日記
イアン・バンクス「ゲームプレイヤー2章7〜8」
7.
グルゲーはゲームに勝ち続けた。
生きている‥実感‥を味わうグルゲー。
アザド帝国に暗殺されてもいい‥
このまま‥この‥生きている実感を‥続けたい。
しかし、次のゲームで「肉体の賭け」を持ち出される可能性は大。
それは‥無理だ。でも、ゲームしたい‥。
護衛ドローンのフレールは、グルゲーに「直径2ミリくらいの丸い玉」を渡す。
これを舌の裏に貼り向けてください。
「ビーコン&転移装置」です。
舌下に移植されます。
アザド帝国にはバレません。
もしもグルゲーが勝負に負けて、肉体を差し出さなくてはいけなくなった時、母船(制限因子号)がアザド帝国まで救出に来ます。しかし、救出まで2時間かかります。
緊急時、ビーコンがグルゲーの居場所を特定します。その際、舌に鋭い痛みがあるでしょう。痛みを感じたら二秒間の間に、胎児の姿勢をとってください。頭は膝の中に入れてください。グルゲーの三メートル以内のものは、母船(制限因子号)に転移されます。ただし、一回きりです。
グルゲー:本気なのか?
護衛ドローンのフレール:真剣です。こんな状態に陥ったのもあなたのせいですよ。大変不快です。
グルゲー:心配するなよ、ドローン。肉体の賭けに、君の肉体を入れないように頑張るからさ。
護衛ドローンのフレール:いや‥転移の方ですよ。8千3百万回に一回は、別の次元に投げ出されるという‥。
グルゲー:まじか。まあ、でもさ、このアザド帝国で飛行機事故に遭うより低い確率だろう?大丈夫だろう。
護衛ドローンのフレール:(不安な色:表情)
グルゲー:(心の声) 母船が助けに来るまでの2時間。もしも苦痛を味あうことがあれば、神経を遮断すればいい。何も痛みを感じない。それに、肉体をボロボロにされたって、意識は安全な惑星に保管してあるし、母船に戻れば高度医療で元通りさ。ああ‥ゲームのことを考えると、性的興奮に近いものを覚える‥。
翌朝、ゲーム初日。
グルゲーの相手は、アザド帝国の最高裁判官判事だ。勝負中に裁判官判事は肉体の賭けを提案した。「あなたは私に負けたら、睾丸とペニスを差し出さねばなりません。もちろんわたしも。」
どうする‥俺‥頑張ったではないか‥俺‥もうここで十分だろう‥ペニス‥性器は一番早く育つ‥俺は頭がおかしいのか‥痛みは遮断すればいい‥母船も助けてくれる‥
「はい!」とグルゲーは返事をする。
裁判官判事とグルゲーは一礼をしてこの場は収まる。
(ほわああ⌯᷄︎ ̫ ⌯᷅︎笑 「肉体の賭け」を挑まれた瞬間。普通なら恐怖で逃げ出すか、転移ビーコンをもらった時点で棄権を考えるはずなのに‥狂ってやがる笑
まあでも、「性的興奮」と「本物の破滅リスク」って似てますよね?(あれ?ちがう?)あの生を感じる興奮ってなんでしょうね。すごくわかります。常に脳内で快楽物質が放出されるカルチャー人のグルゲーも夢中になるのだから‥。)
8.
護衛ドローンのフレール:今から母船(制限因子号)を呼びましょうか?「肉体の賭け」を承諾した場合、政府に監視されます。棄権もできません。よって、私は今夜の外出はやめました。
グルゲー:(ドローンを無視するグルゲー)そうか、このアザド帝国こそが、ゲームそのものなのか‥。よくよく考えると‥僕がゲームに勝えば、相手の最高裁判官判事の睾丸とペニスが切り落とされる‥しかも僕と違って再生不可能。家族や地位はどうなる‥かわいそうに。しかし大きな問題がある‥僕は負けたくない‥!母船のマインド(人工知能)に相談してみよう。
マインド(人工知能):まあ勝つ方法は〜(省略)ですね。
グルゲー:なるほど、君が提案した方法はさっき自分で考えたことだ。僕が負けた場合、君(母船)は助けに来るだろう。でも本当は、僕がこのまま最後までゲームを続けた方がいいと思っているんじゃないか?その方が、コンタクトとアザド帝国の関係は良好では?
マインド(人工知能):切り落とされたグルゲーの睾丸とペニスの処置にアザド帝国が関与して欲しくありません。何故なら、グルゲーの本意でなくとも、グルゲーがコンタクトの情報を話してしまう可能性が高いからです。母船で救出をしても、最後までゲームを続けても、どちらにせよアザド帝国は怒ります。
護衛ドローンのフレール:わたしはほぼ毎晩のように外出していますね。でも毎晩、羽を持つ仲間と会っているわけではありません。明日にはこの場所から離れることになるでしょう。その前に、グルゲー。あなたにこの街の景色を見せてあげたいのです。わたしと来てください。
闇夜に紛れて二人は飛ぶ。
アザド帝国の監視人は気づかない。
二人が降り立った場所は、浮浪者の集まり。
彼らは毎日浴びるように酒を飲み酷い悪臭がした。喧嘩に巻き込まれた男は自分の血の海で死んだ。妊娠中の女は腹を殴られていた。無防備な老人は殴られ続け、通行人は老人の顔を踏む。その横で、死刑見物のチケットを嬉しそうに購入する男。四肢のない娼婦の女。
グルゲーは「帰りたい!」と叫び、ふたりは住処に帰ってきた。
護衛ドローンのフレール:もうひとつ見せたいものがあります。このチャンネルを見てください。これは、レベル2のAVです。国家権力者のみ見ることを許されます。ご覧の通り、女性、頂性(権力者)が異星人の性器を陵辱しています。では、レベル3をみましょう。大量の性ホルモンと幻覚作用の薬物を投与された男、国家の敵という名目の臨月の女、ナイフを持つ頂性(権力者)。
グルゲーはチャンネルを消した。
護衛ドローンのフレール:あのチャンネルはライブ配信なんです。今、警察署の地下室か、刑務所内で行われています。
グルゲーがこれまで対戦してきた相手の大部分は、大脳皮質に作用するアンフェタミン(覚醒剤の一種)などのドラッグを使って、能力を底上げしていました。
このアザド帝国の本当の姿は、華やかな建物の影で、多くの人々が自由を奪われ、子供の尊厳すら踏みにじられている歪んだ社会なのだということを、グルゲーに知ってもらいたかったのです。
ああ、またお説教になってしまいました。若気の至りだと思って許してください。おやすみなさい。
眠れないグルゲーは、自分が今まで対戦したゲームの録画をみる。そこには、脳内の快楽物質を一切放出せずにゲームをしている自分の姿があった。
と、8まではこんな感じの話⌯᷄︎ ̫ ⌯᷅︎
グルゲーが「ペニスと睾丸は再生できるからいいや」「生きてるぜ!スリル最高」と、お坊ちゃんの安全圏からゲームを消費しているのを見て、フレールは我慢できなかったんだろうな。
だから、わざわざアザド帝国の監視の目を盗んで、おぞましいスラム街や、国家権力者が他者を人間扱いせずに虐殺・陵辱している裏チャンネル(ライブ配信)を見せたのでしょうな。母ちゃんだ‥。
「ここは、あんたが脳汁を出すための、ただのゲーム盤じゃない!あんたが戦っている相手は、このおぞましい搾取システムの上に君臨し、ドラッグで脳をブーストして、負けたら本当に人生が終わる本物の悪党(あるいはその犠牲者)なんだ!」ってね。
