日記
春、雨降る生誕祭
相方の誕生日だというので、相方がかねてより目をつけていた一軒の「居酒屋」へと繰り出した。
そこは、開店早々にして常連という名の猛者たちが、すでに壁一面にズラリと居座っているような、なかなかに凄絶な空間であった。
相方はといえば、席に着くなり猛然たる勢いで「アルコール」を胃袋に流し込み、対する私は、ひたすら「熱いウーロン茶」を啜るという、「温度差の激しい布陣」で挑むのである。
ふと壁を見れば、そこには実に潔い、軍律のごとき張り紙があった。
『大声禁止! 拍手禁止!』
なるほど、道理で静かなわけだ。
客の八割が一人客ということもあるが、この張り紙による統制が見事に効いているのである。
やがて、アルコールの回り始めた相方が、哲学的ともいえる呟きを漏らした。
「酒は百害あって一利なしって言うけれど、本当に一利もありゃしないよなあ。飲むほどに不健康まっしぐらだ」
何を言うか。
君は今まさにその「一利なき液体」に酔いしれ、周囲を見渡せば私以外の全員が同様に酔っ払っているのである。
そんな矛盾に満ちた空気が、この店を支配しているのだ。
すると相方は、さらに踏み込んでくる。
「吉田氏の父君は、毎日飲んでいたのかね?」
そう、父は毎日飲んでいた。
それもかなりの量を、だ。
あの人は、酒という杖がなければ、「孤独」という名の荒野で立ち往生してしまうような人であった。健康に悪いのは百も承知だが、彼のような人間には、「魂のガソリン」としての「酒が不可欠」だったのかもしれない。
まあ、医学的に見れば、毎日飲む時点で立派なアル中なのだが。
私がそう断言すると、相方は我が意を得たりとばかりに声を張り上げた。
「毎日飲む奴は全員アル中なのか! だったら、世の中の酒飲みは、残らずアル中じゃないか!」
その瞬間、店内はしーんと静まり返った。
何しろ、ここにいるのはどう見ても「毎日飲む層」の精鋭たちである。
無言を推奨する張り紙と、酒徒たちの沈黙。
その密度の濃い静寂の中で、相方の放った「全人類アル中説」が、実に見事に、そして残酷に響き渡ったのである。
当の本人は、自らの失言など露知らず。
「さあ、カラオケに行こう!」と意気揚々に店を出ていく。
その後ろ姿を見ながら、私は「人間とは、なんとおかしく、なんと難儀な生き物なのだなあ」と、熱いウーロン茶の余韻に浸るのである。
あーおもしろかった。
来年の誕生日も楽しみだ。
《吉田がカラオケで歌った曲》
・いま、地球が目覚める
(ラナのモノマネはそこそこ自信がある。「男性からモテたい」女性は、是非ともラナをミラーリングしてみてください。全てが詰まっています。)
・夏の幻
(コナンの曲でいちばん好きかも。B'z主題歌時期からコナンがエンタメ化してきて別のおもしろさを楽しめるようになった。)
・謎
(同じくコナンの主題歌。)
