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イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳(29)利己的なマインドがおもしろい(゚∀゚)
8章 Ⅰ
それを説明する一般的な方法は「比喩(アナロジー)」を用いることだった。子供の頃、この概念が初めて導入されたのもこの方法だった。
感想:おおー、Excessionの世界観の核心となる宇宙論を解説するシーンですな(゚∀゚)わくわく
想像してみてほしい。君が宇宙を旅していて、ある惑星に行き着いたとする。
その惑星は非常に大きく、ほぼ完全に滑らかで、そこには原子1層分で構成された生命体が暮らしている。
実質的に「2次元」の存在だ。これらの生物は私たちと同じように生まれ、生き、死に、そして完璧な知性を備えているかもしれない。
彼らは最初、3次元という概念も把握も持ち合わせていないだろうが、自分たちの2次元の世界で何不自由なく生きていくことができる。
彼らにとって「線」は世界を隔てる「壁」であり(あるいは端から見れば「点」に見える)、閉じた「円」は「開かない鍵のかかった部屋」のようなものだ。
もし彼らが、自分たちの惑星(彼らにとってはそれが彼らの全宇宙だ)の表面を極めて高速で移動できる機械を作ることができたなら、彼らは惑星をぐるりと一周して出発点へと戻ってくるだろう。
あるいは理論計算によってそのことに気づく可能性の方が高いかもしれない。
いずれにせよ、彼らは自分たちの宇宙が「閉じて」おり、「曲がっている」こと、そしてたとえ実際に行き来する手段は持たなくとも「第3の次元(3次元)」が存在することを理解するだろう。
円という概念に親しんでいる彼らは、その宇宙の形状に新しい言葉を発明するのではなく、おそらく「ハイパーサークル(超円)」と名付けるはずだ。もちろん、3次元の人間はそれを「球体(スフィア)」と呼ぶ。
3次元に住む人々にとっても状況は似ていた。どんな文明であれ高度化し始めると、ある時点で気づくのだ。
宇宙空間に向かって完璧な直線を描いて進んでいったとしても、最終的には出発した場所へと戻ってきてしまうということに。
なぜなら、彼らの3次元宇宙は実際には「4次元の形状」をしているからだ。球体という概念に親しんでいるため、人々はその形状を「ハイパースフィア(超球体)」と名付ける傾向があった。
感想:2次元と3次元の比喩を言うてますね。平面世界で生きる生き物たちにとって「3次元(球体)」って認識しにくいですよね?それと同じで私たち3次元の生き物たちにとっても「4次元(超球体)」の構造はちょっと理解しにくい・・というような話をしておられます。
社会の発達の概ね同じ段階で、2次元の生物が住む惑星とは異なり、宇宙空間は単にハイパースフィアへと曲がっているだけではなく「膨張」もしているということが理解された。
誰かがストローの先から息を吹き込んでいるシャボン玉のように、徐々にサイズを増しているのだ。
十分に離れた場所から見ている4次元の存在からすれば、3次元の銀河は膨張するシャボン玉の表面にプリントされたちっぽけな模様のように見えるだろう。
ハイパースフィア全体の膨張によって、各銀河は基本的に他のあらゆる銀河から遠ざかっているが――シャボン玉の膜に見られる色彩の渦や輪のように――その表面上を滑り、移動することができる。
もちろん、4次元のハイパースフィアには、外部から空気を吹き込むストローに相当するものなど存在しなかった。
ハイパースフィアは、まるで4次元の爆発のように自力で膨張していた。
つまり、かつては単なる「一点」――まさに爆発したちっぽけな「種」――に過ぎなかったことを意味していた。
その爆破が物質とエネルギー、時間、そして物理法則そのものを創造――あるいは少なくとも生成――したのだ。その後、膨大なる時間と膨張の中で冷却され、合体し、変化をとげることで、人々が周囲に見ることができる冷却された秩序ある3次元宇宙を生み出した。
感想:まあ、その四次元(超球体)が大きくなっているようです。銀河同士は遠ざかり、空間そのものが伸びている様を「シャボン玉」のように例えているのね。
科学技術の進んだ社会の進歩の過程において、時としてハイパースペース(超空間)への限定的なアクセスを得た後、あるいは大抵は理論的な研究の後に、その「シャボン玉」は唯一無二の存在ではないということが理解されるようになった。
膨張する宇宙はより大きな宇宙の内部に存在し、その宇宙もまたさらに大きな直径を持つ時空の泡によって完全に包み込まれていた。
それは自分がたまたま存在する宇宙の内部においても同様だった。その中には、複雑に包装された球状のプレゼントを包む紙の層のように、より小さく若い宇宙がいくつも入れ子状に存在していたのだ。
同心円状に膨らむあらゆる宇宙の真中心には、それらが生まれた場所が存在した。そこでは時折、宇宙の火の玉(ファイアボール)がパッと明かりを灯すように発生し、再び爆発を起こして新たな宇宙を生み出していた。
その連続する創造の吐き出しは巨大な内燃機関の爆発のようであり、各宇宙はその脈動する排気ガスのようなものだった。
話はそれだけにとどまらなかった。
7次元以上の次元における複雑な構造では、3次元宇宙を1つの「円」として記述できる巨大なトーラス(円環体)が存在し、それが他の入れ子状のトーラスを含み、また含まれ、さらにはそうしたメタ現実(meta-Realities)の全体集団の存在を示唆していた……。
感想:手塚治虫氏も言うているように、宇宙の中には小さな宇宙があり、宇宙の外には大きな宇宙がある・・【巨大宇宙ー私たちの宇宙ー若い宇宙ーさらに若い宇宙】という構造で入れ子状になっているらしい。
しかし、同心円状に連続して存在する複数の宇宙という示唆だけでも、当面は十分に圧倒的な事実と考えられていた。
誰もが知りたがっていたのは、「ある宇宙から別の宇宙へと旅する方法が存在するのかどうか」ということだった。
感想:ほら、マインドが言うてたじゃん。私たちの宇宙が寿命を迎えたら「新しい宇宙」に行かなければ「永遠の命」は手に入らないと。(日本人からすると不思議な思考だ)
どの宇宙のペアの間にも、単なる空虚なハイパースペース以上のものが存在した。それは「エネルギー・グリッド(エネルギー格子)」と呼ばれるものだった。
感想:たたくさんの宇宙は、宇宙同士で繋がっていないと言うてますね。間にエネルギーグリッドというものがあるらしい。(へえー)
それは有益な存在であり、その力線は宇宙船の動力源として利用され、兵器として使われたこともあった。
感想:なんかものすごい高エネルギーの「境界膜」なんやろな。船はこの「エネルギーグリッド」という高エネルギーを使って「高速移動をする」らしい。
しかし同時にそれは「障害」でもあり――これまでのあらゆる報告によれば――知的な調査を寄せ付けない難攻不落のものと証明されていた。
特定のブラックホールはグリッド、そしておそらくその先にある別の宇宙へと繋がっているように見えたが、無傷でその中に入り込んだ者も、認識可能な姿で再び姿を現した者もいなかった。
ホワイトホールも存在した。数百万個の太陽に匹敵するパワーで宇宙へとエネルギーの濁流を撒き散らす極めて狂暴な源であり、それらもまたグリッドと繋がっているように見えた……。
しかし、その混沌とした吹き出し口から物体や船、あるいは「情報」すら現れるのは一度も観察されたことがなかった。
浮遊する細菌すら、一言の言葉も、言語すらもなく、ただ雪崩を打つエネルギーと超高エネルギー粒子の脈絡のない悲鳴(スクリーム)が存在するだけだった。
感想:まあグリッドエネルギーは、船の高エネルギーとしては使えるけど、他の宇宙に行く際は「壁」になって邪魔らしい。
あらゆるインボルブド(関与文明)が抱き、実質的にすべての高度技術文明がほぼ宗教的な信仰をもって執着していた夢は、「いつの日か宇宙から別の宇宙へと旅し、それらの膨張する泡の間を上へ下へと行き来できるようになること」だった。
感想:できないからこそ燃えるんだぜ!
そうすれば――他の何よりも――自分の宇宙が辿る最終的な破滅の運命を免れることができるからだ。
それを成し遂げることこそが、真に「昇華(サブレイト)」し、真に「超越」し、究極の「凌駕(Surpassing)」を完遂して最大の力を獲得することに他ならなかった。
リバー級汎用接触船(GCU)『変化に対応しやすい運命(Fate Amenable To Change)』は宇宙空間に佇んでいた。
感想:はじめまして、「変化に対応しやすい運命」号さん。
それはエクセション(Excession/超絶存在)を基準点とすることで、局所的に静止していた。エクセションも同様に静止しており、恒星エスペリを基準点としていた。
その実体(エクセション)は数光分離れた場所に位置し、リアルスペース(実空間)の織物(スケイン)の上に佇む特徴のない「点」であり、そこからは撚り合わされ圧縮された時空の布地による、同様に退屈な見た目のストランド(筋)が1本、下の層のエネルギー・グリッドへと伸び……そして2本目のストランドが上の層へと伸びていた。
感想:ほーう。つまり、Excessionは他の宇宙もしくは宇宙層に接続している存在なのでは?と観測しているカルチャーの船「変化に対応しやすい運命」号。
エクセションは過去2週間にわたって行ってきたことと全く同じことをしていた。つまり「何もしていなかった」のだ。
『変化に対応しやすい運命』は、その実体に対する標準的な初期計測と観察をすべて完了していたが、それ以上の行動は起こさないよう極めて強く勧告されていた。
探査機(プローブ)や小型艇、ドローンによる直接的な接触すら試みてはならなかった。理論上は、指示を無視することもできた。
それは独立した一隻の船であり、自らの意志で判断することができた……。しかし現実には、自分よりも多くを知らないまでも、自分より物事を熟知している者たちの助言に耳を傾けなければならなかった。
感想:よくわからないものには近づくな・・ってことですな。
集団責任。別名「責任の分担」である。
感想:ははっ、マインド同士の責任の擦り付けあいですな。
そのため、あの興奮に満ちた初期段階――自分が注目の的となり、誰もが自分が発見した「それ」について教えられる限りの情報を知りたがっていた時期――が過ぎ去った後、船がしていたことといえばここに留まり続けること、それがある意味では依然として事態の中心にいることでもありながら、同時にどこか「無視されている」ようにも感じていた。
感想:ぐふぐふ(*´Д`)ハァハ そうね、「変化に対応しやすい運命」号は今ものすごく宇宙中から注目されている任務をしているんだ・・!マインドたちが責任のこすり合いで自分に指示が降ってこないゆえに暇なんだよな・・だから無視されているような気持ちになるんだよな・・かわいい・・(興奮)
報告書(レポート)。船は報告書を提出した。報告書に違いを出したりオリジナリティを持たせたりする努力など、ずっと前にやめていた。
感想:ごふふふ(興奮)自分は特別だと思われたいよな・・(´・ω・`)
船は退屈していた。同時に、絶え間なく底流し続ける「恐怖」の感情も意識していた。その感情は、自らの気分に応じて、苛立ち、恥じらい、あるいは無関心へと目まぐるしく変化する本物の感情だった。
船は待った。船は監視した。
船の先で、その周囲で、モジュールや衛星からなる小さな艦隊の大部分、宇宙航行能力に優れた数機のドローン、そしてこの目的のために特別に構築された多様な専門機器が漂い、同様に監視し、待機していた。
感想:おもしろいよな。一応そのExcessionは別の宇宙に行けるかもしれないすごいものかもしれないのに、それを目の前にして「暇」を感じることができるなんて人間だよなー、じゃなくてマインドだよなー。
船体内部では、人間の乗組員たちが状況について話し合い、船自体のセンサーや分散されたマシン群の小さな雲から送られてくるデータを監視していた。船は人間たちにプレイさせる精巧なゲームを作り出すことで、いくらかの時間を潰した。
感想:ww人間の無能さを感じるシーン。「あくびをする天使」号なんて長期休暇をとって離職率を気にしてるんだもんな。
その間も、船はエクセションの観測を続け、周囲の宇宙空間をスキャンしながら、他の船の第一陣が到着するのを待った。
カルチャーの船(『変化に対応しやすい運命』)がエクセションに偶然出くわしてから16日後、そしてその発見が公表されてから6日後、最初の船が現れた。その存在は最初、『変化に対応しやすい運命』のメインセンサー群によって感知された。
GCU(汎用接触船)は警戒状態を一段階引き上げ、起きている事態を『エシックス・グラディエント(倫理勾配)』と『ノット・インベンテッド・ヒア(当家不案出)』に通信し、追跡スキャナーを接近する信号に固定した。
感想:「倫理の勾配」号と、私の推しである「ここでは発明されない」号ですな。
遠隔センサープラットフォームの試験的な再配置を開始し、礼儀正しい慎重さとアラートを引き起こす緊急性との間でうまく調和していることを願う速度で、エクセションの安全限界の周縁に沿って新参者の方へと移動を開始した。
船は接近してくる船に向かって、標準的な問い合わせ信号のバーストを送信した。
その船は、ゼテティック・エレンク(探索者同盟)の「スターゲイザー(星見)氏族」第5艦隊に所属する探索船『ソーバー・カウンセル(沈着なる助言)』であった。
『変化に対応しやすい運命』は安堵した。
エレンクは味方(友人)だったからだ。
感想:はぁ・・思い出すね・・悲しいあの日を・・。エレンク派のドローンシセラがアフロント人に殺されたあの宇宙を・・。ちなみにエレンク派は自ら進んで他者や未知の存在に適応する思考を持つ探索者たち。
身元確認が完了すると、二隻の船はカルチャー船が設定したエクセションからの安全限界の外縁部で、局所的に静止しながらわずか数十キロメートル離れた場所で合流(ランデブー)した。
『――歓迎するよ。』
『――感謝する……なんて聖なる静止状態(ステシス)なんだ。あの物体はグリッドに繋がれているのか、それとも私のセンサーがおかしいのか?』
『――もし君のセンサーがおかしいのなら、私のものもそうだ。圧倒的だろう? 1〜2週間もただ座ってあれを見つめ続けていれば、一気になんでもなくなるがね。私の言葉を信じてくれ。君が単なる観測のためにここに来たのだといいのだが。私がしているのはそれだけだ。』
『――「大物(ビッグガン)」たちを待っているのかい?』
『――その通り。』
『――彼らはいつ到着する?』
『――それは機密事項だ。エレンクの外部には漏らさないと約束してくれるか?』
感想:友人には口が軽い「変化に対応する運命」号。
『――約束しよう。』
『――中型SV(システム母船)が12日後にここに到着する。最初の汎用SVは14日後、それからは1週間にわたって数日おきに1隻、その後は1日に1隻、やがて1日に数隻だ。その頃には他のインボルブド(関与文明)のいくつかも姿を現し始めているだろう。行動を起こす前にSVたちが何を定足数(決議に必要な数)とみなすかは聞かないでくれ。君たちの方はどうなんだ?』
『――オフレコで話せるかい、二人だけで?』
『――いいだろう。』
『――こちらに向かっている別の船がいる。あと2日の距あ、離だ。艦隊の残りは離れていくのをやめたものの、依然として態度を決めかねている。私たちはこのあたりのどこかで船を一隻失ったのだ。『ピース・メイクス・プレンティ(平和は豊かさを生む)』という船だ。』
感想:えっ、「平和は豊かさを生む」号が死んだのか?!あ、そうだった思い出した。エレンチ派は仲間思いでさ、みんなで探したよね。「平和は豊かさを生む」号はあのExcessionに近づきすぎたんだっけ、生きてるのかな・・?
『――ほう。本当に? それはいつ頃のことだ?』
『――28.789から805の間のいつかだ。』
『――ということは、これはまだエレンク内での秘密情報なのか?』
『――そうだ。私たちは2週間にわたってこの宙域をできる限り捜索したが、何も見つからなかった。君は何によってここへ導かれたのだ?』
『――私のホームGSV(巨大システム母船)である『エシックス・グラディエント』からの提案だよ。それは841年のことだった。「アッパー・リーフ・スワール・クラウド・トップ」の領域を調べるよう私に求めてきた。理由は示されなかった。そこへ向かう途中で、これに鉢合わせしたというわけだ。私の知っているのはそれだけだ。』
(そして『変化に対応しやすい運命』は、その提案について冷ややかに考えを巡らせた。クラウド・トップの領域はここから遥か遠く離れていたが、そんなことはどうでもよかった。重要なのは、クラウド・トップ内で向かうべき比較的一定の正確な座標が与えられていたこと、そして向かう途中で何か興味深いものがないか警戒するようにという、これ以上ないほど微妙なニュアンスのヒントが与えられていたことだ。
ホームGSVからの提案を受け取った時の位置を考えれば、そのルートは必然的にエクセションの近くを通ることになる……。エレンクが自船を失ったかもしれないと知った日付と、今となっては一種の「仕込み(セットアップ)」のように見え始めている任務へと自分が派遣された時間との間には、36日間の空白があった……。その間に何が起きたというのだろう?
エレンクの船のどれかがカルチャーへ情報を漏らしたのだろうか? だとしても、それだけの情報漏洩がなぜこれほどの正確さをもたらしたというのか? 1隻の船に過ぎない自分が、このくそ忌々しいエクセションにほぼ正面から突っ込んでいったのに対し、エレンクはフル艦隊の8分の7もの戦力を投じて2週間もここに留まりながら、何も発見できなかったというのに?)
感想:ほほう。まるでExcessionに直突するような作為的なものを感じますなあ。そんな暇そうな任務を与えれらるなんてまさに無視されているような感覚に陥るぜ。
『――私の提案を促したのが何だったのか、遠慮なく『エシックス・グラディエント』に聞いてみるといい。』と船は付け加えた。
『――感謝する。』
『――どういたしまして。』
『――私はエクセションへの接触を試みたい。ここに私たちの同志が消失した場所かもしれない。少なくとも何らかの情報を持っている可能性がある。最悪の場合――あるいは私たちが知り得る限り――私たちの船はまだあの内部にいるのかもしれない。私はあれと話し合いたい。もし応答がなければ、ドローン船を内部へ送り込みたいと考えている。』
感想:そうそう、「平和は豊かさを生む」号はドローンを飛ばした後に何かあったんだよね。
『――正気の沙汰じゃない。あの物体は上下両方向のグリッドに溶接(固定)されているんだぞ? そんなことができる存在を何か知っているかい? 私も知らん。GSV(巨大システム母船)の艦隊がこの周囲を囲むまでは、安心感の「あ」の字すら覚える気になれんよ。おいおい、私は君が来てくれて嬉しかったんだ。「ついに道連れができた、この孤独な見張りを過ごす間の話し相手ができた」と思っていたんだ。それなのに君は、あの物体を棒切れで突っつき回そうというのかい? 正気か?』
感想:ぐふっぎふっ(興奮)安心の「あ」すらって・・どれだけ私を興奮させるのだ・・・(;゚∀゚)=3ハァハァ
『――正気だとも。だが、あの内部で危機に瀕している仲間の船がいるかもしれないんだ。何もせずにただ座っているわけにはいかない。君はあの実体(エクセション)に接触を試みたのかい?』
『――まさか。最初の「ハロー」に対して定型の応答を返しただけだ。だが……ちょっと待て。あれが送信してきた信号を見てくれ(通信シグナルを添付)。』
『――ほらごらん。言った通りだろう! あれはおそらくエレンク由来のハンドシェイク(接続確立)バーストだ。』
『――クソ食らえ(ミートシット)だ。ああ、分かったよ。まあ、君の相棒が最初にあの忌々しい物体を見つけたのかもしれんが、もしそうなら、その船はまさに君がやろうとしている通りのことを実行したはずだ。そして消えた。消失したんだ。これがどこへ繋がる話か分かっているのかい?』
感想:そうそう。「平和は豊かさを生む」号はドローンを飛ばしたんだよ。
『――慎重に行うつもりだ。』
『――ははあ。君の同僚の船は、悪名高いほど不注意な船だったのかい?』
『――まさか、滅相もない。』
『――なら、そういうことだ。』
『――心配には感謝する。君がここへ到着した時、この宙域に争いの痕跡はあったかい? 緊急信号やディストレス(救難)信号は? 航海イベント記録射出物(VER Ejectiles)は?』
『――これならあった(物質分析・位置データを添付)。だが、もし記録上でこの件に言及したいなら、単にデブリ(破片)に偶然出くわしたように見せかけた方がいいぞ、いいな?』
『――感謝する。ああ、もちろんだ……。どうやら私たちの「リトル・ドローン(小型ドローン)」の一機が何かに巻き込まれたようだな。ふむ。なんだか……どこか二義的(副次的)な匂いがしないかい?』
『――確かに。言わんとしていることは分かる。散らかっている(すっきりしない)な。』
『――記録(オンレコード)に戻るかい?』
『――分かった。』
『――これより、当艦はあの実体への接触を試みる意向であることを通告する。』
『――頼むからやめてくれ。カルチャーの調査が実施される際、君がそれに参加できるよう私が要請を出させてくれ。関連データを共有する形で歓迎される見込みは十分にあるはずだ。』
感想:行くのはやめろと必死に止める「変化に対応する運命」号。
『――申し訳ないが、私にはこの件を急ぎとみなす独自の理由があるのだ。』
『――再びオフレコ(非記録)でいいかい?』
『――構わない。』
『――私の記録によれば、君のスペックは――実質的なあらゆる意味において――失踪した『ピース・メイクス・プレンティ』と同型(アイデンティティが同一)だな。』
『――そうだ。続けてくれ。』
『――分からないのかい? いいか、もしあの物体が、脱出したリトル・ドローンと大差ないような手間で君の同僚を危険に晒したのだとしたら、君の姉妹船の構造とマインドセット(思考様式)を少なくとも66日間にわたって精査する機会を得た今、あの物体に一体何ができると思う?』
『――私には「あらかじめ警戒している」というアドバンテージがある。それに、あの実体はまだ『ピース・メイクス・プレンティ』を完全に掌握できていないのかもしれない。船はあの内部で、包囲されながら耐えている最中なのかもしれない。おそらくあの実体の知的なエネルギーのすべては、その封鎖状態を維持することに費やされているのだ。もしそうなら、私の介入によって包囲が解かれ、同僚を解放できるかもしれない。』
『――同胞よ、それは自己欺瞞(思い込み)というものだ。あの物体の潜在的な危険性を警戒していることによって得られる極めて僅かな追加の安全性については、すでに議論したはずだ。『ピース・メイクス・プレンティ』だって、君以上に準備不足だったはずがない。君が同僚や艦隊の仲間に寄せる思いは理解できる。だが、両方向へのEグリッド(エネルギー・グリッド)接続を維持できるほどの存在が、私たち程度の能力しか持たない船によって実質的な手こずりを見せるなど、可能性の境界を大きく踏み外している。エクセションは私を煩わせなかったが、それは私があれを煩わせなかったからだ。挨拶を交わした、それだけだ。君が提案していることは干渉、あるいは敵対行為とみなされかねない。私は「観測」の義務を引き受けており、君がトラブルに陥っても助けることはできないのだ。頼む、頼むから考え直してくれ。』
感想:わろわろ。友人なのにわろわろ。助けるという気持ちが全くないあたりがおもしろいww
『――君の言い分は理解した。それでも私はあの実体との通信を試みるつもりだ。だが、ドローンを接近させる提案はしないでおこう。もちろん、これらすべてを私の乗組員(人間たち)に諮らなければならないが、彼らは大抵同意してくれる。』
『――当然だな。もし人間の乗組員がエクセションに向けて何らかの物体を送るよう提案してきたら、絶対に反対するよう強く勧めるよ。』
『――彼らがどう反応するか見てみよう。少し時間がかかるかもしれない。彼らは議論が好きだからね。』
『――私のために焦る必要はまったくないよ。』
感想:人間は議論が好きだからね。答えを求めるよりも議論している自分が好きだからね。
イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳(28)興味ないホフォエン氏のシーンはつらい。
サブリマー(昇華教徒)たちは、生命体にとって種族の選択肢としてごく当然でありながら基本的には任意である「未来の運命(昇華)」を、一つの「宗教」へと変貌させていた。
感想:(個人的な話)推しのR氏が左翼のいい奴なのだが、最近危ない方向に進んで教祖感が強まり「ああ時代だな」と感じますな。でもR氏が好きだ!私の友人もR氏が好きだ!
サブリマーたちは、誰もが「昇華(サブレイト)」すべきであり、あらゆる人間、あらゆる動物、あらゆる機械、そしてあらゆるマインド(超高度AI)は、世俗的な生活を後に残して、ニルヴァーナ(涅槃)へと可能な限り最短のコースを取り、究極の超越を目指して一直線に向かうべきだと信じていた。
感想:日本ではその辺にあるコップや物、動物でもなんでも神になってしまうんだけどな。死んだら「無」だろうからなあ・・(遠い目)
このカルトに参加した人々は、自分たちが自ら昇華して宗派のグループマインドの一つに加わり非現実を凝視する前に、1年間を費やして他人にこの教えを説き勧めようとするのだった。
感想:宗教は娯楽という名のエンタメなのだ(゚∀゚)けろっ
サブリマーたちの議論によってこの行動の価値を納得させられた僅かなドローンや他のAI、マインドたちは、そうした機会に他のあらゆるマインドがするように、最寄りの「昇華体(サブリムド・エンティティ)」の方向へと消え去る傾向があった。
感想:人間が昇華とか言うと殴りたくなる心が微かに浮かぶが、マインドが「昇華をしたいです」とか言ったらめっちゃかわいい(興奮)なんだろうね、この違いは。やっぱり2026年現在の人間のメタ認知の分断が激しいゆえの感情で10年後とかは変わるのだろうかどうなのだろうか・・もごもご
もっとも、一、二の存在は、その事業(布教)を手助けするために「前・昇華状態」のまま長くとどまることもあった。しかし一般的に、このカルトはどちらかといえば無意味な(ナンセンスな)ものと見なされていた。
昇華とは、通常は社会全体に対して起こるものであり、宗教的な誓いというよりは、実用的なライフスタイルの変更――神聖な修道会に入るというよりは、単なる「引っ越し」に近いものとして受け止められていたからだ。
「まあ、どうだろうね」と、警戒するような声を出しながらジェナール=ホフォエンは言った。「君たちは具体的に何信じているんだっけ?」
サブリマーの少女は彼の背後の通りを見上げた。「ああ、私たちは昇華(サブレイト)の力を信じているのです」と彼女は言った。「もっとお話しさせてください」彼女は再び大通りを見上げた。「まあ……もしかすると、通りから退いた方がよろしいかもしれませんわね?」彼女は手を差し伸べ、歩道の方へと一歩下がった。
感想:ホフォエン氏は・・宗教に興味がなさそうですね。
ジェナール=ホフォエンが振り返ると、そこでは事態が騒々しくなりつつあった。彼が先に気づいていた巨大な動物――六本脚のポンドロサウルス――が、従者たちと観客の群れに囲まれながら、大通りをゆっくりと前進してくるところだった。
そのむく毛の茶色い毛皮の動物は体高6メートルあり、長くて派手なバナーやリボンで豪華に装飾され、燃えさかるメイス(棍棒)を振りかざす派手な制服を着た象使い(マホウト)によって御されていた。
感想:まさに「原始」って感じだね(皮肉)
その巨獣の上には、輝く黒と銀のクーポラ(丸天井)が冠されており、球状に細工された透かし彫りの窓は、内部に誰が、あるいは何がいるのかをまったく伺わせなかった。
同様に飾られた鉢が、その巨大な動物の目を覆っていた。それには5頭のしなやかに跳ねるクリエストリスラルが供奉しており、それぞれの黒いタスク(牙)を持つ生物は、いかつい雇われガードマンによってきつい引き綱で繋がれ、通りの表面を爪で掻き、鼻を鳴らしていた。
一群の人々が行列の進むのを妨げていた。ポンドロサウルスは足を止め、長い頭を後ろに倒して、驚くほど柔らかく抑えめな咆哮をあげた。それから脚と同じ太さの二本の前肢でアイカップの位置を調整し、頭を左右に揺らした。散策する人々の群れが分散し始め、巨獣とその護衛たちは再び前進を開始した。
「ふむ、そうだね」とジェナール=ホフォエンは言った。「邪魔にならないよう移動した方が良さそうだ」彼は『9050』を飲み干すと、空の容器を捨てる場所を探して周囲を見回した。
「どうぞ、私にお任せください」サブリマーの少女は、その力場ゴブレットをまるで何らかの聖なる物体であるかのように彼から受け取った。ジェナール=ホフォエンは彼女の後を追って歩道へと上がった。彼女は彼の腕に自分の腕を絡め、二人はセコス(聖所)の入口へとゆっくり進んだ。そこでは、あの女性が皮肉交じりの好奇心の表情を浮かべながら、依然として他の二人のサブリマーと話し続けていた。
感想:ああ・・つらい・・興味ないホフォエン氏の話だけでもつらいのに・・昇華の勧誘なんて・・ああ・・
「これまでにサブリマーについてお聞きになったことはありますか?」腕を組む少女が尋ねた。
「ああ、もちろん」近づきながらもう一人の女性の顔を観察しつつ、彼は言った。彼らはサブリマーの建物の外の歩道で足を止め、波の音と爽やかな音楽だけが響く『ハッシュフィールド(消音力場)』の中へと足を踏み入れた。「君たちは、誰もが自分のお尻の中へと消えていくべきだと信じているんだろう?」彼は純粋そのものの表情を浮かべながら尋ねた。
彼はシャドウローブを着た女性からほんの数メートルの距離にいた。もっとも、区画分けされた消音力場のせいで、彼女が何を話しているのかは聞こえなかった。彼女の顔は、彼の記憶にある姿と驚くほどよく似ていた。目と口元が同じだった。彼女は髪をそんな風に束ねたことは一度もなかったが、その青黒い髪の色合いすら同じだった。
「まあ、違いますわ!」サブリマーの少女は非常に真面目な表情で言った。「私たちが信じているものは、人をそのような肉体的な関心事から完全に切り離すのです」
視界の隅で、彼は通りの先を見ることができた。そこではポンドロサウルスが、熱心な観客の分厚い人垣をかき分けて前へと進んでいた。サブリマーの少女が話し続ける中、彼は彼女に微笑みかけた。彼はもう一人の女性がより良く見えるように、身体の位置を少しずらした。
いや、彼女であるはずがない。もちろん違うはずだ。もし彼女なら彼だと気づいたはずだし、今頃は何らかの反応を見せていたはずだ。たとえ彼を見ていない振りをしようとしていたとしても、彼にはそれと分かったはずだ。彼女は誰に対しても自分の感情を隠すのが得意ではなかったし、彼に対しては尚更だった。彼女は再び彼に視線を投げかけ、すぐに逸らした。彼は突然、恐ろしいほどの快感が意図せず沸き上がるのを感じた。皮膚がピリピリとするような興奮の衝撃だった。
「……私たち自身を超えた存在になりたいという、人間の本質的な欲求の最高の表現であり……」彼はうなずき、今なおペラペラと喋り続けているサブリマーの少女を見た。彼は少し眉をひそめ、空いている手で顎を撫でながら、うなずき続けた。
彼はもう一人の女性を観察し続けた。通りでは、ポンドロサウルスとその従者たちが彼らのほぼ真横で足を止めていた。ティア=シントリケート(の役人)がその巨獣の象使いと並んでホバリングしており、象使いは怒りに任せてそれと口論しているようだった。
その女性は、寛大な冷やかしとも言える表情を浮かべながら、他の二人のサブリマーに向かって微笑んでいた。彼女は視線をその時話していたサブリマーの男に固定していたが、深く息を吸い込み――それを吐き出すと同時に――短い微笑みと眉のピクッとした動き(配慮の合図)とともに再びジェナール=ホフォエンを見つめ、それからサブリマーたちへ視線を戻し、頭をほんの少しだけ片側に傾けた。
彼は考え込んだ。特別状況部(SC)は自分をコントロール下、あるいは少なくとも監視下に置くために本当にここまでやるのだろうか?
感想:やらんだろ。
ダジェイル・ゲリアンとこれほど似た人物を偶然見つける確率がどれほどあるだろうか? 彼はダジェイルにうっすらと似ている人間など何百人もいるはずだと思った。もしかすると、彼女のことを耳にして意識的にその姿を模している者すらいるかもしれない。本物の有名人相手ならいつでも起きることだし、ダジェイルの容姿を模した人物を彼が聞いたことがないからといって、誰もやったことがないという証明にはならない。もしこの人物がそうした者の一人であるなら、警戒を怠らないようにする必要があるのかもしれない……
「……個人的な野心や自己改善の欲望、あるいは自分の子供に機会を与えたいという願いなどは、真の『昇華』が与えてくれる究極の超越に比べれば淡い影に過ぎないのです。なぜなら、書かれているように……」
ジェナール=ホフォエンは自分に話しかけている少女に近寄り、彼女の肩を軽く叩いた。「よく分かったよ」と彼は静かに言った。「少しだけ失礼してもいいかな?」
彼は二歩踏み出し、シャドウローブの女性の方へと歩み寄った。彼女は二人のサブリマーから顔を背け、彼に向かって礼儀正しく微笑んだ。
「失礼」と彼は尋ねた。「どこかでお会いしたことはありませんか?」
彼はそう言いながらニヤリと笑った。それが使い古されたナンパの文句であること、そして自分も彼女もサブリマーたちの言うことにはまったく興味がないという事実をお互いに認める笑いだった。
彼女は彼に向かって丁寧に首を傾げた。「そうは思いませんけれど」と彼女は言った。彼女の声はダジェイルの声よりも高かった。より少女らしく、まったく異なるアクセント(訛り)があった。「ですが、もし以前お会いしていて、あなたが何の変化もしていらっしゃらなくて私が忘れていただけなのだとしたら、認めるのが恥ずかしすぎますわね」彼女は微笑んだ。彼も同じように微笑んだ。彼女は眉をひそめた。「……ただし、あなたはティアにお住まいですか?」
「ただ通りすがっただけですよ」と彼は言った。火につつまれた爆撃機がすぐ頭上を吹き抜け、サブリマーの建物の背後で光の破片となって爆発した。通りでは、ポンドロサウルスを取り巻く議論がますます加熱しているようだった。動物自体がシントリケートをじっと見つめており、象使いはその首の上に立ち、自分の主張を強調するために暗く刺々しい存在に向かって燃えるメイスを指し示していた。
「ですが、以前にもこの道を通ったことがあるんです」とジェナール=ホフォエンは言った。「もしかすると、その時にお互いぶつかり合ったのかもしれませんね!」
彼女は考え深そうにうなずいた。「かもしれませんわね」と彼女は認めた。
「おや、お二人はお知り合いなのですか?」と、彼女が話していた若いサブリマーの男が口を挟んだ。「まあ、愛する人や知り合いと一緒に昇華(サブレイト)することは――」
「あなたは『カラスセニック・クラシス』をおやりになりますか?」彼女は若いサブリマーの言葉を遮って尋ねた。「ここで私のゲームをご覧になったのかもしれませんわね」彼女は頭を後ろに傾け、その長い鼻の先から彼を見下ろした。「もしそうだとしたら、挨拶するのを今まで放っておかれたのは少しがっかりですけれど」
感想:またゲームの話か
「ああっ!」サブリマーの青年が言った。「ゲーム! それは私たち自身を超えた世界へと足を踏み入れる欲求の現れです! もう一つの――」
「そのゲームの名称すら聞いたことがないんですよ」と彼は白状した。「おすすめしていただけますか?」
感想:ああ・・長い・つらい・・震えてしまうくらいつらい・・ホフォエン氏に興味なさすぎる自分。
「ええ、もちろんですわ」と彼女は言った。声には皮肉が込められていた。「プレイする者全員に利益をもたらしますのよ!」
「まあ、私は常に新しい体験を楽しむ用意があります。よろしければ教えていただけませんか」
「ああ、さて、究極の新しい体験とは――」サブリマーの青年が口を開かけようとした。
ジェナール=ホフォエンは彼の方を振り返り、言った。「頼むから黙ってくれ!」
それは本能的な反応であり、一瞬間彼は言い過ぎたかもしれないと心配したが、彼女は若いサブリマーの傷ついた表情に対して何ら大きな同情を寄せている様子はなさそうだった。
彼女は彼に視線を戻した。「わかりましたわ」と彼女は言った。「あなたが私の賭け金を負担してくださるなら、クラシスをお教えしましょう」
彼は微笑んだ。こんなにあっさりと交渉がまとまるなんて上手すぎるのではないか、と思いながら。
「決まりだ(ディールだ)」と彼は言った。彼はクラウド・ケーンを自分の鼻の下で振って深呼吸し、それからお辞儀をした。「私の名前はバイアだ」
「お会いできて光栄ですわ」彼女は再びうなずいた。「フリン(Flin)とお呼びくださいな」そう言って彼女はステッキを掴み、自分の鼻の下で振ってみせた。
感想:おええええええええ、もういやだ、ホフォエン氏のゲームシーンなどいやだぁぁぁああ
「行きましょうか、フリン?」と彼は言い、通りの先を指差した。そこではポンドロサウルスが退屈したかのように四本脚を下に折りたたみ、両方の前肢を顎の下に折りたたんで腹ばいになっていた。二体のシントリケートたちが、燃えるメイスを彼らに向かって振り回して激怒している象使い(マホウト)に向かって怒鳴り散らしていた。雇われガードマンたちは神経質な様子で、不快そうに暴れるクリエストリスラルたちの体を宥めるように撫でていた。
「もちろんですわ!」
「お互いが出会った場所を忘れないでくださいね!」サブリマー(の青年)が彼らの背後から叫んだ。「昇華とは、魂と魂の究極の出会いであり、極致なのです……!」
彼らは消音力場(ハッシュフィールド)を離れた。彼らが歩道を歩いていくにつれ、青年の声は投射された対空砲火の重苦しい響きによってかき消されていった。
「それで、どこへ向かいましょうか?」彼は彼女に尋ねた。
「そうね、まずは一杯おごっていただいて、それから私の知っているクラシス・バーへ行きましょう。それでよろしいかしら?」
「素晴らしい。辻馬車(トラップ)に乗っていきましょうか?」と彼は言い、通りの少し先、歩道の脇で待機していた二輪のオープン車両を指差した。イスナー=ミストレトルのペアが革紐の間に繋がれており、イスナーは長い首を下に伸ばして溝(ドブ)の中のエサ袋を突いており、その背中に乗ったスマートな制服姿の小柄なミストレトルは目ざとく周囲を見回しながら親指同士を叩き合わせていた。
「いいアイデアですわね」と彼女は言った。彼らは辻馬車へと歩み寄り、乗り込んだ。
「コリリウム・ラウンジへ」小型車両の後部座席に座りながら、女性はミストレトルに告げた。ミストレトルは敬礼し、派手な上着から鞭を取り出した。イスナーは溜息のような音を漏らした。
辻馬車が突如として激しく揺れた。彼らの背後の通りから、重く巨大な破裂音が響き渡った。
彼らは一斉に振り返った。ポンドロサウルスが咆哮をあげながら立ち上がっていた。象使いは首の上からあやうく落ちそうになっていた。彼のメイスは手からこぼれ落ち、通りで跳ね返った。
クリエストリスラルのうち二体が躍り上がり、威嚇の声をあげながらハンドラー(引き手)を引きずって群衆の中へと飛び込んだ。象使いと口論していた二体のシントリケートは、難を逃れるために素早く空中へと上昇した。力場ハーネスを着けた人々は、交差するサーチライトの光線と対空砲火の混乱を掻き分けて回避行動をとった。
フリンとジェナール=ホフォエンは、ポンドロサウルスが驚くべき敏捷さで前方へと跳躍し、彼らに向かって通りを猛スピードで突進し始める中、人々があらゆる方向へと逃げ惑うのを見つめた。象使いは獣の耳に必死にしがみつき、止まれと悲鳴を上げていた。
獣の背の上に固定された黒と銀のクーポラは、増大する獣のスピードによって左右に揺れ動かされるまで、その上空に浮遊しているように見えた。ジェナール=ホフォエンの隣で、フリンはすっかり凍りついているようだった。
ジェナール=ホフォエンはミストレトルを振り返った。「おい」と彼は言った。「発進してくれ!」
小柄なミストレトルは、通りを見つめたまま素早くまばたきした。周囲の建造物に反響して、別の咆哮が響き渡った。ジェナール=ホフォエンは再び振り返った。
突進してくるポンドロサウルスは片方の前肢を伸ばし、アイカップを引きちぎって、古代の氷の塊のような巨大なファセット加工(多面カット)された青い目を出露させた。もう片方の前肢で象使いの片肩を掴み、首から力任せに引き剥がした。
象使いは身をよじって暴れたが、獣は彼を横の歩道へと払い落とした。彼は走りながら着地し、転倒して転がった。ポンドロサウルス自体は通りを雷鳴のごとく突き進み、人々は自らを投げ出すようにしてその進路から退いた。バブルスフィア(球体力場)の中にいた誰かが素早く動くことができず、巨大な透明の球体は脇へと蹴り飛ばされて温かいフード屋台に激突し、瓦礫から炎が燃え上がった。
「クソッ」巨大な獣が自分たちに襲いかかってくるのを見て、ジェナール=ホフォエンは吐き捨てた。
彼は再びミストレトルの御者に向き直った。イスナーの顔も見えた。それも後ろを振り返って通りの先を見つめており、その大きな顔にはごく軽度の驚きだけが浮かんでいた。「出せ!」と彼は叫んだ。
ミストレトルはうなずいた。「いい『アイデア』だ」と甲高い声で鳴いた。それは後ろに手を伸ばしてイスナーの背後の結び目を解き、獣の首の根元にブーツの踵を突き刺した。驚いたイスナーは辻馬車を置き去りにして脱出し、急速に人がいなくなっていく通りをイスナー=ミストレトルのペアが駆け抜けて消えていく中、車両は前方へと傾いた。ジェナール=ホフォエンとフリンは絡み合ったハーネスの中で前方に投げ出された。
彼女が「ファック!」と叫ぶのが聞こえ、彼らが通りに叩きつけられた時に「グッ」と息を詰まらせる音がした。
何かが彼の頭に強く激突した。彼は一瞬意識を失い、正気に戻ると、多面体の巨大な青い目で自分を見下ろす巨大な顔、異形の顔を見上げていた。
その時、彼はその女性の顔を見た。ダジェイル・ゲリアンの顔を。
彼女の上唇には血がついていた。彼女は朦朧とした様子で彼を見つめ、それから自分たちを見下ろしている巨大な動物の顔を見上げた。
どこからかハチの羽音のような感覚が響き、ジェナール=ホフォエンは自分の脚の感覚がなくなっていくのを感じた。女性は彼の脚の上に倒れ込んだ。彼は吐き気を覚えた。目を閉じると、空を横切る赤い点の列がマブタの裏で漂った。
再び無理やり目をこじ開けた時、そこに再び彼女がいた。ダジェイル・ゲリアンに酷似した、しかし彼女ではない誰かが。
ただし、それはフリンでもなかった。
彼女は違う服装をしており、背がより高く、その表情は……同じではなかった。それに何より、フリンは依然として彼の脚の上で意識を失って重なっていたのだ。
彼には何が起きているのかまったく理解できなかった。彼は頭を振った。痛んだ。
ダジェイルでもフリンでもないその少女は素早く身をかがめ、彼の目を覗き込み、片方の動作で自分の肩からクローク(マント)を脱ぎ捨てて彼の脇の通りへと広げ、それと同時に彼の脚の上に重ねっていたフリンの動かない身体を退かしながら、彼をクロークの上へと転がした。彼は腕を振り回そうとしたが、大して足しにはならなかった。
クロークは彼の下で硬直して空中に浮き上がり、彼の身体を包み込んだ。彼は叫び声をあげ、閉じ込めようとしてくる黒い折り畳み構造に抗おうとしたが、再びハチの羽音のような音が響き、クロークが完全に体を包み込む前であっても、彼の視界は薄れ消えていった。
感想:さてさて、このシーンで需要なのは「ホフォエンは事故?襲撃なのか」「フリンは誰だったのか」「今助けている女性は誰か」まあホフォエン氏を確保するための計画の一環と考えるのが良きでしょう。問題は誰の計画課・・マインド・・アフロント・・次は第八章に突入するので、この続きからはじまらないことを切に祈る。
イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳(27)つまらん男ホフォエンの夜遊びログ。
7章 IV
その日の夕方、外へ出かけるにあたって、ジェナール=ホフォエンはペンの形をした端末を持っていかなかった。
感想:ティエールの夜の街で羽を伸ばすカルチャーの外交官ホフォエン。自分の位置情報を追跡されたくないホフォエンは端末をもっていかなかった。
そして彼がナイト・シティで最初に訪れたのは、ティア=シントリケート/イシュラーシナミ科学技術のショップだった。
その女性はイシュ人にしては小柄だな、とジェナール=ホフォエンは思った。
それでも、彼女は彼を見下ろすほどの背丈があった。彼女は例の長い黒のローブを纏っており、カビくさい……匂いがした。
二人は暗黒のバブル(密閉力場)の中で、無地の狭い椅子に座っていた。女性は膝の上に載せた折りたたみ式の小さなスクリーンの上に覆いかぶさっていた。彼女はうなずき、身体を彼の方へと折り曲げるように差し出した。彼女の手が伸び、彼の左耳のすぐ近くに寄った。彼女の指先から、輝く伸縮式のロッド(棒)が一連となって伸び出た。彼女は目を閉じた。薄暗がりの中で、ジェナール=ホフォエンは彼女のマブタの裏側で小さな光が点滅しているのを見ることができた。
彼女の手が彼の耳に触れ、かすかにくすぐったかった。彼は自分の顔がピクッと痙攣するのを感じた。「動かないで」と彼女は言った。
感想:身体に何か変なものが付けられていないか調べてもらっているホフォエン。
彼はじっとしていようとした。女性は手を引いた。彼女は目を開け、三本の繊細なロッドの先端が交わる点を凝視した。彼女はうなずき、「ふむ」と言った。ジェナール=ホフォエンも身を乗り出して覗き込んだ。彼には何も見えなかった。女性は再び目を閉じた。彼女のマブタのスクリーンが再び発光した。
「非常に精巧ね」と彼女は言った。「見落とすところだったわ」
ジェナール=ホフォエンは自分の右の手の平を見た。「こちらの腕(手)には何もないと確信できるかい?」と彼は尋ね、ヴァーリオフ・シュングと交わした強い握手を思い出していた。
感想:握手の際に何か追跡装置なり付けられていないか、と疑っているホフォエン。
「私が確信できる限りはね」と女性は言い、ローブから小さな透明の容器を取り出すと、彼の耳から摘み取った「何か」をその中に落とした。彼にはそこにも依然として何も見えなかった。
感想:キオクシアの技術よりもナノなのかもしれない。
「で、スーツの方は?」と彼はジャケットのラペル(襟)を指で弄りながら尋ねた。
「クリーン(何もついていない)よ」と女性は言った。
「じゃあ、これで終わりかい?」と彼は尋ねた。
「それだけよ」と彼女は言った。黒いバブルが消失し、彼らは壁一面の棚に複雑極まりない精密機器らしきギアが溢れんばかりに並べられた小さな部屋の中に座っていた。
感想:ホフォエンは誰かに監視されていることを察して除去したご様子。可能性があるとすれば・・真面目な発信者限定号じゃないかね・・
「まあ、感謝するよ」
「料金は800ティア=シントリケート時間相当になります」
「ああ、切りのいい1000にしておいてくれ!」
彼はナイト・シティ・ティアの中心部にある「ストリート・シックス(6番街)」を歩いた。
発達した銀河系全域に「ナイト・シティ」は存在していた。それは一種のコンドミニアム・フランチャイズのようなものだったが、そのフランチャイズ権が誰に属しているのかは誰も知らないようだった。ナイト・シティの様相は場所によって大きく異なっていた。唯一確実なことといえば、そこに到着した時には常に「夜」であり、そして楽しむ以外の言い訳が一切通用しない場所だということくらいだった。
感想:人間の娯楽。数年以内にはじまるであろうと言われているベーシックインカムで生きる人間はレジャーに行ける頻度が落ちると思うんだよ。ここから資産を増やすことは難しいだろうし・・。国民の大半の娯楽ってレジャーが大半を占めている感あるしストレス過多でアルコールに移動するんじゃないかと。そうなった場合、アルコール規制(飲食店でアルコール提供に制限とか)いろいろあるんだろうな。娯楽をアルコール全振りするとすごい危険なことが昼夜問わず起きてしまうし歴史を振り返ると人間はアルコールに依存してしまうんだよな。もちろんそうじゃない人もいるけど。なんて話を数日前に友人としたのを思い出す。
ナイト・シティ・ティアは、世界の中層部、浅い海に浮かぶ小さな島の上に位置していた。島は直径10キロメートル、高さ2キロメートルの浅いドームによって完全に覆われていた。
内部的には、街はその年ごとの「フェスティバル」から着想を得る傾向があった。ジェナール=ホフォエンが以前ここを訪れた際、この場所は巨大化された「海の世界」の姿をとっており、あらゆる建造物が高さ100〜200メートルの波へと姿を変えていた。
その年のテーマは「海」であり、ストリート・シックスは指数関数的な曲線を描く二つの大きな隆起の間の長い「谷間(トローフ)」の中に存在していた。
高びかなく波の曲面のうねりに生じた細波(さざなみ)はバルコニーとなり、光で燃えるように輝いていた。そびえ立ち、覆いかぶさる各波頭の光る泡は、その下をうねりながら続く通りに、青白く重々しい光を投げかけていた。通りのどちらの端でも、大通りは交差する波の前面と出会うために上昇し、海洋的に不自然なトンネルを通じて他のハイウェイ(幹線道路)と接続していた。
今年のテーマは「原始(プリミティブ)」であり、街はこのテーマを「初期の巨大な電子回路基板」として解釈することを選んでいた。
感想:ふふっ。ネオンで輝く世界に「原始」がテーマとは、カルチャーの感覚では電子回路すら十分に原始的とでも思っているのかもしれない。
銀色の通りのネットワークはほぼ完璧に平坦な街並みを形成し、そこに巨大な抵抗器、密集したムカデの足のような平らなトップを持つチップ、ひょろ長いダイオード、そして複雑な内部構造を持つ巨大な半透明の真空管が散りばめられ、それぞれがプリント基板のネットワークに埋め込まれた輝く金属の脚のグループの上に立っていた。
それらは、ジェナール=ホフォエンが学生時代に「技術史」か何とかいう名称だった講座で半分ほど見覚えのあるパーツだった。目的も名前も分からない、トゲトゲした、ゴツゴツした、滑らかな、鮮やかな色の、つや消し黒の、ツヤのある、ひだのついたパーツも他にたくさん存在していた。
今年のストリート・シックスは、エッチングされたダイヤモンドのシートで覆われた、幅15メートルの素早く流れる水銀の川だった。足元では時折、キラキラと輝く青金色の大きなまとまった塊(ブロブ)が、水銀の流れる流路に沿って猛スピードで走り抜けていった。
どうやらこれらは「シンボル化された電子」か何かであるらしかった。当初の発想では水銀のチャネルを街の輸送システムに組み込む計画だったが、これは実用的でないことが判明したため、単なる演出(エフェクト)としてそこに存在していた。
街の地下鉄(チューブ)システムはいつものように地下深くに走っていた。ジェナール=ホフォエンは街へと向かう途中で地下鉄の車両に何度か飛び乗り飛び降り、到着してからもさらに二回ほど飛び乗り飛び降りていた。追跡者を撒くことを期待してのことだった。
感想:スリーパーサービス同様にホフォエンも監視の目を欺くという。
これを実行し、耳の中の追跡装置(トレーサー)を取り除いたことで、彼は自分の今夜の楽しみが特別状況部(SC)に見つかることなく行われることを保証するために「できる限りのことはやった」と満足していた。
もっとも、彼らが今なお自分を監視していたとしてもそれほど気にしてはいなかった。どちらかといえば「筋を通す(主義の問題)」だった。それに対して固執(偏執)的になる必要はなかった。
感想:ホフォエン自身も完全に逃げ切れるとは思っていないようだ。(そりゃそうだ)
ストリート・シックス自体は、歩く人々、話す人々、千鳥足の人々、ぶらぶら歩く人々、バブルスフィア(球体力場)の中で転がりながら進む人々、エキゾチックな装飾を施された動物に跨る人々、イスナー=ミストレトル(異星生物)のつがいに引かれた小さな馬車に乗る人々、そして小さな真空気球や力場ハーネスの下で浮遊しながら進む人々で溢れかえっていた。
頭上、街の巨大なドームの下にある「永遠の夜空」では、今夜のエンターテインメントの一部として、古代の「爆撃機空襲」の街規模のホログラムが上映されていた。
空は、それぞれ4発または6発のピストン・エンジンを備えた何百、何千もの有翼航空機で満たされ、その多くが探照灯(サーチライト)によって浮かび上がっていた。
黒い雲から抜け出る光の痙攣や、減衰する赤いスパークの咲き誇る球体は「対空砲火」であるはずであり、爆撃機の間をより小さな単発および双発の航空機がブーンと飛び交っていた。
二種類の航空機は互いに撃ち合い、大型機は銃塔から、小型機は翼や機首から攻撃していた。優美な曲線を描く白、黄、赤の曳光弾の列が空をゆっくりと横切り、時折、1機の航空機が火を噴いて空から落ち始めるように見えた。
時折、空中で爆破するものもあった。常に爆弾の黒いシルエットが垣間見え、街の一部に鮮やかな閃光と生々しい炎の噴出とともに爆発していた――どうやら常に少し離れた場所で起きているようだった。
ジェナール=ホフォエンは、これらすべてが少し演出じみていると感じたし、これほど集中した空戦が存在したことや、迎撃機が迎撃を行っている最中にも地上からの砲撃が続けられるような戦いがあったかどうか疑問に思っていたが、見世物(ショー)としては紛れもなく圧巻だった。
感想:享楽主義者のホフォエン氏。彼はここが大好きで自分の居場所だと思っている。
通りを埋め尽くす人々の雑踏の上で爆発音、銃撃音、サイレンが響き渡り、通りに並ぶ何百ものバーや多種多様な娯楽施設から漏れる音楽によって時折かき消されていた。空気は半分異様で、半分親しみ深く、そして完全に魅力的な匂いと、ティア(の他の場所)では当然のように禁止されているような野生的なフェロモン効果で満ち満ちていた。
ジェナール=ホフォエンは、片手に「ティア9050」の入った大きなグラスを持ち、もう片方の手にはクラウド・ケーン(雲のステッキ)を携え、寸分の狂いもなく仕立てられた「自身の皮膚」のジャケットの片肩に小さなパフ・クリーントを遊ばせながら、通りの真ん中をぶらぶらと歩いていた。
感想:ふう。どうしても人間シーンは好きになれないw
「9050」とは、作るのに約300もの別個の工程を要することで悪名高いカクテルであり、その工程の多くは植物、動物、その他の物質のありそうもない、あるいは不快でさえある組み合わせを含んでいた。
最終的な結果物は、大部分がアルコールで構成された、強烈な味わいではあるもののそれなりに飲めるドリンクに過ぎなかったが、内部的な効果のために飲むわけではなかった。自分がそれを買う余裕があることを見せつけるために飲むのだ。
感想:アルコールは毒だと認知されているカルチャーでは、自分は購入できる余裕があると優位性をみせるために手に入れるらしい。不思議な世界だz。。
彼らは特製のクリスタル力場ゴブレットにそれ注ぎ、客が自分の財力を示せるようにしていた。
感想:財力ねぇ。(最近はミニ西野86世代に興味あり。)
この名前は、数杯飲み干せば90パーセントの確率でベッドイン(性交)でき、50パーセントの確率で法的トラブルに巻き込まれることを暗示していた(あるいはその逆だったかもしれない――ジェナール=ホフォエンにはどうしても思い出せなかった)。
感想:まあやめなされ。
クラウド・ケーンは、穏やかで短時間作用する精神活性物質の圧縮ペレットを燃焼させるステッキだった。穿孔されたトップキャップからひと吸いすることは、変形レンズを2枚目の前に滑り込ませ、水の中に首を突っ込み、重力が変動する場に立ちながら鼻の穴に化学工場を押し込まれるようなものだった。
パフ・クリーントは小柄な共生生物で、半動物半植物であり、お金を払って自分の肩の上に居座らせ、顔を向けるたびに鼻の穴に向かって咳をき込ませるものだった。その咳には、人間の知覚や気分に対して約30種類の異なる興味深い変化をもたらす胞子が含まれていた。
ジェナール=ホフォエンは特に自分の新しいスーツを気に入っていた。
感想:新しい?おしゃべりスーツじゃないの(´・ω・`)?
それは彼自身の皮膚で作られており、様々な微妙な方法で遺伝子改変され、特別に培養槽で育てられ、彼の正確な仕様に合わせて慎重に仕立てられたものだった。
感想:普通にキモイと思ってしまった。(でも防犯にはよさそう・・田村装備ファンとしては気になるところ・・)
彼は2年半前、ゴッズホール・ハビタットへと向かう途中にここティア2にいた際、飲酒セッションの後の思いつきで(1ヶ月後に除去した動く淫らなタトゥーと同じように)、遺伝子仕立屋にいくつかの皮膚細胞を提供し、注文と支払いを済ませていたのだった。
しばらくの間スーツを受け取ることになるとは、彼自身本当には予想していなかった。幸いなことに、その合間に長期的なファッションのトレンドが大きく変わることはなかった。
感想:肌スーツはトレンドなのか。
スーツとそれに付属するクローク(マント)の見た目は素晴らしかった。彼は最高の気分だった。
「剣士よ、剣を交えよ! ジフィダエとゼベックが争う! ゴリアードの水責め!」
スローガン、看板、告知、匂い、そして個人の呼び込み客(グリーター)たちが、売店や会場を宣伝しながら注意を引こうと競い合っていた。
ストリートの真ん中に向かって膨らみ出たセンソリウム(感覚体感)バブルの中で見事な景観やシーンが展開され、一瞬にして人々を寝室、宴会場、闘技場、ハレム、遠洋船、遊園地の乗り物、宇宙戦、一時的な恍惚状態へと引き込んでいた。誘惑し、促し、提案し、提供し、入場させ、食欲を刺激し、欲望を掻き立て、提案し、口利きし、媚びを売っていた。
「リパログラフィー(悪徳画)! ケロイド的過去記憶(アナムネシス)! 泥酔(イヴレス)!」
ジェナール=ホフォエンはそのすべての中を歩き、そのすべてを吸収しながら、あらゆる申し出や提案を断り、序曲や誘い、お勧めや招待を丁寧に辞退していった。
「ズフロス! オルファリオン! ラストラエ! 毎時開催の海戦(ノーマキア)!」
感想:以下しばらくホフォエンの夜の街シーンが続きます。
今のところ、彼は単にここにいて、歩き、練り歩き、観察し観察され、値踏みし――運が良ければ――値踏みされるだけで満足だった。
ティアのこの階層では夕方――本物の夕方――であり、ナイト・シティが混雑し始める時間帯だった。あらゆる場所が開いており、どこも満杯ではなく、誰もが客を求めていたが、まだ誰も特定の会場に落ち着いてはいなかった。ただ巡航し、つまみ食いし、戯れているだけだった。ジェナール=ホフォエンはその全般的な漂流の一部になれていることが幸せだった。
彼はこれが大好きで、これを誇りに思っていた。こここそが彼が最も「自分らしく」いられる場所だった。
今のところ、単にこれ以上良い場所はなく、彼は相応の敬意に満ちた熱量をもってその体験に飛び込むべきだと信じていた。彼らは彼の同類の人々であり、こここそが彼の好む事象が起きる場所であり、ここが彼の好む場所だった。
「毛深いオマダーンたちが剃毛(レイジャー)へと招待! 我らのマルチコラスティックなミニキンのジェイスティコールとロリカを見れば、兎眼(ラグオフサルミシティ)間違いなし!」
巨大な抵抗器の形をした建造物の丸く膨らんだ巨躯の下に設置された、サブリマー(昇華教徒)のセコス(聖所)の外で、彼は彼女を見かけた。そのカルトの聖なる場所への入口は、白の異なる色合いが重なった分厚くも小さな虹のような、鮮やかに輝くループ(環)になっていた。
囲いの外には、光る白いローブを身に纏った若いサブリマーたちが立っていた。サブリマーたち――それぞれ背が高く痩せている――もまた光っていた。彼らの皮膚は優しく発光しており、不健康に見えるほど血の気がなかった。彼らの目は輝き、広く開いた白眼から柔らかい光が漏れ、笑顔を浮かべると歯からも同じ半銀色の光が照射された。彼らは会話している最中でさえ、常に微笑みを浮かべていた。
その女性は、身振り手振りを交えて熱心に説明する二人のサブリマーを、面白がるような蔑みの表情で見つめて立っていた。
彼女は背が高く、褐色(トニー)の肌をしていた。顔は幅広く、鼻は細く頬の平面とほぼ平行だった。腕を組み、身体を二人の若者から後ろに傾け、長い鼻の先から光るサブリマーたちを見下ろしながら、片方の黒いブーツの踵に体重をかけていた。
彼女の目と髪は、フレームの残りを隠す特徴のない「シャドウローブ」と同じくらい暗く見えた。
彼は通りの真ん中で立ち止まり、彼女が二人のサブリマーと議論している様子をしばらく観察した。彼女の身振りや体の保持の仕方は異なっていたが、その顔は40年前の彼の記憶にある彼女の姿と非常によく似ていた――ほんの少し年をとったかもしれないが。彼は彼女がどれほど変わったのだろうかと常々疑問に思っていた。
しかし、彼女であるはずがなかった。ティシュリンは彼女がまだスリーパー(・サービス)の艦内にいると言っていた。もし彼女が離れたなら、彼らは言及したはずではないか?
感想:ほうほう。祭りにいる女性は・・任務対象者のダジェイル?(ティッシュはホフォエンの叔父ね)
彼は丸々と太ってクスクス笑うビストリア人たちのグループを行き過ごさせ、それから通りを少しだけ引き返し、向かいの歩道から覆いかぶさる巨大な真空管の建築を調べたり、クラウド・ケーンからぼんやりと退屈そうに吸い込んだりしながら、通りの反対側を形成する樽状の抵抗器の列の向こう側に落ちて爆発する、上の暗闇から滑り出てくる暗い爆弾の列を眺めていた。
鮮やかな黄色とオレンジの爆発が空を照らし、破片がゆっくりと舞い上がっては落ちていった。大通りのさらに先では、何らかの騒動が大きな動物を取り囲んでいた。
彼は振り返り、混雑した通りを見返した。その瞬間、巨大な青金の形状が彼の足元を滑り込み、ダイヤモンドプレートの下の水銀の流路に沿って静かに駆け抜けていった。サブリマーと議論していた少女が振り向き、ブロブが滑り去る時に通りに視線を投げかけた。
彼女が再び二人の光る若者たちに目を戻す際、彼女は彼が自分を見つめているのを捉えた。彼女の視線が彼の上に一瞬定まり、表情の揺らぎ――再会の認識のきらめき?――が、再びサブリマーたちと話し始める前に彼女の顔を横切った。彼は、たとえ目を逸らしたかったとしても、目を逸らす時間がなかった。
今すぐ彼女のところへ行くべきか、彼女が大通りに足を踏み出すかどうか見守ってその時に近づくべきか、あるいは単に立ち去るべきかを彼が考えていた時、光るガウンを着た背の高い少女が彼に近づいてきて言った。
「何かお手伝いしましょうか、旦那様? 私どもの高揚の場所がお気に召したようですね。何かご質問はおありですか? あなたを啓発するために私にできることはありますか?」
彼はサブリマーの方を向いた。彼女は彼と同じくらいの背丈があった。彼女の顔は可愛らしかったが、どこか空虚だった――もっとも、それは彼側の偏見だったかもしれないが。
感想:はいはい。しかし現実的にダジェイルなはずはない・・では・・?
イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳(26)虚航船団「下敷き」みたいなAIがかわいすぎる!
計算しろ、計算するんだ。あの忌々しい船の中にどれほどの質量があったというのか?
感想:わろわろ。忌々しいwww今の感じは筒井康隆「虚航船団」の「下敷き」みたいだよ。いいね~
水だ。高圧圧縮されたガス惑星の大気だ。水だけでもおよそ4000立方キロメートル、つまり40ギガトン(400億トン)に達する。それを圧縮し、改変し、錬金術的に変性させ、宇宙の基底にあるエネルギーグリッドへと手を伸ばしてそれを押し返すことのできる「エンジン」を構成する超高密度なエキゾチック物質へと変換する……十分すぎる、溢れるほどに十分な量だ。
感想:つまり、スリーパーサービスの船内にあるガス惑星や海はマインドの趣味などではなく、この日のための「エンジン」だったというわけだ!震えちまうよなぁ!(゚∀゚)・・・じゃあ黒い鳥は・・?もういないよね?
それほどの追加エンジン容量を建造するには数ヶ月、いや数年を要するだろう……あるいは、過去数十年間にわたってその下準備に費やしていたとすれば、わずか数日で済むのだ。
なんてこった(Dear holy shit)、もし内部がすべてエンジンだったとしたら、スーパーリフターでさえ追いつくことはできない。
感想:(ピザをつまみながら)「そんなに急いでどこに行くのかな?」映画ディープインパクトより。このシーンが好きな人求む!
通常のプレート級GSVは、ほぼ無制限におよそ10万4000倍光速(104 kilolights)を維持できる。ヨーニング・エンジェルが自らのクラスとして常に誇りにしてきた優秀なレンジ級GSVなら、それを容易に4万倍光速上回ることができる。
クリフ級スーパーリフターは90パーセントがエンジンで占められており、短時間の爆発的加速(バースト)であれば「高速攻撃艦(ROU)」よりも速い。チャリタブル・ビューは全開で22万1000倍光速(221 kilolights)を叩き出せるが、それは一度に1時間か2時間程度しか維持できない想定の数値だった。それは追撃用、追いつくためのスピードであり、長時間を維持できるものではなかったのだ。
スリーパー・サービスのエンジニアリング空間(機関室)までもがエンジンで埋め尽くされていた場合、ヨーニング・エンジェルが目計算した数値は、実に23万3000倍光速(233 kilolights)の限界値に達していた。
感想:スリーパーサービスは「海を集める」「圧縮する」「特殊物質へ変換」「秘密のエンジンを作る」を繰り返していたわけだ。
チャリタブル・ビューの通信トーンは、すでに面白がるようなものから驚愕へ、そして困惑へと変わっていた。いまやそれはあからさまに不機嫌だった。
感想:理論上、逃げられたことになるからなw
スリーパー・サービスは21万5000倍光速の大台を突破し、減速する気配をまったく見せていなかった。すぐに限界に達して(打ち止めになって)くれない限り、スーパーリフターは数分以内に追撃を諦めて離脱しなければならなくなる。追跡船は指示を求めた。
全力を尽くして今なお加速を続け、可能な限り、あるいは追撃を諦めるよう指示されるまで追跡を続けようと心に決めていたヨーニング・エンジェルは、我が子である追跡船に対し、設計パラメーターを超過しないこと、損傷の危険を冒さないことを命じた。
スリーパー・サービスは加速し続けた。スーパーリフターチャリタブル・ビューは22万倍光速で追撃を断念した。そこから少し抑えた20万倍光速へと落としたが、それでも刻一刻と引き離されていった。もっとも、その速度でさえほんの数時間しか維持できないものだったのだが。
感想:え、エンジンが焦げちまうよぉぉおお(゚∀゚)ハァ
ヨーニング・エンジェルは14万6000倍光速で限界(トップアウト)に達した。
感想:「あくびをする天使」号の限界である14万6000倍光速とは、小説「プロジェクトヘイルメアリー」の地球発~目的地である「タウ・セチ」まで約43分で到着する速さらしい。スリーパーサービスの場合は27分で到着。
スリーパー・サービスは、ついにおよそ23万3500倍光速で巡航速度(クルーズ)へと達し、銀河空間の深遠へと前方へ消え去っていった。
スーパーリフターはこの結果を報告したが、自らも信じられないといった様子だった。ヨーニング・エンジェルは、もう一方の一般システム艦(SV)が星々の間の永遠の夜の中へと走り去っていくのを、無力感と敗北感に打ちひしがれながら見送った。
いまや追跡者を振り切ったことを知ったスリーパー・サービスの針路は、緩やかにカーブを描き始めていた。最終目的地を隠そうとしているならば――そして自らのお世話係(監視役)を出し抜くこと以外に目的地が存在するならば――これから行うであろう無数の身交わしや方向転換の第一弾であることは間違いなかった。
どういうわけか、ヨーニング・エンジェルはこのエキセントリックな被保護者――あるいは「元」被保護者――には、明確な目的地、向かっている特定の場所が存在すると確信していた。
光速の23万3000倍。 まったくもって、なんてこった(Dear holy fucking shit)。ヨーニング・エンジェルは、これほどの速度にはどこか野俗(品がない)で品格を欠くものがあると感じた。
感想:速度に品を感じるとはおもしろい。小説「プロジェクトヘイルメアリー」に登場する異星人「ロッキー」は食事している姿を見られることは下品だと言うておるしな。
一体全体、奴はどこへ向かっているというのだ? アンドロメダか?
感想:アンドロメダ銀河は250光年先ゆえに、スリーパーサービスの速さでも10年以上かかる場所・・皮肉ゆえの発言・・ぐふふ
ヨーニング・エンジェルは、自らのマインド内に保持している銀河モデルの中に「針路確率コーン(予想進路範囲)」を描き出した。
スリーパー・サービスがどれほど狡猾に立ち回っているかにもよるだろうが、それは「アッパー・リーフ・スワール(Upper Leaf Swirl)」を目指しているように見えた。もしそうなら、3週間以内にそこに到達するだろう。
ヨーニング・エンジェルは前方にシグナルを送った。物事の良い面を見ようではないか。少なくとも、問題は今や自らの力場(管轄)の外へと去ったのだから。
感想:いいですね~短い間でしたが「あくびをする天使」号のシーンが好きでした。ありがとうございます。
アバターの『アモルフィア』は――腕を組み、細く黒い手袋をはめた手で骨ばった肘を掴みながら――ラウンジの反対側にあるスクリーンをじっと見つめていた。
感想:物語はここから「スリーパーサービス」号の船内に変わりましたな。「アモルフィア」は船のマインドです。
スクリーンには、大幅に拡大された補正済みの超空間(ハイパースペース)の映像が映し出されていた。
画面を覗き込むのは、どこか果てしない惑星の空の光景を覗き込むようだった。
遥か下にはエネルギーグリッドを表す光る霧の層があり、上には全く同じ輝く雲の層が存在した。実空間の織物(スケイン)はその両者の間に挟まれていた。
それは二次元の層、巨大な織機を往復するシャトル(杼)のようにGSVが明滅しながら通り抜けていく、シンプルな透明の平面だった。
その遥か遥か後方で、スーパーリフターであった小さな点がさらに縮んでいった。その船もまた光分単位の波長を持つ正弦波(サイン波)を描いて織物を上下に揺れ動いていたが、今や振動を止め、超空間の下層へと落ちついていた。
倍率が跳ね上がった。
スーパーリフターは今や大きな点となったが、それでも常に引き離され続けていた。さらに後方で、かつては波状だったが今や直線となった自らのコースを辿る光の点は、追跡していたGSVだった。ドレーヴ星系の星はそれらのさらに後方で、織物の中で静止した輝く点だった。
スリーパー・サービスは最高速度に達し、同じく超空間の二つの領域間の振動を止め、「ウルトラ・スペース(超々空間)」と呼ばれる二つの無限のうち大きい側へと落ち着いた。
後続の二隻の船も同じように動作し、ほんの僅かに、だが一時的に速度を上げた。
純粋主義者なら彼らが今存在している場所を「ウルトラ・スペース・ワン・ポジティブ」と呼ぶだろうが、これまで誰も「ウルトラ・スペース・ワン・ネガティブ」――あるいはその事に関して言えば「インフラ・スペース・ワン・ポジティブ」――にアクセスしたことがなかったため、それは冗長でペダンチック(衒学的)な区別に過ぎなかった。少なくとも、今までは。
もし「エクセッション(Excession)」が約束しているように思えるものをもたらすことができるとすれば、それも変わりつつあるのかもしれない……
アモルフィアは深呼吸をし、息を吐き出した。
映像が消え、スクリーンが消滅した。
アバターは振り向き、女性『ダジェイル・ゲリアン』と黒い鳥『グラヴィアス』を見た。
感想:えーーー黒い鳥ちゃん、さっきの惑星で降りなかったんか?ということは君・・何者だい?ダジェイルはホフォエンの任務である女性ね。
彼らは、スリーパー・サービスの中上部にあるストレーキ(外板部)のベイに収められた、リッジ級GCUジャンディスト・アウトルック(Jaundiced Outlook)のレクリエーション・エリアにいた。
ラウンジは「コンタクト(接触部)」の標準的な仕様そのものだった。見かけ以上に広々としており、スタイリッシュで心地よく、観葉植物と抑えめな照明で飾られていた。
この船は、旅の残りの工程における女性の家となるはずだった。何か問題が起きた時には、即座に巨大な親船を離れて彼女を安全な場所へと届ける準備ができている「救命艇」である。
感想:そうか・・ダジェイルを助けている船こそスリーパーサービスだが、ここまで犠牲にして助けるには理由があるのだろう。
彼女は白いリクライニングチェアに座り、長い赤いドレスを身に纏い、穏やかだが目を丸く見開き、片手を膨らんだ腹の上にカップのように添えていた。黒い鳥は彼女の手の近くの椅子の肘掛けに止まっていた。
アバターは女性を見下ろして微笑んだ。「さあ」とそれは言った。周囲を見回す仕草をしてみせた。「ついに二人きり(一人と一体)になれたね」アバターは軽やかに笑い、それから黒い鳥を見下ろすと、その微笑みを消した。
感想:なんかゾクゾクするんだけど。マインドに意識を向けられるとこういう気持ちになるのか・・?
「だが、お前は」とアバターは言った。
「二度とそう(一人に)はなれないがね」
グラヴィアスは首を伸ばし、跳ね起きるように直立した。「なんだと?」と尋ねた。
感想:・・え?黒い鳥(マインド)ちゃん・・君はダジェイルとスリーパーサービスの敵なのかい?
ゲリアンは驚いた様子を見せ、それから心配そうな顔をした。
アモルフィアは横に目をやった。小さな木が落とす影の中から、太いペンのような小さな装置が浮かび上がってきた。それは滑るように鳥へと近づいた。鳥はその静かな小型ミサイルから後ずさり、後ずさりして、ついに椅子の肘掛けから落ちそうになるほどになり、その青黒いクチバシは、小さく複雑なマシーンのノーズコーンからわずか数センチのところにあった。
「これはスカウト・ミサイル(偵察ミサイル)だ、鳥よ」アモルフィアは鳥に語りかけた。「その無害そうな名前に騙されるなよ。もしお前がもう一度裏切り行為を働こうなどと少しでも考えたら、こいつは喜んでお前を加熱ガスへと還元(消滅)させるだろう。こいつはお前の行く先々について回る。私がしたような真似はするな。私の言う通りにして、引き離そうなどとするな。お前の表面――いや体内――には追跡用ナノテクが埋め込まれており、お前を追跡するのは容易なことだ。今頃は本来の組織と置き換わり、正しく埋め込まれているはずだよ」
感想:ほうほう。スリーパーサービスが作った黒い鳥は裏切り行為(スパイ)をされたのか、そしてもう一度チャンスが与えられたというわけか。で、どうやって船内の情報を外部へ漏らしていたのか。
「なんだと!?」鳥は再び悲鳴を上げ、頭を上下に跳ねさせた。
「もしそれを取り除きたいのなら」アモルフィアは滑らかに続けた。「もちろん構わないよ。心臓の中を探すといい。主動脈弁のところだ」
鳥は悲鳴のような声を上げ、垂直に空へと羽ばたいた。ダジェイルはビクッと体を竦め、両手で顔を覆った。
グラヴィアスは空中で旋回し、最も近い廊下を目指して激しく羽ばたいた。アモルフィアは冷たい、まぶたの重い目で見送った。ダジェイルは両手を腹部に当てた。彼女は生唾を呑み込んだ。何か黒いものが彼女の顔の横を漂い落ち、彼女はそれを空気中から摘み取った。一枚の羽だった。
「すまなかったね」アモルフィアが言った。
「一体……一体どういうことなの?」ゲリアンが尋ねた。
アモルフィアは肩をすくめた。「あの鳥はスパイ(間諜)だ」とにべもなく言った。「最初からそうだった。自分のレポートを細菌に符号化(エンコード)し、再覚醒のために送り返される人々の体に付着させることで外部へ送信していたんだ。
感想:ああ、なるほど!休眠中の人間を利用すればよいのか!
私は20年前にそれを知っていたが、信号をチェックした上で見逃してやったのさ。暴露されれば脅威となるような情報は一切知らせなかった。
奴の最後のメッセージだけが、私が改ざんした唯一のものだ。おかげでヨーニング・エンジェルの監視から我々が逃れる手助けになったよ」アモルフィアは、まるで子供のように無邪気にニヤリと笑った。「もう奴にできることは何もない。スカウト・ミサイルをけたのは、まあ、お仕置きだよ。不快なら取り下げるがね」
感想:わざと偽の情報を流すために利用したってわけね。
ダジェイル・ゲリアンは、まるでその質問すら聞こえていなかったかのように、黒装束を着た病的なほど痩せたその存在のまっすぐな灰色の目をしばらく見つめていた。
「アモルフィア」と彼女は言った。
「お願い……一体何が起きているの? 本当は何が起きているの?」
船のアバターは一瞬、苦々しい表情を浮かべた。
スカウト・ミサイルが隠れていた植物の方へと視線を逸らした。「何はともあれ」とアバターはぎこちなく、儀礼的に言った。「君はいつだって私のもとを去る自由があるということだけは覚えておいてほしい。このGCUは完全に君の自由に使えるし、私のいかなる命令も要請も、この船の行動に影響を与えることはない」アバターは彼女を見返した。
感想:なぜそこまでするのか・・
首を振ったが、再び話した時の声はより優しく響いた。「すまないね、ゲリアン。私にもまだ多くを語ることはできないんだ。私たちはエスペリという星の近くの場所へと向かっている」その存在は、まるで自分でも確信が持てないかのように一瞬躊躇し、視線を床や近くの椅子へと泳がせた。「私が行きたいからだ」と、それはまるで今初めて自分自身でそのことに気づいたかのように言った。
感想:エスペリとはあの黒体球「Excession」であり、その近くにはカルチャーの武器庫「ピスタンス」がある。ちなみにピスタンスは現在カルチャーの裏切りマインドとアフロント人が占拠している。
「そこに、私ができる何かがあるかもしれないからだ」アバターは両腕を体から広げ、再びダラリと下ろした。
感想:これは物語の伏線すなー。まだスリーパーサービス自身でも言語化できない感じなんすなー。
「そしてその間に、私たちはゲスト(客)を待つことになる。あるいは少なくとも、私が客を待っている。君は気乗りしないかもしれないがね」
「誰を?」女性が尋ねた。
「察しがついていないのかい?」アバターは静かに言った。
「バイア・ジェナール=ホフォエン(Byr Genar-Hofoen)だ」
女性は下を見つめた。彼女の眉がゆっくりとひそめられ、彼女が摘み取っていた黒い羽が指から零れ落ちた。
感想:みなさんお忘れかもしれませんが、スリーパーサービスとホフォエンは何らかの因縁があるご様子。どちらにせよスリーパーサービスの計画にホフォエンを巻き込むのか必要なのか、そんな感じなのでしょうな。
[スタッダード・タイト・ポイント(高輝度狭域通信)、M32、tra. @n4.28.867.4406]
× LSV シリアス・コーラーズ・オンリー(Serious Callers Only)
エキセントリック艦 シュート・ゼム・レイター(Shoot Them Later)
感想:ここから「奴らは後で撃てばいい」号と「真面目な発信者限定」号のチャットシーン。
ニュースを聞いたか? ジェナール=ホフォエンについて私の言った通りだっただろう? これでタイミングの整合性がつき始めたとは思わないか?
感想:「スリーパーサービス」がホフォエンを呼ぶと言っていたことやな。
[スタッダード・タイト・ポイント(高輝度狭域通信)、M32、tra. @n4.28.868.4886]
エキセントリック艦 シュート・ゼム・レイター(Shoot Them Later)
o LSV シリアス・コーラーズ・オンリー(Serious Callers Only)
ああ。「233(光速の23万3000倍)」か。奴は一体何をやっているんだ――何かの記録でも狙っているのか? はいはいはい、分かったよ、あの人間(ホフォエン)については君の言う通りだった。だが、なぜ君はこの件について何の事前警告も掴んでいなかったんだ?
感想:スリーパーサービスめ、あんなスピード出して何の記録を狙ってるねん・・という「奴らは後で撃てばいい」号の皮肉ですね。
∞
分からん。20年間にわたって信頼できる、だが退屈極まりない報告が続いていたというのに、あのデカいバカ(スリーパー・サービス)が本当は何を企んでいるのか知るのにちょうど都合が良かったはずのまさにその時、情報パイプラインが崩壊したんだ。私に思いつくことと言えば、我々の共通の友人……ああ、クソッ、もう本名で呼んでもいいだろう……『スリーパー・サービス』がその通信リンクの存在に気づき――それがいつかは分からんが――何か隠したいことが生じるまで待ってから、我々のインテリジェンスに干渉し始めたということくらいだ。
感想:なるーー!黒い鳥ちゃんの飼い主は「真面目な発信者限定」号なんだね。
00
そうか、だが奴は何をやっているんだ? 我々は、奴が単なる礼儀(社交辞令)として『グループ』に招かれただけだと思っていたんじゃないのか?
それが突如として、まるでクソミサイルみたいな挙動を見せ始めている。一体全体何を企んでいるんだ?
感想:グループ?マインドのチャットグループのことかな。
00
かなり当たり前のことに思えるかもしれないが、シンプルに本人に尋ねてみればいいじゃないか。
00
もう試した。返信待ちだ。
∞
∞0
それならそうと言えばいいだろうに……
00
失礼、それは謝る。で、これからどうする?
∞ 今、『スティーリー・グリント(Steely Glint)』から大量の戯言(ブルシット)が入ってきた。失礼する。 ∞
感想:「鋼の輝き」号からの戯言。
[タイト・ビーム(狭域指向性通信)、M32、tra. @n4.28.868.8243]
× LSV シリアス・コーラーズ・オンリー(Serious Callers Only)
o GCV スティーリー・グリント(Steely Glint)
感想:ここからは「真面目な発信者限定」号と「鋼の輝き」号のチャットですな。
スピード狂の我々の共通の友人についてだが。これは我々が本当に予想していた展開とは違うんじゃないか? いくらか……
感想:ぐはっ・・(地味な興奮)スピード狂とか・・「鋼の輝き」号のネーミングセンスが最高すぎて・・(*´Д`)
……その驚異的なお知恵の産物は、それを熟考するのに相応しい暇を持て余している誰かにお与えになった方が、関係者全員の利益になるかと思いますが。
感想:「真面目な発信者限定」号は「鋼の輝き」号の嫌味てきなメッセージに「暇な奴らにその知恵を分けてやれよ」とあしらっておられます。
00
[スタッダード・タイト・ポイント(高輝度狭域通信)、M32、tra. @n4.28.868.8978]
× LSV シリアス・コーラーズ_オンリー(Serious Callers Only)
エキセントリック艦 シュート・ゼム_レイター(Shoot Them Later)
感想:ここからは「奴らは後で撃てばいい」号と「真面目な発信者限定」号のチャットやな。
(通信ファイルを添付)言った通りだろう? 私はこれに納得がいかない。どうにも怪しい。
00
むう。私にも分からん。認めたくはないが、本物のように聞こえるな。もちろん、もし私が間違っていると証明されたとしても、君は二度とこの件で私を詰責しないこと。いいな?
∞
感想:うーむ、どんなファイルか分からんが本物のファイルらしい。
∞
これらがすべて終わった後、私が君の慈悲に与り、君がそのような寛大さを発揮できる立場に双方が留まっていたなら、私はそのような寛容さを与えられることを無限に喜ぶことにしよう。
Aa
00
まあ、もう少し優雅に表現することもできたろうが、その価値に相応しいすべての敬意をもって、この道徳的な白紙小切手(寛大な約束)を受け取っておこう。
∞
私は『スリーパー・サービス』に電話してみることにする。あの「肉の虫(ミートワーム)」は私など意にも留めないだろうが、とにかく電話を入れてみるさ。
感想:真面目な発信者限定という名を持つマインドが真面目な電話をスリーパーサービスにする様です。人間を休眠させることで自分の中(船)に大量の人間を抱え込んだ人に執着した船・・という意味で「肉の虫」とからかっておられるのでしょう。
イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳(25)最高!船のマインドが筒井康隆の文房具並みにかわいい。
7章(II)
ある程度のスケールで見れば、プレート級一般システム艦(GSV)の構造は極めて単純なものだった。外部力場の包囲網の内部に収められたその実体的な船体は、厚さ4キロメートルに達していた。
最も低い1000メートルはほぼすべてがエンジン部分であり、中央の垂直方向に伸びる2キロメートルは艦内空間――巨大で多層的なキュビズムの洞窟システムのような、ドックヤード、ハンガー、ベイ(格納空間)が張り巡らされた密閉ネットワーク――であり、そして最上部の1000メートルは居住区で、その大半が人間用のものだった。
感想:ほうほう。プレート級GSV艦は、下(1000Km)がエンジンで真ん中(2000Km)が格納庫や工場、下(1000km)が居住区という巨大な宇宙都市なんですな。
こうした大まかな数値を用いれば、エンジンの体積(立方キロメートル)から船のおおよその最高速度を割り出し、各種サイズのベイやエンジニアリング空間に割り当てられた容積から任意のサイズの船をどれだけ格納できるかを算出し、居住空間に割り当てられた立方キロメートル数を単に合算することで格納可能な人間の総数を弾き出すのは、誰にとっても簡単なことだった。
感想:まあ、エンジンの大きさから速度、格納庫の容積から積める船の数、居住区の容積から人間の数が大体予測できると言うております。
スリーパー・サービス(Sleeper Service)は、内部的にはほぼ初期の仕様をそのまま維持していたが、これは「エキセントリック(変人艦)」に分類される艦艇においては非常に珍しいことだった。
感想:おおおお(;・∀・)スリーパーサービスこそ冷凍マシーン!カキーンカキーン!(Sleeper Service)の中に住んでいる黒い鳥(AI)がすきだ。
通常、彼らが真っ先に行うのは、個人的な美学、取り憑かれたようなこだわり、あるいは単なる気まぐれに従って自らの物理的形状や内部レイアウトを壊滅的に再構成することだった。
感想:イカレタ風変りなマインドは自我に走るようです。東京吉祥にある楳図かずおさんの自宅はピンク色なんですが、街の風格が落ちるということでご近所さんからいろいろ言われていたそうです。ちなみに楳図かずおの好きな作品は「洗礼」です。
しかし、スリーパー・サービスが初期デザインに固執し、外側に自前のプライベートな海洋やガス惑星環境を追加しただけにとどまっていたという事実は、その実際の挙動を「本来発揮できるはずの能力」と比較測定することを比較的容易にし、そもそも「エキセントリック」であること以外に余計な悪さを働いていないかを確かめることを可能にしていた。
感想:そうそう、自分の趣味で船の中に「巨大な海」「ガス惑星環境」「不思議な生き物」を作っているんだから完全に個性的ではないかw
もちろん、船の能力に関するこうした単純で算術的な推計に加えて、「エキセントリック艦」を扱う際には、もう一歩先を行くアドバンテージを持っておくのが常に賢明なやり方だった。具体的に言えば「インテリジェンス(情報)」――内部からの視点、すなわち「スパイ」である。
感想:スリーパーサービス号はGSV艦なんでね、勝手に好きなことされちゃあ困るんですよ(゚∀゚)ということで、監視役をつけているのですね。
ドレーヴ星系に近づくにつれ、プレート級GSVスリーパー・サービスは、通常の巡航速度である約4万倍光速(キロライト)で航行していた。
船はすでに内星系に立ち寄りたいという意思を表明しており、太陽自体から1光週離れた最外郭惑星の軌道を通過する際、順当に減速を開始した。
スリーパー・サービスを密かに追跡していたGSVヨーニング・エンジェル(Yawning Angel)は、数億キロメートル後方で同じレートで減速した。
感想:えーと、お名前は「あくびをする天使」号かな?(名前からしてスパイの能力に乏しい気がしてしまうんだがw)
ヨーニング・エンジェルは、スリーパー・サービスのエスコート役を交代で引き受けることに同意した長大なGSVの列における、最新の担当艦だった。
それは特に過酷なタスクではなかったが(実際、正気なGSVなら誰も過酷であることを望まない)、そこにはちょっとした「他人の威光を借りた華やかさ」が伴っていた。
変人を監視し、望む場所ならどこへでも放浪させつつも、これほどエキセントリックな信条を奉じる絶大な力を持った船が明らかに受けるに値する「同胞としての警戒」を維持するのだ。
スリーパー・サービスの追跡役(シャドウ)になるための唯一の資格は、信頼できると見なされていること、そしてスリーパー・サービスが万が一急発進(ダッシュ)を試みた場合に追従できる能力を持っていること――言い換えれば、それよりも高速でなければならない、ということだった。
感想:まあ、みんなが大好きなお酒で例えると「飲むペースは君に合わせるよ」なんて言う人はアルコール耐性が強いのではないか?
ヨーニング・エンジェルはこの仕事を1年近く続けており、手応えのない(負担の少ない)ものだと感じていた。
感想:あくびをしちゃうくらいだからね(´・ω・`)ヘイワニコシタコトハナイガ・・
もちろん、自らのコーススケジュールを自由に立てられないのは多少苛立たしいことだったが、適切な態度を持ち、「効率性こそがすべての絶対的な最優先事項である」という標準的なマインドの確信を捨て去りさえすれば、それは奇妙なほど精神を高揚させ、自由すら感じさせる経験となり得た。
感想:あはあはあはhw。その発言・・あいつだ、輪ゴムだ。筒井康隆の小説「虚航船団」に登場するパイロットの輪ゴムそのものではないか。(ちなみに輪ゴムはゲシュタルト崩壊を起こし軌道から外れ惑星に追突させようとしたところ、異常に自己肯定感の高い下敷きによって連れ出されたのだった。)
GSVは常に、物理的に存在可能な数よりも多くの場所から同時に求められており、他の人々や他の船からの要望やリクエストを断らざるを得ない時に「他の誰かのせい」にできるのは、一種の救いでもあった。
感想:他の船の依頼を「今忙しいから無理」と断れる事がうれしいらしい。
例えば、今回のドレーヴへの寄港は予測されていなかった――スリーパー・サービスのコースは翌月にかけて概ね予測可能なルートを辿ると思われていたのだ――だが今やここにやってきた以上、ヨーニング・エンジェルは数隻の船を切り離し、別の数隻を引き取り、乗組員の一部を入れ替えることができるだろう。
感想:そうそう、スリーパーサービス号は「休眠状態の人間」を降ろしたり、新しい希望者を乗せたりするからね。
時間は十分にあるはずだった。スリーパー・サービスは自らを追尾する船の存在を一度も認めたことがなく、40年前にエキセントリックに転向して以来コーススケジュールを公表したこともなかったが、「再覚醒した人々を再び生者の世界へと戻す」という一定の義務を負っており、訪れる星系にどれくらい滞在するかは常に事前アナウンスしていた。
感想:わたしも休眠状態に入るならスリーパーサービスがいいなあ。寝れている間に展示されるけどさw
今回のドレーヴには1週間滞在する予定だった。これは異例の長長さだった。これまでどこに滞在するにも3日を超えたことはなかったのだ。
スリーパー・サービスの行動に関する専門家とされる船グループの見解によれば、そしてこのGSV自身がますます稀になっていた通信の中で語っていた内容からすれば、それは船が自らの預かりもの(責任)をすべて降ろそうとしていることを意味していた。
感想:積み荷(人間)を降ろすということは、戦いの場所に行ける・・!スリーパーサービスの専門家がいるなんて暇な奴らめ(´▽`)
すなわち、何十年にもわたって収集してきたすべての「被保管者(ストーリーズ)」と、巨大な海生・空棲・ガス惑星棲の生物たちが、適合するハビタット(生息環境)へと――おそらく転送(Displace)ではなく物理的に――移送されるということだった。
感想:「あくびをする天使」号の本格的な仕事開始説。(もうあくびできない)
ドレーヴはこの作業を行うのに理想的な星系だった。4000年にわたりカルチャーの星系であり続け、概ね手付かずの9つの惑星と、3つのオービタル――幅わずか数千キロメートル、直径1000万キロメートルに及ぶ居住空間の巨大なブレスレット(環)であり、自らの緻密に調律された軌道で静かに回転し、700億近くの魂を収容していた――で構成されていた。
それらの魂のいくつかは人間とは程遠いものだった。各オービタルの3分の1は、全く異なる生物のために設計された生態系に充てられていた。
一つはガス惑星棲の生物用、もう一つはメタン大気生物用、そしてもう一つは高温ケイ素生物用だった。
スリーパー・サービスが他のガス惑星から拾い上げてきた動物群は、そうした生物を念頭に設計されたオービタルのサブセクションにすべて快適に収まるはずであり、海生・空棲生物もその中や他の二つの世界に住処を見つけられるはずだった。
感想:あの黒い鳥もここで降ろされるのか・・
1週間の滞在。ヨーニング・エンジェルは、それが人間の乗組員たちに非常に受けが良いだろうと考えた。GSVが同鋭(他のマインドたち)の間で体面を失う数少ない小規模ながらも重大で痛烈な理由の一つが「平均よりも高い乗組員離職率」であり、予想していたとはいえ、乗組員たちが「週単位・月単位でどこへ行くのか確実な事前連絡が得られない生活にはもう嫌気が差した」と宣言して他の場所で暮らすことを決めた時、ヨーニング・エンジェルはその経験を極めて心苦しく感じていたのだった。
感想:「あくびをする天使」号には人間の乗組員もいるようで、彼らはいつ宇宙船から出られるのか分からず「もうこんな仕事やめてやる!」と言われる前に、1週間も羽を伸ばせることになったのだから、人間たちのストレスも解消されるかな、と思っていられます。
どれほど引き止めても無駄だった。これほど国際的(宇宙的)で洗練され、歓迎的な星系での実質1週間の休暇は、忠誠心と「船からの乗り換え(降船)」の間で揺れ動いている多くの乗組員たちに、「古き良きヨーニング・エンジェルに留まり続ける価値がある」と納得させるに十分だろう、と確信していた。
スリーパー・サービスは、中央のオービタルの軌道パスに沿って4分の1周先行した位置で、軌道に対して静止した。これは、3つの世界すべてに人間や動物の貨物を均等に分配するのに最も効率的なポジションだった。
そうすることの許可がついに最後のオービタルのハブ・マインドから届き、スリーパー・サービスは順当に降ろす準備を開始した。
ヨーニング・エンジェルは遠くから、その大型艦が実空間の下にあるエネルギーグリッドから牽引力場を解除し、一次スキャンおよび前方スキャン力場をオフにし、カーテンシールドを下げ、どこかにしばらく留まろうとする際に船が通常行う大小様々な無数の調整を完了するのを見守っていた。
感想:まあ、白土三平の「カムイ外伝」に登場するサンガが言うてたで。「海で生きるものは海を信じなければならない」「信じられるかではなく信じることが大切なんだ」「海で生きる者は必ず海で死ぬ」「人間はみんな海と共に生きている」これらの海を宇宙に変えても同じことだと思ってしまうんだな。
スリーパー・サービスの外部の姿は、以前と変わらぬままだった――長さ90キロメートル、幅60キロメートル、高さ20キロメートルの銀色の楕円体だった。
しかし数分後、その反射する力場の障壁から小型船艇が現れ始め、休眠状態の人々や鎮静剤を打たれた動物たちの貨物を載せて3つのオービタルへと急進していった。
これらはすべて、ヨーニング・エンジェルがすでに受け取っていた、この「エキセントリックGSV」の配置や意図に関する情報と一致していた。ここまではすべて順調だった。
すべてが良好であることに満足したヨーニング・エンジェルは、中央のオービタルでありガス惑星環境を備えたテリオクレと速度を合わせるために漂い寄せた。
感想:満足・・かわいい「あくびをする天使」号・・。
オービタルの最も人口の多いセクションの下に接岸し、自らの居住者のために多様な旅行や休暇の手配を整える一方で、ホスト側の歓待に感謝するための艦上訪問、イベント、パーティのスケジュールを組み立てた。
すべては極めて円滑に進んでいた――二日目までは。
感想:あふあふ(興奮)仕事をなめてるかわいい「あくびをする天使」号になにが起きるや否や(゚∀゚)ででん
その時、何の前触れもなく、ヨーニング・エンジェルが接岸していたオービタルの区域で夜が明けた直後のことだった。
テリオクレの至る所に、休眠中の身体や巨大な動物たちが突如として出現し始めたのだ。
決めポーズをとった人々――中にはスリーパー・サービス艦内で展示(タブロ)の一部となっていた衣服や制服を着たままの者もいた――が、スポーツホールの中、ビーチ、テラス、遊歩道、舗道、公園、広場、誰もいないスタジアム、その他オービタルが提供し得るあらゆる公共スペースの中に、突如として姿を現した。
これらの事象を目撃した僅かな人々にとって、それらの身体が転送(Displace)されてきたことは明白だった。
感想:おお、スリーパーサービス号の芸術が街に出現するというレア!(ある意味これこそほんとの芸術w)
それぞれの出現は、腰の高さより少し上の位置に突如として点滅する光の微小な点によって合図された。この光は急速に拡大して2メートルの灰色の球体となり、即座にポンと音を立てて消え去り、後には動かない「被保管者(ストーリーズ)」を残した。
身動きひとつしない人々が、露に濡れた芝生の上に横たわっていたり、公園のベンチに座っていたり、まるで何らかの恐ろしい災害や、特に主張の激しいパブリック・アート(野外彫刻)の展示の後であるかのように、模様の施されたモザイクの広場やピアッツァ(広場)を横切って何百人も散らばっていた。
そうした空間を幾何学的に規則正しく渦巻いていた薄暗い清掃マシンたちは困惑し、突如として現れた予期せぬ障害物の発疹(ラッシュ)の間を、不規則なコースを辿りながら右往左往させられた。
感想:困惑するマシーンが可愛すぎるw
海では、海水面のすぐ下で水そのものの球体全体が注意深く「転送」されたことで、海面は何百もの異なる場所で膨らみ、持ち上がった。
感想:どれだけ収容してんねん。まあそうだよな、惑星ひとつ収容してるようなもんなんだもんな。もはや国の概念などナスw
その中に収められた海生生物たちは未だ穏やかに鎮静化されており、巨大な金魚鉢のような水塊の中で緩慢に動いていた。その水塊のそれぞれは数時間の間周囲の海水との分離を維持し、浸透膜力場が内部の条件を外の海の条件へと徐々に適応させていった。
感想:スリーパーサービスの作った生き物は適応力が高い。人間もそうでありたいが難しい故に体をサイボーグ化した人間を士郎正宗の漫画なら「義体」と言うし、今読んでいる小説マーダーボッドダイアリーなら強化人間(スプライス:接合人)と言うし、イアンバンクスの小説では人間の脳がAIのスピードに追い付けるように脳内に薬品を常に注入しているし、まあそういうことだよな。
空中では、同じような薄織物のような力場が、大気中に浮かぶ膨らんだ動物群全体を包み込み、微風の中で朦朧と揺れていた。
巨大で浅い曲面を描くオービタルのさらに先では、ガス惑星環境が、ほぼ一瞬の「移民」とそれに続く緩やかな融合という、同様の光景の目撃者となっていた。
感想:仮想現実って感じで興奮する様。いつだってテクノロジーは俺たちを感動させてくれるぜ(´▽`)
ヨーニング・エンジェル自体のドローンたち――オービタルにおける外交官(大使)たち――は、これらの突如たる出現のほんの一握りを目撃した。
感想:な・・なんじゃこりゃぁあ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル ←あくびをする天使号の心の声を代弁
ナノ秒の遅延の後、許可を要請すると、GSVはオービタル自体の監視システムへと接続(クリック)し、そして成長する恐怖とともに見守った。
何百、何千、何万もの休眠中の身体や動物たちが、テリオクレの全表面、そして全空気・水・ガス生態系の中に「ドスン」と音を立てて出現していく様を。
ヨーニング・エンジェルは全システムをフラッシュ覚醒させ、その注意をスリーパー・サービスへと向けた。
その巨大なGSVはすでに動き出しており、回転し捻れながら、星系から真上を向いて脱出する姿勢をとっていた。
感想:1週間滞在は監視役である「あくびをする天使」号を欺く嘘だったと判明w今まで忠実で問題を起こさなかったスリーパーサービスゆえに油断していた今回の一件であった、ちーん。
そのエンジン力場はエネルギーグリッドに再接続され、スキャナーはすべてすでにオンラインに戻り、多層力場コンプレックスの残りはディープスペース(深宇宙)への持続航行のために急速に再構成されていた。
船は移動を開始した――特に速くはなかった。その転送機は今や「配置(put)」から「回収(pick)」へと切り替わっていた。
わずか数秒のうちに、船は自らの小型船艇のほぼ全艦隊を星系内からバチッと回収し去った。それら小型船の、真実でありながら欺瞞的であった「配達任務」は完了したのだ。ただ最も遠く、最も巨大な艦艇だけが置き去りにされた。
ヨーニング・エンジェルは追跡のための自らの出発準備をすでに狂乱状態で進めており、移送コリドー(通路)の大半を遮断し、オービタルからドローンたちを急遽「転送」回収し、世界のハブへと「出発許可リクエスト」を大急ぎで送り、自らの速度が大きくなりすぎる前に他の要員を引き戻しつつ、一進し始めた後は小型船艇で人々をオービタルへと送り返すスケジュールを立てていた。
感想:慌てる「あくびをする天使」号の様はまるで筒井康隆の「虚航船団」に登場するモブキャラそのもので愛おしい。
自分のエネルギーの無駄だと分かってはいたが、それでもヨーニング・エンジェルはスリーパー・サービスへと通信を打った。その間、走り去る船が加速して離れていくのを注視し続けた。
ヨーニング・エンジェルは測定し、判定し、較正(キャリブレーション)していた。船は一つの数字を探しており、逃亡するクラフトという「現実」の一側面と、単純だが決定的な方程式という「抽象」を比較していた。
もしスリーパー・サービスの速度が時間経過のどの時点においても、ある特定の方程式で記述される限界値を超えた場合、ヨーニング・エンジェルは窮地に陥るかもしれないのだった。
いずれにせよトラブルかもしれないが、もし大型船が自らの通常の設計パラメーターから示唆されるよりも大幅に速く加速しているとすれば――船の無駄な外部環境の追加質量を考慮に入れた上で――そのトラブルはまさに「今」始まることになる。
感想:スリーパーサービス号は自身の船を改造している説。
現状、ヨーニング・エンジェルが胸を撫でおろしたことに、スリーパー・サービスはまさにその計算通りのレートで離れていっていた。船の動きは今なお完全に捕捉可能(理解可能)であり、たとえヨーニング・エンジェルが何もせずに丸一日待ったとしても、依然としてその大型船を容易に追跡し、二日以内に追いつくことができるはずだった。
それでも何らかの企みを疑い、ヨーニング・エンジェルは星系全体にわたって、ギガトン級の水やガス惑星大気の「予期せぬ転送」が起きていないか観察ルーチンを開始した。
感想:いま予期せぬことが起きている以上、今後も起きるが世の常。
そうした余分な容積と質量を一気に投げ捨てることが、たとえヨーニング・エンジェルよりは遥かに遅いとしても、スリーパー・サービスが追加のスピードの爆発(スパート)を得る一つの方法となり得るからだ。
小型のGSVは、礼儀正しくも執拗なシグナルを再び送信した。依然としてスリーパー・サービスからの返信はない。それについては何の驚きもなかった。
感想:そりゃあスリーパーサービス号は監視役から「一刻も早く逃げる」行動をしているのでな。
ヨーニング・エンジェルは他の「コンタクト(接触部)」の艦艇に何が起きているかを知らせる通信を送り、自らの最速の船の一つ――まさにこのような事態に備えてGSV自体の力場の外側の宇宙空間に配置されていたクリフ級スーパーリフター(超大型運搬船)――を、逃走するGSVの追跡へと派遣した。この早熟で苛立たしい行動が深刻に受け止められていることを知らしめるためだけに。
おそらくスリーパー・サービスは、何か重大な企みを抱いているというよりは、単にへそを曲げている(不機嫌な行動をとっている)だけなのだろう。
感想:えっ?えっ?なぜそのような発想に至る!?
しかしヨーニング・エンジェルとしても、あの大型船が自らの小型船艇の相当な割合を放り出し、人間や動物を「転送(Displace)」するという手段に訴えたという事実を無視することはできなかった。
「転送」とは――特にこれほどのスピードにおいては――本質的かつ回避不能な危険を伴うものだった。
感想:そういえば、小説「ゲームプレーヤー」に登場するドローン「モフリン」も言うてたね。グルゲーをアザド帝国から転送させるか云々のとき。
単一の「転送」イベントにおいて、何かが恐ろしく、致命的に失敗するリスクは、およそ8000万分の1に過ぎない。しかしそれだけで、並の完璧主義で神経質な船のマインドに、過酷極まりない緊急事態以外の局面で「生きているもの」に対してそのプロセスを使用することを躊躇させるには十分だった。
感想:普通の人間を転送させるならリスクはほぼゼロってことか。
そしてスリーパー・サービスは――そのすべての魂(人間)を排除し尽くしたと仮定するならば――1分かそこらの間に「3万回以上」の転送を実行したはずであり、正気なマインドなら通常なら絶対的な恐怖とともに縮み上がるような「失策の確率範囲」へと確率を押し上げていたのだ。
感想:あははは(゚∀゚)ハァハァ狂気的な行動をするマインド・・好きすぎまする(;゚∀゚)=3ハァハァ
スリーパー_サービスの「エキセントリック(変態性)」を考慮に入れたとしても、その事実は、その現在の行動において「通常以上の緊急性、あるいは重大性」が存在することを示唆する傾向があった。
ヨーニング・エンジェルは、実質的な「迷惑度チャート」を参照した。
感想:なんだ、そのモブ味を感じさせるデータはw
今すぐ――100秒以内に――出発して、オービタルではなく艦内に取り残された大勢の人々を怒らせるか(あるいはその逆)……それとも20時間以内に出発して、計画を狂わされて苛立たれるとしても、全員を本来あるべき場所に戻すか……。
妥協案。船は「8時間後の出発」を設定した。
リング、ペン、イヤリング、ブローチ、衣服の一部などの形状をした端末――そして体内埋め込み型の「ニューラル・レース(神経縄)」――が、オービタル全域および広大な星系全体でカルチャーの要員たちを驚かせて起こし、緊急メッセージを伝達することを主張した。「1週間の休暇で全員をご機嫌にする」計画は台無しだった……。
感想:ここにきてまで自分のことしか考えていない「あくびをする天使」号は愛しいなぁ。
スリーパー・サービスは暗闇の中へと滑らかに加速して離れていき、すでに星系から十分に離れていた。船は「誘発(インダクト)」を開始し、下層超空間(インフェリア・ハイパースペース)と上層超空間(スペリア・ハイパースペース)の間を素早く往来し始めた。
その見た目上の実空間速度は、ほぼ瞬時に正確に「23倍」へと跳ね上がった。繰り返すが、ヨーニング・エンジェルが安堵したことに、それはドンピシャ(完璧に計算通り)だった。嫌なサプライズ(不吉な驚き)は何もなかった。
スーパーリフター「チャリタブル・ビュー(Charitable View)」は逃走するクラフトの後を追い、そのエンジンには負担をかけず、エネルギー消費をしっかりと絞り込みながら、同じく4次元空間の層の間を縫うように進んだ。
そのプロセスは、トビウオが水面から空気へと飛び出し、再び戻る様に例えられていた。ただし、1回おきの空気へのジャンプが、水の上ではなく「水の下の空気の層」へのジャンプである点を除けば――そこで比喩は破綻するのだが。
ヨーニング・エンジェルは、自らの要員やホストたちに向けて、注意深く作成された洗練された表現の謝罪文の数々を急速にカスタマイズしていた。
感想:あはあは。船員のご機嫌とり、離職率を下げることに頭がいっぱいなかわいいあくびをする天使号・・
もしスリーパー・サービスが現在の針路を維持しなかった場合に辿り得る異なるコースを反映して変更された、船艇の復帰スケジュールは、それほど悪い問題ではなかった。
スリーパー・サービスが自身の艦隊のほとんどを出すまで、人々が遠出するのを控えさせていたからだ。当時は慎重すぎると思えたその処置も、今となっては先見の明があったように思えた。
船は知能リソースの一部を割いて、自分の船の乗組員たちが戻ってきた時に彼らをなだめるための「おもてなしと魅力的な提案」のリストを作成した。
そして、この忌々しいマシンを追跡する義務から解放され、再び自らのコーススケジュールを立てられるようになった暁には、ドレーヴへ2週間戻って謝罪を兼ねた祭りや祝い事で埋め尽くす計画を立てた。
感想:ほうほう。わたしは「あくびをする天使」号の船員として働きたいです。(以後すごい余談)いま世界は恐ろしくもすごい時代の過渡期を迎えているのだが、近親者にその件を話しても無反応であったのだがみんな何を考えて生きているんだろう。ああ、人間の分断ってこういうことなのかと恐ろしくなった。車で移動する生活が当たり前なようにAIと生活するのも当たり前になるのだが、車は人間が使う「物」だけどAIはもはや「生物」で人間の知能を超えているゆえに車よりも「大きな変化」が起きる認識が薄いのはなぜなのだろう。車によって人間は歩かなくなったようにAIによって「考える能力」が落ちることで何が起きるのかなぜ興味がないのだろう。車なしの生活は現実的に無理なので車と共に生きるように、AIも生まれてしまった知能をなかったことにできないように、人間はAIと共存する中で人がどう生きていくかをなぜ興味を持たないのだろう・・ああ、今生きている時代はものすごく豊かでおもしろくて楽しい時代なんだ。そんな時代に絶望を感じている理由は「人間の分断」が激しいことなのだろう。過渡期ゆえにその分断した人間と関わらなくてはいけないことなのだろう。いろんな人間と「どうやって生きていく?」と話せたら楽しいのだろう。そこに賢いとか高い知能はいらない。「俺は毎日ポテトチップスと酒があればいいかな」という人がいてもいいし「なんでも自由な世界だから私は舞台女優になる」なんて奴もおもしろい・・と考えてしまう(´・ω・`)おっと長ったらしい余計なことを書いてしまった・・まあ最後までを読む人間はSFに興味ある系マーンだろうからいっか。
スーパーリフターチャリタブル・ビューからの報告によれば、スリーパー・サービスは依然として予測通りの挙動を続けていた。
状況は、手の中に収まっている(制御できている)ように思われた。
ヨーニング・エンジェルはこれまでの自らの行動を再評価し、それが模範的なものであると結論づけた。すべて実に苛立たしい事態ではあったが、自分は巧みに対応しており、可能な限りマニュアル(標準手順)通りに処理し、必要な場面では適切な緊急性をもって理にかなった即興対応を行っていた。実に結構。この件が終われば、自分は輝かしい評価を得られるかもしれない。
感想:かわいいなぁ。ほんと筒井康隆の「虚航船団」に登場する文房具みたいだよ・・。あの文房具たちが互いをおもしろがる様は、さくらももこの「ちびまるこちゃん」そのものさ。
出航から3時間26分17秒後、一般システム艦スリーパー・サービスは、その名目上の「終末加速点(ターミナル・アクセレレーション・ポイント)」に達した。これは本来なら速度の上昇を止め、二つある超空間層のいずれかを選択して、心地よい一定速度で巡航(クルーズ)に移るべきポイントだった。
だが、そうはならなかった。
感想:ほうほう。いつもと違うスリーパーサービスとな。
代わりに船はさらに激しく加速した。あの「0.54」という数値は急速に跳ね上がり、プレート級の通常の設計限界である「0.72」へと一気に達した。
チャリタブル・ビューはこの事態の急転をヨーニング・エンジェルに通信で伝えた。ヨーニング・エンジェルはおよそ1ミリ秒間、ショックでフリーズした。星系内にいる自らのすべての船、ドローン、センサー、そして外部からの報告を再確認した。スリーパー・サービスが自らのセンサー感知範囲内のどこかに余分な質量を投棄したという形跡は一切なかった。
それなのに、まるで質量を削ぎ落としたかのような挙動を示していたのだ。
どこでそれをやったというのか? 秘密裏に超遠距離用ディスプレイス(転送機)を建造していたとでもいうのか?(いや、それほど莫大な容積をセンサー範囲外へと投棄できる転送機を作るには、自身の質量の半分が必要となるし、それにはそもそも長年にわたって蓄積してきた過剰な外部環境の追加質量もすべて含まれてしまう……しかし――今やそれほど突飛な発想をしている以上――もう一つの、関連する可能性が存在し得るのではないか……いや、だがそんなはずはない。何の事前情報も、それを示すヒントもなかったのだから……いや、そんなことは考えたくすらもない……)
感想:あ、そうだ。「あくびをする天使」号は・・副船長のメモ用紙に似ているんだ。
ヨーニング・エンジェルは、再作成した謝罪文、理解を求める懇願、そして短縮された旅程の怒涛の嵐の中で、すでに手配していたすべてのスケジュールを再調整した。
提示していた出航警告時間を半減させた。出航まで、あと33分。皆に説明しようと試みたが、状況はますます緊急性を増していた。
スリーパー・サービスの加速数値は、さらに20分間にわたって設計上の最大値で安定していたが、数光日離れた実空間の持ち場からスリーパー・サービスのパフォーマンスのあらゆる側面を注意深く監視していたチャリタブル・ビューは、スリーパー・サービスの牽引力場とエネルギーグリッドとの接合部でいくつかの奇妙な現象が起きていることを報告した。
いまやヨーニング・エンジェルは、身の毛もよだつような猛烈な緊張状態の中に存在していた。最大能力で思考し、全力のスピードで苦悩し、あらゆる出来事の進行がいかに微ぬるく遅いかということに突如として絶望的なほど思い知らされていた。
同じ状態に置かれた人間であったなら、沸き立つ胃を押さえつけ、髪をかきむしり、意味不明な言葉を口走っていたことだろう。
感想:そうそう、ここで意味不明な言葉を口走ると、筒井康隆「虚航船団」の船長「赤鉛筆」になる(笑)
この人間どもを見よ! これほど氷河のように遅い歩みが、どうして「生命」などと呼べようか? 彼らが新たな愚問を口にするために口を開くそのわずかな時間の間に、一時代が過ぎ去り、仮想の帝国が興亡し得るのだ!
感想:「あくびをする天使」号は、人間たちの行動の遅さに苛立ちを示しておられます。
船でさえ、船でさえそうだ。
船とそれが結合しているドックを包む空気の泡の中では、音速以下のスピードに制限されていたのだ。
船は、空気など単に捨て去って、すべてを真空の中で移動させることがどれほど実行可能かを検討した。それは理にかなっていた。
幸いにも、船はすでにすべての傷つきやすい遊覧船を退避させ、接続されていない船体開口部を封鎖・固定していた。船はハブ(中心マインド)に自分の行っていることを告げた。
ハブは空気の一部が失われることに抗議した。GSVは構わず空気を投げ捨てた。すべてが少し速く動き始めた。ハブは抗議の悲鳴を上げたが、無視した。
冷静に、冷静にならなければ。
集中を保ち、最も重要な目標を念頭に置くのだ。
感想:あ~いいね・・・興奮しますぞ
人間で言えば吐き気に相当する波が、チャリタブル・ビューからのシグナルが届くやいなやヨーニング・エンジェルのマインドを駆け抜けた。今度は一体何だ?
感想:あはははは(;゚∀゚)=3ハァハァ
何を恐れていたとしても、現実はそれ以上に最悪だった
。
スリーパー・サービスの加速係数が増大し始めていた。ほぼ同時に、それは通常の持続可能な限界速度(限界能力)を超害した。
魅了され、打ちのめされ、恐れおののきながら、ヨーニング・エンジェルは、自らを超即座に出航させる一連の動作とコマンドを開始しつつも、ますます遠ざかっていく「我が子(追跡船)」からの、あの別のGSVの進行状況に関する実況中継に耳を傾けた。
12分早い出発だったが、背に腹は代えられない。人々が腹を立てたとしても、知ったことか。加速は依然として増大している。出発の時だ。切り離せ。よし。
感想:暴走し始めている「あくびをする天使」号ひゃはーーーー(゚∀゚)
チャリタブル・ビューは、スリーパー・サービスの最も外側の力場範囲が、剥き出しの船体ギリギリの最小値(1キロメートル以内)にまで縮小したとシグナルを送ってきた。
ヨーニング・エンジェルはオービタルから離れ、ひねりを加え、狙いを定め、世界の底面からわずか数キロメートルの場所で超空間へと突入した。
このような無礼で現実的に危険な行為に対するハブからの灼熱の抗議の咆哮も、一瞬前までGSVのロビーへと続く移送通路を歩いていたのに、突如として緊急封鎖力場に衝突し、黒闇と星々以外には何も見えない状態に陥った人々からの驚愕の――しかし遅い、あまりにも遅い――悲鳴も無視した。
スーパーリフターの連続報告は続いた。スリーパー・サービスの加速は緩やかだが着実に増大し続け、そこで一旦停止してゼロへと落ちた。船の速度は一定を保った。
これで終わりだろうか? まだ追いつける。パニックは去ったのか?
だが次の瞬間、逃走する船の速度が再び増大した。
その加速率とともに! 不可能だ!
数分前にヨーニング・エンジェルのマインドをかすめた恐ろしい思考が、押し掛けた不快な客のように、恐ろしく執拗な確信となって居座った。
船は計算を行った。
プレート級GSVの「エンジンの1立方キロメートルあたりの推進力」をとる。その立方あたりの推進力の値で「16立方キロメートルの追加ドライブ(エンジン)」を加算する……それを一度に32立方キロメートルにしてみる……すると、今目撃したスリーパー・サービスの加速の跳ね上がりと完全に一致した。ゼネラル・ベイ(汎用格納庫)。
おお、なんということだ。奴は汎用格納庫をすべて「エンジン」で埋め尽くしていたのだ!
感想:うほうほうほ(興奮)ほら、スリーパーサービスの格納庫あるじゃない。黒い鳥が「なんだここ」って男たちが眠ってた場所。あそこは全部エンジンだったわけだ。
チャリタブル・ビューは、スリーパー・サービスの進行ペースが再び滑らかに増大し、次のステップ、次の停止へと至ったことを報告した。追跡船もそれに合わせて自身の加速を強めていた。
ヨーニング・エンジェルは最悪の事態をすでに恐れながら、二基の後を追って激走した。計算しろ、計算するんだ。
スリーパー・サービスは少なくとも4つのゼネラル・ベイを予備エンジンで埋め尽くしており、それらを一度に二つずつオンラインにして、追加の推進力を均等に配分しているのだ……
更なる加速。
6つだ。おそらく8つのベイすべてだ。では、その背後にあるエンジニアリング空間はどうなっている? そこも奪われたのか?
感想:さてさて、なぜスリーパーサービスがこれほど過剰性能なエンジンを40年間もかけて隠れて建造したのか・・多分行き先はカルチャーの武器庫である「ピスタンス」?それともセイチお嬢様やホフォエンが向かっている「ティエール」?
