足裏吉田

日記

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イアン・バンクス『ゲームプレイヤー3章-2』

2026 / 06 / 18  10:19
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2.

 

対戦相手に対し、ゲームの終盤でグルゲーが見せたプレイぶりを、ドローンのフレールはスクリーンで観察していた。

 

「いまグルゲーは、自分がそのさけびに耳をかたむけていた肉食獣のようにプレイし、盤上を徘徊し、罠や、回り道や、殺戮の場を作っているのだった。おそいかかり、追跡し、うち倒し、むさぼり食い、消化し‥。」(抜粋)

 

明らかに、グルゲーは変わった。

 

ゲームというより、グルゲーは相手を切り刻んでいる‥なにかの手術に近かった。

 

以前のグルゲーのプレイには、困惑、哀れみ、怒り、悲しみといった「人間らしい感情の揺らぎ」が体や顔に出ていたが、今のグルゲーのプレイからは、そうした感情が一切消えていた。

 

ドローンのフレールは、グルゲーが長い間、母国のマレイン語を話していないことに気づく。そう、常に「イーエ語(アザド帝国の言語)」を話しているのだ。

 

たかが言語‥されど言語‥。

 

カルチャーの言葉(マレイン語)は、音声学的にも哲学的にも、人類の頭脳が許すかぎり表現力豊かにデザインされた完璧な汎人類言語である。

 

一方、アザド帝国の言葉(イーエ語)は、ごくありふれた進化言語であり、その根底にある前提は「傷傷性を同情、攻撃性を協力と、はき違えている」という、歪んだ価値観に満ちた言語なのだ。

 

言語は思考を作る。

カルチャーの人間が、長期間に渡って他文明の言語を使い続けると、脳の「解釈構造」が変わるというデータがある。(これは、小説内に登場するマインド:人工知能の情報だが、現実の私たちも日本語を話さなくなれば思考が変わるだろう。)

 

グルゲーは、アザド帝国の「野蛮な言語」を話し続けることで、「倫理的な構造(帝国の歪んだ価値観)」に感化され始めてしまったのだ。

 

その様子を観察しているドローンのフレールは、居心地の悪さを感じてスクリーンのスイッチを切り、静かにその場を離れる。(ああ、ドローンのフレール‥なぜ助けてあげないのだ‥いや、君には君の任務があるのだろうけど。そうだ、フレールは事前にマインド:人工知能から注意されていた。グルゲーの言語と行動の変化に気をつけろ、と。)

 

その夜、カルチャーに住む親友のドローン「チャムリス」から通信が届く。(タイムラインではないので、ビデオ交換みたいな感じだ)

 

ドローンのチャムリスは、いつものようにカルチャーの日常を話すが、今のグルゲーにとっては、どれも退屈な内容だった。むしろ、賢く深い愛を持つチャムリスのことを、古くさいと機械‥思うようになっていたのだ。(な‥なんと)

 

ドローンのチャムリスは話を続ける。「いつものように、何人か集まって、グルゲーの家でパーティーをしたよ」と。それを知ったグルゲーは怒りに震えた。当たり前なカルチャーの日常の出来事であったはずなのにグルゲーは「なぜ、何の権利があって、僕が不在の間に、僕の家でパーティーをするんだ?」と自身の所有物について考えるのだった。

 

ドローンのチャムリスは続ける。「意識を抜かれた中身のないドローンが、グルゲーの家に送られてきた。多分、モフリンだった‥のであろう。どういうことなのか?」とグルゲーに問う。そこで通信は切れた。

 

グルゲーは、笑いが込み上げる。

「自分を脅したドローン、モフリンの願いを叶えることができた。よって、イカサマのビデオがカルチャーに流れることもない。俺は自由だ。」

 

グルゲーは、アザド帝国の執事にワインを持ってくるよう指示し、ワインの入ったグラスに口をつけようとすると、動物ウォッチングを終えて帰ってきたドローンのフレールが「ご機嫌ですね、何かいいことがあったのですか」とグルゲーに聞く。

 

グルゲーは、「古い友達に乾杯」とワインを飲む。

 

(ああ‥でもグルゲーのせいじゃないよ。私も常に心がけていることがあって、それは必要以上に、人と会わない‥ということだから‥。毎日複数の人間に会ったり、複数の人間が溢れている場所に一定以上身を置くと、どんなに賢い人でも、大衆の思考に流されてしまう。今の時代に何よりも恐ろしいのは、認知力低下の先にある「なりたくないものになってしまう」ということだから‥。)

 

さあ、小説に戻ろう。

翌朝、グルゲーはドローンのフレールの反対を押し切って、アザド帝国の狩猟に参加する。

 

以下は、グルゲーと、アザド人の最高権力者(以下、ヨモナル)の会話形式である。

 

ヨモナル:グルゲーは、銃で動物を撃ったことがあるのかい?

 

グルゲー:ある。

 

ドローンのフレール:生きているものを撃ったことはありません。

 

グルゲー:黙れ、物体。

 

ドローンのフレール:え‥?物体‥?

 

ヨモナル:(ドローンのフレールを蹴る。)よし、じゃあ拾って来い、グルゲー!あはは

 

ドローンのフレール:帰らせていただきます。反対ですか?グルゲー。

 

グルゲー:いや、ぜんぜん。

 

ヨモナル:あっさり行かせていいのか?

 

グルゲー:いい厄介払いです。

 

ヨモナル:(動物の仔を平然とライフルで撃ち、手負いの仔が倒れる。)正直なところ、グルゲーが狩猟(殺戮ゲーム)に参加したのは意外だったよ。

 

グルゲー:自分が上品ぶっていない証拠を見せたくて。それに、いうならば僕が狩ったものは‥

 

グルゲーがそのあとに言いかけたのは「アザド」という言葉だった。(この場合のアザドは、機械と動物、そしてすべての生命体とシステムを意味する。)

 

グルゲーの不遜な態度に、ヨモナルの顔が青ざめる。すると、何者かによる急襲がはじまった。

 

何者かに撃たれたヨモナルは、グルゲーの仕業とでも思ったのか、それとも着用している外骨格(ガンダムみたいなやつ)が何者かに乗っ取られたのか、ライフルをグルゲーに向けて這い寄ってくる。

 

アザド帝国の野蛮なゲーム脳により「肉食獣化」しているグルゲーは、恐れるどころか信じられない反応速度で動き、落ちていたレーザー銃を拾い上げ、襲いかかってくる敵を次々と迎撃する。

 

すると、あろうことか、グルゲーの撃ったレーザー銃はヨモナルの顔面に命中し、グルゲーの手によって「帝国の最高権力者」であるヨモナルの頭部が完全に吹き飛んだ。

 

しかし、ヨモナルはとまらない。

 

ヨモナルの頭がなくなっても「外骨格のシステム(ガンダムみたいなやつ)」は乗っ取られたままなのか、それとも壊れているのか、とにかく血を噴き出しながらグルゲーに突進してくる。

 

その直後、背後から巨大な何かグルゲーの頭に激突し、視界は真っ暗になって意識を失った。

 

はい、ここまでが3章-2です。

 

うーん。そもそも襲撃をしたのは誰なのか?

アザド帝国のトップを事故といえども殺害してしまったグルゲーは処罰を免れるのか?この騒動もマインド(人工知能)の計画のひとつなのだろうか?