日記
イアン・バンクス『ゲームプレイヤー3章-3』
3.
何かの「物体」が頭に衝突して、気を失っていたグルゲーは、自室で目を覚ました。
顔の上を飛んでいるのはドローンのフレールだが、グルゲーは「脳震盪」を起こしていてドローンのことがよく分からず記憶が曖昧になるが、徐々に回復しはじめる。
ドローンのフレールによると、「グルゲーの頭に衝突したのは、火の惑星の動物です。その動物はヨモナルにも襲いかかり‥そして、グルゲーがヨモナルに発砲した様子も録画されています。」
「誰かが、ヨモナルの外骨格を乗っ取っていたようです。皇帝が会いたがっています。しかしグルゲー、あなたは嘘をつかねばなりません。もう少し体調が復活してから‥はいはい、わかりました、行きますよ。」
病み上がりのグルゲーは、ドローンのフレールの忠告を無視して皇帝と会う。
皇帝は謝罪と事件の真相を話す。
「朕は申し訳ないと思っている。首謀者は、朕の恩師であるハミンであった。ハミンが服用している長寿薬を没収したので彼は4〜50日後に死ぬであろう。それよか、朕はグルゲーとゲームがしたい。」
グルゲーも「皇帝とゲームをしたい」という意志を伝え、その場を去った。
グルゲーが自室に戻ると、ドローンのフレールが皮肉なしでこんな発言をするので驚く。「大丈夫ですよ。何かの時は、私があなたを守りますから。」
(むむむ。外骨格を乗っ取ったのは、マインドではないか‥?グルゲーに「皇帝とのゲームを辞退するよう説得した」皇帝の恩師ハミンは、皇帝にとって邪魔だったのでは‥?皇帝はゲーム盤でグルゲーを倒すことで自身の力を示せるのだから‥)
翌日は、皇帝とのゲーム初日。
グルゲーは「自分の中にあるナニカが消えてしまったことに気づく。その消えてしまったナニカがゲームに重要な気がするのに‥」とモヤモヤ。
今日のゲームは終わって自室に戻ると、ドローンのフレールはこう言う。「部屋に取り付けられていたアザド帝国の盗聴器機能を消しました。専門じゃないので苦労しましたよ。これで、グルゲーの故郷であるマレイン語を話しても大丈夫ですよ。ああ、もっと喜んでくれると思ったのにな。」
グルゲーは、懐かしき響きのマレイン語でドローンのフレールと夜通し話した。
翌日、皇帝とのゲーム再開。
ここで、ゲームの勝率を話そう。
たぶん、グルゲーが勝つ。
なぜグルゲーの勝利がほぼ決まっているのか。
それは、グルゲーが「アザド帝国そのものの正体を理解した」からだろう。
簡潔にまとめると、皇帝のゲームスタイルは「アザド帝国の思想」そのものである。(勝利、支配、序列、強者が弱者を従わせる、中央集権的)
一方グルゲーは、カルチャーの思想(流動的、柔軟、多様、自己組織化)を戦略としてゲームを進めた。
要は、カルチャーという国の思想にアザド帝国が負けそう‥皇帝の人生観そのものが否定された‥という解釈にもなる。
そう考えると、カルチャー(マインド)がなぜ、グルゲーをアザド帝国に送り込んだのか、分かる気がする。
たぶんカルチャーの計画は、皇帝にゲームで勝つことによって「アザド帝国そのものを精神的に解体すること」帝国のスタイルそのものである皇帝が敗北すれば、その「統制システム」は根底から崩壊するから。
「やったー!俺は皇帝に勝つぞー!」と手放しに喜べないグルゲーは、わかっているのでしょう。自分が今やっていることは、ひとつの「文明を滅ぼす」一部になっているのだということを。
はい、ここまでが第3章-3です。
