足裏吉田

日記

足裏吉田は代々木八幡駅と代々木公園駅から徒歩3分の足裏マッサージのサロンです。ハンドマッサージとヘッドマッサージも追加できます。マンションの1室を使った完全個室。お茶を飲みながらくつろぎの時間を。お年寄りも若者も男性も女性も、皆様のお越しをお持ちしてます♪

アイザック・アシモフ 「停滞空間」

2026 / 04 / 30  10:55
IMG_8847.jpeg

アイザック・アシモフの『停滞空間(別題:みにくい赤ん坊)』を読んだ!

物語の舞台は、ワシントン市にある「ステイシス社」。

ステイシス社の経営者であるホスキンズ博士は、過去から動植物を連れてくる技術だけでなく、それらを現代に留めておくための三つの「停滞空間」を作り出す技術をも発明した人物。

「停滞空間」とは、私たちの属する宇宙とは切り離された、別次元の「気泡」のような場所。

ステイシス社内にある「カーテンみたいなやつ」を通って現代人は自由に行き来できるが、遠い過去から連れてこられた存在にとっては、そこは檻みたいなもの。というか、天井のないドールハウスみたいになっていて、上から観客(出資者)が眺められるようになっている。(悪趣味、、)

「時間エネルギーの法則により、過去から移動してきた存在には膨大なエネルギーの荷重がかかっている」と記載があるけど、現代の物理学に「時間を移動すると発生する特定のエネルギー」というものは存在しない。

宇宙全体のエネルギーの総量は決まっていて、新しく生まれたり消えたりすることはない。形が変わるだけである。これを「エネルギー保存の法則」と言う。

つまり、現代科学のルールに則って、「過去からティミー(物質)が突然現代に現れる」という現象を考えると、とんでもない矛盾が起きてしまう。

• 過去の宇宙: ティミーの体重分(約15kgとしましょう)の質量が、突然消える。
• 現代の宇宙: ティミーの体重分(約15kg)の質量が、突然増える。

その帳尻合わせするためのコストを、アシモフは「時間エネルギーの荷重」と呼んだのだろう。

そして、もし彼らが停滞空間の外へ出てしまえば‥。ワシントン市全体の動力を一瞬で断ち切ってしまうほどのエネルギーを吸収し、周囲を破滅させてしまう、らしい。

調べたところ、「時空に無理やり割り込むための莫大なコスト(エネルギーの歪み)」を表現している、と考えれば。ティミー(15kgの物質)を「ゼロから作り出す」あるいは「時空を越えて持ってくる」際に、それと同等のエネルギーが必要だとしたら、それは「数千発の核爆弾」に匹敵するエネルギーになる。よって、ワシントンは消滅する。(絶対に出しちゃいかん)

ただ、物理学的に考えれば「宇宙全体の質量」の問題なので、必ずしもワシントン市でエネルギーが暴発する必要はない。

物語の設定では、停滞空間は宇宙のどこかに浮いているわけではなく、ステイシス社の装置によって「現代の特定の場所(ワシントン市)」に繋ぎ止められていることになっている。

つまり、地球全体や宇宙全体に分散されるのではなく、「装置という唯一の接点」にエネルギーが集中してしまうため、その近くにあるワシントン市の電網が真っ先に飲み込まれてしまう(あるいは吸い取られてしまう)ということになる。

これは、局所性(Locality)」という議論に触れている。(何かが起きたとき、その影響はまず近くに現れるはずだ、という直感的な感情的な物理感。)

主人公のミス・フェローズは、元婦人科の看護師だった。フェローズは「生理学の知識が豊富で、子供好きの女性」という求人広告を見てステイシス社に応募し、採用される。(このフェローズ初登場のあたりから、何か粘着質な愛というか、毒親要素がある雰囲気が醸し出されている‥)

フェローズに与えられた任務は、過去から連れてこられた、醜い容姿を持つ「ネアンデルタール人」の三歳の少年の世話をすることだった。

フェローズは、「私は看護師なんだ!可愛い子供だけを愛すなんておかしい」と自分に言い聞かせて、ティミーに怯えながらもコミニュケーションをとる。そして、名前のなかった少年に「ティミー」という名をつけた。

この時点で、普通のメンタルの持ち主ならば、即お断り案件なんだけど、もともとの性格なのか、フェローズの「弱いものを守りたい」精神が発揮して、過保護なくらいにティミーの面倒をみる。(看護師あるあるなのかな?)

停滞空間という閉ざされた世界で、三年の月日を共に過ごしたフェローズは、いつしかティミーを実の息子のように愛し、深い母性を抱くようになる。

フェローズはホスキンズ博士のことを「ティミーの父親」と思うようになり、最終的には本人(ホスキンズ博士)に言ってしまい、距離をとられる。この辺りから、フェローズの愛着障害特有の「私を愛してくれるひと」を求める感じが出てる気がする。

しかし、ホスキンズ博士たちの研究が次の段階「中世から人間を連れてくる計画」へ進むことが決まり、限られた停滞空間を空けるために、ティミーは元の遠い過去へ送り返されることになった。

愛する我が子を失いたくないフェローズは、究極の選択をする。ティミーを停滞空間の外に出そうとするが見つかり、最終的には、ホスキンズ博士たちの目を欺き、共に、自らも遠い過去へと身を投じた。我が子がいない現代など生きる意味がない‥って感じなのか。ちょっと重いよな、って思ってしまった。なんなら、ティミーが醜く孤独だからこそ、フェローズはより深い愛を示した気がする。(フェローズは、ティミーの遊び相手として選ばれた、ティミーと同じ年のホスキンズ博士の息子を嫌ってたし。)

現代人が過去へと移動したことで、どれほど膨大な時間エネルギーが荒れ狂ったことだろうか。原始の時代に消えた彼女が、その後どうなったのかは、誰にもわからない‥。

という話なんだよ。おもしろかったのに、中古本とは思えぬ価格なので気軽に読んでもらえないのが残念。