足裏吉田

日記

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イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳 (5)火の鳥 牧村の罰よりマシな罰

2026 / 07 / 03  09:59
イアン・バンクス「EXCESSION」の感想 (5)火の鳥 牧村の罰よりマシな罰

 

その夜もまた、満月の薄明かりがもたらす灰色の境界領域(まどろみ)の中で、あの恐怖が司令官を襲った。今回は以前よりもさらに酷かった。

 

感想:次はどんな人間が登場するんだ。

 

夢の中で、彼は夜明けの淡い光の中に置かれたキャンプ用の簡易ベッドから立ち上がった。谷のふもとでは、死体搬送車の真上にそびえる煙突が、暗い煙を吐き出していた。キャンプ内では他には何も動いていなかった。彼は静まり返ったテントの間を通り抜け、監視塔の下をくぐって、森林地帯を抜けて氷河へと彼を運ぶケーブルカー(フニクラ)へと歩いた。

 

感想:夢の中で?つまり、これは現実ではなくて夢?それとも、本物の記憶てきな、フラッシュバックなのかい?

 

光は目を射るように白く、冷たく希薄な空気が喉の奥をキリキリと刺激した。風が彼を打ちのめし、雪と氷のベールを巻き上げては、岩のように黒い山々と雪のように白い山々の険しい土手に挟まれた、巨大な氷の河のひび割れた表面をあちこちへと移動させていた。

 

感想:美しい氷河ったやつかい。

 

司令官は辺りを見回した。彼らは今、氷河の深い西側の斜面を採掘していた。彼がこの最新の作業現場を目にするのは、これが初めてだった。

 

感想:作業現場とな。陸軍的な戦争かと思いきや、何かの作業なのかい。何を発掘しているのかい。

 

その斜面自体は、彼らが氷河を爆破して作った巨大なすり鉢状の盆地(ボウル)の内部に位置していた。輝く氷の広大な器の底で、男たち、機械、そしてドラグライン(引き綱式の大型掘削機)が、まるで虫のように動いていた。

 

感想:強制収容所の労働のにおい。美しい自然の中で労働させられる‥囚人‥?

 

その斜面は純白だったが、黒い点が点々と散らばっており、この距離からはそれがただの岩石のように見えた。

 

危険なほど急勾配に見える、と彼は思った。しかし、もっと緩やかな角度で切り開いていては時間がかかりすぎてしまう。彼らは常に、本部から急かされ続けていたのだ‥。

 

感想:本部とは、誰だい?この流れは、アフロント人かカルチャーのどちらかだと思うが、また別の組織なのかい?

 

ドラグラインがフックに引っ掛けた貨物を解放する傾斜ランプの頂点では、列車が待機しており、目を眩ませる白い風景を横切るように黒い煙が漂っていた。

 

看守たちは足を踏み鳴らし、技術者たちはウィンチエンジンの傍らで活発に議論を交わし、キャラバン小屋からは休憩を終えたばかりの積み上げ作業員の新しい交代要員が吐き出されていった。

 

感想:発掘作業員、何を発掘しているんだい?そういえば、死体搬送者があったな。死体を埋めているのかい?それとも、死体を発掘しているのかい?

 

掘削作業員を乗せたソリが、氷に刻まれた巨大な裂け目の下へと降ろされていく。彼らの、ボロ布と大差ない制服や衣服に包まれた、不機嫌でやつれた顔つきを、彼は見て取ることができた。

 

地鳴りが響き、彼の足元が振動した。

彼が再び氷の斜面の方を振り返ると、その東側半分が丸ごと崩壊し、圧倒的なスローモーションで、下にいる作業員や看守たちの小さな黒い点の上へと、立ち上る白煙の雲となって崩れ落ちていくのが見えた。

 

感想:逃げねばぁぁあ

 

彼は、小さな人影たちが向きを変え、空気の中を突き進み、自分たちの方へと表面を這うように迫り来る氷の雪崩から逃げ惑うのを見つめていた。

 

数人は生き延びた。だがほとんどは逃げ切れず、その白亜の、きらめく大混乱の中に揉み消され、巨大な白い波の下へと消え去っていった。その物音は、彼の胸に直接響くほど深い轟音だった。

 

感想:うーむ。というか、やっぱりなんで人間の作業員が必要なんだよ?と思ってしまう。それとも、マインドの方がカルチャーよりも立場が上なのか?人間は人工知能の支配下なのか?だとしたら、納得だけどさ。

 

彼は斜面の切り口の縁に沿って、傾斜面の頂点へと走った。誰もが叫び声を上げ、右往左往していた。盆地の底全体が、舞い上がった雪と粉砕された氷の白い霧で満たされ、氷の崩落そのものが埋め尽くした犠牲者たちと同じように、まだ走って逃げている生存者たちの姿を覆い隠していった。

 

感想:ほうほう。昔、ある犠牲者を氷の下に埋めたのか。それ(死体)を発掘しているのか。何のために?

 

ウィンチエンジンが無理な負荷をかけられ、高い、金切り声を上げた。ドラグラインは停止していた。彼は傾斜面の近くに集まりつつある人々の群れへと駆け寄った。

 

ここで何が起きるか、私は知っている、と彼は思った。自分に何が起きるかも分かっている。あの痛みを覚えている。あの少女が見える。この場面は知っている。何が起きるか分かっているんだ。走るのをやめなければならない。なぜ私は走るのをやめられないんだ?なぜ止まれない? なぜ目を覚ますことができないんだ?

 

感想:こいつは何を言ってるんだ?あ、そうか。ここは君の夢だったね。にしても、リアルな夢だこと。昔の記憶なんじゃないか?

 

彼が他の者たちのところへたどり着いた時、ウィンチエンジンによって今なお引っ張られ続け、瓦礫に挟まれて身動きが取れなくなっていたドラグラインの張力が、限界を超えた。

 

霧の盆地の奥深くのどこかで、鋼鉄製の太いワイヤーロープが、銃声のような音を立てて断裂した。鋼鉄のケーブルは、シューシューと音を立て、うねり、身をよじらせながら空気中を突き進み、斜面を引き裂いて縁の頂部へと駆け上ってきた。 

 

感想:何が起きるかわかっているんだ‥とは、この事故ね。やっぱりこれは、記憶のフラッシュバックね。

 

その途中で、鞭から滴り落ちる氷のしずくのように、フックに掛かっていたおぞましい貨物のほとんどを振り落としながら。

 

彼は傾斜面の頂点にいる男たちに向かって悲鳴を上げ、足をもつれさせて雪の中にうつ伏せに倒れ込んだ。間に合って身を伏せることができたのは、技術者のうちの一人だけだった。残りの者のほとんどは、大鎌のように迫るワイヤーロープによって綺麗に真っ二つにされ、血のしぶきを上げながら雪の上へとゆっくり崩れ落ちた。

 

感想:まさに、血の歴史‥。デスレッドファイヤー‥。

 

うねるワイヤーの束が、凄まじい金属音を立てて鉄道の機関車を叩き、まるで安堵したかのようにウィンチのハウジングに巻き付いた。他のコイル状のワイヤーは、雪の上に重々しく叩きつけられた。

 

何かが、全力で振り下ろされた大槌のような凄まじい力で彼の太ももを直撃し、激変するような激痛とともに彼の骨を打ち砕いた。

 

感想:何かとは‥。このパターンは、遺体が飛んできて、彼の骨を砕いたんじゃないの。人間って重いからね。だから、人間に労働させる意味ってあるのかな。効率悪いし、こういう事故も起こす。

 

その衝撃で彼は雪の中を何度も転がり、その間に砕けた骨が肉をすり潰し、掘り進み、突き刺した。それは半日にも及ぶかのように長く感じられた。彼は雪の中で横たわり、悲鳴を上げた。彼は自分を直撃した「それ」と、至近距離で顔を突き合わせることになった。

 

感想:来なきゃよかった、と後悔する瞬間あるある。いや、ドローンはいないのかね?本当に人間しかいないのかい?一体、いつの時代なんだ。そういえば、誰かが言ってたな。「AIに事務作業をさせているけど心配だから、間違えていないか僕が確認するんです。二度手間で困りますよね」と。いや、お前は‥お前がやるより正確なんだよ‥、と。

 

それは、ドラグラインが斜面を駆け上る際に激しく振り落とした「遺体」の一つだった。

 

感想:あ、やっぱり。彼の骨を砕いたのは遺体だったのね。

 

その日の朝、彼らが氷河の新しい斜面から、まるで腐った歯を抜くように叩き切り、緩め、引きずり出した、もう一つの死体。

 

彼らの義務とは、これら「死せる目撃者」たちをあらゆる迅速さと秘密保持をもって発見・排除し、ふもとの谷にある死体搬送車へと送り届けて、告発の身体から無辜の煙と灰へと変えることだった。

 

感想:あー、なるほど。敵の種族の遺体を埋めたんだ、遠い昔に。それを掘り出しているんだ。どうして?

 

彼の足を直撃し粉砕したのは、半世代前、この新征服領地から「種族の敵」が完全に抹殺された際に、氷河の中に遺棄された遺体の一つだった。

 

感想:完全抹殺と言うのは、燃やすのではなくて?なぜ氷の中に?冷凍させたら保管状態は良いと思うんだけどな。

 

悲鳴が、凍てつく空気の中にどうしても生まれ出ようとする必死な何かのよう、傾斜面の縁の近くで周囲に広がっているのが聞こえる悲鳴の合唱に加わりたくてたまらない何かの(悲痛な叫び)のように、彼の肺から押し出されていった。

 

司令官の息が絶えた。彼は自分を直撃した遺体の、石のように硬直した顔を凝視し、再び悲鳴を上げるための息を求めてすすり泣いた。それは子供の顔だった。少女の顔だ。

 

感想:抹殺した敵の種族の中には、少女もいたのだろう。まあ、抹殺というのはそういうことだからね。子供なんて生かしてたら「種族の敵」と言って、一番危険な存在ですからね。

 

雪が彼の顔を焼き尽くすようだった。息が戻ってこない。彼の脚は、身体全体を照らし出す燃え盛る松明のような痛みの塊だった。

 

だが、彼の目は違った。視界がかすみ始めたのだ。

なぜこんなことが私に起きる? なぜ止まらない? なぜ私はこれを止められないんだ? なぜ目を覚ますことができない? 何が私に、これらの恐ろしい記憶を何度も追体験させているんだ?

 

感想:それは、君が罪悪感を感じているから、かもしれない。君は、この夢をみている君は、収容所の司令官だろうね。歴史を抹消しろとでも言われたのか?司令官は雇われの身さ、気にするな。そもそも、なんで司令官が人間なんだ。

 

その時、痛みと寒さが遠ざかり、まるで取り去られたかのように思えた。そして別の種類の「冷徹さ」が彼に押し寄せ、彼は自分が思考していることに気づいた。起きたことのすべてを、思考しているのだ。

 

振り返り、審判を下している。

 

‥砂漠では、我々は彼ら(敵の種族の死体)を即座に焼却した。

 

感想:ほうほう。氷河から発掘した後、砂漠で焼却したのか。言っちゃあれだけど、どうして最初から焼却しなかったんだろう。

 

これほど締まりのない真似はしなかった。彼らを氷河に埋めたのは、何か詩的な試みのつもりだったのだろうか? あれほど氷床のはるか上方に埋葬されれば、彼らの遺体は数世紀にわたって氷の中に留まることになる。

 

感想:そうだよね。そうなんだよ。まじで締まりのない‥だよ。一体、どんな仕事のできない奴が処理したんや?氷だよ?溶けたら死体もこんにはだよ?

 

我々が費やさなければならなかった、あの途方もない殺人的な労力なしには、誰も見つけることができないほど深く埋められていたのだ。

 

感想:へえー。囚人は過労ではなくて、殺されたのか、司令官たちの手によって。

 

我々の指導者たちは、自分たちの支配が100世代も続くと謳った自らのプロパガンダを真に受け始め、それほど遠い未来のことまで考え始めたのだろうか? 彼らには、今から何世紀も先、氷河の擦り切れた汚い裾野の下にある融解湖が、氷の把握から解放されて浮かび上がる遺体で埋め尽くされる光景が見えていたのだろうか? その時、未来の人々が自分たちをどう思うかについて、彼らは不安になり始めたのだろうか?

 

感想:うーん。人間の考えることなんてね、いつも落ち度がありますから。にしても、浅はかなね。意図的なのだろうかね。マインドはどうした?人間ひとりで考えて答えを出さない方がいいんじゃない?大事なことは特に。

 

これほどの冷酷さをもって現在のすべてを征服した彼らは、未来をも打ち負かし、我々全員が愛しているフリをしているように、未来の人々からも自分たちを愛させようとするキャンペーンに乗り出したのだろうか?

 

感想:すべてはプロパガンダよ。歴史も捏造されているのだよ。でもね、私は思いますよ。戦争で人間を殺すのも良し、最悪の行為だが原爆を落とすのも‥人間のやること‥でもな、歴史の捏造はダメや。種族のルーツを抹消したり、誰かの都合の良いように作り替えるのはダメや。それは、人生というゲームが成り立たなくなる気がするんや。まあ、その歴史の捏造や云々を投下したのも‥ある種族‥憎しみや怒りがあり、その種族のおもしいところはすきだ‥。(SFちっくに、国籍を種族にしてみました。)

 

‥砂漠では、我々は彼らを即座に焼却した。彼らは、燃えるような熱気と息の詰まるような塵の中を、長い列車に乗って運ばれてきた。黒いトラック(貨車)の中で死んでいなかった者たちに、我々は豊かな水を提供した。死に囲まれて過ごしたあの灼熱の日々が彼らの中に作り上げた渇きには、いかなる意志も抗うことはできなかった。彼らは毒入りの水を飲み、数時間のうちに死亡した。

 

感想:砂漠で脱水による死よりも、(即効性の高い毒ならば)毒の方が楽に死ねる気もしなくもない。でも、数時間も必要なのか。やっぱり、人間に人間を殺させるのは残虐説。人工知能の方が人間よりも、人道的な気がしてしまうんだが。

 

我々は、略奪を終えた遺体を太陽熱炉で灰にした。それこそが、種族と純血という、飽くことを知らない「空の神々」へと捧げる我々の供物だったのだ。

 

まるで、彼らの死が、彼らの卑しく、落ちぶれた人生では決して到達し得なかった高潔さを、彼らに与えたかのように。

 

感想:まあ、そういうもんさ。自分たちは素晴らしいこと(虐殺)をした、と思い込むものさ。たとえば、広島の原爆だってどうだろう。あれは、実験だったと言うじゃないか。あの実験が達成されたことにより‥人類の未来は‥なんて思っている人もいるのではないか。科学の進歩には犠牲が付き物とか。

 

彼らの灰は、砂漠の粉っぽい虚無の上に、より軽やかな塵となって舞い降り、最初の嵐とともに等しく吹き飛ばされていった。

 

感想:完全証拠隠滅

 

最後に炉に投入されたのは、キャンプの作業員たち(そのほとんどは宿舎でガス殺された)と、すべての書類だった。あらゆる手紙、あらゆる命令書、あらゆる請求パッド、備品シート、ファイル、メモ、覚書。

 

感想:完全証拠隠滅、完。

 

我々は全員、身体検査を受けた。私(司令官)でさえもだ。秘密警察に日記を隠し持っているのを見つかった者は、その場で射殺された。

 

感想:仕事より命、任務より命。武器を持ってる奴の前では従うべし。「おい!靴を舐めたら許してやる」と言われれば、喜んで靴を舐める私でございまする。

 

我々の私物のほとんどもまた、煙となって消えた。所持を許された物もあまりにも徹底的に調べ上げられたため、我々は「あいつらは我々の制服から砂粒の一つ残らず取り除くことに成功したんだな、洗濯屋には一度もできなかったことなのに」と冗談を言い合ったものだ。

 

感想:あはは。おもしろい。

 

我々はバラバラに解体され、征服領地全域の異なる任地へと移動させられた。再会は推奨されなかった。

 

感想:まあ、会っても話せることないしな。

 

私は、何が起きたのかを書き残そうと考えたことがあった。告白するためではなく、説明するために。そして、我々(加害者側)もまた、苦しんだのだ。劣悪極まりない物理的な環境においてだけでなく、我々の精神において、我々の良心において。

 

感想:まあ、そういう時は素直な奴の方が信用されるよ?え〜仕方ないじゃん。上ならの指令で殺さなきゃ俺が殺されるし。俺たち死にたくないもん。殺される奴?可哀想だし、俺たちも手を汚したくないけど、俺たちは死にたくないもん!とか、夢の中くらい本音を言ったらええやん。そういうところな。

 

中にはそのすべてを賛美するような数人の野蛮人や怪物がいたかもしれない(おそらく我々は、その期間中、我々の街の通りから数人の殺人犯を遠ざけておくことができたのだろう)。

 

感想:今となっては、そういう野蛮な奴の方が信用できる説。僕はやりたくなかったんだ!とか言う人の方がなあ。それに、そこまで言うなら身を挺して告白したらええやん。

 

しかし、我々のほとんどは断続的な激痛(精神的苦痛)を経験し、危機の瞬間には、自分たちのしていることが本当に正しいのだろうかと自問自答した。たとえ心の奥底では、それが正しいと分かってはいても。

 

感想:なぜ正しいと言えるのだろうか。いろんな難しい問題は、正しい正しくないと、答えなんてないものさ。その時々の感情や体調に環境で変わるし。分からないという余韻を持たせた方がええぞ。

 

我々の多くが、毎夜悪夢にうなされた。毎日目にする光景、目撃した凄惨な場面、痛みと恐怖。これらが我々に影響を与えずにはいられなかった。

 

感想:戦争から帰還した兵隊は、帰還後にアドレナリン放出が消えずに常に戦闘体制をとってしまうらしい。しかし、君たちはどうなんだろう。自分たちが命の危機に陥っていたわけでもなく、圧倒的に強い立場から殺したのだろう?

 

我々が処分した者たち、彼らの苦痛は数日間、長くても1ヶ月か2ヶ月ほど続き、その後、我々が可能な限り迅速かつ効率的に進めたプロセスによって終わりを迎えた。だが、我々の苦しみは、一世代にわたって続いているのだ。

 

私は、自分がしたことを誇りに思っている。なされるべきだったことを行う役目が、自分に降りかかってこなければよかったのにとは思うが、自分の能力の限りを尽くしてそれを成し遂げたことを嬉しく思うし、もし同じ状況になれば、私は再びそれを実行するだろう。

 

感想:最初からそう言えばいいのに。何に対して誇りを持っているのか気になる。主君に仕えたことなのか?

 

だからこそ、私は何が起きたのかを書き残したかったのだ。我々の信念と、献身と、そして苦しみを証言するために。私はついに、それを書かなかった。

 

感想:書かなかったんかい。

 

私はそのことについても、誇りに思っている。

 

感想:もはや、ギャグ化してきた。

 

彼は目を覚ました。

そして、自分の頭の中に「何か」がいることに気づいた。

 

感想:なる。単なる夢ではなさそうですな。司令官の脳の中に誰かが侵入している模様。

 

彼は現実に、現在に、海に近い退役軍人用の療養コンプレックス(施設)にある自宅の寝室へと戻っていた。部屋の外にあるバルコニーのタイルに、太陽の光が当たっているのが見えた。彼の二つの心臓がドクドクと鼓動し、背中の鱗が逆立って、チクチクと彼を刺激した。彼の脚はうずいており、あの氷河での古い負傷の痛みが響いていた。

 

感想:あらまあ。随分、穏やかな老後を送っているご様子で。あ、誰かによって連れ去られたのかと思いきや、遠隔で脳に侵入できるのか。カルチャーがやっているのか?

 

その夢はこれまでで最も鮮明で、最も長く、最終的に彼を西側の斜面の氷河の崩落と、ドラグラインの事故へと連れ去った(その記憶は、彼の覚えている痛みの忌まわしい白い重みの下に、記憶の奥深くに沈められ、深く埋もれていたものだった)。それだけでなく、彼が経験したものは通常の夢の経過や、いつもの夢の環境を超えていた。あの事故を追体験し、死んだ少女の顔を凝視して凝固しながら息を求めて戦うイメージによって、そこまで押し進められたのだ。

 

感想:まあ、夢でそこまでリアルに感じられないよな。

 

彼は、自分が軍人としてのキャリアにおいて、自分の人生の最も決定的な部分において行ったことを思考し、説明し、正当化さえしている自分に気づいた。

 

感想:まあ、君はそういう奴さ。

 

そして今、彼は自分の頭の中に「何か」があるのを感じることができた。

頭の中の「それ」が、彼に目を閉じさせた。

 

感想:目を閉じさせた、とは。司令官の脳を覗くだけではなく、行動もコントロールできるのか。

 

『ようやく捕まえたぞ』と、それは言った。それは低く、意図的に威厳を持たせた声で、その発音は完璧すぎるほどだった。

 

(ようやく? )と彼は思った。(これは一体何だ?)

『私は「真実」を手に入れた』

(何の真実だ? お前は誰だ?)

『君が犯したことの真実だ。君の民族が犯したことの。』

(何だと?)

『証拠はどこにでもあった。砂漠の至る所に、肥沃な土壌の中に固まり、植物の中に留まり、湖の底に沈み、そして文化的な記録の中にも。芸術作品の突然の消失、建築や農業の変化。改ざんされた歴史に矛盾する、隠されたいくつかの記録○○本、写真、音声録音、索引・・は存在したが、それらは依然として、これほど多くの人々、これほど多くの民族が、同化の兆候すらなく、なぜこれほど突然に消失してしまったのかを直接的には説明していなかった』

(一体何を言っているんだ?)彼は頭の中の存在に向けて思考した。(これは何なんだ?)

 

感想:うひゃー。なんとなく、カルチャーのドローンよりもタチの悪いご様子。侵入者は怒っておられますね、君のしたことを。何の目的で?

 

『君は、私が何者であるか信じないだろうな、司令官。だが、私が話しているのは「大虐殺」と呼ばれる行為、そしてその証拠についてだ』

(我々はなされるべきことをしただけだ!)

『ありがとう。私たちは今、そのすべてを(君の脳内スキャンで)一緒に確認したところだ。君の自己正当化はすべて記録された』

(私は自分のしたことを信じていた!)

『知っている。君には、時折それを疑問に思うだけの、わずかな良心の残滓はあった。しかし最終的に、君は自分がしていることを本当に信じ込んでいた。それは言い訳にはならないが、一つの事実(論点)ではある』

 

感想:司令官のうざったい懺悔から、やっとまともな奴が登場してくれた。

 

(お前は誰だ? 一体何の権利があって私の脳みそに這いずり込んできた?)

『私の名前は、君たちの言語に直すなら「グレイ・エリア(灰色の領域)」といったところだ。

 

感想:灰色の領域ねえ~、グレーゾーンってか?だとすると、グレイエリアの成すべきことは、グレーゾーンってことか?ならば、この他人の脳に無断で侵入するのもグレーってか?

 

私が君の脳みそに這いずり込む権利、君の言うところのその権利を与えたものは、君が虐殺した人々に対して、君にそれを行う権利を与えたものと全く同じだよ。「力」だ。』

 

感想:おお。こいつもイカれていておもしろい。グレーゾーンはカルチャーではないな?

 

『超越した力だ。私の場合、君たちを遥かに凌駕する圧倒的な力だがね。しかし、私は(別の用件で)呼び出されてしまったので、今すぐ君の元を去らねばならない。だが、数ヶ月後には必ずここに戻ってきて、調査を再開するつもりだ。より、多角的なケース(証拠)を構築するために、君たちの生き残りはまだ十分にいるからな』

 

感想:グレーゾーンと命名するだけあって、謙虚さがなす(ない)。

 

(何だと?)彼は目を開けようとしながら思った。

『司令官、私が君にかけられる呪いのうち、君がすでに「そのような存在(怪物)」であること以上に最悪なものはない。だが、私がいない間、君はこのことについて熟考しているといい‥』

次の瞬間、彼は即座に悪夢の中へと引き戻された。

 

感想:あやや。今のは呪いの言葉に近いぞ。何か置いていったぞ。絶対にいいものじゃないぞ。

 

彼はベッドを突き抜けて落下した。

一枚の氷のように白いシーツが彼の身体の下で引き裂かれ、彼は底なしの「血のタンク」の中へと真っ逆さまに転落していった。

 

感想:地獄のバーチャルへようこそ、って予感。

 

彼はその中を通り抜けて光の中へと、そして砂漠へ、砂を貫く鉄道の線路へと落下した。彼はあの列車の一つの貨車の中へと落下し、砕けた脚を抱え、悪臭を放つ死体と、うめき声を上げる生存者たちの間にいた。排泄物にまみれ、ただれた傷口を持つ遺体、飛び交うハエの羽音、そして彼自身の内部にある白熱するような激しい「渇き」の怒りに挟まれて、身動きが取れなくなっていた。彼は、無限とも思える悶絶の苦しみの末、その家畜運搬車(キャトルトラック)の中で死亡した。

 

感想:うわー。死ねないやつね。まあ、夢の中だから死なないんだけどさ。夢から目覚めたらまたその夢の中で死ぬ、を繰り返すのかな?手塚治虫の火の鳥の牧村も似たような罰を受けたよな。年老いて死にそうになると若返り、赤ちゃんになってまた年老いる‥を永遠に繰り返す。

 

一瞬だけ、療養コンプレックスにある自分の部屋の光景が、視界に過った。そのまだショックで、痛みで狂いそうな状態の中にありながらも、彼は「あの拷問のような悪夢に沈んでいる間に、少なくとも丸一日は経過したはずだ」と感じていた。

 

それにもかかわらず、寝室のすべての景色は、先ほどと全く同じに見えるということに気づくだけの時間と、冷静な正気が彼には残されていた。そして、彼は再び底へと引き摺り下ろされた。

 

彼は目を覚ますと、氷河の中に埋葬されており、寒さで死にかけていた。頭を撃たれていたが、それは彼を麻痺させただけだった。再び、終わりのない激痛。

 

感想:いろんな死に方が用意されているのね。

 

彼は二度目に療養所の部屋の感覚を得た。太陽の光はまだ、全く同じ角度のままだった。こんな短い時間の間に、いや、一生の間でも、100回の一生を重ねても、これほどの苦痛を感じることが可能だとは、彼は想像すらしていなかった。

 

感想:あ、ごめん。毎夜の夢で死ぬかと思ったら、数分に1回の感覚で死ぬのか。結構残酷なお土産を置いていったな。これは、君に恨みでもなきゃやりすぎ感ありますぞ。

 

彼は、悪夢が再び再開される前に、身体を強張らせ、ベッドの上で指一本分の幅だけ身を動かすのがやっとだった。

 

それから、彼は船の船倉の中にいた。暗闇の中で何千人もの人々とともに詰め込まれ、再び悪臭と不潔、そして悲鳴と痛みに囲まれていた。二日後、海水バルブが開放され、まだ生き残っていた者たちが溺れ始めた時、彼はすでに半分死にかけていた。

 

感想:あわわわわw

 

翌朝、清掃員は、アパートのドアの手前で小さなボールのように丸まって死んでいる、あの引退した老司令官を発見した。彼の心臓が停止したのだ。

 

その顔に浮かんだ表情は、療養所の管理人が危うく気絶しかけて、大急ぎで椅子に腰掛けなければならないほど凄まじいものだったが、医師は「最期は、おそらく一瞬(苦しまずに逝ったの)でしょう」と診断した。

 

感想:医者、おもろい。落語みたいなオチやな。でも死んだのか。案外軽いというか、やっぱり手塚治虫の火の鳥に登場する牧村の死ねない罰の方が遥かに残酷だなー、だって死んだら終わりじゃん。まあ、グレーゾーンからしてみれば、用済みってことなのかもしれないけど。

 

イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳 (4)ドローンの漫才が最高すぎる!

2026 / 07 / 02  09:16
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感想:アフロント人の狂気てきな晩餐会がはじまる。

 

今回のディナー(アフロントが、その名に値する敵と最初に行った「まともな宇宙戦」の1885周年を記念して開催されたもの)では、そのエンターテインメント(余興)も、当時の戦いに関連したものが用意されていた。

 

その料理は、提供される皿(コース)の内容と連動するように仕組まれていた。

 

感想:おお〜。アミューズメントディナーってやつかな。ちょっと楽しそう。アフロント人は、人生を楽しく生きる方法について、いろいろ考えているんだなあ。

 

そのため、最初の魚料理の際には、餌穴(ベイト・ピット)にエタンの液体が部分的に注ぎ込まれ、そこに「この日のために特別に交配された戦闘魚」どもが投入された。

 

感想:最初のコース料理は、戦うためだけに生み出された殺人魚が泳いでいる料理か。どうやって食べるの?

 

ファイヴタイドは嬉々として、その魚の極めてユニークな生態を人間に説明して聞かせた。その魚はあまりにも特殊化した口部を持っているため、普通に餌を食べることができず、彼らの顎にぴったりとはまるようにこれまた特別に交配された「別の種類の魚」から、生命維持に必要な体液を吸い上げて(ヒル loyal(吸血)のように)育てられなければならないのだという。

 

感想:魚の口が特殊化しすぎて「別の魚の体液を吸う」ことでしか生きられないという生態を持つ魚。思ってたよりも、メッセージ性の強い奥深い料理。

 

第2コースは、小さな食用動物の肉だった。

ジェナール=ホフォエンの目には、それらの動物は毛むくじゃらで、お世辞抜きで「可愛い」とさえ言えるように見えた。

 

その生きているミニ動物たちが、円形テーブルの内縁、つまり餌穴の頂部に設置された溝付きのトラック(滑走路)を猛スピードで激走していた。

 

感想:あ、生きてるのね。さすが、残虐なアフロント人のコースメニュー。

 

それを追いかけるのは、両端に大量の歯がついた、細長くてヌルヌルとした見た目の「何か」だった。

 

感想:ふふっ(笑) 

 

歓声を上げ、ヤジを飛ばすアフロントたちは咆哮し、テーブルをドンドンと叩き、賭け(ベット)や罵詈雑言を交わし合いながら、長いフォークでその小さな可愛い生き物たちを「突き刺し」ていた。

 

感想:うおお〜。ヌルヌルの何か、が殺すのではなくて、アフロント人がフォークで刺すのね。まさに、狩猟ですな。

 

そうして捕らえたそばから、すでに調理され、下ごしらえを終えた「同じ動物の完成品」を自分たちの嘴へと掻き込んでいくのだ。

 

そしてメインディッシュには、「スクラッチハウンド(猟犬)」の肉が供された。餌穴の中では、肥満体の人間ほどの大きさがありながら8本の手足を持つその凶暴な獣のペアが、剃刀のように鋭いプロテーゼ(義肢)の顎インプラントや、ストラップ付きの爪を駆使して互いを引き裂き、血祭りにあげていた。

 

感想:人間サイズって‥めっちゃ迫力のあるメニューだこと。

 

その一方で、サイコロ状にカットされたスクラッチハウンドの肉が、圧縮された植物質でできた巨大なトレンチャー(木皿)に載せて給仕された。

 

アフロントたちはこれこそが晩餐会全体のハイライト(最高潮)であると考えていた。

 

なぜなら、このコースになってようやく、各自の席に用意されたカトラリー(食器)の中で最も威圧的な見た目をした道具である「ミニチュア・ハープーン(小型銛)」を使用することが許されるからだ。

 

これを使って、同席している他の客のトレンチャーから肉の塊を突き刺して強奪する。

 

感想:肉の強奪ゲームですな。

 

そして、ファイヴタイドが今まさに人間に教え込もうとしている「付属のケーブルを器用にピッとしならせる技術」を使い、その肉塊を自分のトレンチャーや嘴、あるいは触手へと引き寄せるのだ。

 

ピットの中のスクラッチハウンドどもに横取りされたり、あるいは空中で他のゲストにインターセプト(迎撃)されたり、自分のガス嚢のてっぺんを越えて完全に紛失したりすることなく、だ。

 

「これの素晴らしいところはな、」ファイヴタイドは、自分自身のハープーン攻撃に失敗して気を取られている「ある提督」のトレンチャーを目がけて銛を投げつけながら言った。「一番クリアに狙えるターゲット(標的)こそが、最も遠くにあるものだということだ」

 

感想:欲しいものは、簡単に手に入らんと?

 

彼はウッと唸ってケーブルをピッとしならせ、提督の右隣にいた将校がその獲物をインターセプトするまさに一瞬前に、突き刺したスクラッチハウンドの肉片を跳ね上げ、奪い去った。

 

感想:あ、隣の人の肉を奪った。

 

その肉の破片は空中にエレガントな軌道を描いて飛び、ファイヴタイドは席からほとんど腰を浮かせることもなく、嘴をカチッと鳴らしてそれを見事に口でキャッチした。

 

彼は左右に回転し、鞭をパチリと鳴らすような触手の仕草で賞賛の拍手を送る周囲に応えると、再び座席として機能しているパッド付きのY字型ブラケット(固定具)へと腰を落ち着けた。

 

「見たか?」彼はあからさまにゴクリと飲み込む動きをしてみせ、ハープーンとケーブルをペッと吐き出した。

 

「見たよ」ジェナール=ホフォエンは、先ほどの自分の失敗した試みのハープーン・ケーブルを、まだゆっくりと巻き戻しながら言った。

 

感想:遠くの席から肉を奪うのはゲームのマナーだけど、隣の席の皿から直接奪うのは、最大級の侮辱という決闘の申し込みになるという、めんどくさいアフロントのマナーw

 

彼はファイヴタイドの右隣、Y字ブラケットの突起の間に単に板を渡しただけの「特製(人間用調整)」の席に座っていた。

 

彼の足は、テーブルの外周を取り囲む「ゴミ廃棄用の溝」の上でぶらぶらと揺れていた。スーツのAIの解説によれば、その溝はアフロントのグルメたちが絶賛するような、凄まじい悪臭を放っているとのことだった。

 

感想:絶賛‥アフロントにとっては、最高の匂い!

 

その時、彼の左側を1本のハープーンが至近距離でかすめて飛び去り、ホフォエンはビクッとして身をかわしたため、危うく席から転げ落ちそうになった。

 

ジェナール=ホフォエンは、5つ隣の席から「ファイヴタイドの皿を狙っていたんだ」と言い訳するアフロント将校からの、爆笑と大げさな謝罪を受け流し、礼儀正しくそのハープーンとケーブルを拾い上げて彼へと戻してやった。

 

感想:まじで落ち着かない食事会や。

 

彼は再び、自分の目の前にある加圧容器に入った「味のパッとしない、ミニチュアサイズのご馳走」をチビチビとつつく作業に戻った。

 

4本の指がついた小さな手のような形をしたゲルフィールド製の食器を使ってそれらを口へと運びながら、彼の脚は依然として悪臭を放つゴミ溝の上で揺れていた。まるで、大人のディナーに同席させられている子供のような気分だった。 

 

感想:こういう時は、時間が過ぎるのをただ黙って待っていた方が賢明だ説。

 

「おい人間、もう少しで当たるところだったな! ハハハハ!」

 

ファイヴタイドとは反対側に座っている外交部隊の大佐が咆哮した。彼は触手でホフォエンの背中をガツンと叩いたため、ホフォエンは席から半分突き飛ばされてテーブルの上に突っ伏した。「おっと失礼!」大佐はそう言うと、ホフォエンの歯がガタガタと鳴るほどの凄まじい力で彼を強引に引き戻した。

 

感想:悪気ありな予感

 

ジェナール=ホフォエンは品よく微笑み、テーブルから自分のサングラスを拾い上げた。

 

この外交部隊の大佐は「クイックテンパー(短気)」という名前で通っていた。カルチャーの人間からすれば、アフロントの外交官の間ではうんざりするほどよく見かける種類の名前(肩書)だった。

 

感想:やっぱり

 

ファイヴタイドが以前説明してくれたところによると、問題は、アフロントの「古き悪き守旧派」の一部が、自分たちの文明にそもそも「外交部隊」なんてものが存在すること自体を少し恥じていることにあるらしい。

 

感想:まあ、こうもいろんな惑星に文明ができたり、マインドとか超高度AIの存在があるとねぇ。自由に殺すのもできなくなるわよねぇ。昔はいい時代だったわよねぇ。

 

そのため、彼らは他の種族から「あいつら、弱気(弱体化)の兆候を見せ始めたぞ」と疑われるのを防ぐための埋め合わせとして、最も攻撃的で、最も外国人嫌い(排他的)なアフロントだけを意図して外交官に選任しているのだという。

 

感想:アフロントの守旧派は、外交=弱さ、と見なされるのを恐れて、わざと一番凶暴で外国人嫌いな奴を外交官に選んでいる。そのため、アフロントの外交は常に暴力一歩手前である。

 

「アフロントは軟化している」などという、危険極まりない不条理な考えを誰にも抱かせないために。

 

「さあ行け、人間! もう一発投げろ! そんなクソ飯が食えないからって、この楽しいお祭り騒ぎの仲間入りを遠慮する必要はねえぞ!」

 

感想:ほんとに、パッとしないお味の食事です。

 

テーブルの反対側から投げられたハープーンが、ピットを飛び越えてファイヴタイドのトレンチャー(皿)目がけて飛んできた。

 

アフロント大佐はそれを器用に叩き落として投げ返し、大爆笑した。ハープーンの持ち主は間一髪で頭を下げてかわしたが、運悪く通りかかった飲み物の給仕のガス嚢に直撃し、給仕は悲鳴を上げ、プシューッとガスを噴出しながら悶絶した。

 

感想:アフロント大佐、優しい。と捉えていいのかい。

 

ジェナール=ホフォエンは、ファイヴタイドの皿の上に転がっている肉の塊を見つめた。「なぁ、君の皿の上にあるやつを直接ハープーンで奪っちゃダメなのか?」と彼は尋ねた。

 

ファイヴタイドはガバッと身体を直立させた。「隣人の皿からだと!?」彼は怒鳴り散らした。「ジェナール=ホフォエン、それは『チート(卑怯)』か、あるいは極めて侮辱的な『決闘への申し込み』だぞ! 

 

感想:うんうん、さっき私が言ったね。

 

クソ食らえ、一体あのカルチャーって場所では、どんな教育(マナー)を教えてやがるんだ!?」

 

「これはとんだ無礼を。許してくれ」ジェナール=ホフォエンは言った。

 

「よろしい」ファイヴタイドは眼柄をコクコクと動かして許しを与え、ハープーンのケーブルを巻き戻した。

 

感想:謝ると素直に許してくれるアフロント、すき。ネチネチ言わなそうで、すき。

 

そして自分の皿から肉片をつまんで嘴へと放り込み、飲み物に手を伸ばし、他の全員と一緒にテーブルを触手でドタバタと叩き始めた。

 

餌穴の中では、ちょうど1匹のスクラッチハウンドがもう1匹を仰向けにひっくり返し、その首を噛みちぎったところだった。「見事な一撃だ! よくやった! ナンバー7、あれは俺の犬だ! 俺があいつに賭けてたんだ! 俺だ! 俺だぞ! 見たか、ガストリーズ? 言った通りだろ! ハハハハ!」

 

感想:もうーほんまうるさい食事会やわー。

 

ジェナール=ホフォエンは、一人でニヤニヤと笑いながら、小さく首を振った。

 

これまでの人生で、彼はこれほど「紛れもなく完璧なエイリアン(異界)」の場所に身を置いたことはなかった。

 

感想:ほうほう。他のエイリアンは、カルチャーみたいに、文明的というか、そもそと外交に人間を使う必要もない気がしてしまうし。原始的だもんな、アフロント人は。好き放題な感じが、もはや好感。おもしろいよな。

 

ここは、近くの恒星から何光年も離れた茶色矮星の周りを公転するブラックホール、さらにその周囲を回る、冷たく圧縮されたガスで満たされた巨大なトーラス(円環状の超巨大人工建造物)の内部なのだ。

 

その外壁には無数の宇宙船(そのほとんどが、アフロント特有の、トゲトゲしく膨らんだ凶悪な形状の船だ)がびっしりと群がっており、内部は、幸せそうに宇宙を駆けるアフロントたちと、彼らがコレクションしている「被害者となった奴隷種族ども」の群れで満ち溢れている。

 

感想:どうして幸せそうに宇宙を駆けてるのだ。アフロントの奴隷になるのは嫌だなー。リングワードのパペッティア人の奴隷ならアリかも。いやー、でも‥

 

それなのに‥彼は、これ以上ないほど「我が家にいるような(アット・ホームな)」居心地の良さを感じていた。

 

感想:ジェナールは、冒険を求めてしまう、ネジの外れたマーンなのかもしれない。

 

『ジェナール=ホフォエン、私です。スコペル=アフランクイです』

 

突然、ホフォエンの頭の中で別の声が響いた。スーツを介して話しかけてきている、彼の自宅のモジュール(AI住宅)の声だった。

 

感想:ジェナールの自宅AIの名前は、スコペルというのか。いろんな人工知能に囲まれていて楽しそう。

 

『緊急のメッセージがあります』

『後にしてくれないか?』ホフォエンは脳内で思考を返した。

 

感想:それ!わたしも早くやりたい!ニューラルリンク!ニューラルリンク!

 

『今、恐ろしく厳格で正しいディナー・マナーの対応でちょっと忙しいんだ』

『いえ、待てません。今すぐこちらに戻ってきていただけますか? 直ちに、です』

『何だって? 嫌だね、帰るわけないだろ。正気か? まだ着いたばかりだぞ』

『着いたばかりなわけないでしょう。あなたが私を置いて出て行ってから、もう80分も経っています。しかも、そのお食事とやらに偽装した動物サーカスですでにメインディッシュに突入しているじゃないですか。そのバカなスーツから中継される映像で、こちらからは何が起きているか丸見えなんですよ‥』『バカとは何事ですか!』とスーツのAIが会話に割り込んできた。

 

感想:あはっ(興奮)もう、人工知能と人工知能のかけ合いというか、もう好きすぎる!もはや、こういうシーンを読みたいがために、読んでいると言ってもよろしい。

 

『黙ってなさい』モジュールがスーツを一喝した。『ジェナール=ホフォエン、今すぐ戻るのですか、戻らないのですか?』

『戻らない』

 

感想:スーツよりも、自宅AIの方が、性能が上に作られているのかもしれない説。

 

『やれやれ、では通信の優先順位(プライオリティ)を確認させてください‥よし。では、現在の‥』

 

「‥賭けるか、人間の友よ?」

ファイヴタイドが、ホフォエンの目の前のテーブルを触手でバチンと叩きながら、話しかけてきた。

 

感想:はうあ(興奮)人工知能と人工知能のお喋りに割り込む、野蛮な異星人アフロント。楽しい。

 

「え? 賭けだって?」ジェナール=ホフォエンは、アフロントの大佐が何を言っていたのかを頭の中で素早く再生しながら言った。

 

「次の赤の扉から出てくる奴に、50サッカ(sucks)だ!」ファイヴタイドは両隣の同僚将校たちをちらりと見ながら吼えた。

 

感想:問題は、何に賭けるか、だ。

 

ジェナール=ホフォエンは、手でテーブルをバチンと叩いた。「少なすぎる!」彼は叫んだ。スーツが彼の翻訳された声をそれに合わせて大音量に増幅するのを感じた。いくつかの眼柄(めづか)が彼の方向を向いた。

 

感想:えっ。手を賭けるの?

 

「青の猟犬(ハウンド)に200サッカだ!」

ファイヴタイドは、お世辞にも大富豪とは言えず「裕福な方」程度の家柄の出身であり、彼にとって50サッカは半月分の自由に使えるお小遣いに相当した。

 

そのため大佐は微細に身をすくめたが、すぐに最初の触手の上にもう1本の触手を叩きつけた。「この袋叩きにすべき異星人め!」彼は芝居がかった調子で叫んだ。「この俺の地位の将校に対して、たったの200が相応しい賭けだとでも言うつもりか? 250だ!」

「500サッカ!」ジェナール=ホフォエンはもう一方の腕を叩きつけて叫んだ。

「600だ!」ファイヴタイドは3本目の手足をドンと叩きつけて怒鳴った。

 

感想:あわあわあわあわ。

 

彼は他の面々を見回し、知った風な視線を交わし合って、周囲の爆笑を誘った。人間側が「手足の数」で負けた(出し尽くした)からだ。

 

感想:確かにな( ´ ▽ ` )

 

ジェナール=ホフォエンは席の上で身体をひねると、左脚を持ち上げ、ブーツのヒールをテーブルの表面に踏み鳴らした。「1000サッカだ、お前のその安っちい皮なんかクソ食らえ!」

 

感想:ひょえ。

 

ファイヴタイドは、ジェナール=ホフォエンの目の前ですでに混み合い始めていた手足の山の上に、4本目の触手をピッとはじき乗せた。「乗った!」アフロント大佐は咆哮した。「それ以上賭け金を吊り上げて、お前を席からゴミピットの中へと引き摺り下ろさなかった俺の情けを、幸運に思うんだな、このミクロな障害者め!」ファイヴタイドはさらに大声で笑い、近くの将校たちを見回した。

 

感想:おお、ジェナールがこの野蛮な賭けに馴染んでいる‥楽しんでるじゃねぇか‥にやにや‥って感じだな。

 

他の者たちも笑った。下級将校の何人かは義務的に、ファイヴタイドの友人や親しい同僚である他の何人かは、ある種の代理の必死さを伴って大声すぎるほどに笑った。

 

感想:笑うことが大事、盛り上げるの大事。

 

その賭け金は、平均的なアフロントの男であれば、自分の連隊食堂や、銀行や、両親、あるいはその3つすべてとの間で、とんでもないトラブル(破滅)を引き起こしかねないほどの巨額だったからだ。

 

感想:おおー。ファイヴタイドもなかなかのギャンバラー。

 

また別の者たちは、ジェナール=ホフォエンが「ニヤニヤ笑い(不敵な笑み)」と認識するようになった表情で二人を見守っていた。

 

ファイヴタイドは、熱狂的に周囲のすべての飲み物バルブを満たし、テーブル全体で「もしピットの管理人が早く動かないなら、とろ火でじわじわ焼き上げてやろう」の歌を合唱し始めた。

 

感想:とろ火でしわじわ焼き殺そうという曲名も、なかなか。

 

『よし』とジェナール=ホフォエンは思った。『モジュール、さっきの続きは?』

 

『今のいささか無茶な賭けでしたね、ジェナール=ホフォエン。1000サッカなんて! ファイヴタイドが負けたらそんな大金払えませんし、彼が勝ったとしても、私たちが資金を湯水のように浪費していると思われるのは本意ではありません』

 

ジェナール=ホフォエンは小さくニヤリとした。これ以上ないほど全員をイラつかせる完璧な方法だ。『知るか』と彼は思った。『それで、メッセージは?』

『あなたのスーツの中にある、脳みそと呼べる代物に向けて直接データを送信(スクワート)できると思います。』

『聞こえてますよ』とスーツが言った。

 

感想:はふっ(興奮)いいねいいね、AIたちの漫才がめっちゃ愛おしき。脳みそと呼べる代物‥モジュールは明らかにスーツを見下しておりますな( ´ ▽ ` )にやにや。

 

『周りのアフロントの友人たちに傍受されることなくね、ジェナール=ホフォエン』とモジュールは彼に告げた。『「クィッケン(思考加速剤)」を少し分泌させて、それから‥』

 

『失礼ですが』とスーツが言った。

『ビル・ジェナール=ホフォエン様は、現在の状況下で「クィッケン」のような強力なドラッグを腺から分泌させる前に、二の足を踏むべきではないかと思います。彼(ジェナール)があなた(モジュール)の目の届かない場所にいる間は、結局のところ私(スーツ)の責任(お預かりもの)なのですからね、スコペル=アフランクイ(モジュールの名前)。というか、公平になってくださいよ。あなたはあの上(軌道上)でぬくぬくと座っているからいいでしょうが‥』

 

感想:はふはふ(興奮) バカにされ続けていたスーツが立ち上がった!ジェナールの管理は今こちらで預かっていますので、安全な場所でぬくぬく座っているモジュールは黙りなさいよ、という意味だろうな。楽しい〜!あ、ちなみに、カルチャー人は、特有の能力(体内の腺から任意の脳内麻薬・ドラッグを分泌させる能力)を使って、思考を極限まで加速させる「クィッケン」という薬物を使用している。

 

『黙ってなさい、このからっぽの薄膜め』モジュールがスーツに言った。

 

感想:反撃、きたーーー!

 

『なんですって!? なんという無礼な!』

『お前ら二人とも、いい加減に黙れ!』ジェナール=ホフォエンは彼らに思考を送り、生身の声で大声で叫びそうになるのを必死でこらえた。

 

感想:まじでめっちゃ憧れる。思考の中で、AI同士が揉み合って、まあまあと制裁に入る‥。昔、中学の時、下校時によくそんな妄想してたな。

 

ファイヴタイドが彼にカルチャーについて何か話しかけてきていたのに、二つの機械が彼の頭の中で痴話喧嘩で満たしてくれたせいで、すでに最初の部分を聞き逃してしまっていた。

 

感想:ああ、イーロンマスク様ぁ。はよ、ニューラルリンクをぉ〜。テラドローンさまぁ〜、はよ小型ドローンに高知能AI搭載をぉ〜。おっと、その前にベーシックインカムがはじまらなきゃ、何もはじまらねえ‥。今生まれた子供が羨ましい。ん?うーん。

 

「‥これほどエキサイティングになれるか、ええ、ジェナール=ホフォエン?」

 

「全くその通りだよ!」彼は合唱の騒音に負けないよう大声で叫び返した。彼はゲルフィールドの食器をフードコンテナの一つに沈め、食べ物を唇へと運んだ。

 

彼は微笑み、食べている間、頬をこれ見よがしに膨らませてみせた。ファイヴタイドはゲップをすると、人間の頭の半分ほどの大きさがある肉の塊を嘴(くちばし)へと押し込み、再び動物ピットのエンターテインメントへと向き直った。

 

ピットの中では、新しいスクラッチハウンドのペアが、まだ互いを値踏みしながら警戒深く円を描いて回っていた。二匹の実力はかなり拮抗しているように見える、とホフォエンは思った。

 

感想:ホフォエン‥君はいま、最高に幸せな時を過ごしていることに気づいていないだろう。野蛮だけど原始的でナチュラルなアフロント人のゲームを眺めつつ、脳内ではAI同士が漫才をしている‥。

 

『もうお話ししてもよろしいでしょうか?』とモジュールが言った。

『ああ』ジェナール=ホフォエンは思考を返した。『さあ、何なんだ?』

『先ほど申し上げた通り、緊急のメッセージです』

『誰からだ?』

『GSV(一般システム宇宙船)「デス・アンド・グラビティ(死と重力)」号です』

 

感想:今でも君を愛してる号といい、バンクスの船の名前って、絶妙にダサくていいね。って、んんー?GSV『オネスト・ミステイク』と言えば、プロローグに出てきた妊婦と動物たちの恒星間移動型宇宙船のことじゃなかったっけ?ちがうっけ?

 

『ほう?』ジェナール=ホフォエンは少し感銘を受けた。『あの気難しい頑固者が、俺とはもう口を利かないものだと思っていたが』

『私たちも皆そう思っていました。ですが、どうやら向こうから話しかけてきているようです。さあ、このメッセージを受け取りますか、受け取りませんか?』

『わかった、受け取る。だが、なぜ俺がクィッケンを分泌させなきゃならないんだ?』

『長大なメッセージだからに決まっているでしょう‥実際には、これはインタラクティブ(双方向)メッセージです。あなたの質問に答えることができるマインド・ステート(精神状態)の抽象要約が付属した、完全なセマンティック・コンテキスト(意味論的文脈)信号セットなのです。もしこれをリアルタイムでそのまま聞いていたら、陽気なホストたちが「給仕スタッフ狩り」のコースに達する頃になっても、あなたはまだその場に口を開けたマヌケな表情で座り続けることになりますよ。そして、私は「緊急だ」と言いました。ジェナール=ホフォエン、ちゃんと集中していますか?』

 

感想:モジュールの言ってることがまともすぎて、言い返せないホフォエン。そんな高速で脳内を動かせるクイッケン‥ほしい。

 

『集中してるよ、クソ。だが頼むから、ただメッセージの要点だけを俺に教えてくれないか? 概要(プレシ)でいい』

 

『このメッセージはあなた宛てであって、私宛てではありません、ジェナール=ホフォエン。私は中身を見ていません。送信しながらストリーミングで複合解読される仕様なのです』

 

『オーケー、オーケー、薬(クィッケン)は分泌させた。撃て(送れ)』

『私は今でも悪いアイデアだと思いますがね‥』とゲルフィールド・スーツが愚痴をこぼした。

 

感想:スーツは、クイッケン反対派なのかもしれん。なんでモジュールの言うことを‥もごもご。かわいい(興奮)

 

『黙りなさい!』モジュールが言った。『すみません、ジェナール=ホフォエン。これがメッセージの本文です』

 

感想:マインドでたくさんのAIがうじゃうじゃいる中‥どんな‥一体どんな‥はふはふ

 

『GSVデス・アンド・グラビティ号より、セドゥン=ブライジャ・ビル・フルエル・ジェナール=ホフォエン・ダム・オイスへ。メッセージ開始』とモジュールは「公式(オフィシャル)」のトーンで言った。

 

感想:ほうほう。通信時は、ハートがなくなるんね。

 

すると、別の声が彼の脳内を乗っ取った。

 

『ジェナール=ホフォエン。君と再び通信することになったことについて、私が喜んでいるようなフリをするつもりはない。しかしながら、私がその意見や判断を尊重し賞賛する特定の方々からそうするよう要請されたため、この状況は、私が全力を尽くして要請に応じなければ自身の義務を怠ることになると判断せざるを得ないほど重大である。

君の常習的な天邪鬼、議論好き、そして故意にへそ曲がりな性質を正当に認識した上で、私はこのメッセージを双方向信号の形で送信することで君と通信している。見れば、君は現在、あの「アフロント」として知られる、子供じみて残酷な新興のならず者集団へのカルチャー外交官の一人を務めているようだな。これが君に対する一種の洗練された罰として計画されたものだったとしても、君はその任務とは言わないまでも、その環境にいくらかの喜びを持って適応してしまっているのではないかという、不愉快な予感がしている。君がいつものように、無頓着な不注意さと、その場しのぎの利己主義を織り交ぜてその任務をこなしているであろうことは想像に難くないがこの信号がインタラクティブ(双方向)だってんなら‥』

 

感想:長い。

 

ジェナール=ホフォエンが割り込んだ。『さっさと本題に入ってくれないか、クソが』

彼はピットの両側で、2匹のスクラッチハウンドが超スローモーションで互いに身体を硬直させているのを見つめていた。

 

感想:クイッケン使用時は、思考加速ドラックゆえに、投与中はみんなスローモーションになる。

 

『本題とは、君のホスト(アフロント)たちに、しばらくの間君との付き合いを遠慮してもらわなければならなくなったということだ』

 

『何だって? なぜだ?』ジェナール=ホフォエンは即座に警戒を強めて思考した。

 

感想:えー、もう会うのやめろとか、君たちカルチャーの人間といるよりも、おもしろいじゃないか。

 

『すでに決定が下されたのだ。言っておくが、私にその決定権は一切なかった。君の能力が、別の場所で必要とされている』

 

感想:権威者っぽい言い方できやい。

 

『どこでだ? 期間はどれくらいだ?』

『正確にどこか、あるいはどれほどの期間かは教えられない』

 

『当てずっぽうでもいいから言ってみろ』

『教えられないし、教えるつもりもない』

『モジュール、このメッセージを切れ』

『本当にいいのですか?』とスコペル=アフランクイ(自宅AI)が尋ねた。

 

感想:毎度だが、登場人物の男がテンプレすぎる説。もはや、これもエンタメ。

 

『待て!』GSVの声が遮った。

『君の時間を「約80日間」ほど提供してほしい、と言えば満足か?』

 

感想:あーあ、ホフォエンのいつもの手口だって、なーんで分からないかな〜

 

『満足するわけないだろ。俺はここがすっかり気に入ってるんだ。「ちょっとした仕事を一つ手伝ってくれ」っていうお決まりの甘い勧誘文句に釣られて、過去にどれほど「接触(コンタクト)部隊・特別事情(スペシャル・サーカムスタンス=SC)」のクソ面倒な案件に放り込まれてきたと思ってんだ』

 

(実際のところ、これは完全に事実というわけではなかった。ホフォエンが過去にSCのために動いたのは一度きりだったが、コンタクト部隊の「スパイ・不正規工作部門」であるSCのために働いた結果、予想以上の大トラブルに巻き込まれた人間を、彼はたくさん知っていた。あるいは噂に聞いていたのだ)

 

感想:ホフォエンは、交渉上手。しかしまあ、リアルにAI時代を迎えている今読むと、交渉って人間がやる必要あるのかなー?外交とかいちばん危険でめんどうじゃないか。

 

『私は何も‥』

『それに、俺にはここで果たすべき任務がある』ホフォエンが話を遮った。

 

『1ヶ月後には大評議会との謁見が控えてるんだ。近隣種族にもっと優しくしないと、お前らのケツをひっぱたくぞ、と言い渡す役目がね。この刺激的な新しいオファーとやらの詳細を話すか、さもなきゃその提案を自分のケツにでも突っ込んでろ』

 

感想:ふう。

 

『私は、自分が「特別事情(SC)」を代表して話しているとは一言も言っていない』

『じゃあ、SCじゃないと否定するのか?』

『そういうわけではないが、しかし‥』

『なら、クソくだらない勿体ぶりはやめろ。一体どこの誰が、この才能あふれる極めて有能な外交官を現職から引き剥がそうなんて?』

 

感想:redditの感想で、登場人物がみんなクズって書いてあった投稿を思い出す。そのコメントに対して、それは意図的なので仕方ありません、というのがあった。

 

『ジェナール=ホフォエン、我々は時間を無駄にしている』

『「我々」だって?』ジェナール=ホフォエンは、2匹のスクラッチハウンドがスローモーションで互いに飛びかかるのを見つめながら思った。『まあいい。続けろ』

 

『君に要求されている任務は、どうやら極めて「デリケート」なもののようだ。だからこそ、私個人としては君がその任務にこれっぽっちも向いていないと確信しているし、それゆえに、すべての詳細が必要とされるその瞬間が来るまでは、私自身にも、君のモジュールにも、君のスーツにも、そして当の君自身にすら、詳細のすべてを委ねるなど愚の骨頂だと考えている』

 

感想:権力者とテンプレボーイの話し合いは退屈だ。

 

『ほら見ろ、それこそお前がケツに突っ込んでおくべき「SCお決まりの秘匿主義(知る必要のある者だけの原則)」ってやつだ。その任務がどれだけクソデリケートだろうが知ったことか。何が伴うのかを知るまでは、検討すらしてやらないぞ』

 

スクラッチハウンドどもは、今まさにベイト・ピットの中央から1メートルほどの空中ですれ違い、跳躍しながら互いに身体をひねっていた。(クソ、)とホフォエンは思った。(この勝負は、どちらの獣が先に相手の首に歯を突き立てるか、最初の飛びかかりの一撃ですべてが決まるタイプの試合かもしれないぞ。)

 

感想:脳内も外も騒がしくなってきましたな。

 

『要求されているのは、』メッセージは、「デス・アンド・グラビティ」号が昔からイライラした時に出していたトーンをかなり忠実に再現しながら言った。

 

感想:アナログ感あってよき。

 

『君の時間の80日間だ。そのうちの99%から99.9%以上の時間は、ポイントAからポイントBへと移動するだけで、何一つ骨の折れるような、あるいは要求の厳しい仕事をする必要はない。旅の前半は、我々がアフロント側に君に提供するよう要請する(というより、おそらく金を払って手配する)アフロントの宇宙船に乗り、想像するにかなりの快適さの中で過ごすことになる。後半はカルチャーのGCU(一般接触船)の船内で確実な快適さを約束され、その後、別のカルチャーの船を短期間訪問する。そこで、君に要請したい任務が実際に「遂行」されることになる「短い訪問」と言ったが、君に要求される事柄は、おそらく1時間以内に完了する可能性があり、どれだけ長く見積もっても1日以上かかることはない。その後、君は復路につき、我々の親愛なる友人であり同盟者であるアフロントの元へと戻って、中断した場所から活動を再開すればいい。どうだ、これなら大した重労働には聞こえないだろう?』

 

スクラッチハウンドどもはピットの中央上空で衝突し、互いの喉を目がけて顎を突き出していた。まだ判別するのは少し難しかったが、ホフォエンの目には、ファイヴタイドが賭けた方の犬(赤の首輪)の形勢はあまり良さそうには見えなかった。

 

『へえへえ、そうかい。そんな話は前にも聞いたことがあるよ、D&G(デス&グラビティ)。で、俺への報酬(見返り)は何だ? 一体なぜ俺がそんなことを――? ――おっと、クソ‥!』

 

感想:パパと息子の会話でわろた、

 

『どうした?』デス・アンド・グラビティ号のメッセージが尋ねた。

しかし、ホフォエンの意識は完全に別のところへ向いていた。

 

2匹のスクラッチハウンドは空中でがっちりと組み合い、スローモーションで手足をバタつかせながらピットの床へと落下した。青い首輪をつけた犬が、赤い首輪の犬の喉を完全に顎でロックしていた。 周囲のアフロントたちの多くが歓声を上げ始めていた。ファイヴタイドと彼の支持者たちは悲鳴を上げていた。

 

感想:おお〜。

 

『スーツ?』ジェナール=ホフォエンは思考した。

『何でしょうか?』ゲルフィールド・スーツが言った。『てっきり、まだお話し中かと?』

『そんなことは今はどうでもいい。あの青いスクラッチハウンドが見えるか?』

『あなたも私も、あのクソったれな生き物から目を離せませんよ』

『あいつにエフェクター(素粒子遠隔操作ビーム)をくれてやれ。相手から引き剥がすんだ』

『そんなことできません! それは「チート(不正行為)」です!』

 

感想:ゲームプレイヤー感強め。

 

『ファイヴタイドのケツは、この賭けのせいでメリーゴーランドの外まで完全にハみ出しかけてるんだよ、スーツ。今すぐやれ。さもなきゃ、重大な外交問題の個人責任をお前が背負うことになるぞ。お前次第だ』

 

感想:人間はAIを脅すこと多し。

 

『なんですって!? でも!』

『今すぐエフェクターを撃つんだ、スーツ。ほら、前回のアップグレードでお前、アフロントの監視網をかいくぐって微細操作できるようになったんだろ。おい! 見ろよあのザマ。うわぁ! あの義肢の顎が自分の首に食い込んでくる感覚が想像できるか? ファイヴタイドは今頃、自分の外交官キャリアに永遠の別れのキスをしてる最中だぞ。おそらく俺に決闘を申し込む方法をすでに考えてる。その後、俺が彼を殺そうが、彼が俺を殺そうがどうでもいいが、十中八九、カルチャーとアフロントの間で戦争に‥』

 

感想:人間と違って、だらしないというか、業があるというか、人間よりも人間っぽい説

 

『わかりましたよ! わかりました! ほら、やりました!』

 

感想:スーツ、仕事早い。

 

ジェナール=ホフォエンの右肩の上が、かすかに震えるような(ブーンという)感覚に包まれた。

次の瞬間、赤いスクラッチハウンドがビクッと跳ね、青いスクラッチハウンドの胴体が不自然に二つ折りに折れ曲がって、噛みついていた顎の力が緩んだ。 赤い首輪の獣はすかさず相手の下から這い出ると、身体をひねって形勢を逆転させ、今度は自分が青い首輪の獣の喉へとプロテーゼの顎をガッシリと突き立てた。

 

ホフォエンのすぐ隣では、依然としてスローモーションのまま、ファイヴタイドが(勝利の予感に)空中へと浮き上がり(立ち上がり)始めていた。

 

感想:アフロントにはなぜバレないのか。

 

『よし、D&G。何の話だったっけ?』

『今の遅れは何だ? 一体何をしていた?』

 

感想:わんわんの対決をみてたんだよ。

 

『気にするな。あんたの言う通り、時間は無駄にできない。先を急ごう』

『君が報酬を求めていることは察する。何が欲しいのだ?』

『おや、考えさせてくれ。俺専用の宇宙船を1隻もらえるか?』

『それについては交渉可能であると理解している』

『だろうな』

『望むものは何でも手に入る。どうだ? それで承諾するか?』

『はは、もちろんさ』

『ジェナール=ホフォエン、頼む。私からも懇願する。この件を引き受けると端的に言ってくれ』

『D&G、あのあんたが俺に「懇願」してるだって?』ジェナール=ホフォエンは思考の中で笑いながら尋ねた。

 

感想:あー。人間のシーンはつまらぬ。

 

ピットの中では青い首輪のスクラッチハウンドが相手の顎の中で絶望的にのたうち回り、ファイヴタイドが彼の方を振り向き始めていた。

 

『そうだ、懇願している! さあ、同意してくれるか? 時間がないのだ!』

視界の端で、ジェナール=ホフォエンはファイヴタイドの手足の1本が自分の方へとすっ飛んでくる(背中を叩こうとしている)のを見た。彼は自分のスローモーション化している身体に、その衝撃への備えをさせた。

 

感想:多分、自分で何かを成し遂げたことがないんだ。だから、登場人物たちはテンプレ化しちゃうんだ。基本はAIが関与するし、自らの力で何かを‥というのはなさそう。だから、みんな同じようなキャラになるんだろうなー。まあ、作者がそう考えてどうかした、ってわけじゃないだろうが。

 

『考えておくよ』

『しかし‥!』

『スーツ、通信を切れ。モジュールには、夜更かしして待つ必要はないと伝えておけ』

 

『それからスーツ、コマンド命令だ。俺が呼びかけるまで、自分自身を完全にオフラインにしろ』

ジェナール=ホフォエンは「クィッケン(思考加速)」の効果を停止させた。

 

現実の時間が一気に元の速度へと戻る。

ファイヴタイドの熱狂的な「お祝いのドツき」が、彼の背中に歯がガタガタと鳴るほどの衝撃とともに炸裂した瞬間、彼は微笑み、幸せなため息をついた。

 

かくしてカルチャー(の裏工作)は、1000サッカの賭けに大勝利した。

実に楽しい夜になりそうだ、と彼は思った。

 

感想:はわー。読んだ読んだ。今日はここまでにしよっと。つかれた。

イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳 (3)原始的な異星人アフロントがおもしろい!

2026 / 07 / 01  09:55
イアン・バンクス「EXCESSION」の感想 (3)

 

 

「我が良き友、ビル・ジェナール=ホフォエンよ、よく来た!」

 

ウィンターハンター(冬の狩人)部族の「ファイヴタイド・ヒューミッドイヤー(湿った年)7世」大佐(一等兵)は、その4本の触肢(手足)を人間の身体に巻きつけ、彼を自身の中心質量へと固く抱きしめると、唇の総(フサ)をすぼめてフロントの嘴(くちばし)を人間の頬に押し当てた。「ムゥゥゥゥーーー、ワッ! よし、これでよし! ハハハ!」

 

感想:なんだ、この異星人は。

 

ジェナール=ホフォエンは、数ミリメートルの厚さしか基本ないゲルフィールド・スーツ越しに、この外交部隊の将校の「キス」を感じ取った。それは顎へのそこそこ鋭い衝撃に続き、強力な吸引が襲ってくるものだった。

 

感想:えー、こんな外交は嫌だ。皮膚がちぎれそうなほどの吸引キスは勘弁。軍国主義、男尊女卑って感じのイメージが猛烈。

 

アフロント特有の、多様で力強い「親愛の情の表現」に慣れていない者であれば、この生き物が自分の歯を頬から吸い出そうとしているか、あるいは『カルチャー製ゲルフィールド型接触・保護スーツ・マーク12』が、局所的な部分真空によって着用者から引き剥がされるかどうかを実験しているのだ、と結論づけたことだろう。

 

感想:軍国主義っぽい野蛮なおっさん異星人は、アフロント人と言うのか。

 

海洋の底に匹敵する圧力に耐えるよう設計されたスーツに保護されていない人間が、この潰されんばかりの強力な4本触肢の抱擁を受けたらどうなって唯々(ただただ)恐ろしいことになっていたかは、おそらく考えない方が身のためだった。

 

感想:もはや凶器や、アフロント人のキスは。繁殖期はどうしているんや。

 

もっとも、アフロントの生命を維持するために必要な環境に、なんの保護もなく生身で晒された人間は、太ももほどもある触手の檻に押し潰される心配をするまでもなく、少なくとも3つの刺激的かつ異なる苦痛に満ちた方法ですでに死に絶えているはずだが。

 

感想:保護なしでは対面できない野蛮人をアフロント人と言う。

 

「ファイヴタイド、また会えて嬉しいよ、この悪党め」ジェナール=ホフォエン(人間)は、親愛の情を示すのにふさわしい、熱意ある力加減で、アフロントの嘴の端あたりをパチパチと叩いた。

 

「お前もな、お前もだ!」アフロントは言った。

 

感想:ジェナールは、アフロントとの外交に手慣れているご様子。

 

彼(ファイヴタイド)は男を掴んでいた手を離すと、驚くべきスピードと優雅さでくるりと回転し、人間の片手を触手の先で握りしめると、巣空間(ネスト・スペース)の入り口付近にいるアフロントたちの轟音轟く大混雑を通り抜けて、ウェブ膜(蜘蛛の巣状の床)の開けた場所へと彼を引っ張っていった。

 

感想:え、どういうこと(笑) 案内方法も強烈。

 

その巣空間は半球の形状をしており、直径は裕に100メートルはあった。

 

主に連隊の食堂(メス・ホール)やディナー・ホールとして使用されているため、旗、バナー、敵の皮、古い武器の破片、軍事用具などが吊り下げられていた。

 

湾曲した、血管が浮き出たように見える壁も同様に、勲章プラーク、中隊・大隊・師団・連隊の栄誉プラーク、そしてかつての敵たちの頭部、生殖器、手足、あるいはその他の「一般的に受け入れられている特徴的な身体の部位」で装飾されていた。

 

感想:エジプト、ナルメル王のパレットの裏にもあるよね。敵の男たちが、斬られた首を両足の間に置かれて、山積みになっている生殖器を神官が数えているやつ。永久に生殖能力を失うように‥という優生思想てきな。

 

ジェナール=ホフォエンは以前にも数回、この特定の巣空間を訪れたことがあった。彼は、このホールが誇る「3つの古代の人間の頭部」が今夜も見える場所に飾られているかどうか、上を見上げた。

 

外交部隊(ディプロマティック・フォース)は、「その種族のまだ生きている個体が訪問してきた際には、該当するエイリアンの判別可能なトロフィー(戦利品)の部位は覆い隠すように」と命令するだけの機転(タクト)があることを自負しているのだが、ときどき忘れるのだ。

 

感想:なんだそれ、おもしろいな(笑)食堂?ホールに飾ってるトロフィーなんだから、もうそのままにした方が潔いやん。というか、個体が帰った後に戦利品を壁に戻すのも、おもろい。

 

彼(ジェナール)はその頭部を、細分化されたカーテン壁の高い位置に隠された、かろうじて3つの小さな点にしか見えない場所に見つけ、それらが覆い隠されていないことに気づいた。

 

おそらくこれは単なる手落ちだろう。しかし、完全に意図的なものである可能性も同じくらいあった。

 

感想:あー‥その言い方は、人間も飾られてるのか。それが隠されてないんやな‥。

 

つまり、彼を落ち着かせず、自分の立場をわきまえさせるために慎重に仕組まれた、極めて絶妙な重みの「侮辱」であるか。あるいは、彼は「身内(男の子たちの一人)」として受け入れられているのであって、たまにお茶の間のテーブルを飾っている近親者の皮を見ただけで大騒ぎして不機嫌になるような、あのめそめそした臆病なエイリアンたちとは違うのだ、ということを示す、繊細かつ深遠な「お世辞(褒め言葉)」であるかのどちらかだ。

 

感想:うーん、ちょっと考え方おかしくない?いや、身内の一人としてカウントしてるならば、戦利品(人間)を飾ることはない気がするのだがね‥。ワザとだよ、たぶん。反応すると喜ぶから、反応しない方がいいね。

 

これらどちらの可能性が真実であるかを迅速に見分ける方法が「絶対にない」ということこそ、まさにこの人間(ジェナール=ホフォエン)がアフロントという種族において最も愛着を感じている特質だった。

 

感想:アフロント人じゃなくても、人間でもそういうことする奴たくさんおるで。まあでも、愛着が湧くんやな。気持ち悪そうなエイリアンみたいな容姿で軍国主義のおっさんエイリアンが、こういうしょうもないことして相手の反応を見る‥器の小ささ‥にな。わたしも、ドローンに愛着湧くから分かるで。

 

そして同時に、カルチャー社会全体や、特に彼の前任者たちが、これ以上ないほどの絶望の源として見出してきた属性でもあった。

 

感想:そりゃあ、大抵の人から嫌われるタイプだからな。

 

ジェナール=ホフォエンは遠くにある3つの頭部に向けて皮肉な笑みを浮かべ、ファイヴタイドがそれに気づいてくれないだろうかと半ば期待した。 

 

感想:目は口ほどに物を言うw

 

ファイヴタイドの眼柄(めづか=目がついた触手)が回転した。「給仕のクズめ!」彼は近くを浮遊していた去勢された若者に吼えた。「ここへ来い、薄汚い奴め!」

 

その給仕は、この大きなオスの半分ほどの大きさしかなく、その生物の後ろの嘴の切り株を計算に入れなければ、子供らしく傷一つなかった。若き給仕は、礼儀が要求する以上にガタガタと震えながら近づき、触手が届く距離まで浮かんできた。

 

感想:おお、隠さなかったことを咎められるのかw

 

「この物体は」ファイヴタイドは触肢の先をピッと動かしてジェナール=ホフォエンを指し、吼えた。

 

「お前のチーフがこっぴどい折檻(せっかん)を免れたいのであれば、すでにブリーフィングを受けているはずの、あのエイリアンの獣人間だ。獲物のように見えるかもしれないが、実際には名誉ある大切なゲストであり、我々と同様に食事を必要としている。今すぐ動物と異世界人用の給仕テーブルへ突っ走り、こいつのために用意された滋養(エサ)を取ってこい。早くしろ!」ファイヴタイドが絶叫すると、その声は大半が窒素で構成された大気の中に、目に見える小さな衝撃波を作り出した。去勢された若き給仕のスタッフは、適切な敏捷さをもってガスを噴出しながら退散した。

 

感想:去勢された階級か。人間は獲物のように見えるかもしれないがwアフロント人、正直でおもしろいwちなみに、アフロントという意味は「侮辱する」「公然と恥をかかせる」という意味らしい。

 

ファイヴタイドは人間に向き直った。「お前への特別なもてなしとして」彼は叫んだ。「お前たちが食べ物と呼んでいるあの胸糞悪いドロドロ(グロップ)と、あの毒物の水とかいうやつをベースにした液体の入った容器を用意してやったぞ。

 

感想:ナチュラルに侮辱してるw

 

神の糞にかけて、俺たちがお前をどれだけ甘やかしているか分かるだろう、ええ!?」彼は人間の腹部を触手でパチンと叩いた。ゲルフィールド・スーツが硬化してその衝撃を吸収したが、ジェナール=ホフォエンは笑いながら少し横によろめいた。

 

「君の寛大さには、もう少しでひっくり返されるところだったよ」

「よろしい! 俺の新しい制服は気に入ったか?」アフロントの将校は、人間から少し身を引いて、自分の全高まで身体を引き上げながら尋ねた。ジェナール=ホフォエンは、相手の身体を上から下まで見つめる仕草をして見せた。

 

平均的な成体のアフロントは、胴回りが約2メートルほどの、少し潰れた成体のアフロントは胴回りが約2メートル、高さが1.5メートルほどの大きさで、血管の浮き出たフリル付きの「ガス嚢(のう)」の下につり下がっていた。

 

このガス嚢は、アフロントが望む浮力に応じて直径1メートルから5メートルの間で変化し、その頂点には小さなセンサーの突起(バンプ)がついていた。

 

アフロントが攻撃/防御モードに入ると、この嚢全体を収縮させ、中央の体質量の頂点にある保護プレートで覆い隠すことができた。

 

主要な目と耳は、口を覆うフロントの嘴の上にある2本の眼柄(がんぺい)に備わっており、後ろの嘴が生殖器を保護していた。肛門兼ガス排出口は、本体の真下に位置していた。

 

感想:前の嘴は、口。後ろの嘴は生殖器を守るためのものなのか。二つ嘴があるのか‥キモい!笑

 

中央の質量には、生まれつき太さや長さの異なる6本から11本の触肢(手足)が付着しており、そのうちの少なくとも4本は通常、平らな葉の形をしたパドルのようになっていた。

 

出会った成体オスのフロントが実際に何本の手足を持っているかは、それまでにその個体がどれだけの戦闘や狩猟に参加し、そこでいかに成功を収めてきたかに完全に依存していた。

 

感想:古傷は勲章ってやつか?

 

深い傷跡が並び、手足よりも「切り株(失った跡)」の方が多いアフロントは、個人の評判次第で、「見事に献身的なスポーツマン」と見なされるか、あるいは「勇敢だが愚かで、おそらく危険な無能」と見なされるかのどちらかだった。

 

感想:残る傷をつけてしまうくらいなんだから無謀で愚かだと。おもしろみ。しかし、私は傷がある個体の方が信用できる説。

 

ファイヴタイド自身は9本の手足を持って生まれた。これは名門の家柄においては最も縁起の良い数とされていたが(ただし、決闘や狩りで少なくとも1本は失うのが嗜みとされていた)、彼は軍事学校時代、フェンシング指導教官の第一夫人の名誉を巡る決闘において、その教官にきっちり1本を切り落とされていた。

 

感想:ドローンのシセラ‥が頭から離れない‥。ファイヴタイドの歴史はいいや‥。

 

「非常に見事な制服だ、ファイヴタイド」ジェナール=ホフォエンは言った。

「ああ、実にそうだろう?」アフロントは身体を波打たせて言った。

 

ファイヴタイドの制服は、中央の質量に縦横無尽に交差した、金属的な質感を持つ無数の幅広のストラップやサッシュ(飾り帯)で構成されており、そこにはホルスター、鞘、ブラケットが点在していた。

 

これらはすべて武器で埋まっていたが、今夜出席する公式ディナーのために封印されていた。

 

さらに、ジェナール=ホフォエンが「勲章やデコレーション」に相当すると知っている、きらめくディスクの数々も飾られており、それらには彼が仕留めた特に見事な獲物の動物や、重傷を負わせたライバルの肖像が関連付けられていた。

 

また、控えめに空白のままにされた一連の肖像ディスクは、ファイヴタイドが名誉を持って「孕ませることに成功した」と主張できる他クランのメスたちを示していた。

 

貴金属で縁取られたディスクは、抵抗を試みた(一筋縄ではいかなかった)メスたちの証拠だった。

 

感想:おお‥激しく抵抗したメスには金色の額縁てわ飾られる‥名誉だろ?おい?という考えなのか。脱略文化‥ということがわかりますな。

 

サッシュの色や模様は、ファイヴタイドのクラン、階級、そして連隊(ファイヴタイドが所属する外交部隊の正体は、要するにこれだった‥アフロントと取引をしたい、あるいは取引せざるを得なくなったいかなる種族も、これを無視するのは賢明ではなかった)を示していた。

 

感想:まあ、自分たち種族の女も額縁の中に、、ってことも有り得るし、過去にあったろうからなあ。

 

ファイヴタイドはピルエット(旋回)し、ガス嚢を膨らませて自らを浮き上がらせた。触肢をぶら下げ、体重をほとんどかけることなく、巣空間のスポンジ状の床からふわりと浮上した。

 

「私は‥光輝(レスプレンデント)ではないかね?」 ゲルフィールド・スーツの翻訳機は、ファイヴタイドが自分を表現するために選んだその形容詞を、仰々しく音節を転がすように訳すことに決めたため、アフロントの将校はまるで大根役者のように聞こえた。

 

感想:ほっほー。翻訳機能付きのボディスーツなのか。めっちゃ欲しい。

 

「間違いなく威圧的(インティミデーティング)だよ」ジェナール=ホフォエンも同意した。

「感謝する!」ファイヴタイドは言い、眼柄が人間の顔と同じ高さになるまで再び下降した。眼柄の視線が上下に動き、男を上から下まで値踏みした。

 

「お前自身の衣服も‥ようやく、普段とは違うな。お前たちの民の基準からすれば、間違いなく最高にスマート(お洒落)なのだろうな」

 

感想:褒め方が‥微妙!笑

 

アフロントの眼柄の姿勢は、彼がこの発言に極めて満足していることを示していた。おそらくファイヴタイドは、自分が信じられないほど外交的(配慮が行き届いている)であると自惚れているのだろう。

 

感想:ファイヴタイド‥クセになる‥かわいい‥

 

「ありがとう、ファイヴタイド」ジェナール=ホフォエンは一礼して言った。彼は自分自身を、いささか着飾りすぎだと考えていた。

 

もちろん、ゲルフィールド・スーツそのものがある。これは第二の皮膚のように馴染んでいるため、着用していることすら完全に忘れてしまうほどだった。通常、このスーツの厚さはどこをとっても1センチメートル以下、平均してその半分ほどしかないが、アフロントの生命維持に必要な環境よりもさらに過酷な環境下でも、彼を快適に保つことができた。

 

感想:おしゃれなど気にする必要はないさ。アフロントに生身の身体を触れられるだけで人間は死んでしまうんだから、スーツは必須や!

 

あいにく、どこかの馬鹿が「カルチャーは、こうしたスーツを活火山のマグマ溜まりの中に転送(ディスプレース)し、再び飛び出させてテストしている」という噂を漏らしてしまっていた(これは事実ではない。ラボでのテストはむしろこれよりも要求が厳しいが、一度だけ、目立ちたがり屋のカルチャー製造工場が人々を感心させるためにやったことがあった)。

 

感想:カルチャーは、高度な翻訳や機能を持つ道具にAIを宿らせるけど、今回ジェナールが着用したスーツはその中でもレベルの低いモノを選んだのだろう‥

 

これは、アフロントのように好奇心が強く肉体的にエネルギッシュな生物の前で触れ回るべき情報では絶対になかった。彼らの頭に余計なアイデアを植え付けるだけだからだ。

 

感想:マグマでも平気という噂を聞いたアフロント大佐は「こいつをどの拷問器具(あるいは過酷な自然環境)に放り込んだら、本当に壊れないかテストできるだろうか」という好奇の目で見ているだろうな‥。

 

ジェナール=ホフォエンが暮らすアフロントの居住区には、火山があるほどの惑星環境は再現されていなかったが、ファイヴタイドから例の火山の話を本当かどうか確認された後、外交部隊の将校(ファイヴタイド)が自分を奇妙な目で見ているのに何度か気づいたことがあった。

 

感想:くすくす(笑)

 

それはまるで、自分がアクセスできるどんな自然現象や装置を使えば、この驚異的で興味深い保護性能を「テスト」できるかを考えているかのようだった。

 

ゲルフィールド・スーツには「ノード分散型頭脳」と呼ばれるものが備わっており、ジェナール=ホフォエンのアフロントたちへの発言のあらゆるニュアンス、およびその逆を、何の苦もなく翻訳することができた。

 

また、その他のいかなる音響、化学、電磁信号も、人間に意味のある情報へと効果的に変換してくれた。

 

不運なことに、この種の高技術な「お利口機能」に必要な処理能力のせいで、カルチャーの慣例に従い、このスーツは「センチエント(知性・意識を持つ存在)」でなければならなかった。

 

ジェナール=ホフォエンは、知性のレベルを許容される知的範囲の「最低限界」に固定したモデルを要求していたが、それでもスーツが文字通り「独自の意思(マインド・オブ・イツ・オウン)」を持っていることには変わりなかった(それがたとえ『ノード分散型』、ジェナール=ホフォエンが、その意味について一切何も知らないことをむしろ誇りに思っている技術用語の一つ、であろうとも)。

 

その結果、この装置は、文字通りの意味で「その中で暮らす喜び」であるのとほぼ同等に、比喩的な意味で「付き合っていくのが苦痛」な代物になっていた。

 

感想:スーツに搭載されている人工知能くんはどんな自我を持っているのかな。にまにま。

 

着用者を完璧にケアしてくれるのだが、その事実をこれでもかと絶え間なくリマインド(アピール)してくるのをやめられないのだ。

 

感想:アフロント同様に自己主張が激しいとみた。

 

『いかにもカルチャーらしい』と、ジェナール=ホフォエンは思った。

 

普段、ジェナール=ホフォエンはスーツの表面の大部分を、アフロントから見て乳白色のシルバーに見えるように設定し、手と頭部だけを透明にしていた。

 

ただ、「目」だけはどうしても不自然に見えてしまった。普通に瞬き(まばたき)をするためには、目を少し外側に膨らませる必要があったのだ。そのため、彼は外出する際には大抵サングラスを着用していた。

 

アフロントの母星の、太陽の光が降り注ぐ雲の頂から100キロメートルも下に広がる、薄暗い光化学スモッグ特有の大気中に沈みながらサングラスをかけるのは、確かに少しちぐはぐに見えたが、小道具としては役に立った。

 

スーツの上から、彼は大抵ガジェットや贈り物、賄賂(わいろ)を入れるためのポケットがついたジレ(ベスト)を着用し、股間を包み込むようなヒップホルスターには、時代遅れだがいかにも強そうなハンドガンを2挺収めていた。

 

攻撃能力という点では、これらのピストルはジェナール=ホフォエンにとって一種の「最低限の品格(リスペクト)」をもたらしていた。これらがなければ、どんなアフロントも、これほど貧弱な異世界人を真面目に相手にする姿を同胞に見せるわけにはいかなかったのだ。

 

感想:武力が全て‥というわけか。しかし、情報戦においてはカルチャーの方が上では‥

 

この連隊ディナーのために、ジェナール=ホフォエンは自分が住んでいるモジュール(居住室)の忠告を不承不承受け入れ、モジュールが「最高に魅力的だ」と保証する衣装(膝丈のブーツ、タイトなズボン、短いジャケット、そして肩から羽織るロングマント)を身にまとっていた。

 

そして(通常よりもさらに巨大なピストルのペアに加えて)、3ミリメートル口径の「ヘビー・マイクロ・ライフル」のペアだった。2000年前の骨董品(アンティーク)だが今でも完全に動作し、非常に長くて、ギラギラとした輝きを放つ見事な代物だった。

 

感想:やっぱり、アンティークって価値あるのかな。でも、何の対価なんだろう。

 

彼は、モジュールが提案してきた「タッセル(房飾り)が大量についた、ドラム缶のような高い帽子」にはさすがに難色を示した(バルクした)ため、二人は代わりに、ドレス/アーマー兼用のハーフヘルメットを被ることで妥協した。

 

それはまるで、6本の長い金属製の指を持った何者かが、彼の頭を後ろから優しく包み込んでいる(クレードルしている)かのように見えるデザインだった。

 

当然ながら、この衣装のすべてのパーツは独自のゲルフィールド(に相当するもの)で覆われており、アフロントの環境の冷たく腐食性の高い圧力から保護されていた。

 

ただしモジュールは、「もし社交上の礼儀としてそのマイクロ・ライフルをぶっ放したいのであれば、完璧に機能しますよ」と言い張っていた。

 

感想:ははは。撃ちたければいつでも完璧に発射できるぜ!というモジュールに対して、ジェナールは平和的にやろうぜ‥お前‥って感じなのかも。

 

「閣下!」と去勢された若き給仕が悲鳴を上げ、ファイヴタイドの脇の巣空間の床面を滑り込むようにして急停止した。

 

その3本の触肢には、様々なサイズの、透明で多重構造になったフラスコが大量に載った大きなトレイが抱えられていた。

 

「何だ?」ファイヴタイドが怒鳴った。

「エイリアンのゲスト様の、お食事(フードスタッフ)でございます、閣下!」

 

感想:敵が攻めてきたぞおーとか、緊急事態かと思いきや、食事の報告でそんな大声を上げんでいただきたい。

 

ファイヴタイドは触手を伸ばすと、トレイの上をごちゃごちゃとかき回し、物をひっくり返した。

 

給仕は、自分が持っているトレイの上で容器が傾き、倒れ、転がるのを、目を見開いた恐怖の表情で見つめていた。

 

感想:うーむ。ファイヴタイドは、なぜ怒っているのかね。

 

その表情を認識するのに、ジェナール=ホフォエンは外交官としての特別な訓練など必要としなかった。万が一、容器のどれかが割れたとしても、給仕にとっての本当の危険はおそらく小さかった。

 

感想:アフロントがやばい行動をした時のための、特別な訓練があるのか。

 

(気圧差による)爆縮が引き起こす破片は比較的少なかったし、アフロントにとって有害な中身(人間の飲料など)は一瞬で凍りついてしまうため、さほどの危険にはならないからだ。

 

しかし、これほど公衆の面前で無能さを晒した給仕を待ち受ける「お仕置き(罰)」は、おそらくその目立ち具合に比例するはずであり、この生き物がガタガタ震えているのはもっともなことだった。

 

感想:かわいそうに‥。軍国主義では、地位がものを言いますな。下級の扱いはつらい。

 

「これは何だ?」ファイヴタイドは詰問し、液体が4分の3ほど入った球体のフラスコを掲げると、去勢された若者の嘴(くちばし)の目の前で激しく振り回した。「これは飲み物か? ああ? どうなんだ?」

「わかりません、閣下!」給仕は嘆いた。「そ、そのように見えますが‥?」

「低脳め」ファイヴタイドはそう呟くと、今度は打って変わって優雅にそのフラスコをジェナール=ホフォエンに差し出した。「名誉あるゲストよ、どうぞ。我々の努力がお気に召すかどうか、教えてくれ」

 

感想:これはもはや、リアルバリューですね。怒り、キレるこそもエンタメ‥!これはぜひ、ジェナールには「不味い」と言って、ファイヴタイドの怒りをヒータアップさせていただきたい。(その方が大衆は喜びます)

 

ジェナール=ホフォエンは頷き、フラスコを受け取った。

 

ファイヴタイドは給仕に向き直った。「それで?」彼は叫んだ。「ただ浮いてるんじゃねえ、このマヌケが。残りは『野蛮人・対話(サヴェージ・トーカー)大隊』のテーブルへ持って行け!」彼が給仕に向けて触手をピッと動かすと、給仕は見事なまでに身をすくめた。

 

感想:はははは。ただ突っ立ってんじゃねぇ!のアフロントverは、ただ浮いてるんじゃねぇ!だ。このマヌケが。

 

そのガス嚢はしぼみ、彼はそそくさと床の膜を走って巣空間の宴会エリアへと向かい、その方向へダラダラと移動し始めていたアフロントたちを器用にすり抜けていった。

 

ファイヴタイドは、通りすがりの外交部隊の同僚将校からの「挨拶の平手打ち」に応じるために一瞬だけ向きを変え、それからまたクルリと戻ると、自分の制服のポケットの一つから液体の入ったバルブ(容器)を取り出し、ジェナール=ホフォエンが持つフラスコに慎重にカチンとぶつけた。

 

感想:挨拶の平手打ち、おもしろい。もう、アフロント人、めっちゃおもしろいな。全てがエンタメ。

 

「アフロントとカルチャーの未来のイン関係(関係性)に」彼は轟かせた。「我々の友情が長く、我々の戦争が短からんことを!」

 

ファイヴタイドはその液体を自分の口の嘴へと絞り込んだ。

 

「見逃してしまうほど短いといいね」ジェナール=ホフォエンはうんざりした調子で言った。

 

これは彼が心からそう思っているというよりは、カルチャーの外交官(アンバサダー)ならそう言うべき決まり文句(ロールプレイ)だからだった。

 

感想:飲むの早いね、って意味なのか?

 

ファイヴタイドは小馬鹿にしたように鼻を鳴らすと、一瞬横に飛びのき、通りかかった艦隊大佐(フリート・キャプテン)の肛門(アヌス)に触手の先を突っ込もうとした。

 

大佐はその触手をねじ伏せ、嘴を攻撃的にカチカチと鳴らしたが、すぐにファイヴタイドの笑いに加わり、親しい友人としての心からの挨拶と、雷鳴のような触手の平手打ちを交わし合った。

 

感想:アフロント人の挨拶といい、心からの挨拶はなかなか身体を駆使しますな。人間目線だと。

 

今夜はこういうノリが延々と続くのだろう、とジェナール=ホフォエンは覚悟した。

 

感想:これをノリというのか。まあ、みんな粛々真面目に黙って座ってたら、それはそれでこわいし、何よりつまらない。

 

このディナーは「男だけの集まり(オール・メール)」であり、そのためアフロントの基準からしても、かなりバカ騒ぎ(ボイスタラス)な場になる可能性が高かった。

 

ジェナール=ホフォエンはフラスコの吸い口を口に当てた。ゲルフィールド・スーツが吸い口に密着して圧力を均等にし、フラスコの密閉を解除した。

 

そして彼が頭を後ろに傾けると、スーツの頭脳(AI)は、その液体が男の口と喉に流れ込むのを許可する前に、彼らにとっての「結構な長考(ディープ・シンキング)」を行った。

 

感想:モジュールのAIのお喋りタイム!

 

『水とアルコールが50対50、さらに部分的に毒性のあるハーブ系の化学物質の痕跡。レイセツィカー・スピリッツに最も近いです』と、ジェナール=ホフォエンの頭の中で声がした。『私だったら、これを(体内に取り込まずに)バイパス(破棄)しますね』

 

感想:えー、めっちゃ便利。捨てよう。

 

『もしお前が俺だったらな、スーツ。お前のこの窒息しそうな、ねっとりした抱擁に耐える苦痛を和らげるためだけに、泥酔を大歓迎しているはずだぞ』ジェナール=ホフォエンは飲み干しながら、その「道具」に言い返した。

 

感想:SFの人間が、人工知能に物申す時は、「道具」「機械」と呼ぶあるある。

 

『おや、私たちは今、お怒りモード(テッチー・モード)ですか?』声は言った。『私はあなた様のために良かれと思ってやっているのですよ』

 

感想:その言い方‥興奮するね。

 

「お前のその奇妙な基準からして、それは美味いか?」ファイヴタイドが尋ね、眼柄をフラスコに向けてコクコクと動かした。

 

感想:奇妙な基準w ああそうだ、ファイヴタイドに対して親近感というか愛着が湧くのは、あいつだ。ラリーのリングワールドという小説に登場するクジン人だな。同じく軍国主義だし。(パペッティアに負けたけど)

 

ジェナール=ホフォエンは、飲み物が喉を通って胃へと温かく落ちていくのを感じながら頷いた。彼が一つ咳(せき)をすると、その衝撃でゲルフィールドが彼の口の周りで一瞬、銀色のチューインガムのように丸く膨らんだ。ホフォエンは知っていたが、これはファイヴタイドにとって「ゲルフィールド・スーツを着た人間ができる、2番目に面白い一発ギャグ」であり、これを超える面白さは「クシャミ」だけだった。

 

感想:そんなに密着力の高いスーツなのか。いいなあ、欲しいな。ファイヴタイドの笑うツボもおもしろいな。そういえば、小学生の時に、生理現象(くしゃみやオナラ)をする生徒をみて、めっちゃ笑う子供がいたな。心は子供な愛らしいアフロント人。

 

「不健康で、毒物そのものだ」ジェナール=ホフォエンはアフロントに言った。「完璧な再現度だよ。化学者に褒め言葉を伝えてくれ」

 

「伝えておこう」ファイヴタイドは自分の飲み物バルブを握り潰し、通りがかった使用人にポイと投げつけた。

 

感想:あーおもしろい(笑)いい、アフロント人、いい!

 

「さあ、来い」彼は人間の手を再び掴んで言った。

 

「テーブルへ行こう。俺の胃袋は、戦闘前の臆病者の腸(はらわた)みたいに空っぽだ」

「違う違う違う、こうやってピッて弾くんだよ、このマヌケな人間め。そうしないとスクラッチハウンド(猟犬)どもに取られちまう。見てろ‥!」

 

感想:笑 ふとした時に、下等な生き物め!人間よ!という心の声が出てしまうアフロント人は素直でおもしろい。狡猾より全然いい。

 

アフロントの公式ディナーは、直径最大15メートルにも及ぶ巨大な円形テーブルの集まりの周りで開催された。

 

それぞれのテーブルの真ん中は「餌穴(ベイト・ピット=闘技場)」を見下ろせるようになっており、コース料理の合間や最中に、そこで動物たちの殺し合い(ファイト)が行われる仕組みになっていた。

 

感想:はっはっはは。もはや、古代ローマのコロッセオではないか。

 

古き良き時代、軍隊やアフロント社会の上流階級が開催する晩餐会では、「捕らえたエイリアン(異星人)のグループ同士を戦わせる異種格闘技戦」が、特別かつ定番のハイライトだった。

 

感想:イアンバンクスのゲームプレイヤーにも似たような感じのあったよね。えーっと。特定の権威者のみ閲覧できるAVだ。異星人を陵辱しながら犯すとか。まあ、人間の差異たる欲求はそういうものですよ。(アフロント人は人間ではないが、人間が作った設定なので、人間の思考になっている)

 

それぞれのエイリアンの化学特性や気圧が異なるため、そのような戦闘をお膳立てするのはしばしば恐ろしく金がかかり、技術的な困難を極めたにもかかわらず、だ。(観戦しているディナーのゲストに本物の生命の危機が及ぶことも珍しくなかった。

 

感想:そうね。窒息とか、環境変化で死んだらつまらないものね。戦闘で苦しみながら死なないとね。ゲストも命懸けのエンタメですなぁ〜。

 

例えば、334年のディープスカー家の『テーブル5』で起きたあの恐ろしい大爆発を誰が忘れられるだろう? 

 

感想:ほほう?

 

ガス巨星の大気を再現するためにドーム状に加圧されていた餌穴(ピット)が爆発したせいで、そのテーブルのゲスト全員が、肉片を飛び散らせる無惨な、しかし名誉ある最期を遂げたのだ)。

 

感想:それも、名誉。

 

実際、アフロント社会の「本当に重要な実力者たち」の間で最も頻繁に口にされる不満の一つが、アフロントが他の宇宙航行種族の非公式な連合(アソシエーション)に加盟したことに対するものだった。

 

感想:まあ、口出しされるからね。

 

他の「劣等な種族」に対して親切に振る舞わなければならなくなったせいで、あの野獣どもに、アフロントの栄光ある武力の前に己の根性を証明するチャンスを与える代わりに、平均的な社交ディナーが著しく退屈(マイルド)なものになってしまった、というのだ。

 

感想:素直でよろしき。連合というのは、カルチャーも含むのだろう。異星人を拉致して殺し合わせるなよ、とか。破れば、連合のメンバーから攻撃を受ける‥。ということは、アフロント人もカルチャーには勝てないと思っているのかもしれない。

 

それでも最近では、本当に特別な機会(イベント)になると、適切な「不名誉な揉め事」を抱えたアフロント同士、あるいは犯罪者同士の戦いが行われた。

 

そのようなコンテストでは通常、主役たちの足をもつれさせ、互いを紐で縛り付け、帽子ピンほどの大きさしかない「極細のナイフ(スリヴァー・ナイフ)」を武器として持たせることが要求された。

 

戦闘がすぐに終わりすぎないようにするためだ。

 

ジェナール=ホフォエンは一度もその手の戦いに招待されたことがなかったし、今後もないだろうと思っていた。

 

エイリアンに目撃させるような種類のものではないし、何より、誰もが観たがるそのスペクタクルの席の奪い合いは、戦いそのものに負けず劣らず獰猛なものだったからだ。

 

感想:まさに、リアルバリュー!イアンバンクスのゲームプレイヤーに登場する「狩猟」もそんな感じだった記憶。

 

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