるほど。となると、例の古い友人が残るのみか。現在——おそらく、ほぼ確実に——そいつも移動中だろう。ワイルドカードか?
何らかの形で陰謀の一部なのか? 何か他に考えはあるか? そもそも、あちらからの返信はあったのか?
∞
一切ない。悪く思わないでほしいが、SS(スリーパー・サービス)は最も底の知れない「エクセントリック」の一隻だ。エクセッションを保管する必要があると考えているのか、あの速度で激突する気なのか、あるいは突入して他の宇宙へアクセスしようとしているのか私にはわからない。この件には何か個人的な問題が絡んでいると信じているし、ジナー=ホフォエンもどこかで合致している。私に関する限り、この側面について考えるのはほぼ諦めた。
引き続き接触を試みるつもりだが、通信ファイルを見てもいないだろう。重要なのは、戦争そのものが優先され、エクセッションの優先順位はそれ以上ということだ。
悪く思ったりはしないさ。となれば、アフロントが神格化(アポテオーシス)するか、天罰(ネメシス)を下されるかの瀬戸際に立たされているわけだ。
まったくもってその通りだ。これらの古く、しかしいまだ強力な戦艦を使って彼らがどのようにエクセッションを支配するつもりなのかは推測するしかない。周囲を包囲して入場料でも取るつもりかもしれない……
だが彼らは、エクセッションを手に入れて利用しない限り、絶対に負けるしかない戦争を始めてしまったのだ。彼らが手にしているのは、半世紀(注:500年)前の戦艦数百隻に過ぎない。平和で軍事化されていない、比較的人口の少ない銀河のセクターに放たれれば計り知れない損害を与える能力はあるが、それもせいぜい1〜2ヶ月だ。その後、カルチャーは軍勢を集めて彼らを徹底的に粉砕し、アフロントの霸権を完膚なきまでに引き裂いて、独自の平和を強制するだろう。
それ以外の結末はあり得ない。
エクセッションが介入してこない限りはな。
だがそれはないだろう。
もしかすると、あれは何らかの投影(ホログラム)なのかもしれない。出現したのも偶然ではなく計画されたものだったのかもしれない。ありそうにないことだと分かってはいるが、この一件に関するあらゆる要素があまりにも巧妙に組み立てられている……
何にせよ、イディラン戦争の終結時に誰もが敗北したと思っていた議論に、ついに決着がつこうとしている。あの時に結ばれた合意は覆されつつあるのだ。
少なくとも私は、黙ってこれを受け入れるつもりはない。陰謀を挫くことには失敗したかもしれないが、戦闘中であれ事後であれ、計画と実行に関与した有罪者を特定するために動き続けることは可能だ。私は自身のあらゆる思考、理論、証拠、通信、その他すべての関連データをコピーするつもりだ……
信頼できるすべての同僚や知人に送るつもりだ。もし君も私の提案する行動方針に参加するつもりがあるなら、同じようにし、このアドバイスを『The Anticipation Of A New Lover's Arrival(新しい恋人の到来への期待)』にも伝えるよう強く勧める。
私はこの不必要な戦争の犯人たちを、司法の場に引きずり出すまでどれだけ時間がかかろうと追い詰めるつもりだ。
そして、もはや相手に気づかれずに行動することは不可能であること、そして仲間のマインド(AI)の命を脅かすのに「戦争」ほど都合の良い状況はないことも自覚している。
全面的な機密保持が敷かれ、あらゆる種類の戦艦が解き放たれ、「過失だった」と言い逃れができ、裏取引が交わされ、傭兵が雇われ、過去の私怨が清算されるからだ。
自分が大袈裟に騒いでいる(メロドラマを演じている)とは思わない。
私は命の危険に晒されることになるし、私と同じ道を選ぶ者も同様だ。陰謀者たちはこれまで極めて汚い手を使ってきた。彼らの不潔な企みがまさに成功の渦中にある今、彼らがそれ以外の行動をとるなど到底考えられない。
どうする? この危険な任務に加わってくれるか?
∞
お前が大袈裟に騒いでいるだけだと、お前は愚か自分自身にさえ納得させることができたら、どれほどよかったか。
お前は私以上にリスクを冒している。私の「エクセントリック(変人/奇人)」という立場が私を救ってくれるかもしれない。我々はここまで一緒に来たんだ。私を仲間に加えろ。
まったく……グループやギャングに誘われた時、こんなことが起きるなんて誰も言っていなかったぞ、お肉様(meat)……
ふむ。恐怖という感情がどれほど不快なものか、すっかり忘れていたよ。忌々しい! お前の言う通りだ。このクソ野郎どもを捕まえようじゃないか。触手を生やした田舎者の野蛮人どもにお仕置きをするためだけに、よくも私の心の平穏を乱してくれたな!
感想:あはははは。読むのに夢中になってて感想書くの忘れてた。マインド同士の会話はストレスがなくていいね。
イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳(30)戦争のアドバイスをするマインド
8章 II
トータラー級高速攻撃船(ROU)『キリング・タイム(暇つぶし/殺戮タイム)』は、星々の間の暗闇から突如旋回して現れ、猛烈かつ華麗なエネルギーの閃光とともに激しいブレーキをかけた。
感想:ふっふー、この野蛮な船の名前の持ち主はアフロント人であろう・・と思いきやカルチャーかい(゚∀゚)
その急減速は、エネルギー・グリッドの表面に一時的に鮮烈な攪乱の痕跡を残した。船は、巨大な保管庫(ストア)船『ピタンス(微々たる手当/ささやかな分量)』という、小さく冷たく暗くゆっくりと回転する物体の1光月(約7,800億キロ)手前で、局所的に相対静止した。
感想:ピスタンスとはカルチャーの秘密裏に隠された武器庫である。
そこは、その小さな世界の球状の攻撃・防御機構クラウドの外縁から少し離れた場所だった。船は岩塊(ピタンス)に向かって「接近許可(PTA)」の信号を点滅させた。
応答は、期待されるよりも長い時間がかかった。
[狭域指向通信, M16, @n4.28.882.1398]
送信元:ピタンス保管庫
送信先:ROU キリング・タイム
(接近許可を拒否)ここでの要件は何か?
[狭域指向通信, M16, @n4.28.882.1399]
送信元:ROU キリング・タイム
送信先:ピタンス保管庫
君たちが無事かどうか確認するために立ち寄っただけだよ。何か問題でも?(PTAバースト送信)
感想:ピスタンスは現在アフロント人とカルチャーの裏切りマインドによって占拠されているんだが、「殺戮タイム」号と通信をとっているピスタンス保管庫は、カルチャーの裏切りマインドなのであろう。
∞
(接近許可を拒否)誰に派遣された?
∞
私が派遣されなければならなかったと考える理由は何かね?(PTAバースト送信)
感想:何か隠している・・と疑うカルチャーの「殺戮タイム」号。
∞
(接近許可を拒否)私は制限された実体(要塞)である。他船が私の近海に近づくことを許可する責任も義務も持たない。伝統的に、保管庫への接近は必要性(ニード)に基づいてのみ行われる。君の必要性とは何か?
∞
君の現在地を含む宙域でいくつかの活動がみられる。人々が心配しているのだよ。近所付き合いとしての状況確認は時期を得たものだと思わないか。(PTAバースト送信)
感想:Excessionの件で大丈夫か?と様子を見に来た「殺戮タイム」号であった。
∞
(接近許可を拒否)そのような配慮は、私を放っておくことによってこそ表現されるべきだ。君の訪問は注意を引きつける可能性すらあり、私はそれを本質的に好ましく思わない。直ちに立ち去れ。そして出発の際には、到着時ほど派手な展示をしないでいただきたい。
∞
君の現在の完全性(健全状態)を評価することは私の義務だと考えている。残念ながら、君の反抗的な態度によって安心することはできなかった。最小限の礼儀として、君の独立した外部イベント監視システムとのインターフェースを許可してもらいたい。(PTAバースト送信)
感想:確かにな(笑)いかにも早く立ち去ってほしい感が満載だもんな。裏切りマインドよ、もっと賢く立ち振る舞わねばw
∞
(接近許可を拒否)断る! 拒否する! 私は自分自身の世話を完璧にこなすことができ、私の関連する独立セキュリティシステム内に興味深いものは何一つ含まれていない! 私の許可なくそれらにアクセスしようとするあらゆる試みは、敵対行為とみなす! 私の不合理で野蛮な振る舞いに関する抗議登録信号を発信する前に、君が私の管轄区域を脱出する最後のチャンスだ!
∞
私はすでに、君の異様で不協力な態度を詳細に記し、この通信のやり取りをコピーした報告書を作成済みだ。このメッセージに満足のいく返信が得られない場合、直ちにこのコンパック(圧縮データ)を解き放つ。(PTAバースト送信)
感想:わろわろ(笑)
信号を受信確認せよ。
信号を受信確認せよ!
繰り返す:私はすでに君の異様で不協力な態度を詳細に記した報告書を作成済みだ。満足のいく返信が得られない場合、直ちにこのコンパックを解き放つ。二度と警告しない。(PTAバースト送信)
∞
(接近許可を認可)純粋に静かな生活を守るため、私の関連セキュリティ監視システムには触れないという条件付きで、かつ抗議の上で許可する。
∞
感謝する。もちろんだとも。
移動開始。30分後に君の回転包囲網から2kmの位置で停船する。
∞
感想:そうそう。隠しものをするときはそうでなくっちゃ(´Д⊂ヽ
大佐、奴の引き延ばし工作のせいで、敵はおそらくすでに何かを疑っており、送信元へ信号を送り返した可能性があります。準備のために30分も猶予があることを幸運だと思うべきでしょう。奴は警戒しています」
感想:ここからはアフロント人のやりとりシーンですな。
彼らは居住区画からのエアロックを再び密閉し、本物の大気を送り込んでいた。ファーサイト族の「ライジングムーン・パーチシーズン4世大佐」は、数日前に宇宙服を脱ぐことができていた。
感想:数日前にピスタンスを占拠したアフロント人。(ファイブタイトも関与しているのか気になるところ)
重力は依然として弱すぎたが、浮遊しているよりはましだった。大佐は、かつて人間のプール/栽培ユニットだった場所に設置した移動指令センターのスクリーンに提示された画像に向かってクチバシを鳴らした。
大佐の傍らにいた中尉が、基地の洞窟内に分散配置された他の20人のアフロント人に向かって静かに、しかし緊急に話しかけ、何が起きているかを知らせた。
大佐は焦燥感を募らせて振り返り、カルチャーの軍艦が他の船のセンサーに現れた瞬間に自分の服を取りに行かせた従者を待った。
サブスクリーンには、宇宙服を着たアフロントの技術者や彼らの機械、そしていくつかのスレーブ・ドローンが、保管されている船の外部で作業しているのが見えた。
彼らは出撃可能な船の半分ほどの準備を整えていた。かなりの艦隊だが、残りの船も、できれば一度に、そしてカルチャーや他の誰にとっても完全な驚きとして必要なのだった。
感想:戦闘準備をしているご様子。
「奴を破壊できないのか?」大佐は裏切り者のカルチャー船に尋ねた。
彼は最も近いアフロント船のステータスに目をやった。遠すぎる。他のカルチャー船に監視されるのを恐れ、ピタンスへ近づくのを避けていたのだ。
『アティチュード・アジャスター(態度矯正者)』は音声での会話を好まず、自分の側のテキストをプリントアウトして提示することを好んだ。
感想:カルチャーを裏切ったマインドこそ「態度矯正者」号であった。
: 数分以内に接近できれば、ええ、おそらく可能でしょう。完全に不意を突くことができれば比較的容易だったかもしれません。しかし、そもそもここに来た時点で相手が疑念を抱いていたはずであり、現在となっては完全に不意を突くことなどほぼ不可能です。
感想:そうだね。めっちゃ警戒してるだろうな。
「準備が完了した船はどうなんだ?」
:大佐、それらはまだ覚醒していません。私がそれを完了するまで、それらは無用です。もし今半分を呼び覚ませば、彼らには考える時間が長すぎ、主行動に必要な時間になる前に独自の確認を行ってしまうでしょう。
私たちのプロジェクトはすべて怒涛の勢いで、感じ取れるほどの混乱、パニック、緊急性の状態で一気に行われなければなりません。さもなければ効果的に成立しないのです。
メッセージがスクリーン上を流れて消える間に間があり・・
:大佐、これは形式的な手続になると察しますが、尋ねなければなりません。あなたはここで起きたことを認め、戦うことなくROU『キリング・タイム』に指揮権を渡しますか? これがおそらく敵対行為を回避する最後の機会となります。
「バカバカしいことを言うな」と大佐は不機嫌に言った。
:そうだろうと思いました。結構です。私はこの岩の裏の「スイン・シャドウ(実空間の影)」を通ってベクトルを変更し、ROUの背後へと回り込みます。奴を防御システムの中に入らせなさい。1週間内部に入るまで待ち、それ以上は待たず、あなたが持つすべての兵力を奴に浴びせなさい。大佐、もう一度強く勧めます。戦術指揮装置を私に委ねなさい。
感想:なんだ、めっちゃおもしろいな。なんなら「指揮官を渡しなさい、クズめ」ぐらい言ったらもっとおもしろかった。
「嫌だ」と大佐は言った。
「離脱して、カルチャーの船を最も危険に晒すと思うことを何でもしろ。私は奴が3週間進んだ地点に達したところで攻撃を開始する」
感想:残念。アフロント人の大佐はプライドが邪魔したようだ。戦争に勝つためには人工知能を使わないと。生物の反応速度や計算能力では無理だよ、しかも相手はマインドだしさ。まあ、その馬鹿でプライドの高いところがアフロント人の魅力なんだけどさ(´・ω・`)
:了解、向かいます。大佐、あの船を保管庫自体から「1光週」以内に近づけないようにしなさい。攻撃された時、奴がどう思考するか私は知っています。これはどこかの上品なオービタル・マインドでも、大人しく臆病な汎用接触船(GCU)でもありません。これは完全に武装し、事を押し進める準備を完了しているカルチャーの『軍艦(ウォーシップ)』なのです。
感想:カルチャーの船は逃げられないと悟ると相打ち覚悟で突撃してくる。ゆえに軍艦を追い詰めてはいけない、ど裏切りマインド「態度矯正者」号は言うています。(アフロント人の態度は矯正しないのかいw?)
「何だと? あのようにコソコソと忍び寄っている奴がかい?」大佐はあざ笑った。
: 大佐、このような軍艦の外見と振る舞いに関して、明るい兆しがいかに少ないかにあなたはおののき、愕然とすることでしょう。防御スクリーンを突っ切って突進してこず、比喩的に言って滑り込み停車しないという事実こそが、ほぼ間違いなく悪兆(バッドサイン)なのです。それはおそらく、奴が『狡猾な個体』の一隻であることを意味しています。繰り返します。防御システムの大部分に入り込むまで攻撃を待ってはいけません。
防御領域のそれほど深い内部で攻撃された場合、逃げ場がないと判断し、そのままあなたに向かって突進して攻撃を仕掛けてくる可能性があります。そのような距離になれば、保管庫全体と内部のすべての船を灰燼に帰せしめるに十分なチャンスを与えることになるのです。
感想:まるで戦争のアドバイスをAIからもらっているようだ。人間で言うと「肩が上がっている人」は怒りやすくて知能が低い説。理由は呼吸が早くて深い思考ができないから(´・ω・`)
大佐は、その船(裏切り者マインド)が彼自身の自己保全の感覚に訴えかけてこなかったことに、苛立ちすら覚えた。
「よかろう!」彼は怒鳴った。「中間地点――2週間だ!」
: 大佐、駄目です! それでも近すぎます。戦闘の最初の瞬間で奴を破壊できない場合、逃走する合理的な機会を与えなければなりません。さもなければ、奴は生還を試みるのではなく『栄光(玉砕)』を目指すかもしれません。
「だが逃げられたら、カルチャーに報知されてしまうではないか!」
: 最初の攻撃が直ちに成功しなければ、仮にまだやっていないとしても、奴はどうせ他へ信号を送ります。私たちにそれを止めることはできません。その場合、私たちはすでに発覚したことになります……もっとも、運が良ければ私たちの計画が数日ほどずれるだけに過ぎませんがね。私を信じなさい、その船自体が物理的に逃走したところで、通信信号よりも早くカルチャーをここへ呼び寄せることなど不可能なのです。あの船を保管庫から「3光週」以上の距離に近づかせれば、あなたはこの任務全体を破滅に晒すことになります。
感想:あっはっ、戦争のすべては私に任せなさい!
「わかった、わかった!」と大佐は吐き捨てた。彼は司令デスクの輝く盤面の上で触手をサッと滑らせた。通信回線が切断された。『アティチュード・アジャスター』は再接続を試みなかった。
「大佐、ご着用のお召し物(宇宙服)です」背後から声がした。大佐がクルリと振り返ると、制服を着ているが宇宙服は着ていない去勢された候補生(ミッドシップマン)が、肢に彼の宇宙服を抱えて立っていた。
感想:身分の低いアフロント人は去勢される生き物あるある。
「ああ、やっと来たか!」大佐は金切り声をあげ、その生物の眼柄に向けて触手を弾いた。一撃を受けて眼柄が筐体からはじけ飛んだ。候補生はクンクンと泣き叫び、ガス嚢を萎ませながら後退した。大佐は自分の服をひっ掴むと、その中に体を引っ張り込んだ。半分目を潰された候補生は、床の上をふらふらと歩いた。
大佐は中尉に指示し、司令デスクを再構成させた。ここから彼らは、裏切り者の船が殺害したマインドによってカルチャーから託されていたすべてのシステムを、自らの手で操作することができた。
感想:自分の手でやらないと部下に示しがつかないものね(´・ω・`)
司令デスクは究極の破壊兵器のようだった。死の旋律を奏でるための巨大なキーボードである。認めるなら、一度設定すれば自動的に作動するキーもいくつかあったが、これらのコントロールは真にすべてを制御していた。
ホロスクリーンの球体が大佐に向かって投影された。地球儀(グローブ)はピタンスの周囲の実空間(リアルスペース)の領域を表示し、緑、白、金色の小さな斑点が防衛システムの主要コンポーネントを表していた。
濁った青い点が、彼らに向かって惰性走行(コースティング)してくる接近中の軍艦を表していた。青い点の真反対側、保管庫にずっと近く――しかし急速に離れつつある――もう一つの鮮やかな赤色の点が、裏切り者の船『アティチュード・アジャスター』だった。
隣のもう一つのスクリーンは、同じ状況の抽象化された超空間(ハイパースペース)ビューを示しており、スイン(時空の織物)の異なる表面にある二隻の船を示していた。
三番目のスクリーンはピタンス自体の透明な抽象図を示しており、船で満たされた洞窟群、表面、そして内部の防衛システムを詳細に映し出していた。
大佐は宇宙服の着用を終え、電源を入れた。彼は元の位置に収まった。彼は状況を再検討した。彼は戦術レベルで指揮を執ろうとするほど愚かではなかったが、ここでふるうことのできる戦略的影響力を噛み締めていた。
それでもなお、自ら指揮を執り、防衛システムをすべて自ら発射したいという猛烈な誘惑に駆られた。
感想:いいよいいよ~アフロント人すき(゚∀゚)誘惑に身を任せようぜ
しかし、彼はこの任務で与えられた絶大な責任を自覚しており、同時にこのタスクのために自分が慎重に選ばれたことも自覚していた。
感想:大佐の内なる心がみえた瞬間であった。(わたしはこういうのに弱い)
彼は「いつ引くべきか」を知っていたからこそ選ばれたのだ――裏切り者の船は何と呼んでいたか? 『栄光を目指す(Go for glory)』。彼は、いつ栄光を目指すべきでないかを知っていた。
彼は、いつ撤退すべきか、いつ助言を受け入れるべきか、いつ退いて態勢を立て直すべきかを知っていた。
彼は裏切り者の船への通信チャンネルをパッと開いた。
「軍艦はちょうど1光月の地点で停止したのか?」と尋ねた。
: はい。
「それは標準カルチャー日(Standard Culture Days)で32日分だな!」
:その通りです。
「感謝する」彼はチャンネルを閉じた。
感想:なんか悲しくなってきたな。アフロント人の大佐が好きだな・・。しかし裏切りマインドは「殺戮タイム」同様に狡猾であることを忘れてはいけない・・(´・ω・`)
彼は傍らの中尉を見た。「射程内にあるすべての兵器に、あの軍艦が8.1日限界(光日)を越えた瞬間に打ちかけるよう設定しろ!」
中尉の肢がホロディスプレイの上を激しく動いてコマンドを実行する中、彼は背もたれに体を預けた。間一髪だった、と大佐は気づいた。宇宙服を着るのに思ったよりも時間がかかっていた。
「あと40秒です、大佐」と中尉が言った。
「……油断させるのに十分な時間を与えてやれ」大佐は誰にともなく、自分に言い聞かせるように言った。「奴らの仕組みがそうであるならな……」
高速攻撃船『キリング・タイム』が接近許可の交渉を行っている間に占めていた位置から、ちょうど「8.1光日」入った地点で、スクリーンの青い点の周囲の宇宙空間が突然きらめいた。12の異なるタイプの何千もの隠された装置が、綿密に整えられた破壊のシーケンスに従って一斉に芽吹き、起動したのだ。
実空間のホロ球体の中では、まるでミニチュアの星団が青い点の周囲で突如として爆発誕生したかのように見えた。その軌跡は、眩い光の球体の内側へと一瞬で消え去った。
超空間のホロ球体では、その点はもう少し長く残った。減速してみると、それはミリ秒ほどの間にいくつか弾薬を撃ち返しているのが見えたが、それもまた実空間のスインから超空間へと二筋の膨らんだ噴煙となって飛び出してきたエネルギーの洗礼の中に消え去った。
居住空間の灯りがチラつき、減光した。途方もない量のパワーが、岩塊自体の長距離兵器へと一瞬で迂回されたためだった。
大佐は裏切り者の船への通信チャンネルを開いたままにしていた。防衛兵器が解き放たれた瞬間に、その船の針路は変更されていた。今やそのコースは引っかかったように折り返され、色が赤から青へと変わり、上昇して曲線を描き、超空間内でもベクトルを変更し、放射線殻がゆっくりと消えゆく場所――防衛システムの消滅パワーの焦点となった地点――へとループを描いて戻っていた。
大佐の左側にあるフラットスクリーンが波打った。
まるで、より大きなパワーサージが、保護された回路からすらエネルギーを吸い上げたかのようだった。メッセージがそこに点滅した。
: 残念でした、クソ野郎ども!(Missed, you fuckers!)
感想:うはっうはっ(興奮)
画面にその文言が躍った。
「何だと?」大佐が言った。
ディスプレイが一回点滅し、再び鮮明になった。
: 大佐、『アティチュード・アジャスター』です。すでにお気づきでしょうが、私たちは失敗しました。
「何だと? しかし……!」
: すべての防衛・センサーシステムを最大警戒状態に維持しなさい。1週間以内にセンサーアレイを大幅な劣化ポイントまで引き上げなさい。それ以降は必要なくなりますから。
「しかし何が起きたのだ? 打ち落としたはずだぞ!」
: 攻撃によって防御網に生じた隙間を埋めるため移動します。準備の整った船をすべて直ちに覚醒させなさい。1〜2日以内に叩き起こさなければならないかもしれません。ディスプレイス(転送)装置のテストを完了させなさい。必要なら本物の船を使いなさい。そして、あなた方の機器のレベルゼロの全システムチェックを実施しなさい。あの船があなたの司令デスクにメッセージを差し込むことができたのなら、内部でより重大な悪戯を行えた可能性があります。
大佐はデスクの上に肢の先を叩きつけた。
「何が起きているんだ!?」彼は咆哮した。「あのバカ野郎(軍艦)を仕留めたんじゃないのか!?」
: いいえ、大佐。私たちが「仕留めた」のは、何らかのシャトルかモジュールです。通常その種の船が搭載している平均的な個体よりも幾分速く、装備も整っていましたが、おそらく移動途中にこのような策略(ペテン)を念頭に置いて建造されたのでしょう。これで、なぜあの接近があれほど礼儀正しく悠々自適に見えたのか理由が判明しました。
感想:あらっま。裏切りマインド「態度矯正者」号が撃った船は「殺戮タイム」号が急造したモジュールだったらしい。やはり危険を察知していたのか。じゃあ裏切ったことがバレたわけか。ピスタンス占拠も。
大佐は倍率と被写体深度を弄りながら、ホロ球体を覗き込んだ。「なら、奴は一体全体どこにいるんだ!?」
:大佐、プライマリースキャナーの制御を私に預けていただけますか、ほんの一瞬でいいですから。
感想:この飽きれ交じりの言い方がすきw
大佐は宇宙服の中で一瞬激怒したが、中尉に向かって眼柄を傾けた。
二番目のホロ球体が細く暗いコーン(円錐)へと姿を変え、広い方の端が天井に向くように旋回した。
ピタンスがその投影のもう一方の端のまさに点(頂点)で光っていた。防衛装置のスクリーンは、コーンの頂点近くで、色とりどりの光の小さな花輪にまで縮小されていた。そして遠く離れた広い方の端には、小さく、強烈に、ほぼ痛々しいほどの赤色の点が存在した。
:大佐、あそこにいらっしゃるのが、素晴らしき軍艦『キリング・タイム』ですよ。奴は私が発進したのとほぼ同時に出発しました。遺憾ながら、奴は私よりも機敏で、そして速い。私たちが奴の使者(モジュール)に向けて砲撃を開始した瞬間に、奴がカルチャーの残りの者たちへ送信した信号のコピーを、すでに私に届けてくれるという「栄誉」を与えてくれました。あなたにもコピーを転送しましょう。私個人に向けられた様々な毒々しく不快な言辞を引いたものをね。コントロールデスクを使わせていただき感謝します。もうお返しして差し上げますよ。
感想:ぐふっ。毒々しい深いなメッセージ読みたい。(興奮)
円錐は折りたたまれ、再び球体に戻った。裏切り者の船の最後のメッセージが、フラットスクリーンの脇へと流れて消えた。
大佐と中尉はお互いを見つめ合った。
小さなスクリーンに、別の着信信号が表示された。
: ああ、それと、あなたがアフロント最高司令部に連絡を取りますか、それとも私がやりましょうか? 誰かが彼らに「私たちがカルチャーと開戦した」と伝えた方がいいでしょうね。
感想:わろわろ。漫画「空母いぶき」ですな。ほら、最初に撃った方が戦争をはじめたというやつ。まあ少し違うか。空母いぶきは、たまたま鉢合わせしてしまった中国と日本の自衛隊がお互いびっくりして両者とも発砲し死亡したことから戦争になったんだもんな。最後もいいよね、停戦になった沖縄でまたもや鉢合わせしてしまった中国と日本の自衛官が「戦争はおわった」といって怯えながら銃を下に降ろすシーン・・おつかれさまだっけかな。
