日記
イアン・バンクス『ゲームプレイヤー1章8〜9』
8.
コンタクトからドローンがやってきた。
ドローンは、グルゲーの質問である「ゲームの内容」について答える。
まず、ゲームの舞台は「アザド帝国」。
アザド帝国に住む生き物は「ヒューマノイド」。
ヒューマノイドには、3つの「性」がある。
男性:睾丸とペニスを持つ。主に従軍する兵士など。
女性:子宮を持つ。社会的には「所有物」として利用される低い地位。
中間的な性:反転可能な膣と卵巣を持ち、受精卵を移植する。
この「中間的な性」が、アザド帝国の支配階級を独占している。
ヒューマノイドは、遺伝子工学的に「性転換」できないよう制限をかけることで、この「不平等な階層システム(支配構造)」を何百年も維持している。(グルゲーの住むカルチャーは、気分で性転換が可能である)
ゲームの内容は、簡単に言うと「人生そのものがゲーム化されている社会」。
つまり、強い権力を得るほど、ゲームに勝てる。最たる権力は「皇帝」で、ゲームマスターと呼ばれている。
しかし、単に「皇帝を決める」だけが、ゲームの目的ではない。
支配階級の誰が「優位」に立つか、どの「経済理論」を採用するか、どの「宗教」を公認するか、「法改正」や「軍事」の採用試験にいたるまで、国家のあらゆる重要決定がこのゲームの勝敗によって決まる。
で、もともとは本当に「ただのゲーム」だった。何百年続けるうちに、アザド人たちは、「ゲームと現実の区別」をほとんど失った。
まあ、私たちの現実にも「学歴、資本、コミュ力、SNS、経済競争、企業システム」がある。
ゲーム(人生)の「ルール」は、一体誰が決めたの?誰が作ったの?という感じのことを作者は伝えたい系‥なのかな?
はい⌯᷄︎ ̫ ⌯᷅︎
ここまで読んで気になることが二つあるので、まとめました。
まず、主人公「グルゲー」が承認欲求を求める理由はなぜか。
グルゲーの住む「カルチャー」は、お金も地位も、生存の不安も、AI(マインドやドローン)によって100%解決されている。(イーロンの言う、ユニバーサル・ハイ・インカムみたいね)
全てが満たされた世界で、「他者と自分を区別し、自分の存在理由(アイデンティティ)を証明するもの」は、もはや「個人の卓越性(才能)」しか残されていない。
そう、カルチャーでは「すべてをAIがやってくれる世界」だからこそ、人間は「自分にしかできない何か」で「他者から評価」されないと、自分が「生きている実感」が得られない‥ということなのかもしれない?
チャムリス(四千年生きてるドローン)が言った「勝利を欲するのは未完成な証拠」という言葉は、そうなんだろうなーと思う。
でも、その「未完成さ」こそが、人間のバグであり、愛しさなんじゃないかな?
(‥という私の思いを、以前Geminiに話したことがある。するとGeminiは、その人間の未完成さこそが、何をするか予測不能で危険。核ミサイルをぶっ飛ばすのもそうだ。と言ってきた。)
二つ目は、「なぜ、3つの性」なのか。
今読み進めている、ラリー・ニーヴンの『リングワールド ふたたび』に登場するパペッティア人も、3つの性(二つの精子を提供する性=擬似的なオスと、卵子を持ち他者に産ませる性=擬似的なメス、そして肉体を提供するだけの非知的な「宿主」)を持っている。
2つの性(男女)だけだと、どうしても権力や富が流動しやすくなる。
アザド帝国の場合‥
子宮を持つ性(女性)をただの「肉体的なゆりかご(所有物)」に固定する。
精子を出す性(男性)を「兵士(消耗品)」に固定する。
その両方をコントロールして受精卵を操作する「中間的な性」だけが、社会の果実を独占する。
という、完璧な階級固定が達成されている。
つまり、「生物学的な合理性」ではなく、「他者を徹底的に搾取し、差別するための道具」として、3つの性が機能している、ということになる。
現代社会は豊かになった。ゆえに、「生存や労働力確保」のための生殖が必要なくなった(あるいは経済的に困難になった)結果、子供を産み育てるという行為が、一部で「自己の物語の完成」や「親としてのアイデンティティ(承認欲求)の獲得」に変質している「側面」は否めないと思う。
アザド帝国における「中間的な性」も同じ。
彼らは、愛や生命の神秘のために子供を残すのではない。
自分たちの「支配階級としての血統と優位性」を維持し、システムを再生産するために生殖を利用している。つまり、「自らの地位(アイデンティティ)の誇示」だと思う。
主人公「グルゲー」が、ユートピアの退屈しのぎに「ゲームでの承認」を求める姿と、アザド帝国が「歪んだ社会システム」で自己の権力を誇示し続ける姿は、一見真逆に見えるけど、実はどちらも「満たされた」、あるいは固定された世界の中で、人間(あるいは知的生命)がいかにして「自己の承認欲求」や「存在証明」を満たすかという、同じ病理の表裏一体な気がする‥。
未来の想像をする時って、今生きている世界の価値観を基準に考えてしまいがち。例えば、貨幣の価値に意味をなくした世界‥をリアルに想像するのはかなり難しい。そう思うと、全てが満たされた世界で、人間の自己承認欲求なんてあるのかな?どうなんだろう。
9.
グルゲー:ドローンのモフリンを、コンタクトに戻してくれ。それがアザド帝国へ行く条件だ。
コンタクトの使者ドローン:そんな身勝手な‥。わかりました。
ゲームに関して注意事項があります。
アザド帝国のアザド人は、危険です。
カルチャーの人間は、脳内にAI(マインド)によって「神経レイス」という網を張り巡らせていますね。
つまり、死んだ瞬間に「脳の記憶や意識データが、近くの宇宙船やバックアップ先にワイヤレスで自動転送される」というシステムです。
よって、肉体が死んでも、後から新しいクローン肉体にデータを戻して「復活」できるのです。
しかし、アザド帝国では、この転送バックアップを遮断される(あるいはそんな技術がない)ため、「ここで死んだら、データもろとも私の意識はこの宇宙から永遠に消滅する」という本当の死が存在します。
命に対する考え方が違います。
何が起きるか予測不能なので、グルゲーの身を守るために、戦闘能力の高いドローンを一体同行させます。
グルゲーは:ゲームをリアルに体感するためには、なるべくアザド人と同じ状態でいなければいけない。安全という保証はゲームの邪魔だ。戦闘能力の高いドローンはやめてくれ。
コンタクトの使者ドローン:ええ。‥何があっても知りませんよ‥。
帝国に向けて出発の日。
グルゲーを脅したドローンのモフリンがやってきて、「コンタクトに返す手筈を整えてくれて、ありがとう」と伝えた。
四千年生きている親友のドローンチャムリスは、グルゲーに「小包」をプレゼントした。ひとりになったら開けてと、言って。
ここで第一章が終わり⌯᷄︎ ̫ ⌯᷅︎
なんか最初は退屈だったけど、少しおもしろくなってきた。
とにかく好きなところは、劣等遺伝子のためカルチャーから追放されたドローン「モフリン」!
もの凄くセコくてドロドロした人間(ドローン)なのが最高に皮肉が効いていて大好き!
あと、主人公グルゲーのギャンブラーで危ないところ。わたしはこういう男性がすごく好き!
生まれながらに「死」と無縁のカルチャーっ子なのに、どれだけ「本物のリスク」に飢えてるの?って感じてしまう。
死ぬかもしれない恐怖、すべてを失うかもしれないヒリヒリ感があって初めて自分が「生きている」と実感できる!それって、すごく狂ってて大好き!
