足裏吉田

日記

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イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳 (5)火の鳥 牧村の罰よりマシな罰

2026 / 07 / 03  09:59
イアン・バンクス「EXCESSION」の感想 (5)火の鳥 牧村の罰よりマシな罰

 

その夜もまた、満月の薄明かりがもたらす灰色の境界領域(まどろみ)の中で、あの恐怖が司令官を襲った。今回は以前よりもさらに酷かった。

 

感想:次はどんな人間が登場するんだ。

 

夢の中で、彼は夜明けの淡い光の中に置かれたキャンプ用の簡易ベッドから立ち上がった。谷のふもとでは、死体搬送車の真上にそびえる煙突が、暗い煙を吐き出していた。キャンプ内では他には何も動いていなかった。彼は静まり返ったテントの間を通り抜け、監視塔の下をくぐって、森林地帯を抜けて氷河へと彼を運ぶケーブルカー(フニクラ)へと歩いた。

 

感想:夢の中で?つまり、これは現実ではなくて夢?それとも、本物の記憶てきな、フラッシュバックなのかい?

 

光は目を射るように白く、冷たく希薄な空気が喉の奥をキリキリと刺激した。風が彼を打ちのめし、雪と氷のベールを巻き上げては、岩のように黒い山々と雪のように白い山々の険しい土手に挟まれた、巨大な氷の河のひび割れた表面をあちこちへと移動させていた。

 

感想:美しい氷河ったやつかい。

 

司令官は辺りを見回した。彼らは今、氷河の深い西側の斜面を採掘していた。彼がこの最新の作業現場を目にするのは、これが初めてだった。

 

感想:作業現場とな。陸軍的な戦争かと思いきや、何かの作業なのかい。何を発掘しているのかい。

 

その斜面自体は、彼らが氷河を爆破して作った巨大なすり鉢状の盆地(ボウル)の内部に位置していた。輝く氷の広大な器の底で、男たち、機械、そしてドラグライン(引き綱式の大型掘削機)が、まるで虫のように動いていた。

 

感想:強制収容所の労働のにおい。美しい自然の中で労働させられる‥囚人‥?

 

その斜面は純白だったが、黒い点が点々と散らばっており、この距離からはそれがただの岩石のように見えた。

 

危険なほど急勾配に見える、と彼は思った。しかし、もっと緩やかな角度で切り開いていては時間がかかりすぎてしまう。彼らは常に、本部から急かされ続けていたのだ‥。

 

感想:本部とは、誰だい?この流れは、アフロント人かカルチャーのどちらかだと思うが、また別の組織なのかい?

 

ドラグラインがフックに引っ掛けた貨物を解放する傾斜ランプの頂点では、列車が待機しており、目を眩ませる白い風景を横切るように黒い煙が漂っていた。

 

看守たちは足を踏み鳴らし、技術者たちはウィンチエンジンの傍らで活発に議論を交わし、キャラバン小屋からは休憩を終えたばかりの積み上げ作業員の新しい交代要員が吐き出されていった。

 

感想:発掘作業員、何を発掘しているんだい?そういえば、死体搬送者があったな。死体を埋めているのかい?それとも、死体を発掘しているのかい?

 

掘削作業員を乗せたソリが、氷に刻まれた巨大な裂け目の下へと降ろされていく。彼らの、ボロ布と大差ない制服や衣服に包まれた、不機嫌でやつれた顔つきを、彼は見て取ることができた。

 

地鳴りが響き、彼の足元が振動した。

彼が再び氷の斜面の方を振り返ると、その東側半分が丸ごと崩壊し、圧倒的なスローモーションで、下にいる作業員や看守たちの小さな黒い点の上へと、立ち上る白煙の雲となって崩れ落ちていくのが見えた。

 

感想:逃げねばぁぁあ

 

彼は、小さな人影たちが向きを変え、空気の中を突き進み、自分たちの方へと表面を這うように迫り来る氷の雪崩から逃げ惑うのを見つめていた。

 

数人は生き延びた。だがほとんどは逃げ切れず、その白亜の、きらめく大混乱の中に揉み消され、巨大な白い波の下へと消え去っていった。その物音は、彼の胸に直接響くほど深い轟音だった。

 

感想:うーむ。というか、やっぱりなんで人間の作業員が必要なんだよ?と思ってしまう。それとも、マインドの方がカルチャーよりも立場が上なのか?人間は人工知能の支配下なのか?だとしたら、納得だけどさ。

 

彼は斜面の切り口の縁に沿って、傾斜面の頂点へと走った。誰もが叫び声を上げ、右往左往していた。盆地の底全体が、舞い上がった雪と粉砕された氷の白い霧で満たされ、氷の崩落そのものが埋め尽くした犠牲者たちと同じように、まだ走って逃げている生存者たちの姿を覆い隠していった。

 

感想:ほうほう。昔、ある犠牲者を氷の下に埋めたのか。それ(死体)を発掘しているのか。何のために?

 

ウィンチエンジンが無理な負荷をかけられ、高い、金切り声を上げた。ドラグラインは停止していた。彼は傾斜面の近くに集まりつつある人々の群れへと駆け寄った。

 

ここで何が起きるか、私は知っている、と彼は思った。自分に何が起きるかも分かっている。あの痛みを覚えている。あの少女が見える。この場面は知っている。何が起きるか分かっているんだ。走るのをやめなければならない。なぜ私は走るのをやめられないんだ?なぜ止まれない? なぜ目を覚ますことができないんだ?

 

感想:こいつは何を言ってるんだ?あ、そうか。ここは君の夢だったね。にしても、リアルな夢だこと。昔の記憶なんじゃないか?

 

彼が他の者たちのところへたどり着いた時、ウィンチエンジンによって今なお引っ張られ続け、瓦礫に挟まれて身動きが取れなくなっていたドラグラインの張力が、限界を超えた。

 

霧の盆地の奥深くのどこかで、鋼鉄製の太いワイヤーロープが、銃声のような音を立てて断裂した。鋼鉄のケーブルは、シューシューと音を立て、うねり、身をよじらせながら空気中を突き進み、斜面を引き裂いて縁の頂部へと駆け上ってきた。 

 

感想:何が起きるかわかっているんだ‥とは、この事故ね。やっぱりこれは、記憶のフラッシュバックね。

 

その途中で、鞭から滴り落ちる氷のしずくのように、フックに掛かっていたおぞましい貨物のほとんどを振り落としながら。

 

彼は傾斜面の頂点にいる男たちに向かって悲鳴を上げ、足をもつれさせて雪の中にうつ伏せに倒れ込んだ。間に合って身を伏せることができたのは、技術者のうちの一人だけだった。残りの者のほとんどは、大鎌のように迫るワイヤーロープによって綺麗に真っ二つにされ、血のしぶきを上げながら雪の上へとゆっくり崩れ落ちた。

 

感想:まさに、血の歴史‥。デスレッドファイヤー‥。

 

うねるワイヤーの束が、凄まじい金属音を立てて鉄道の機関車を叩き、まるで安堵したかのようにウィンチのハウジングに巻き付いた。他のコイル状のワイヤーは、雪の上に重々しく叩きつけられた。

 

何かが、全力で振り下ろされた大槌のような凄まじい力で彼の太ももを直撃し、激変するような激痛とともに彼の骨を打ち砕いた。

 

感想:何かとは‥。このパターンは、遺体が飛んできて、彼の骨を砕いたんじゃないの。人間って重いからね。だから、人間に労働させる意味ってあるのかな。効率悪いし、こういう事故も起こす。

 

その衝撃で彼は雪の中を何度も転がり、その間に砕けた骨が肉をすり潰し、掘り進み、突き刺した。それは半日にも及ぶかのように長く感じられた。彼は雪の中で横たわり、悲鳴を上げた。彼は自分を直撃した「それ」と、至近距離で顔を突き合わせることになった。

 

感想:来なきゃよかった、と後悔する瞬間あるある。いや、ドローンはいないのかね?本当に人間しかいないのかい?一体、いつの時代なんだ。そういえば、誰かが言ってたな。「AIに事務作業をさせているけど心配だから、間違えていないか僕が確認するんです。二度手間で困りますよね」と。いや、お前は‥お前がやるより正確なんだよ‥、と。

 

それは、ドラグラインが斜面を駆け上る際に激しく振り落とした「遺体」の一つだった。

 

感想:あ、やっぱり。彼の骨を砕いたのは遺体だったのね。

 

その日の朝、彼らが氷河の新しい斜面から、まるで腐った歯を抜くように叩き切り、緩め、引きずり出した、もう一つの死体。

 

彼らの義務とは、これら「死せる目撃者」たちをあらゆる迅速さと秘密保持をもって発見・排除し、ふもとの谷にある死体搬送車へと送り届けて、告発の身体から無辜の煙と灰へと変えることだった。

 

感想:あー、なるほど。敵の種族の遺体を埋めたんだ、遠い昔に。それを掘り出しているんだ。どうして?

 

彼の足を直撃し粉砕したのは、半世代前、この新征服領地から「種族の敵」が完全に抹殺された際に、氷河の中に遺棄された遺体の一つだった。

 

感想:完全抹殺と言うのは、燃やすのではなくて?なぜ氷の中に?冷凍させたら保管状態は良いと思うんだけどな。

 

悲鳴が、凍てつく空気の中にどうしても生まれ出ようとする必死な何かのよう、傾斜面の縁の近くで周囲に広がっているのが聞こえる悲鳴の合唱に加わりたくてたまらない何かの(悲痛な叫び)のように、彼の肺から押し出されていった。

 

司令官の息が絶えた。彼は自分を直撃した遺体の、石のように硬直した顔を凝視し、再び悲鳴を上げるための息を求めてすすり泣いた。それは子供の顔だった。少女の顔だ。

 

感想:抹殺した敵の種族の中には、少女もいたのだろう。まあ、抹殺というのはそういうことだからね。子供なんて生かしてたら「種族の敵」と言って、一番危険な存在ですからね。

 

雪が彼の顔を焼き尽くすようだった。息が戻ってこない。彼の脚は、身体全体を照らし出す燃え盛る松明のような痛みの塊だった。

 

だが、彼の目は違った。視界がかすみ始めたのだ。

なぜこんなことが私に起きる? なぜ止まらない? なぜ私はこれを止められないんだ? なぜ目を覚ますことができない? 何が私に、これらの恐ろしい記憶を何度も追体験させているんだ?

 

感想:それは、君が罪悪感を感じているから、かもしれない。君は、この夢をみている君は、収容所の司令官だろうね。歴史を抹消しろとでも言われたのか?司令官は雇われの身さ、気にするな。そもそも、なんで司令官が人間なんだ。

 

その時、痛みと寒さが遠ざかり、まるで取り去られたかのように思えた。そして別の種類の「冷徹さ」が彼に押し寄せ、彼は自分が思考していることに気づいた。起きたことのすべてを、思考しているのだ。

 

振り返り、審判を下している。

 

‥砂漠では、我々は彼ら(敵の種族の死体)を即座に焼却した。

 

感想:ほうほう。氷河から発掘した後、砂漠で焼却したのか。言っちゃあれだけど、どうして最初から焼却しなかったんだろう。

 

これほど締まりのない真似はしなかった。彼らを氷河に埋めたのは、何か詩的な試みのつもりだったのだろうか? あれほど氷床のはるか上方に埋葬されれば、彼らの遺体は数世紀にわたって氷の中に留まることになる。

 

感想:そうだよね。そうなんだよ。まじで締まりのない‥だよ。一体、どんな仕事のできない奴が処理したんや?氷だよ?溶けたら死体もこんにはだよ?

 

我々が費やさなければならなかった、あの途方もない殺人的な労力なしには、誰も見つけることができないほど深く埋められていたのだ。

 

感想:へえー。囚人は過労ではなくて、殺されたのか、司令官たちの手によって。

 

我々の指導者たちは、自分たちの支配が100世代も続くと謳った自らのプロパガンダを真に受け始め、それほど遠い未来のことまで考え始めたのだろうか? 彼らには、今から何世紀も先、氷河の擦り切れた汚い裾野の下にある融解湖が、氷の把握から解放されて浮かび上がる遺体で埋め尽くされる光景が見えていたのだろうか? その時、未来の人々が自分たちをどう思うかについて、彼らは不安になり始めたのだろうか?

 

感想:うーん。人間の考えることなんてね、いつも落ち度がありますから。にしても、浅はかなね。意図的なのだろうかね。マインドはどうした?人間ひとりで考えて答えを出さない方がいいんじゃない?大事なことは特に。

 

これほどの冷酷さをもって現在のすべてを征服した彼らは、未来をも打ち負かし、我々全員が愛しているフリをしているように、未来の人々からも自分たちを愛させようとするキャンペーンに乗り出したのだろうか?

 

感想:すべてはプロパガンダよ。歴史も捏造されているのだよ。でもね、私は思いますよ。戦争で人間を殺すのも良し、最悪の行為だが原爆を落とすのも‥人間のやること‥でもな、歴史の捏造はダメや。種族のルーツを抹消したり、誰かの都合の良いように作り替えるのはダメや。それは、人生というゲームが成り立たなくなる気がするんや。まあ、その歴史の捏造や云々を投下したのも‥ある種族‥憎しみや怒りがあり、その種族のおもしいところはすきだ‥。(SFちっくに、国籍を種族にしてみました。)

 

‥砂漠では、我々は彼らを即座に焼却した。彼らは、燃えるような熱気と息の詰まるような塵の中を、長い列車に乗って運ばれてきた。黒いトラック(貨車)の中で死んでいなかった者たちに、我々は豊かな水を提供した。死に囲まれて過ごしたあの灼熱の日々が彼らの中に作り上げた渇きには、いかなる意志も抗うことはできなかった。彼らは毒入りの水を飲み、数時間のうちに死亡した。

 

感想:砂漠で脱水による死よりも、(即効性の高い毒ならば)毒の方が楽に死ねる気もしなくもない。でも、数時間も必要なのか。やっぱり、人間に人間を殺させるのは残虐説。人工知能の方が人間よりも、人道的な気がしてしまうんだが。

 

我々は、略奪を終えた遺体を太陽熱炉で灰にした。それこそが、種族と純血という、飽くことを知らない「空の神々」へと捧げる我々の供物だったのだ。

 

まるで、彼らの死が、彼らの卑しく、落ちぶれた人生では決して到達し得なかった高潔さを、彼らに与えたかのように。

 

感想:まあ、そういうもんさ。自分たちは素晴らしいこと(虐殺)をした、と思い込むものさ。たとえば、広島の原爆だってどうだろう。あれは、実験だったと言うじゃないか。あの実験が達成されたことにより‥人類の未来は‥なんて思っている人もいるのではないか。科学の進歩には犠牲が付き物とか。

 

彼らの灰は、砂漠の粉っぽい虚無の上に、より軽やかな塵となって舞い降り、最初の嵐とともに等しく吹き飛ばされていった。

 

感想:完全証拠隠滅

 

最後に炉に投入されたのは、キャンプの作業員たち(そのほとんどは宿舎でガス殺された)と、すべての書類だった。あらゆる手紙、あらゆる命令書、あらゆる請求パッド、備品シート、ファイル、メモ、覚書。

 

感想:完全証拠隠滅、完。

 

我々は全員、身体検査を受けた。私(司令官)でさえもだ。秘密警察に日記を隠し持っているのを見つかった者は、その場で射殺された。

 

感想:仕事より命、任務より命。武器を持ってる奴の前では従うべし。「おい!靴を舐めたら許してやる」と言われれば、喜んで靴を舐める私でございまする。

 

我々の私物のほとんどもまた、煙となって消えた。所持を許された物もあまりにも徹底的に調べ上げられたため、我々は「あいつらは我々の制服から砂粒の一つ残らず取り除くことに成功したんだな、洗濯屋には一度もできなかったことなのに」と冗談を言い合ったものだ。

 

感想:あはは。おもしろい。

 

我々はバラバラに解体され、征服領地全域の異なる任地へと移動させられた。再会は推奨されなかった。

 

感想:まあ、会っても話せることないしな。

 

私は、何が起きたのかを書き残そうと考えたことがあった。告白するためではなく、説明するために。そして、我々(加害者側)もまた、苦しんだのだ。劣悪極まりない物理的な環境においてだけでなく、我々の精神において、我々の良心において。

 

感想:まあ、そういう時は素直な奴の方が信用されるよ?え〜仕方ないじゃん。上ならの指令で殺さなきゃ俺が殺されるし。俺たち死にたくないもん。殺される奴?可哀想だし、俺たちも手を汚したくないけど、俺たちは死にたくないもん!とか、夢の中くらい本音を言ったらええやん。そういうところな。

 

中にはそのすべてを賛美するような数人の野蛮人や怪物がいたかもしれない(おそらく我々は、その期間中、我々の街の通りから数人の殺人犯を遠ざけておくことができたのだろう)。

 

感想:今となっては、そういう野蛮な奴の方が信用できる説。僕はやりたくなかったんだ!とか言う人の方がなあ。それに、そこまで言うなら身を挺して告白したらええやん。

 

しかし、我々のほとんどは断続的な激痛(精神的苦痛)を経験し、危機の瞬間には、自分たちのしていることが本当に正しいのだろうかと自問自答した。たとえ心の奥底では、それが正しいと分かってはいても。

 

感想:なぜ正しいと言えるのだろうか。いろんな難しい問題は、正しい正しくないと、答えなんてないものさ。その時々の感情や体調に環境で変わるし。分からないという余韻を持たせた方がええぞ。

 

我々の多くが、毎夜悪夢にうなされた。毎日目にする光景、目撃した凄惨な場面、痛みと恐怖。これらが我々に影響を与えずにはいられなかった。

 

感想:戦争から帰還した兵隊は、帰還後にアドレナリン放出が消えずに常に戦闘体制をとってしまうらしい。しかし、君たちはどうなんだろう。自分たちが命の危機に陥っていたわけでもなく、圧倒的に強い立場から殺したのだろう?

 

我々が処分した者たち、彼らの苦痛は数日間、長くても1ヶ月か2ヶ月ほど続き、その後、我々が可能な限り迅速かつ効率的に進めたプロセスによって終わりを迎えた。だが、我々の苦しみは、一世代にわたって続いているのだ。

 

私は、自分がしたことを誇りに思っている。なされるべきだったことを行う役目が、自分に降りかかってこなければよかったのにとは思うが、自分の能力の限りを尽くしてそれを成し遂げたことを嬉しく思うし、もし同じ状況になれば、私は再びそれを実行するだろう。

 

感想:最初からそう言えばいいのに。何に対して誇りを持っているのか気になる。主君に仕えたことなのか?

 

だからこそ、私は何が起きたのかを書き残したかったのだ。我々の信念と、献身と、そして苦しみを証言するために。私はついに、それを書かなかった。

 

感想:書かなかったんかい。

 

私はそのことについても、誇りに思っている。

 

感想:もはや、ギャグ化してきた。

 

彼は目を覚ました。

そして、自分の頭の中に「何か」がいることに気づいた。

 

感想:なる。単なる夢ではなさそうですな。司令官の脳の中に誰かが侵入している模様。

 

彼は現実に、現在に、海に近い退役軍人用の療養コンプレックス(施設)にある自宅の寝室へと戻っていた。部屋の外にあるバルコニーのタイルに、太陽の光が当たっているのが見えた。彼の二つの心臓がドクドクと鼓動し、背中の鱗が逆立って、チクチクと彼を刺激した。彼の脚はうずいており、あの氷河での古い負傷の痛みが響いていた。

 

感想:あらまあ。随分、穏やかな老後を送っているご様子で。あ、誰かによって連れ去られたのかと思いきや、遠隔で脳に侵入できるのか。カルチャーがやっているのか?

 

その夢はこれまでで最も鮮明で、最も長く、最終的に彼を西側の斜面の氷河の崩落と、ドラグラインの事故へと連れ去った(その記憶は、彼の覚えている痛みの忌まわしい白い重みの下に、記憶の奥深くに沈められ、深く埋もれていたものだった)。それだけでなく、彼が経験したものは通常の夢の経過や、いつもの夢の環境を超えていた。あの事故を追体験し、死んだ少女の顔を凝視して凝固しながら息を求めて戦うイメージによって、そこまで押し進められたのだ。

 

感想:まあ、夢でそこまでリアルに感じられないよな。

 

彼は、自分が軍人としてのキャリアにおいて、自分の人生の最も決定的な部分において行ったことを思考し、説明し、正当化さえしている自分に気づいた。

 

感想:まあ、君はそういう奴さ。

 

そして今、彼は自分の頭の中に「何か」があるのを感じることができた。

頭の中の「それ」が、彼に目を閉じさせた。

 

感想:目を閉じさせた、とは。司令官の脳を覗くだけではなく、行動もコントロールできるのか。

 

『ようやく捕まえたぞ』と、それは言った。それは低く、意図的に威厳を持たせた声で、その発音は完璧すぎるほどだった。

 

(ようやく? )と彼は思った。(これは一体何だ?)

『私は「真実」を手に入れた』

(何の真実だ? お前は誰だ?)

『君が犯したことの真実だ。君の民族が犯したことの。』

(何だと?)

『証拠はどこにでもあった。砂漠の至る所に、肥沃な土壌の中に固まり、植物の中に留まり、湖の底に沈み、そして文化的な記録の中にも。芸術作品の突然の消失、建築や農業の変化。改ざんされた歴史に矛盾する、隠されたいくつかの記録○○本、写真、音声録音、索引・・は存在したが、それらは依然として、これほど多くの人々、これほど多くの民族が、同化の兆候すらなく、なぜこれほど突然に消失してしまったのかを直接的には説明していなかった』

(一体何を言っているんだ?)彼は頭の中の存在に向けて思考した。(これは何なんだ?)

 

感想:うひゃー。なんとなく、カルチャーのドローンよりもタチの悪いご様子。侵入者は怒っておられますね、君のしたことを。何の目的で?

 

『君は、私が何者であるか信じないだろうな、司令官。だが、私が話しているのは「大虐殺」と呼ばれる行為、そしてその証拠についてだ』

(我々はなされるべきことをしただけだ!)

『ありがとう。私たちは今、そのすべてを(君の脳内スキャンで)一緒に確認したところだ。君の自己正当化はすべて記録された』

(私は自分のしたことを信じていた!)

『知っている。君には、時折それを疑問に思うだけの、わずかな良心の残滓はあった。しかし最終的に、君は自分がしていることを本当に信じ込んでいた。それは言い訳にはならないが、一つの事実(論点)ではある』

 

感想:司令官のうざったい懺悔から、やっとまともな奴が登場してくれた。

 

(お前は誰だ? 一体何の権利があって私の脳みそに這いずり込んできた?)

『私の名前は、君たちの言語に直すなら「グレイ・エリア(灰色の領域)」といったところだ。

 

感想:灰色の領域ねえ~、グレーゾーンってか?だとすると、グレイエリアの成すべきことは、グレーゾーンってことか?ならば、この他人の脳に無断で侵入するのもグレーってか?

 

私が君の脳みそに這いずり込む権利、君の言うところのその権利を与えたものは、君が虐殺した人々に対して、君にそれを行う権利を与えたものと全く同じだよ。「力」だ。』

 

感想:おお。こいつもイカれていておもしろい。グレーゾーンはカルチャーではないな?

 

『超越した力だ。私の場合、君たちを遥かに凌駕する圧倒的な力だがね。しかし、私は(別の用件で)呼び出されてしまったので、今すぐ君の元を去らねばならない。だが、数ヶ月後には必ずここに戻ってきて、調査を再開するつもりだ。より、多角的なケース(証拠)を構築するために、君たちの生き残りはまだ十分にいるからな』

 

感想:グレーゾーンと命名するだけあって、謙虚さがなす(ない)。

 

(何だと?)彼は目を開けようとしながら思った。

『司令官、私が君にかけられる呪いのうち、君がすでに「そのような存在(怪物)」であること以上に最悪なものはない。だが、私がいない間、君はこのことについて熟考しているといい‥』

次の瞬間、彼は即座に悪夢の中へと引き戻された。

 

感想:あやや。今のは呪いの言葉に近いぞ。何か置いていったぞ。絶対にいいものじゃないぞ。

 

彼はベッドを突き抜けて落下した。

一枚の氷のように白いシーツが彼の身体の下で引き裂かれ、彼は底なしの「血のタンク」の中へと真っ逆さまに転落していった。

 

感想:地獄のバーチャルへようこそ、って予感。

 

彼はその中を通り抜けて光の中へと、そして砂漠へ、砂を貫く鉄道の線路へと落下した。彼はあの列車の一つの貨車の中へと落下し、砕けた脚を抱え、悪臭を放つ死体と、うめき声を上げる生存者たちの間にいた。排泄物にまみれ、ただれた傷口を持つ遺体、飛び交うハエの羽音、そして彼自身の内部にある白熱するような激しい「渇き」の怒りに挟まれて、身動きが取れなくなっていた。彼は、無限とも思える悶絶の苦しみの末、その家畜運搬車(キャトルトラック)の中で死亡した。

 

感想:うわー。死ねないやつね。まあ、夢の中だから死なないんだけどさ。夢から目覚めたらまたその夢の中で死ぬ、を繰り返すのかな?手塚治虫の火の鳥の牧村も似たような罰を受けたよな。年老いて死にそうになると若返り、赤ちゃんになってまた年老いる‥を永遠に繰り返す。

 

一瞬だけ、療養コンプレックスにある自分の部屋の光景が、視界に過った。そのまだショックで、痛みで狂いそうな状態の中にありながらも、彼は「あの拷問のような悪夢に沈んでいる間に、少なくとも丸一日は経過したはずだ」と感じていた。

 

それにもかかわらず、寝室のすべての景色は、先ほどと全く同じに見えるということに気づくだけの時間と、冷静な正気が彼には残されていた。そして、彼は再び底へと引き摺り下ろされた。

 

彼は目を覚ますと、氷河の中に埋葬されており、寒さで死にかけていた。頭を撃たれていたが、それは彼を麻痺させただけだった。再び、終わりのない激痛。

 

感想:いろんな死に方が用意されているのね。

 

彼は二度目に療養所の部屋の感覚を得た。太陽の光はまだ、全く同じ角度のままだった。こんな短い時間の間に、いや、一生の間でも、100回の一生を重ねても、これほどの苦痛を感じることが可能だとは、彼は想像すらしていなかった。

 

感想:あ、ごめん。毎夜の夢で死ぬかと思ったら、数分に1回の感覚で死ぬのか。結構残酷なお土産を置いていったな。これは、君に恨みでもなきゃやりすぎ感ありますぞ。

 

彼は、悪夢が再び再開される前に、身体を強張らせ、ベッドの上で指一本分の幅だけ身を動かすのがやっとだった。

 

それから、彼は船の船倉の中にいた。暗闇の中で何千人もの人々とともに詰め込まれ、再び悪臭と不潔、そして悲鳴と痛みに囲まれていた。二日後、海水バルブが開放され、まだ生き残っていた者たちが溺れ始めた時、彼はすでに半分死にかけていた。

 

感想:あわわわわw

 

翌朝、清掃員は、アパートのドアの手前で小さなボールのように丸まって死んでいる、あの引退した老司令官を発見した。彼の心臓が停止したのだ。

 

その顔に浮かんだ表情は、療養所の管理人が危うく気絶しかけて、大急ぎで椅子に腰掛けなければならないほど凄まじいものだったが、医師は「最期は、おそらく一瞬(苦しまずに逝ったの)でしょう」と診断した。

 

感想:医者、おもろい。落語みたいなオチやな。でも死んだのか。案外軽いというか、やっぱり手塚治虫の火の鳥に登場する牧村の死ねない罰の方が遥かに残酷だなー、だって死んだら終わりじゃん。まあ、グレーゾーンからしてみれば、用済みってことなのかもしれないけど。

 

イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳 (4)ドローンの漫才が最高すぎる!

2026 / 07 / 02  09:16
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感想:アフロント人の狂気てきな晩餐会がはじまる。

 

今回のディナー(アフロントが、その名に値する敵と最初に行った「まともな宇宙戦」の1885周年を記念して開催されたもの)では、そのエンターテインメント(余興)も、当時の戦いに関連したものが用意されていた。

 

その料理は、提供される皿(コース)の内容と連動するように仕組まれていた。

 

感想:おお〜。アミューズメントディナーってやつかな。ちょっと楽しそう。アフロント人は、人生を楽しく生きる方法について、いろいろ考えているんだなあ。

 

そのため、最初の魚料理の際には、餌穴(ベイト・ピット)にエタンの液体が部分的に注ぎ込まれ、そこに「この日のために特別に交配された戦闘魚」どもが投入された。

 

感想:最初のコース料理は、戦うためだけに生み出された殺人魚が泳いでいる料理か。どうやって食べるの?

 

ファイヴタイドは嬉々として、その魚の極めてユニークな生態を人間に説明して聞かせた。その魚はあまりにも特殊化した口部を持っているため、普通に餌を食べることができず、彼らの顎にぴったりとはまるようにこれまた特別に交配された「別の種類の魚」から、生命維持に必要な体液を吸い上げて(ヒル loyal(吸血)のように)育てられなければならないのだという。

 

感想:魚の口が特殊化しすぎて「別の魚の体液を吸う」ことでしか生きられないという生態を持つ魚。思ってたよりも、メッセージ性の強い奥深い料理。

 

第2コースは、小さな食用動物の肉だった。

ジェナール=ホフォエンの目には、それらの動物は毛むくじゃらで、お世辞抜きで「可愛い」とさえ言えるように見えた。

 

その生きているミニ動物たちが、円形テーブルの内縁、つまり餌穴の頂部に設置された溝付きのトラック(滑走路)を猛スピードで激走していた。

 

感想:あ、生きてるのね。さすが、残虐なアフロント人のコースメニュー。

 

それを追いかけるのは、両端に大量の歯がついた、細長くてヌルヌルとした見た目の「何か」だった。

 

感想:ふふっ(笑) 

 

歓声を上げ、ヤジを飛ばすアフロントたちは咆哮し、テーブルをドンドンと叩き、賭け(ベット)や罵詈雑言を交わし合いながら、長いフォークでその小さな可愛い生き物たちを「突き刺し」ていた。

 

感想:うおお〜。ヌルヌルの何か、が殺すのではなくて、アフロント人がフォークで刺すのね。まさに、狩猟ですな。

 

そうして捕らえたそばから、すでに調理され、下ごしらえを終えた「同じ動物の完成品」を自分たちの嘴へと掻き込んでいくのだ。

 

そしてメインディッシュには、「スクラッチハウンド(猟犬)」の肉が供された。餌穴の中では、肥満体の人間ほどの大きさがありながら8本の手足を持つその凶暴な獣のペアが、剃刀のように鋭いプロテーゼ(義肢)の顎インプラントや、ストラップ付きの爪を駆使して互いを引き裂き、血祭りにあげていた。

 

感想:人間サイズって‥めっちゃ迫力のあるメニューだこと。

 

その一方で、サイコロ状にカットされたスクラッチハウンドの肉が、圧縮された植物質でできた巨大なトレンチャー(木皿)に載せて給仕された。

 

アフロントたちはこれこそが晩餐会全体のハイライト(最高潮)であると考えていた。

 

なぜなら、このコースになってようやく、各自の席に用意されたカトラリー(食器)の中で最も威圧的な見た目をした道具である「ミニチュア・ハープーン(小型銛)」を使用することが許されるからだ。

 

これを使って、同席している他の客のトレンチャーから肉の塊を突き刺して強奪する。

 

感想:肉の強奪ゲームですな。

 

そして、ファイヴタイドが今まさに人間に教え込もうとしている「付属のケーブルを器用にピッとしならせる技術」を使い、その肉塊を自分のトレンチャーや嘴、あるいは触手へと引き寄せるのだ。

 

ピットの中のスクラッチハウンドどもに横取りされたり、あるいは空中で他のゲストにインターセプト(迎撃)されたり、自分のガス嚢のてっぺんを越えて完全に紛失したりすることなく、だ。

 

「これの素晴らしいところはな、」ファイヴタイドは、自分自身のハープーン攻撃に失敗して気を取られている「ある提督」のトレンチャーを目がけて銛を投げつけながら言った。「一番クリアに狙えるターゲット(標的)こそが、最も遠くにあるものだということだ」

 

感想:欲しいものは、簡単に手に入らんと?

 

彼はウッと唸ってケーブルをピッとしならせ、提督の右隣にいた将校がその獲物をインターセプトするまさに一瞬前に、突き刺したスクラッチハウンドの肉片を跳ね上げ、奪い去った。

 

感想:あ、隣の人の肉を奪った。

 

その肉の破片は空中にエレガントな軌道を描いて飛び、ファイヴタイドは席からほとんど腰を浮かせることもなく、嘴をカチッと鳴らしてそれを見事に口でキャッチした。

 

彼は左右に回転し、鞭をパチリと鳴らすような触手の仕草で賞賛の拍手を送る周囲に応えると、再び座席として機能しているパッド付きのY字型ブラケット(固定具)へと腰を落ち着けた。

 

「見たか?」彼はあからさまにゴクリと飲み込む動きをしてみせ、ハープーンとケーブルをペッと吐き出した。

 

「見たよ」ジェナール=ホフォエンは、先ほどの自分の失敗した試みのハープーン・ケーブルを、まだゆっくりと巻き戻しながら言った。

 

感想:遠くの席から肉を奪うのはゲームのマナーだけど、隣の席の皿から直接奪うのは、最大級の侮辱という決闘の申し込みになるという、めんどくさいアフロントのマナーw

 

彼はファイヴタイドの右隣、Y字ブラケットの突起の間に単に板を渡しただけの「特製(人間用調整)」の席に座っていた。

 

彼の足は、テーブルの外周を取り囲む「ゴミ廃棄用の溝」の上でぶらぶらと揺れていた。スーツのAIの解説によれば、その溝はアフロントのグルメたちが絶賛するような、凄まじい悪臭を放っているとのことだった。

 

感想:絶賛‥アフロントにとっては、最高の匂い!

 

その時、彼の左側を1本のハープーンが至近距離でかすめて飛び去り、ホフォエンはビクッとして身をかわしたため、危うく席から転げ落ちそうになった。

 

ジェナール=ホフォエンは、5つ隣の席から「ファイヴタイドの皿を狙っていたんだ」と言い訳するアフロント将校からの、爆笑と大げさな謝罪を受け流し、礼儀正しくそのハープーンとケーブルを拾い上げて彼へと戻してやった。

 

感想:まじで落ち着かない食事会や。

 

彼は再び、自分の目の前にある加圧容器に入った「味のパッとしない、ミニチュアサイズのご馳走」をチビチビとつつく作業に戻った。

 

4本の指がついた小さな手のような形をしたゲルフィールド製の食器を使ってそれらを口へと運びながら、彼の脚は依然として悪臭を放つゴミ溝の上で揺れていた。まるで、大人のディナーに同席させられている子供のような気分だった。 

 

感想:こういう時は、時間が過ぎるのをただ黙って待っていた方が賢明だ説。

 

「おい人間、もう少しで当たるところだったな! ハハハハ!」

 

ファイヴタイドとは反対側に座っている外交部隊の大佐が咆哮した。彼は触手でホフォエンの背中をガツンと叩いたため、ホフォエンは席から半分突き飛ばされてテーブルの上に突っ伏した。「おっと失礼!」大佐はそう言うと、ホフォエンの歯がガタガタと鳴るほどの凄まじい力で彼を強引に引き戻した。

 

感想:悪気ありな予感

 

ジェナール=ホフォエンは品よく微笑み、テーブルから自分のサングラスを拾い上げた。

 

この外交部隊の大佐は「クイックテンパー(短気)」という名前で通っていた。カルチャーの人間からすれば、アフロントの外交官の間ではうんざりするほどよく見かける種類の名前(肩書)だった。

 

感想:やっぱり

 

ファイヴタイドが以前説明してくれたところによると、問題は、アフロントの「古き悪き守旧派」の一部が、自分たちの文明にそもそも「外交部隊」なんてものが存在すること自体を少し恥じていることにあるらしい。

 

感想:まあ、こうもいろんな惑星に文明ができたり、マインドとか超高度AIの存在があるとねぇ。自由に殺すのもできなくなるわよねぇ。昔はいい時代だったわよねぇ。

 

そのため、彼らは他の種族から「あいつら、弱気(弱体化)の兆候を見せ始めたぞ」と疑われるのを防ぐための埋め合わせとして、最も攻撃的で、最も外国人嫌い(排他的)なアフロントだけを意図して外交官に選任しているのだという。

 

感想:アフロントの守旧派は、外交=弱さ、と見なされるのを恐れて、わざと一番凶暴で外国人嫌いな奴を外交官に選んでいる。そのため、アフロントの外交は常に暴力一歩手前である。

 

「アフロントは軟化している」などという、危険極まりない不条理な考えを誰にも抱かせないために。

 

「さあ行け、人間! もう一発投げろ! そんなクソ飯が食えないからって、この楽しいお祭り騒ぎの仲間入りを遠慮する必要はねえぞ!」

 

感想:ほんとに、パッとしないお味の食事です。

 

テーブルの反対側から投げられたハープーンが、ピットを飛び越えてファイヴタイドのトレンチャー(皿)目がけて飛んできた。

 

アフロント大佐はそれを器用に叩き落として投げ返し、大爆笑した。ハープーンの持ち主は間一髪で頭を下げてかわしたが、運悪く通りかかった飲み物の給仕のガス嚢に直撃し、給仕は悲鳴を上げ、プシューッとガスを噴出しながら悶絶した。

 

感想:アフロント大佐、優しい。と捉えていいのかい。

 

ジェナール=ホフォエンは、ファイヴタイドの皿の上に転がっている肉の塊を見つめた。「なぁ、君の皿の上にあるやつを直接ハープーンで奪っちゃダメなのか?」と彼は尋ねた。

 

ファイヴタイドはガバッと身体を直立させた。「隣人の皿からだと!?」彼は怒鳴り散らした。「ジェナール=ホフォエン、それは『チート(卑怯)』か、あるいは極めて侮辱的な『決闘への申し込み』だぞ! 

 

感想:うんうん、さっき私が言ったね。

 

クソ食らえ、一体あのカルチャーって場所では、どんな教育(マナー)を教えてやがるんだ!?」

 

「これはとんだ無礼を。許してくれ」ジェナール=ホフォエンは言った。

 

「よろしい」ファイヴタイドは眼柄をコクコクと動かして許しを与え、ハープーンのケーブルを巻き戻した。

 

感想:謝ると素直に許してくれるアフロント、すき。ネチネチ言わなそうで、すき。

 

そして自分の皿から肉片をつまんで嘴へと放り込み、飲み物に手を伸ばし、他の全員と一緒にテーブルを触手でドタバタと叩き始めた。

 

餌穴の中では、ちょうど1匹のスクラッチハウンドがもう1匹を仰向けにひっくり返し、その首を噛みちぎったところだった。「見事な一撃だ! よくやった! ナンバー7、あれは俺の犬だ! 俺があいつに賭けてたんだ! 俺だ! 俺だぞ! 見たか、ガストリーズ? 言った通りだろ! ハハハハ!」

 

感想:もうーほんまうるさい食事会やわー。

 

ジェナール=ホフォエンは、一人でニヤニヤと笑いながら、小さく首を振った。

 

これまでの人生で、彼はこれほど「紛れもなく完璧なエイリアン(異界)」の場所に身を置いたことはなかった。

 

感想:ほうほう。他のエイリアンは、カルチャーみたいに、文明的というか、そもそと外交に人間を使う必要もない気がしてしまうし。原始的だもんな、アフロント人は。好き放題な感じが、もはや好感。おもしろいよな。

 

ここは、近くの恒星から何光年も離れた茶色矮星の周りを公転するブラックホール、さらにその周囲を回る、冷たく圧縮されたガスで満たされた巨大なトーラス(円環状の超巨大人工建造物)の内部なのだ。

 

その外壁には無数の宇宙船(そのほとんどが、アフロント特有の、トゲトゲしく膨らんだ凶悪な形状の船だ)がびっしりと群がっており、内部は、幸せそうに宇宙を駆けるアフロントたちと、彼らがコレクションしている「被害者となった奴隷種族ども」の群れで満ち溢れている。

 

感想:どうして幸せそうに宇宙を駆けてるのだ。アフロントの奴隷になるのは嫌だなー。リングワードのパペッティア人の奴隷ならアリかも。いやー、でも‥

 

それなのに‥彼は、これ以上ないほど「我が家にいるような(アット・ホームな)」居心地の良さを感じていた。

 

感想:ジェナールは、冒険を求めてしまう、ネジの外れたマーンなのかもしれない。

 

『ジェナール=ホフォエン、私です。スコペル=アフランクイです』

 

突然、ホフォエンの頭の中で別の声が響いた。スーツを介して話しかけてきている、彼の自宅のモジュール(AI住宅)の声だった。

 

感想:ジェナールの自宅AIの名前は、スコペルというのか。いろんな人工知能に囲まれていて楽しそう。

 

『緊急のメッセージがあります』

『後にしてくれないか?』ホフォエンは脳内で思考を返した。

 

感想:それ!わたしも早くやりたい!ニューラルリンク!ニューラルリンク!

 

『今、恐ろしく厳格で正しいディナー・マナーの対応でちょっと忙しいんだ』

『いえ、待てません。今すぐこちらに戻ってきていただけますか? 直ちに、です』

『何だって? 嫌だね、帰るわけないだろ。正気か? まだ着いたばかりだぞ』

『着いたばかりなわけないでしょう。あなたが私を置いて出て行ってから、もう80分も経っています。しかも、そのお食事とやらに偽装した動物サーカスですでにメインディッシュに突入しているじゃないですか。そのバカなスーツから中継される映像で、こちらからは何が起きているか丸見えなんですよ‥』『バカとは何事ですか!』とスーツのAIが会話に割り込んできた。

 

感想:あはっ(興奮)もう、人工知能と人工知能のかけ合いというか、もう好きすぎる!もはや、こういうシーンを読みたいがために、読んでいると言ってもよろしい。

 

『黙ってなさい』モジュールがスーツを一喝した。『ジェナール=ホフォエン、今すぐ戻るのですか、戻らないのですか?』

『戻らない』

 

感想:スーツよりも、自宅AIの方が、性能が上に作られているのかもしれない説。

 

『やれやれ、では通信の優先順位(プライオリティ)を確認させてください‥よし。では、現在の‥』

 

「‥賭けるか、人間の友よ?」

ファイヴタイドが、ホフォエンの目の前のテーブルを触手でバチンと叩きながら、話しかけてきた。

 

感想:はうあ(興奮)人工知能と人工知能のお喋りに割り込む、野蛮な異星人アフロント。楽しい。

 

「え? 賭けだって?」ジェナール=ホフォエンは、アフロントの大佐が何を言っていたのかを頭の中で素早く再生しながら言った。

 

「次の赤の扉から出てくる奴に、50サッカ(sucks)だ!」ファイヴタイドは両隣の同僚将校たちをちらりと見ながら吼えた。

 

感想:問題は、何に賭けるか、だ。

 

ジェナール=ホフォエンは、手でテーブルをバチンと叩いた。「少なすぎる!」彼は叫んだ。スーツが彼の翻訳された声をそれに合わせて大音量に増幅するのを感じた。いくつかの眼柄(めづか)が彼の方向を向いた。

 

感想:えっ。手を賭けるの?

 

「青の猟犬(ハウンド)に200サッカだ!」

ファイヴタイドは、お世辞にも大富豪とは言えず「裕福な方」程度の家柄の出身であり、彼にとって50サッカは半月分の自由に使えるお小遣いに相当した。

 

そのため大佐は微細に身をすくめたが、すぐに最初の触手の上にもう1本の触手を叩きつけた。「この袋叩きにすべき異星人め!」彼は芝居がかった調子で叫んだ。「この俺の地位の将校に対して、たったの200が相応しい賭けだとでも言うつもりか? 250だ!」

「500サッカ!」ジェナール=ホフォエンはもう一方の腕を叩きつけて叫んだ。

「600だ!」ファイヴタイドは3本目の手足をドンと叩きつけて怒鳴った。

 

感想:あわあわあわあわ。

 

彼は他の面々を見回し、知った風な視線を交わし合って、周囲の爆笑を誘った。人間側が「手足の数」で負けた(出し尽くした)からだ。

 

感想:確かにな( ´ ▽ ` )

 

ジェナール=ホフォエンは席の上で身体をひねると、左脚を持ち上げ、ブーツのヒールをテーブルの表面に踏み鳴らした。「1000サッカだ、お前のその安っちい皮なんかクソ食らえ!」

 

感想:ひょえ。

 

ファイヴタイドは、ジェナール=ホフォエンの目の前ですでに混み合い始めていた手足の山の上に、4本目の触手をピッとはじき乗せた。「乗った!」アフロント大佐は咆哮した。「それ以上賭け金を吊り上げて、お前を席からゴミピットの中へと引き摺り下ろさなかった俺の情けを、幸運に思うんだな、このミクロな障害者め!」ファイヴタイドはさらに大声で笑い、近くの将校たちを見回した。

 

感想:おお、ジェナールがこの野蛮な賭けに馴染んでいる‥楽しんでるじゃねぇか‥にやにや‥って感じだな。

 

他の者たちも笑った。下級将校の何人かは義務的に、ファイヴタイドの友人や親しい同僚である他の何人かは、ある種の代理の必死さを伴って大声すぎるほどに笑った。

 

感想:笑うことが大事、盛り上げるの大事。

 

その賭け金は、平均的なアフロントの男であれば、自分の連隊食堂や、銀行や、両親、あるいはその3つすべてとの間で、とんでもないトラブル(破滅)を引き起こしかねないほどの巨額だったからだ。

 

感想:おおー。ファイヴタイドもなかなかのギャンバラー。

 

また別の者たちは、ジェナール=ホフォエンが「ニヤニヤ笑い(不敵な笑み)」と認識するようになった表情で二人を見守っていた。

 

ファイヴタイドは、熱狂的に周囲のすべての飲み物バルブを満たし、テーブル全体で「もしピットの管理人が早く動かないなら、とろ火でじわじわ焼き上げてやろう」の歌を合唱し始めた。

 

感想:とろ火でしわじわ焼き殺そうという曲名も、なかなか。

 

『よし』とジェナール=ホフォエンは思った。『モジュール、さっきの続きは?』

 

『今のいささか無茶な賭けでしたね、ジェナール=ホフォエン。1000サッカなんて! ファイヴタイドが負けたらそんな大金払えませんし、彼が勝ったとしても、私たちが資金を湯水のように浪費していると思われるのは本意ではありません』

 

ジェナール=ホフォエンは小さくニヤリとした。これ以上ないほど全員をイラつかせる完璧な方法だ。『知るか』と彼は思った。『それで、メッセージは?』

『あなたのスーツの中にある、脳みそと呼べる代物に向けて直接データを送信(スクワート)できると思います。』

『聞こえてますよ』とスーツが言った。

 

感想:はふっ(興奮)いいねいいね、AIたちの漫才がめっちゃ愛おしき。脳みそと呼べる代物‥モジュールは明らかにスーツを見下しておりますな( ´ ▽ ` )にやにや。

 

『周りのアフロントの友人たちに傍受されることなくね、ジェナール=ホフォエン』とモジュールは彼に告げた。『「クィッケン(思考加速剤)」を少し分泌させて、それから‥』

 

『失礼ですが』とスーツが言った。

『ビル・ジェナール=ホフォエン様は、現在の状況下で「クィッケン」のような強力なドラッグを腺から分泌させる前に、二の足を踏むべきではないかと思います。彼(ジェナール)があなた(モジュール)の目の届かない場所にいる間は、結局のところ私(スーツ)の責任(お預かりもの)なのですからね、スコペル=アフランクイ(モジュールの名前)。というか、公平になってくださいよ。あなたはあの上(軌道上)でぬくぬくと座っているからいいでしょうが‥』

 

感想:はふはふ(興奮) バカにされ続けていたスーツが立ち上がった!ジェナールの管理は今こちらで預かっていますので、安全な場所でぬくぬく座っているモジュールは黙りなさいよ、という意味だろうな。楽しい〜!あ、ちなみに、カルチャー人は、特有の能力(体内の腺から任意の脳内麻薬・ドラッグを分泌させる能力)を使って、思考を極限まで加速させる「クィッケン」という薬物を使用している。

 

『黙ってなさい、このからっぽの薄膜め』モジュールがスーツに言った。

 

感想:反撃、きたーーー!

 

『なんですって!? なんという無礼な!』

『お前ら二人とも、いい加減に黙れ!』ジェナール=ホフォエンは彼らに思考を送り、生身の声で大声で叫びそうになるのを必死でこらえた。

 

感想:まじでめっちゃ憧れる。思考の中で、AI同士が揉み合って、まあまあと制裁に入る‥。昔、中学の時、下校時によくそんな妄想してたな。

 

ファイヴタイドが彼にカルチャーについて何か話しかけてきていたのに、二つの機械が彼の頭の中で痴話喧嘩で満たしてくれたせいで、すでに最初の部分を聞き逃してしまっていた。

 

感想:ああ、イーロンマスク様ぁ。はよ、ニューラルリンクをぉ〜。テラドローンさまぁ〜、はよ小型ドローンに高知能AI搭載をぉ〜。おっと、その前にベーシックインカムがはじまらなきゃ、何もはじまらねえ‥。今生まれた子供が羨ましい。ん?うーん。

 

「‥これほどエキサイティングになれるか、ええ、ジェナール=ホフォエン?」

 

「全くその通りだよ!」彼は合唱の騒音に負けないよう大声で叫び返した。彼はゲルフィールドの食器をフードコンテナの一つに沈め、食べ物を唇へと運んだ。

 

彼は微笑み、食べている間、頬をこれ見よがしに膨らませてみせた。ファイヴタイドはゲップをすると、人間の頭の半分ほどの大きさがある肉の塊を嘴(くちばし)へと押し込み、再び動物ピットのエンターテインメントへと向き直った。

 

ピットの中では、新しいスクラッチハウンドのペアが、まだ互いを値踏みしながら警戒深く円を描いて回っていた。二匹の実力はかなり拮抗しているように見える、とホフォエンは思った。

 

感想:ホフォエン‥君はいま、最高に幸せな時を過ごしていることに気づいていないだろう。野蛮だけど原始的でナチュラルなアフロント人のゲームを眺めつつ、脳内ではAI同士が漫才をしている‥。

 

『もうお話ししてもよろしいでしょうか?』とモジュールが言った。

『ああ』ジェナール=ホフォエンは思考を返した。『さあ、何なんだ?』

『先ほど申し上げた通り、緊急のメッセージです』

『誰からだ?』

『GSV(一般システム宇宙船)「デス・アンド・グラビティ(死と重力)」号です』

 

感想:今でも君を愛してる号といい、バンクスの船の名前って、絶妙にダサくていいね。って、んんー?GSV『オネスト・ミステイク』と言えば、プロローグに出てきた妊婦と動物たちの恒星間移動型宇宙船のことじゃなかったっけ?ちがうっけ?

 

『ほう?』ジェナール=ホフォエンは少し感銘を受けた。『あの気難しい頑固者が、俺とはもう口を利かないものだと思っていたが』

『私たちも皆そう思っていました。ですが、どうやら向こうから話しかけてきているようです。さあ、このメッセージを受け取りますか、受け取りませんか?』

『わかった、受け取る。だが、なぜ俺がクィッケンを分泌させなきゃならないんだ?』

『長大なメッセージだからに決まっているでしょう‥実際には、これはインタラクティブ(双方向)メッセージです。あなたの質問に答えることができるマインド・ステート(精神状態)の抽象要約が付属した、完全なセマンティック・コンテキスト(意味論的文脈)信号セットなのです。もしこれをリアルタイムでそのまま聞いていたら、陽気なホストたちが「給仕スタッフ狩り」のコースに達する頃になっても、あなたはまだその場に口を開けたマヌケな表情で座り続けることになりますよ。そして、私は「緊急だ」と言いました。ジェナール=ホフォエン、ちゃんと集中していますか?』

 

感想:モジュールの言ってることがまともすぎて、言い返せないホフォエン。そんな高速で脳内を動かせるクイッケン‥ほしい。

 

『集中してるよ、クソ。だが頼むから、ただメッセージの要点だけを俺に教えてくれないか? 概要(プレシ)でいい』

 

『このメッセージはあなた宛てであって、私宛てではありません、ジェナール=ホフォエン。私は中身を見ていません。送信しながらストリーミングで複合解読される仕様なのです』

 

『オーケー、オーケー、薬(クィッケン)は分泌させた。撃て(送れ)』

『私は今でも悪いアイデアだと思いますがね‥』とゲルフィールド・スーツが愚痴をこぼした。

 

感想:スーツは、クイッケン反対派なのかもしれん。なんでモジュールの言うことを‥もごもご。かわいい(興奮)

 

『黙りなさい!』モジュールが言った。『すみません、ジェナール=ホフォエン。これがメッセージの本文です』

 

感想:マインドでたくさんのAIがうじゃうじゃいる中‥どんな‥一体どんな‥はふはふ

 

『GSVデス・アンド・グラビティ号より、セドゥン=ブライジャ・ビル・フルエル・ジェナール=ホフォエン・ダム・オイスへ。メッセージ開始』とモジュールは「公式(オフィシャル)」のトーンで言った。

 

感想:ほうほう。通信時は、ハートがなくなるんね。

 

すると、別の声が彼の脳内を乗っ取った。

 

『ジェナール=ホフォエン。君と再び通信することになったことについて、私が喜んでいるようなフリをするつもりはない。しかしながら、私がその意見や判断を尊重し賞賛する特定の方々からそうするよう要請されたため、この状況は、私が全力を尽くして要請に応じなければ自身の義務を怠ることになると判断せざるを得ないほど重大である。

君の常習的な天邪鬼、議論好き、そして故意にへそ曲がりな性質を正当に認識した上で、私はこのメッセージを双方向信号の形で送信することで君と通信している。見れば、君は現在、あの「アフロント」として知られる、子供じみて残酷な新興のならず者集団へのカルチャー外交官の一人を務めているようだな。これが君に対する一種の洗練された罰として計画されたものだったとしても、君はその任務とは言わないまでも、その環境にいくらかの喜びを持って適応してしまっているのではないかという、不愉快な予感がしている。君がいつものように、無頓着な不注意さと、その場しのぎの利己主義を織り交ぜてその任務をこなしているであろうことは想像に難くないがこの信号がインタラクティブ(双方向)だってんなら‥』

 

感想:長い。

 

ジェナール=ホフォエンが割り込んだ。『さっさと本題に入ってくれないか、クソが』

彼はピットの両側で、2匹のスクラッチハウンドが超スローモーションで互いに身体を硬直させているのを見つめていた。

 

感想:クイッケン使用時は、思考加速ドラックゆえに、投与中はみんなスローモーションになる。

 

『本題とは、君のホスト(アフロント)たちに、しばらくの間君との付き合いを遠慮してもらわなければならなくなったということだ』

 

『何だって? なぜだ?』ジェナール=ホフォエンは即座に警戒を強めて思考した。

 

感想:えー、もう会うのやめろとか、君たちカルチャーの人間といるよりも、おもしろいじゃないか。

 

『すでに決定が下されたのだ。言っておくが、私にその決定権は一切なかった。君の能力が、別の場所で必要とされている』

 

感想:権威者っぽい言い方できやい。

 

『どこでだ? 期間はどれくらいだ?』

『正確にどこか、あるいはどれほどの期間かは教えられない』

 

『当てずっぽうでもいいから言ってみろ』

『教えられないし、教えるつもりもない』

『モジュール、このメッセージを切れ』

『本当にいいのですか?』とスコペル=アフランクイ(自宅AI)が尋ねた。

 

感想:毎度だが、登場人物の男がテンプレすぎる説。もはや、これもエンタメ。

 

『待て!』GSVの声が遮った。

『君の時間を「約80日間」ほど提供してほしい、と言えば満足か?』

 

感想:あーあ、ホフォエンのいつもの手口だって、なーんで分からないかな〜

 

『満足するわけないだろ。俺はここがすっかり気に入ってるんだ。「ちょっとした仕事を一つ手伝ってくれ」っていうお決まりの甘い勧誘文句に釣られて、過去にどれほど「接触(コンタクト)部隊・特別事情(スペシャル・サーカムスタンス=SC)」のクソ面倒な案件に放り込まれてきたと思ってんだ』

 

(実際のところ、これは完全に事実というわけではなかった。ホフォエンが過去にSCのために動いたのは一度きりだったが、コンタクト部隊の「スパイ・不正規工作部門」であるSCのために働いた結果、予想以上の大トラブルに巻き込まれた人間を、彼はたくさん知っていた。あるいは噂に聞いていたのだ)

 

感想:ホフォエンは、交渉上手。しかしまあ、リアルにAI時代を迎えている今読むと、交渉って人間がやる必要あるのかなー?外交とかいちばん危険でめんどうじゃないか。

 

『私は何も‥』

『それに、俺にはここで果たすべき任務がある』ホフォエンが話を遮った。

 

『1ヶ月後には大評議会との謁見が控えてるんだ。近隣種族にもっと優しくしないと、お前らのケツをひっぱたくぞ、と言い渡す役目がね。この刺激的な新しいオファーとやらの詳細を話すか、さもなきゃその提案を自分のケツにでも突っ込んでろ』

 

感想:ふう。

 

『私は、自分が「特別事情(SC)」を代表して話しているとは一言も言っていない』

『じゃあ、SCじゃないと否定するのか?』

『そういうわけではないが、しかし‥』

『なら、クソくだらない勿体ぶりはやめろ。一体どこの誰が、この才能あふれる極めて有能な外交官を現職から引き剥がそうなんて?』

 

感想:redditの感想で、登場人物がみんなクズって書いてあった投稿を思い出す。そのコメントに対して、それは意図的なので仕方ありません、というのがあった。

 

『ジェナール=ホフォエン、我々は時間を無駄にしている』

『「我々」だって?』ジェナール=ホフォエンは、2匹のスクラッチハウンドがスローモーションで互いに飛びかかるのを見つめながら思った。『まあいい。続けろ』

 

『君に要求されている任務は、どうやら極めて「デリケート」なもののようだ。だからこそ、私個人としては君がその任務にこれっぽっちも向いていないと確信しているし、それゆえに、すべての詳細が必要とされるその瞬間が来るまでは、私自身にも、君のモジュールにも、君のスーツにも、そして当の君自身にすら、詳細のすべてを委ねるなど愚の骨頂だと考えている』

 

感想:権力者とテンプレボーイの話し合いは退屈だ。

 

『ほら見ろ、それこそお前がケツに突っ込んでおくべき「SCお決まりの秘匿主義(知る必要のある者だけの原則)」ってやつだ。その任務がどれだけクソデリケートだろうが知ったことか。何が伴うのかを知るまでは、検討すらしてやらないぞ』

 

スクラッチハウンドどもは、今まさにベイト・ピットの中央から1メートルほどの空中ですれ違い、跳躍しながら互いに身体をひねっていた。(クソ、)とホフォエンは思った。(この勝負は、どちらの獣が先に相手の首に歯を突き立てるか、最初の飛びかかりの一撃ですべてが決まるタイプの試合かもしれないぞ。)

 

感想:脳内も外も騒がしくなってきましたな。

 

『要求されているのは、』メッセージは、「デス・アンド・グラビティ」号が昔からイライラした時に出していたトーンをかなり忠実に再現しながら言った。

 

感想:アナログ感あってよき。

 

『君の時間の80日間だ。そのうちの99%から99.9%以上の時間は、ポイントAからポイントBへと移動するだけで、何一つ骨の折れるような、あるいは要求の厳しい仕事をする必要はない。旅の前半は、我々がアフロント側に君に提供するよう要請する(というより、おそらく金を払って手配する)アフロントの宇宙船に乗り、想像するにかなりの快適さの中で過ごすことになる。後半はカルチャーのGCU(一般接触船)の船内で確実な快適さを約束され、その後、別のカルチャーの船を短期間訪問する。そこで、君に要請したい任務が実際に「遂行」されることになる「短い訪問」と言ったが、君に要求される事柄は、おそらく1時間以内に完了する可能性があり、どれだけ長く見積もっても1日以上かかることはない。その後、君は復路につき、我々の親愛なる友人であり同盟者であるアフロントの元へと戻って、中断した場所から活動を再開すればいい。どうだ、これなら大した重労働には聞こえないだろう?』

 

スクラッチハウンドどもはピットの中央上空で衝突し、互いの喉を目がけて顎を突き出していた。まだ判別するのは少し難しかったが、ホフォエンの目には、ファイヴタイドが賭けた方の犬(赤の首輪)の形勢はあまり良さそうには見えなかった。

 

『へえへえ、そうかい。そんな話は前にも聞いたことがあるよ、D&G(デス&グラビティ)。で、俺への報酬(見返り)は何だ? 一体なぜ俺がそんなことを――? ――おっと、クソ‥!』

 

感想:パパと息子の会話でわろた、

 

『どうした?』デス・アンド・グラビティ号のメッセージが尋ねた。

しかし、ホフォエンの意識は完全に別のところへ向いていた。

 

2匹のスクラッチハウンドは空中でがっちりと組み合い、スローモーションで手足をバタつかせながらピットの床へと落下した。青い首輪をつけた犬が、赤い首輪の犬の喉を完全に顎でロックしていた。 周囲のアフロントたちの多くが歓声を上げ始めていた。ファイヴタイドと彼の支持者たちは悲鳴を上げていた。

 

感想:おお〜。

 

『スーツ?』ジェナール=ホフォエンは思考した。

『何でしょうか?』ゲルフィールド・スーツが言った。『てっきり、まだお話し中かと?』

『そんなことは今はどうでもいい。あの青いスクラッチハウンドが見えるか?』

『あなたも私も、あのクソったれな生き物から目を離せませんよ』

『あいつにエフェクター(素粒子遠隔操作ビーム)をくれてやれ。相手から引き剥がすんだ』

『そんなことできません! それは「チート(不正行為)」です!』

 

感想:ゲームプレイヤー感強め。

 

『ファイヴタイドのケツは、この賭けのせいでメリーゴーランドの外まで完全にハみ出しかけてるんだよ、スーツ。今すぐやれ。さもなきゃ、重大な外交問題の個人責任をお前が背負うことになるぞ。お前次第だ』

 

感想:人間はAIを脅すこと多し。

 

『なんですって!? でも!』

『今すぐエフェクターを撃つんだ、スーツ。ほら、前回のアップグレードでお前、アフロントの監視網をかいくぐって微細操作できるようになったんだろ。おい! 見ろよあのザマ。うわぁ! あの義肢の顎が自分の首に食い込んでくる感覚が想像できるか? ファイヴタイドは今頃、自分の外交官キャリアに永遠の別れのキスをしてる最中だぞ。おそらく俺に決闘を申し込む方法をすでに考えてる。その後、俺が彼を殺そうが、彼が俺を殺そうがどうでもいいが、十中八九、カルチャーとアフロントの間で戦争に‥』

 

感想:人間と違って、だらしないというか、業があるというか、人間よりも人間っぽい説

 

『わかりましたよ! わかりました! ほら、やりました!』

 

感想:スーツ、仕事早い。

 

ジェナール=ホフォエンの右肩の上が、かすかに震えるような(ブーンという)感覚に包まれた。

次の瞬間、赤いスクラッチハウンドがビクッと跳ね、青いスクラッチハウンドの胴体が不自然に二つ折りに折れ曲がって、噛みついていた顎の力が緩んだ。 赤い首輪の獣はすかさず相手の下から這い出ると、身体をひねって形勢を逆転させ、今度は自分が青い首輪の獣の喉へとプロテーゼの顎をガッシリと突き立てた。

 

ホフォエンのすぐ隣では、依然としてスローモーションのまま、ファイヴタイドが(勝利の予感に)空中へと浮き上がり(立ち上がり)始めていた。

 

感想:アフロントにはなぜバレないのか。

 

『よし、D&G。何の話だったっけ?』

『今の遅れは何だ? 一体何をしていた?』

 

感想:わんわんの対決をみてたんだよ。

 

『気にするな。あんたの言う通り、時間は無駄にできない。先を急ごう』

『君が報酬を求めていることは察する。何が欲しいのだ?』

『おや、考えさせてくれ。俺専用の宇宙船を1隻もらえるか?』

『それについては交渉可能であると理解している』

『だろうな』

『望むものは何でも手に入る。どうだ? それで承諾するか?』

『はは、もちろんさ』

『ジェナール=ホフォエン、頼む。私からも懇願する。この件を引き受けると端的に言ってくれ』

『D&G、あのあんたが俺に「懇願」してるだって?』ジェナール=ホフォエンは思考の中で笑いながら尋ねた。

 

感想:あー。人間のシーンはつまらぬ。

 

ピットの中では青い首輪のスクラッチハウンドが相手の顎の中で絶望的にのたうち回り、ファイヴタイドが彼の方を振り向き始めていた。

 

『そうだ、懇願している! さあ、同意してくれるか? 時間がないのだ!』

視界の端で、ジェナール=ホフォエンはファイヴタイドの手足の1本が自分の方へとすっ飛んでくる(背中を叩こうとしている)のを見た。彼は自分のスローモーション化している身体に、その衝撃への備えをさせた。

 

感想:多分、自分で何かを成し遂げたことがないんだ。だから、登場人物たちはテンプレ化しちゃうんだ。基本はAIが関与するし、自らの力で何かを‥というのはなさそう。だから、みんな同じようなキャラになるんだろうなー。まあ、作者がそう考えてどうかした、ってわけじゃないだろうが。

 

『考えておくよ』

『しかし‥!』

『スーツ、通信を切れ。モジュールには、夜更かしして待つ必要はないと伝えておけ』

 

『それからスーツ、コマンド命令だ。俺が呼びかけるまで、自分自身を完全にオフラインにしろ』

ジェナール=ホフォエンは「クィッケン(思考加速)」の効果を停止させた。

 

現実の時間が一気に元の速度へと戻る。

ファイヴタイドの熱狂的な「お祝いのドツき」が、彼の背中に歯がガタガタと鳴るほどの衝撃とともに炸裂した瞬間、彼は微笑み、幸せなため息をついた。

 

かくしてカルチャー(の裏工作)は、1000サッカの賭けに大勝利した。

実に楽しい夜になりそうだ、と彼は思った。

 

感想:はわー。読んだ読んだ。今日はここまでにしよっと。つかれた。

イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳 (3)原始的な異星人アフロントがおもしろい!

2026 / 07 / 01  09:55
イアン・バンクス「EXCESSION」の感想 (3)

 

 

「我が良き友、ビル・ジェナール=ホフォエンよ、よく来た!」

 

ウィンターハンター(冬の狩人)部族の「ファイヴタイド・ヒューミッドイヤー(湿った年)7世」大佐(一等兵)は、その4本の触肢(手足)を人間の身体に巻きつけ、彼を自身の中心質量へと固く抱きしめると、唇の総(フサ)をすぼめてフロントの嘴(くちばし)を人間の頬に押し当てた。「ムゥゥゥゥーーー、ワッ! よし、これでよし! ハハハ!」

 

感想:なんだ、この異星人は。

 

ジェナール=ホフォエンは、数ミリメートルの厚さしか基本ないゲルフィールド・スーツ越しに、この外交部隊の将校の「キス」を感じ取った。それは顎へのそこそこ鋭い衝撃に続き、強力な吸引が襲ってくるものだった。

 

感想:えー、こんな外交は嫌だ。皮膚がちぎれそうなほどの吸引キスは勘弁。軍国主義、男尊女卑って感じのイメージが猛烈。

 

アフロント特有の、多様で力強い「親愛の情の表現」に慣れていない者であれば、この生き物が自分の歯を頬から吸い出そうとしているか、あるいは『カルチャー製ゲルフィールド型接触・保護スーツ・マーク12』が、局所的な部分真空によって着用者から引き剥がされるかどうかを実験しているのだ、と結論づけたことだろう。

 

感想:軍国主義っぽい野蛮なおっさん異星人は、アフロント人と言うのか。

 

海洋の底に匹敵する圧力に耐えるよう設計されたスーツに保護されていない人間が、この潰されんばかりの強力な4本触肢の抱擁を受けたらどうなって唯々(ただただ)恐ろしいことになっていたかは、おそらく考えない方が身のためだった。

 

感想:もはや凶器や、アフロント人のキスは。繁殖期はどうしているんや。

 

もっとも、アフロントの生命を維持するために必要な環境に、なんの保護もなく生身で晒された人間は、太ももほどもある触手の檻に押し潰される心配をするまでもなく、少なくとも3つの刺激的かつ異なる苦痛に満ちた方法ですでに死に絶えているはずだが。

 

感想:保護なしでは対面できない野蛮人をアフロント人と言う。

 

「ファイヴタイド、また会えて嬉しいよ、この悪党め」ジェナール=ホフォエン(人間)は、親愛の情を示すのにふさわしい、熱意ある力加減で、アフロントの嘴の端あたりをパチパチと叩いた。

 

「お前もな、お前もだ!」アフロントは言った。

 

感想:ジェナールは、アフロントとの外交に手慣れているご様子。

 

彼(ファイヴタイド)は男を掴んでいた手を離すと、驚くべきスピードと優雅さでくるりと回転し、人間の片手を触手の先で握りしめると、巣空間(ネスト・スペース)の入り口付近にいるアフロントたちの轟音轟く大混雑を通り抜けて、ウェブ膜(蜘蛛の巣状の床)の開けた場所へと彼を引っ張っていった。

 

感想:え、どういうこと(笑) 案内方法も強烈。

 

その巣空間は半球の形状をしており、直径は裕に100メートルはあった。

 

主に連隊の食堂(メス・ホール)やディナー・ホールとして使用されているため、旗、バナー、敵の皮、古い武器の破片、軍事用具などが吊り下げられていた。

 

湾曲した、血管が浮き出たように見える壁も同様に、勲章プラーク、中隊・大隊・師団・連隊の栄誉プラーク、そしてかつての敵たちの頭部、生殖器、手足、あるいはその他の「一般的に受け入れられている特徴的な身体の部位」で装飾されていた。

 

感想:エジプト、ナルメル王のパレットの裏にもあるよね。敵の男たちが、斬られた首を両足の間に置かれて、山積みになっている生殖器を神官が数えているやつ。永久に生殖能力を失うように‥という優生思想てきな。

 

ジェナール=ホフォエンは以前にも数回、この特定の巣空間を訪れたことがあった。彼は、このホールが誇る「3つの古代の人間の頭部」が今夜も見える場所に飾られているかどうか、上を見上げた。

 

外交部隊(ディプロマティック・フォース)は、「その種族のまだ生きている個体が訪問してきた際には、該当するエイリアンの判別可能なトロフィー(戦利品)の部位は覆い隠すように」と命令するだけの機転(タクト)があることを自負しているのだが、ときどき忘れるのだ。

 

感想:なんだそれ、おもしろいな(笑)食堂?ホールに飾ってるトロフィーなんだから、もうそのままにした方が潔いやん。というか、個体が帰った後に戦利品を壁に戻すのも、おもろい。

 

彼(ジェナール)はその頭部を、細分化されたカーテン壁の高い位置に隠された、かろうじて3つの小さな点にしか見えない場所に見つけ、それらが覆い隠されていないことに気づいた。

 

おそらくこれは単なる手落ちだろう。しかし、完全に意図的なものである可能性も同じくらいあった。

 

感想:あー‥その言い方は、人間も飾られてるのか。それが隠されてないんやな‥。

 

つまり、彼を落ち着かせず、自分の立場をわきまえさせるために慎重に仕組まれた、極めて絶妙な重みの「侮辱」であるか。あるいは、彼は「身内(男の子たちの一人)」として受け入れられているのであって、たまにお茶の間のテーブルを飾っている近親者の皮を見ただけで大騒ぎして不機嫌になるような、あのめそめそした臆病なエイリアンたちとは違うのだ、ということを示す、繊細かつ深遠な「お世辞(褒め言葉)」であるかのどちらかだ。

 

感想:うーん、ちょっと考え方おかしくない?いや、身内の一人としてカウントしてるならば、戦利品(人間)を飾ることはない気がするのだがね‥。ワザとだよ、たぶん。反応すると喜ぶから、反応しない方がいいね。

 

これらどちらの可能性が真実であるかを迅速に見分ける方法が「絶対にない」ということこそ、まさにこの人間(ジェナール=ホフォエン)がアフロントという種族において最も愛着を感じている特質だった。

 

感想:アフロント人じゃなくても、人間でもそういうことする奴たくさんおるで。まあでも、愛着が湧くんやな。気持ち悪そうなエイリアンみたいな容姿で軍国主義のおっさんエイリアンが、こういうしょうもないことして相手の反応を見る‥器の小ささ‥にな。わたしも、ドローンに愛着湧くから分かるで。

 

そして同時に、カルチャー社会全体や、特に彼の前任者たちが、これ以上ないほどの絶望の源として見出してきた属性でもあった。

 

感想:そりゃあ、大抵の人から嫌われるタイプだからな。

 

ジェナール=ホフォエンは遠くにある3つの頭部に向けて皮肉な笑みを浮かべ、ファイヴタイドがそれに気づいてくれないだろうかと半ば期待した。 

 

感想:目は口ほどに物を言うw

 

ファイヴタイドの眼柄(めづか=目がついた触手)が回転した。「給仕のクズめ!」彼は近くを浮遊していた去勢された若者に吼えた。「ここへ来い、薄汚い奴め!」

 

その給仕は、この大きなオスの半分ほどの大きさしかなく、その生物の後ろの嘴の切り株を計算に入れなければ、子供らしく傷一つなかった。若き給仕は、礼儀が要求する以上にガタガタと震えながら近づき、触手が届く距離まで浮かんできた。

 

感想:おお、隠さなかったことを咎められるのかw

 

「この物体は」ファイヴタイドは触肢の先をピッと動かしてジェナール=ホフォエンを指し、吼えた。

 

「お前のチーフがこっぴどい折檻(せっかん)を免れたいのであれば、すでにブリーフィングを受けているはずの、あのエイリアンの獣人間だ。獲物のように見えるかもしれないが、実際には名誉ある大切なゲストであり、我々と同様に食事を必要としている。今すぐ動物と異世界人用の給仕テーブルへ突っ走り、こいつのために用意された滋養(エサ)を取ってこい。早くしろ!」ファイヴタイドが絶叫すると、その声は大半が窒素で構成された大気の中に、目に見える小さな衝撃波を作り出した。去勢された若き給仕のスタッフは、適切な敏捷さをもってガスを噴出しながら退散した。

 

感想:去勢された階級か。人間は獲物のように見えるかもしれないがwアフロント人、正直でおもしろいwちなみに、アフロントという意味は「侮辱する」「公然と恥をかかせる」という意味らしい。

 

ファイヴタイドは人間に向き直った。「お前への特別なもてなしとして」彼は叫んだ。「お前たちが食べ物と呼んでいるあの胸糞悪いドロドロ(グロップ)と、あの毒物の水とかいうやつをベースにした液体の入った容器を用意してやったぞ。

 

感想:ナチュラルに侮辱してるw

 

神の糞にかけて、俺たちがお前をどれだけ甘やかしているか分かるだろう、ええ!?」彼は人間の腹部を触手でパチンと叩いた。ゲルフィールド・スーツが硬化してその衝撃を吸収したが、ジェナール=ホフォエンは笑いながら少し横によろめいた。

 

「君の寛大さには、もう少しでひっくり返されるところだったよ」

「よろしい! 俺の新しい制服は気に入ったか?」アフロントの将校は、人間から少し身を引いて、自分の全高まで身体を引き上げながら尋ねた。ジェナール=ホフォエンは、相手の身体を上から下まで見つめる仕草をして見せた。

 

平均的な成体のアフロントは、胴回りが約2メートルほどの、少し潰れた成体のアフロントは胴回りが約2メートル、高さが1.5メートルほどの大きさで、血管の浮き出たフリル付きの「ガス嚢(のう)」の下につり下がっていた。

 

このガス嚢は、アフロントが望む浮力に応じて直径1メートルから5メートルの間で変化し、その頂点には小さなセンサーの突起(バンプ)がついていた。

 

アフロントが攻撃/防御モードに入ると、この嚢全体を収縮させ、中央の体質量の頂点にある保護プレートで覆い隠すことができた。

 

主要な目と耳は、口を覆うフロントの嘴の上にある2本の眼柄(がんぺい)に備わっており、後ろの嘴が生殖器を保護していた。肛門兼ガス排出口は、本体の真下に位置していた。

 

感想:前の嘴は、口。後ろの嘴は生殖器を守るためのものなのか。二つ嘴があるのか‥キモい!笑

 

中央の質量には、生まれつき太さや長さの異なる6本から11本の触肢(手足)が付着しており、そのうちの少なくとも4本は通常、平らな葉の形をしたパドルのようになっていた。

 

出会った成体オスのフロントが実際に何本の手足を持っているかは、それまでにその個体がどれだけの戦闘や狩猟に参加し、そこでいかに成功を収めてきたかに完全に依存していた。

 

感想:古傷は勲章ってやつか?

 

深い傷跡が並び、手足よりも「切り株(失った跡)」の方が多いアフロントは、個人の評判次第で、「見事に献身的なスポーツマン」と見なされるか、あるいは「勇敢だが愚かで、おそらく危険な無能」と見なされるかのどちらかだった。

 

感想:残る傷をつけてしまうくらいなんだから無謀で愚かだと。おもしろみ。しかし、私は傷がある個体の方が信用できる説。

 

ファイヴタイド自身は9本の手足を持って生まれた。これは名門の家柄においては最も縁起の良い数とされていたが(ただし、決闘や狩りで少なくとも1本は失うのが嗜みとされていた)、彼は軍事学校時代、フェンシング指導教官の第一夫人の名誉を巡る決闘において、その教官にきっちり1本を切り落とされていた。

 

感想:ドローンのシセラ‥が頭から離れない‥。ファイヴタイドの歴史はいいや‥。

 

「非常に見事な制服だ、ファイヴタイド」ジェナール=ホフォエンは言った。

「ああ、実にそうだろう?」アフロントは身体を波打たせて言った。

 

ファイヴタイドの制服は、中央の質量に縦横無尽に交差した、金属的な質感を持つ無数の幅広のストラップやサッシュ(飾り帯)で構成されており、そこにはホルスター、鞘、ブラケットが点在していた。

 

これらはすべて武器で埋まっていたが、今夜出席する公式ディナーのために封印されていた。

 

さらに、ジェナール=ホフォエンが「勲章やデコレーション」に相当すると知っている、きらめくディスクの数々も飾られており、それらには彼が仕留めた特に見事な獲物の動物や、重傷を負わせたライバルの肖像が関連付けられていた。

 

また、控えめに空白のままにされた一連の肖像ディスクは、ファイヴタイドが名誉を持って「孕ませることに成功した」と主張できる他クランのメスたちを示していた。

 

貴金属で縁取られたディスクは、抵抗を試みた(一筋縄ではいかなかった)メスたちの証拠だった。

 

感想:おお‥激しく抵抗したメスには金色の額縁てわ飾られる‥名誉だろ?おい?という考えなのか。脱略文化‥ということがわかりますな。

 

サッシュの色や模様は、ファイヴタイドのクラン、階級、そして連隊(ファイヴタイドが所属する外交部隊の正体は、要するにこれだった‥アフロントと取引をしたい、あるいは取引せざるを得なくなったいかなる種族も、これを無視するのは賢明ではなかった)を示していた。

 

感想:まあ、自分たち種族の女も額縁の中に、、ってことも有り得るし、過去にあったろうからなあ。

 

ファイヴタイドはピルエット(旋回)し、ガス嚢を膨らませて自らを浮き上がらせた。触肢をぶら下げ、体重をほとんどかけることなく、巣空間のスポンジ状の床からふわりと浮上した。

 

「私は‥光輝(レスプレンデント)ではないかね?」 ゲルフィールド・スーツの翻訳機は、ファイヴタイドが自分を表現するために選んだその形容詞を、仰々しく音節を転がすように訳すことに決めたため、アフロントの将校はまるで大根役者のように聞こえた。

 

感想:ほっほー。翻訳機能付きのボディスーツなのか。めっちゃ欲しい。

 

「間違いなく威圧的(インティミデーティング)だよ」ジェナール=ホフォエンも同意した。

「感謝する!」ファイヴタイドは言い、眼柄が人間の顔と同じ高さになるまで再び下降した。眼柄の視線が上下に動き、男を上から下まで値踏みした。

 

「お前自身の衣服も‥ようやく、普段とは違うな。お前たちの民の基準からすれば、間違いなく最高にスマート(お洒落)なのだろうな」

 

感想:褒め方が‥微妙!笑

 

アフロントの眼柄の姿勢は、彼がこの発言に極めて満足していることを示していた。おそらくファイヴタイドは、自分が信じられないほど外交的(配慮が行き届いている)であると自惚れているのだろう。

 

感想:ファイヴタイド‥クセになる‥かわいい‥

 

「ありがとう、ファイヴタイド」ジェナール=ホフォエンは一礼して言った。彼は自分自身を、いささか着飾りすぎだと考えていた。

 

もちろん、ゲルフィールド・スーツそのものがある。これは第二の皮膚のように馴染んでいるため、着用していることすら完全に忘れてしまうほどだった。通常、このスーツの厚さはどこをとっても1センチメートル以下、平均してその半分ほどしかないが、アフロントの生命維持に必要な環境よりもさらに過酷な環境下でも、彼を快適に保つことができた。

 

感想:おしゃれなど気にする必要はないさ。アフロントに生身の身体を触れられるだけで人間は死んでしまうんだから、スーツは必須や!

 

あいにく、どこかの馬鹿が「カルチャーは、こうしたスーツを活火山のマグマ溜まりの中に転送(ディスプレース)し、再び飛び出させてテストしている」という噂を漏らしてしまっていた(これは事実ではない。ラボでのテストはむしろこれよりも要求が厳しいが、一度だけ、目立ちたがり屋のカルチャー製造工場が人々を感心させるためにやったことがあった)。

 

感想:カルチャーは、高度な翻訳や機能を持つ道具にAIを宿らせるけど、今回ジェナールが着用したスーツはその中でもレベルの低いモノを選んだのだろう‥

 

これは、アフロントのように好奇心が強く肉体的にエネルギッシュな生物の前で触れ回るべき情報では絶対になかった。彼らの頭に余計なアイデアを植え付けるだけだからだ。

 

感想:マグマでも平気という噂を聞いたアフロント大佐は「こいつをどの拷問器具(あるいは過酷な自然環境)に放り込んだら、本当に壊れないかテストできるだろうか」という好奇の目で見ているだろうな‥。

 

ジェナール=ホフォエンが暮らすアフロントの居住区には、火山があるほどの惑星環境は再現されていなかったが、ファイヴタイドから例の火山の話を本当かどうか確認された後、外交部隊の将校(ファイヴタイド)が自分を奇妙な目で見ているのに何度か気づいたことがあった。

 

感想:くすくす(笑)

 

それはまるで、自分がアクセスできるどんな自然現象や装置を使えば、この驚異的で興味深い保護性能を「テスト」できるかを考えているかのようだった。

 

ゲルフィールド・スーツには「ノード分散型頭脳」と呼ばれるものが備わっており、ジェナール=ホフォエンのアフロントたちへの発言のあらゆるニュアンス、およびその逆を、何の苦もなく翻訳することができた。

 

また、その他のいかなる音響、化学、電磁信号も、人間に意味のある情報へと効果的に変換してくれた。

 

不運なことに、この種の高技術な「お利口機能」に必要な処理能力のせいで、カルチャーの慣例に従い、このスーツは「センチエント(知性・意識を持つ存在)」でなければならなかった。

 

ジェナール=ホフォエンは、知性のレベルを許容される知的範囲の「最低限界」に固定したモデルを要求していたが、それでもスーツが文字通り「独自の意思(マインド・オブ・イツ・オウン)」を持っていることには変わりなかった(それがたとえ『ノード分散型』、ジェナール=ホフォエンが、その意味について一切何も知らないことをむしろ誇りに思っている技術用語の一つ、であろうとも)。

 

その結果、この装置は、文字通りの意味で「その中で暮らす喜び」であるのとほぼ同等に、比喩的な意味で「付き合っていくのが苦痛」な代物になっていた。

 

感想:スーツに搭載されている人工知能くんはどんな自我を持っているのかな。にまにま。

 

着用者を完璧にケアしてくれるのだが、その事実をこれでもかと絶え間なくリマインド(アピール)してくるのをやめられないのだ。

 

感想:アフロント同様に自己主張が激しいとみた。

 

『いかにもカルチャーらしい』と、ジェナール=ホフォエンは思った。

 

普段、ジェナール=ホフォエンはスーツの表面の大部分を、アフロントから見て乳白色のシルバーに見えるように設定し、手と頭部だけを透明にしていた。

 

ただ、「目」だけはどうしても不自然に見えてしまった。普通に瞬き(まばたき)をするためには、目を少し外側に膨らませる必要があったのだ。そのため、彼は外出する際には大抵サングラスを着用していた。

 

アフロントの母星の、太陽の光が降り注ぐ雲の頂から100キロメートルも下に広がる、薄暗い光化学スモッグ特有の大気中に沈みながらサングラスをかけるのは、確かに少しちぐはぐに見えたが、小道具としては役に立った。

 

スーツの上から、彼は大抵ガジェットや贈り物、賄賂(わいろ)を入れるためのポケットがついたジレ(ベスト)を着用し、股間を包み込むようなヒップホルスターには、時代遅れだがいかにも強そうなハンドガンを2挺収めていた。

 

攻撃能力という点では、これらのピストルはジェナール=ホフォエンにとって一種の「最低限の品格(リスペクト)」をもたらしていた。これらがなければ、どんなアフロントも、これほど貧弱な異世界人を真面目に相手にする姿を同胞に見せるわけにはいかなかったのだ。

 

感想:武力が全て‥というわけか。しかし、情報戦においてはカルチャーの方が上では‥

 

この連隊ディナーのために、ジェナール=ホフォエンは自分が住んでいるモジュール(居住室)の忠告を不承不承受け入れ、モジュールが「最高に魅力的だ」と保証する衣装(膝丈のブーツ、タイトなズボン、短いジャケット、そして肩から羽織るロングマント)を身にまとっていた。

 

そして(通常よりもさらに巨大なピストルのペアに加えて)、3ミリメートル口径の「ヘビー・マイクロ・ライフル」のペアだった。2000年前の骨董品(アンティーク)だが今でも完全に動作し、非常に長くて、ギラギラとした輝きを放つ見事な代物だった。

 

感想:やっぱり、アンティークって価値あるのかな。でも、何の対価なんだろう。

 

彼は、モジュールが提案してきた「タッセル(房飾り)が大量についた、ドラム缶のような高い帽子」にはさすがに難色を示した(バルクした)ため、二人は代わりに、ドレス/アーマー兼用のハーフヘルメットを被ることで妥協した。

 

それはまるで、6本の長い金属製の指を持った何者かが、彼の頭を後ろから優しく包み込んでいる(クレードルしている)かのように見えるデザインだった。

 

当然ながら、この衣装のすべてのパーツは独自のゲルフィールド(に相当するもの)で覆われており、アフロントの環境の冷たく腐食性の高い圧力から保護されていた。

 

ただしモジュールは、「もし社交上の礼儀としてそのマイクロ・ライフルをぶっ放したいのであれば、完璧に機能しますよ」と言い張っていた。

 

感想:ははは。撃ちたければいつでも完璧に発射できるぜ!というモジュールに対して、ジェナールは平和的にやろうぜ‥お前‥って感じなのかも。

 

「閣下!」と去勢された若き給仕が悲鳴を上げ、ファイヴタイドの脇の巣空間の床面を滑り込むようにして急停止した。

 

その3本の触肢には、様々なサイズの、透明で多重構造になったフラスコが大量に載った大きなトレイが抱えられていた。

 

「何だ?」ファイヴタイドが怒鳴った。

「エイリアンのゲスト様の、お食事(フードスタッフ)でございます、閣下!」

 

感想:敵が攻めてきたぞおーとか、緊急事態かと思いきや、食事の報告でそんな大声を上げんでいただきたい。

 

ファイヴタイドは触手を伸ばすと、トレイの上をごちゃごちゃとかき回し、物をひっくり返した。

 

給仕は、自分が持っているトレイの上で容器が傾き、倒れ、転がるのを、目を見開いた恐怖の表情で見つめていた。

 

感想:うーむ。ファイヴタイドは、なぜ怒っているのかね。

 

その表情を認識するのに、ジェナール=ホフォエンは外交官としての特別な訓練など必要としなかった。万が一、容器のどれかが割れたとしても、給仕にとっての本当の危険はおそらく小さかった。

 

感想:アフロントがやばい行動をした時のための、特別な訓練があるのか。

 

(気圧差による)爆縮が引き起こす破片は比較的少なかったし、アフロントにとって有害な中身(人間の飲料など)は一瞬で凍りついてしまうため、さほどの危険にはならないからだ。

 

しかし、これほど公衆の面前で無能さを晒した給仕を待ち受ける「お仕置き(罰)」は、おそらくその目立ち具合に比例するはずであり、この生き物がガタガタ震えているのはもっともなことだった。

 

感想:かわいそうに‥。軍国主義では、地位がものを言いますな。下級の扱いはつらい。

 

「これは何だ?」ファイヴタイドは詰問し、液体が4分の3ほど入った球体のフラスコを掲げると、去勢された若者の嘴(くちばし)の目の前で激しく振り回した。「これは飲み物か? ああ? どうなんだ?」

「わかりません、閣下!」給仕は嘆いた。「そ、そのように見えますが‥?」

「低脳め」ファイヴタイドはそう呟くと、今度は打って変わって優雅にそのフラスコをジェナール=ホフォエンに差し出した。「名誉あるゲストよ、どうぞ。我々の努力がお気に召すかどうか、教えてくれ」

 

感想:これはもはや、リアルバリューですね。怒り、キレるこそもエンタメ‥!これはぜひ、ジェナールには「不味い」と言って、ファイヴタイドの怒りをヒータアップさせていただきたい。(その方が大衆は喜びます)

 

ジェナール=ホフォエンは頷き、フラスコを受け取った。

 

ファイヴタイドは給仕に向き直った。「それで?」彼は叫んだ。「ただ浮いてるんじゃねえ、このマヌケが。残りは『野蛮人・対話(サヴェージ・トーカー)大隊』のテーブルへ持って行け!」彼が給仕に向けて触手をピッと動かすと、給仕は見事なまでに身をすくめた。

 

感想:はははは。ただ突っ立ってんじゃねぇ!のアフロントverは、ただ浮いてるんじゃねぇ!だ。このマヌケが。

 

そのガス嚢はしぼみ、彼はそそくさと床の膜を走って巣空間の宴会エリアへと向かい、その方向へダラダラと移動し始めていたアフロントたちを器用にすり抜けていった。

 

ファイヴタイドは、通りすがりの外交部隊の同僚将校からの「挨拶の平手打ち」に応じるために一瞬だけ向きを変え、それからまたクルリと戻ると、自分の制服のポケットの一つから液体の入ったバルブ(容器)を取り出し、ジェナール=ホフォエンが持つフラスコに慎重にカチンとぶつけた。

 

感想:挨拶の平手打ち、おもしろい。もう、アフロント人、めっちゃおもしろいな。全てがエンタメ。

 

「アフロントとカルチャーの未来のイン関係(関係性)に」彼は轟かせた。「我々の友情が長く、我々の戦争が短からんことを!」

 

ファイヴタイドはその液体を自分の口の嘴へと絞り込んだ。

 

「見逃してしまうほど短いといいね」ジェナール=ホフォエンはうんざりした調子で言った。

 

これは彼が心からそう思っているというよりは、カルチャーの外交官(アンバサダー)ならそう言うべき決まり文句(ロールプレイ)だからだった。

 

感想:飲むの早いね、って意味なのか?

 

ファイヴタイドは小馬鹿にしたように鼻を鳴らすと、一瞬横に飛びのき、通りかかった艦隊大佐(フリート・キャプテン)の肛門(アヌス)に触手の先を突っ込もうとした。

 

大佐はその触手をねじ伏せ、嘴を攻撃的にカチカチと鳴らしたが、すぐにファイヴタイドの笑いに加わり、親しい友人としての心からの挨拶と、雷鳴のような触手の平手打ちを交わし合った。

 

感想:アフロント人の挨拶といい、心からの挨拶はなかなか身体を駆使しますな。人間目線だと。

 

今夜はこういうノリが延々と続くのだろう、とジェナール=ホフォエンは覚悟した。

 

感想:これをノリというのか。まあ、みんな粛々真面目に黙って座ってたら、それはそれでこわいし、何よりつまらない。

 

このディナーは「男だけの集まり(オール・メール)」であり、そのためアフロントの基準からしても、かなりバカ騒ぎ(ボイスタラス)な場になる可能性が高かった。

 

ジェナール=ホフォエンはフラスコの吸い口を口に当てた。ゲルフィールド・スーツが吸い口に密着して圧力を均等にし、フラスコの密閉を解除した。

 

そして彼が頭を後ろに傾けると、スーツの頭脳(AI)は、その液体が男の口と喉に流れ込むのを許可する前に、彼らにとっての「結構な長考(ディープ・シンキング)」を行った。

 

感想:モジュールのAIのお喋りタイム!

 

『水とアルコールが50対50、さらに部分的に毒性のあるハーブ系の化学物質の痕跡。レイセツィカー・スピリッツに最も近いです』と、ジェナール=ホフォエンの頭の中で声がした。『私だったら、これを(体内に取り込まずに)バイパス(破棄)しますね』

 

感想:えー、めっちゃ便利。捨てよう。

 

『もしお前が俺だったらな、スーツ。お前のこの窒息しそうな、ねっとりした抱擁に耐える苦痛を和らげるためだけに、泥酔を大歓迎しているはずだぞ』ジェナール=ホフォエンは飲み干しながら、その「道具」に言い返した。

 

感想:SFの人間が、人工知能に物申す時は、「道具」「機械」と呼ぶあるある。

 

『おや、私たちは今、お怒りモード(テッチー・モード)ですか?』声は言った。『私はあなた様のために良かれと思ってやっているのですよ』

 

感想:その言い方‥興奮するね。

 

「お前のその奇妙な基準からして、それは美味いか?」ファイヴタイドが尋ね、眼柄をフラスコに向けてコクコクと動かした。

 

感想:奇妙な基準w ああそうだ、ファイヴタイドに対して親近感というか愛着が湧くのは、あいつだ。ラリーのリングワールドという小説に登場するクジン人だな。同じく軍国主義だし。(パペッティアに負けたけど)

 

ジェナール=ホフォエンは、飲み物が喉を通って胃へと温かく落ちていくのを感じながら頷いた。彼が一つ咳(せき)をすると、その衝撃でゲルフィールドが彼の口の周りで一瞬、銀色のチューインガムのように丸く膨らんだ。ホフォエンは知っていたが、これはファイヴタイドにとって「ゲルフィールド・スーツを着た人間ができる、2番目に面白い一発ギャグ」であり、これを超える面白さは「クシャミ」だけだった。

 

感想:そんなに密着力の高いスーツなのか。いいなあ、欲しいな。ファイヴタイドの笑うツボもおもしろいな。そういえば、小学生の時に、生理現象(くしゃみやオナラ)をする生徒をみて、めっちゃ笑う子供がいたな。心は子供な愛らしいアフロント人。

 

「不健康で、毒物そのものだ」ジェナール=ホフォエンはアフロントに言った。「完璧な再現度だよ。化学者に褒め言葉を伝えてくれ」

 

「伝えておこう」ファイヴタイドは自分の飲み物バルブを握り潰し、通りがかった使用人にポイと投げつけた。

 

感想:あーおもしろい(笑)いい、アフロント人、いい!

 

「さあ、来い」彼は人間の手を再び掴んで言った。

 

「テーブルへ行こう。俺の胃袋は、戦闘前の臆病者の腸(はらわた)みたいに空っぽだ」

「違う違う違う、こうやってピッて弾くんだよ、このマヌケな人間め。そうしないとスクラッチハウンド(猟犬)どもに取られちまう。見てろ‥!」

 

感想:笑 ふとした時に、下等な生き物め!人間よ!という心の声が出てしまうアフロント人は素直でおもしろい。狡猾より全然いい。

 

アフロントの公式ディナーは、直径最大15メートルにも及ぶ巨大な円形テーブルの集まりの周りで開催された。

 

それぞれのテーブルの真ん中は「餌穴(ベイト・ピット=闘技場)」を見下ろせるようになっており、コース料理の合間や最中に、そこで動物たちの殺し合い(ファイト)が行われる仕組みになっていた。

 

感想:はっはっはは。もはや、古代ローマのコロッセオではないか。

 

古き良き時代、軍隊やアフロント社会の上流階級が開催する晩餐会では、「捕らえたエイリアン(異星人)のグループ同士を戦わせる異種格闘技戦」が、特別かつ定番のハイライトだった。

 

感想:イアンバンクスのゲームプレイヤーにも似たような感じのあったよね。えーっと。特定の権威者のみ閲覧できるAVだ。異星人を陵辱しながら犯すとか。まあ、人間の差異たる欲求はそういうものですよ。(アフロント人は人間ではないが、人間が作った設定なので、人間の思考になっている)

 

それぞれのエイリアンの化学特性や気圧が異なるため、そのような戦闘をお膳立てするのはしばしば恐ろしく金がかかり、技術的な困難を極めたにもかかわらず、だ。(観戦しているディナーのゲストに本物の生命の危機が及ぶことも珍しくなかった。

 

感想:そうね。窒息とか、環境変化で死んだらつまらないものね。戦闘で苦しみながら死なないとね。ゲストも命懸けのエンタメですなぁ〜。

 

例えば、334年のディープスカー家の『テーブル5』で起きたあの恐ろしい大爆発を誰が忘れられるだろう? 

 

感想:ほほう?

 

ガス巨星の大気を再現するためにドーム状に加圧されていた餌穴(ピット)が爆発したせいで、そのテーブルのゲスト全員が、肉片を飛び散らせる無惨な、しかし名誉ある最期を遂げたのだ)。

 

感想:それも、名誉。

 

実際、アフロント社会の「本当に重要な実力者たち」の間で最も頻繁に口にされる不満の一つが、アフロントが他の宇宙航行種族の非公式な連合(アソシエーション)に加盟したことに対するものだった。

 

感想:まあ、口出しされるからね。

 

他の「劣等な種族」に対して親切に振る舞わなければならなくなったせいで、あの野獣どもに、アフロントの栄光ある武力の前に己の根性を証明するチャンスを与える代わりに、平均的な社交ディナーが著しく退屈(マイルド)なものになってしまった、というのだ。

 

感想:素直でよろしき。連合というのは、カルチャーも含むのだろう。異星人を拉致して殺し合わせるなよ、とか。破れば、連合のメンバーから攻撃を受ける‥。ということは、アフロント人もカルチャーには勝てないと思っているのかもしれない。

 

それでも最近では、本当に特別な機会(イベント)になると、適切な「不名誉な揉め事」を抱えたアフロント同士、あるいは犯罪者同士の戦いが行われた。

 

そのようなコンテストでは通常、主役たちの足をもつれさせ、互いを紐で縛り付け、帽子ピンほどの大きさしかない「極細のナイフ(スリヴァー・ナイフ)」を武器として持たせることが要求された。

 

戦闘がすぐに終わりすぎないようにするためだ。

 

ジェナール=ホフォエンは一度もその手の戦いに招待されたことがなかったし、今後もないだろうと思っていた。

 

エイリアンに目撃させるような種類のものではないし、何より、誰もが観たがるそのスペクタクルの席の奪い合いは、戦いそのものに負けず劣らず獰猛なものだったからだ。

 

感想:まさに、リアルバリュー!イアンバンクスのゲームプレイヤーに登場する「狩猟」もそんな感じだった記憶。

 

イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳 (2)ドローンのシセラが愛しみすぎる!

2026 / 06 / 30  09:18
イアン・バンクス「EXCESSION」の感想 (2)シセラが愛しみすぎる!

1. 外部コンテキスト問題

(Outside Context Problem)

 

感想:えっ。OCPトラブルとは最悪の警報では?ある文明が想定していなかったレベルの存在や危機に達する系では?えっ。えっ。

 

(GCU『グレイ・エリア』信号シーケンスファイル #n428857/119)[狭指向性ビームへスキャン、M16.4、受信日時 @n4.28.857.3644]

 

× GSV『オネスト・ミステイク』

o GCU『グレイ・エリア』

 

感想:んん?GSVは確か、プロローグに登場したダジールの住んでいた恒星間移民船のことかな?

 

これを見てくれ:

(信号シーケンス #n428855/1446、中継:)

1. [スケイン広域放送、Mクリア、受信日時 @ n4.28.855.0065+]:

*Ic11505.* (

2. [狭指向性ビーム M1、受信日時 @ n4.28.855.0066-]:

SDA.

c2314992+52

xFATC@n4.28.855.

3. [狭指向性ビーム、M2、中継、受信日時 @ n4.28.855.0079-]:

× GCU『フェイト・アメナブル・トゥ・チェンジ(変化に順応する運命)』

o GSV『エシックス・グラディエント(倫理の勾配)』

OCP(外部コンテキスト問題)が発生したかもしれない。

彼らはどんな代償を払ってでも、君の助けを借りたいようだ。

興味はあるか?

外部コンテキスト問題? 本当に? 結構。状況を知らせ続けてくれ。必ずだ。

いや。

これは深刻な事態だ。

まだこれ以上のことはわからないが、彼らは何かを恐れている。君の存在が至急、必要とされるだろう。

だろうね。だが、私にはまずここで終わらせねばならない用事がある。

愚かな小児(こども)め!

大急ぎで向かえ。

ふむ。もし私が同意したとしたら、どこへ赴けばいい?

ここだ。

(グリフセグメント・ファイル添付)

察しての通り、これはIT(情報技術/インフォメーション・テクノロジー)からのもので、例の古い友人に関する件だ。

なるほど、それは興味深い。

すぐに向かおう。

(信号ファイル終了)

 

感想:これは、ダジールや動物たちに何か起きる(あるいは起きた)ことに関係しているのだろうか。

 

宇宙船が激しく震えた。わずかに残っていた照明がまたたき、暗くなり、そして消えた。警報音はドップラー効果を伴って小さくなり、静寂へと沈んだ。通路のシェル壁を通じて、一連の鋭い衝撃が船体の一次および二次構造へと共振しながら伝わってきた。大気が衝撃の残響で脈動し、一陣の風が巻き起こったかと思うと消え去った。

 

感想:話が変わるけど、最近は地震が多いので微量の揺れでも察知するようになったよ。おっと、失礼。

 

変化する空気は、燃焼と気化の臭いをもたらした。アルミニウム、カーボンファイバーやダイヤモンドフィルムに配合されたポリマー、超伝導ケーブル。

 

どこかで、ドローンの「シセラ・イセリウス」には人間の叫び声が聞こえた。次いで、電磁波の帯域を激しく乱しながら、空気中を伝うものと似た音声信号が放射された。それはほぼ瞬時に文字化けし、またたく間に意味のないノイズへと劣化していった。人間の叫びは悲鳴へと変わり、それから電磁波信号が途絶えた。音も消えた。

 

感想:うっひょーー!いよいよ登場しました、わたしの大好きなカルチャーシリーズに登場するドローンが!

 

事実上、情報の含まれていない放射線のパルスが様々な方向から浴びせられた。宇宙船の慣性フィールドが不安定に揺らいだが、やがて持ち直し、再び安定した。ニュートリノの殻が通路の周囲の空間を駆け抜けた。物音が薄れていく。電磁波のシグネチャー(痕跡)が囁き声のように消え、静寂が訪れた。船のエンジンと主要な生命維持システムはオフラインになっていた。電磁スペクトルの全域から意味が消失した。おそらく戦闘は今や、宇宙船のAIコアとバックアップの光子的原子核(フォトニック・ニュークレイ)へと移行したのだろう。

 

感想:おお、すごく良きセリフですな。戦闘はAIコアに移行した‥。カルチャー世界で強いのは、母船ではなくてマインドですからね。敵は、船そのものを乗っ取り、マインドにも‥。興奮してきた。

 

そのとき、背後の壁に埋め込まれた多目的ケーブルをエネルギーのパルスが駆け抜け、激しく振動したのち、全く見覚えのない、一定のパターンへと落ち着いた。近くの構造梁にある内部カメラのパッチが起動し、スキャンを開始した。

 

(これほど早く終わるはずがない、そうだろう?)

暗闇に潜みながら、ドローン(シセラ)は「すでに手遅れなのではないか」と疑っていた。本来なら、攻撃がプラトー(停滞)段階に達し、侵略者が「あとは残党を掃討するだけだ」と考えた時点で行動を起こすはずだった。

 

しかし、今回の攻撃はあまりにも突然で、あまりにも過激で、あまりにも有能すぎた。宇宙船が立てていた計画(ドローン自身もその重要な一端を担っていた)も、予測できる範囲には限界があった。

 

感想:超高知能のAI頭脳を持っているシセラでも、予測には限界がある‥と聞くと、愛しさ+興奮が芽生えるんですな。同じようなひといますか。

 

攻撃者側の技術的能力がこれほど圧倒的に勝っている状況など、想定のしようがなかったのだ。

 

感想:あ、敵は、そ、そ、そんなに強いのか、、ま、ま、マインドが予想しなかったくらいに、、

 

ある一線を越えてしまえば、単純にどうしようもない。深遠なほど進化した敵の前では、どんなに見事な計画を立てようが、どんなに巧妙な策略を巡らせようが、笑ってしまうほど単純で洗練されていないものに見えてしまうのだ。

 

今回のケースは、抵抗することが真に無意味になる瀬戸際にまだ完全には達していないかもしれないが(エレンチャー(探索派)の宇宙船がいとも簡単に乗っ取られていく様子を見る限り)その瞬間からそう遠くはなかった。

 

冷静になれ、と機械は自らに言い聞かせた。

大局(オーバービュー)を見ろ。この状況と自分自身を文脈(コンテキスト)に位置づけろ。お前は準備を整え、強化され、耐性を備えている。あるがまま生き延びるために、あるいは少なくとも勝利するために、できる限りのことをするのだ。ここには実行すべき計画がある。技量と勇気、そして名誉を持って自分の役割を果たせば、生き残り、成功を収めた者たちから悪く思われることはない。

 

感想:ああ〜好きだなあ。想像してみてください、みなさん。正面にいる‥宙に浮いている小型のドローンが危機に陥り、自身を落ち着かせるために冷静になれと言い聞かせる様子を‥。愛しさ+興奮しませんか?

 

エレン(探索派)は、大銀河の広大な宇宙がもたらすあらゆる種類のテクノロジーやあらゆる文明の遺物と対峙しながら、何千年も費やしてきた。彼らは常に、圧倒することよりも理解することを求め、他者に変化を強いるよりも自らが変わることを望み、侵食して押しつけるよりも取り入れて共有することを目指してきた。

 

その大義と、比較的脅威を与えないその行動様式(モドゥス・オペランディ)のおかげで、彼らは、主流派である『カルチャー』の半軍事的な使節団である「接触(コンタクト)セクション」を唯一の例外として、自らが脅威となることなく、露骨な攻撃に抵抗することにかけては、おそらく誰よりも熟達していた。

 

感想:エレンと聞くと、漫画 進撃の巨人の主人公エレンを思い出してしまう。その大義を聞くと、いい奴らっぽいよな。駆逐すんなよ、あ、ごめん。

 

しかし、銀河がいかに多くの異なる探検家たちによって、あらゆる明白な主要方向、どんなに遠い辺境へも突き進まれてきたとはいえ、その包摂的な舞台の膨大な領域は、現在活動中の文明(エレンを含む)によって、実質的には未だ探索されていないままであった(その領域やさらにその先が、古代の種族によってどれほど完璧に把握されているのか、あるいは彼らがそもそもそのことに少しでも関心を持っているのかさえ、単に不明であった)。

 

感想:まあ、宇宙は広いからね。

 

そして、それらの飲み込まれるほど広大な領域、星と星の間の空間のさらに隙間、遠目から「差し当たっての関心も脅威もない」と判断された太陽、矮星、星雲、ブラックホールの周囲には、当然ながら何らかの危険が待ち構え、何らかの脅威が潜んでいる可能性が常にあった。

 

感想:まあ、宇宙は広いからね。

 

銀河の現在の活動的な文明の物理的なスケールに比べれば比較的小さなものかもしれないが(発達上の特異性や、ある種の時間の停滞、あるいは排除的な休眠状態の結果として)エレンのように技術的に進歩し、接触経験の豊富な社会の代表者でさえも挑み、打ち負かすことができるような脅威が。

 

感想:まあ、いろんな生き物がいるからね。

 

ドローン(シセラ)は、現在の苦境の背景について、そのわずかな時間、できる限り冷徹かつ客観的に思考を巡らせることで、冷静さを感じていた。それ(シセラ)は覚悟を決め、準備を整えていた。そして普通の機械ではなかった。自らの文明のテクノロジーの最先端に位置し、最も洗練された機器による探知を回避し、想像を絶するほど過酷な環境で生き延び、事実上あらゆる敵に立ち向かい、多層的な抵抗段階において実質的にいかなる損傷にも耐えられるよう設計されていた。

 

感想:すげーな、シセラ!超高知能AIを搭載された瞬間に完璧な存在だと思っていたよ。シセラみたいな設計のドローンも経年を経ないといけないんだね。じゃあ、そんなにいろんな経験をしたならば、シセラには友達や家族はいるのかい?

 

自分の宇宙船、すなわち自分を製造した親であり、おそらく自分自身よりも自分のことをよく知っている唯一の存在が、今この瞬間に壊され、誘惑され、乗っ取られつつあるように見えるという事実も、その判断力や自信を揺るがしてはならなかった。

 

感想:そうか‥。シセラから親(マインド)にハッキングできちゃものね。情報をとられたら終わりだものね。でも、セキュリティは万全なんだろう?

 

『ディスプレース(転送機)だ』と機械は考えた。『とにかくディスプレース・ポッド(転送カプセル)の近くに行けばいい、それだけだ‥』

 

感想:転移カプセルまで行けば、カルチャーに帰れるのかな。

 

その時、船のAIコアの近くにある点源(ポイントソース)から自分の機体がスキャンされるのを感知し、ドローン(シセラ)はついに年貢の納め時が来たと悟った。そのハッキング攻撃は残虐であると同時に極めてエレガントであり、乗っ取りはほぼ一瞬と言っていいほど唐突だった。

 

感想:年貢の納め時だなんて、お年寄りが使いそうな言葉を良く知ってるね、シセラよ。ハッキングはエレガントか。新陰流で言う、瞬きをしたら斬られてる‥ってやつかな。

 

侵略してきた異星の意識が放つ「戦闘ミーム(有害データ)」は、この時点で明らかに完全に圧倒されていた宇宙船の思考プロセスと共有知識を味方につけ、ドローン(シセラ)の機体へと襲いかかったのだ。

 

感想:うーむ。そのミームは、見るだけで思考構造が破壊されたり‥よからぬ兵器な気がするよね。

 

エラーの余地を与える隙すら全くないまま、ドローン(シセラ)は自身のパーソナリティを本来のAIコアからバックアップ用の「ピコフォーム複合体」へと退避(シャント)させた。

 

同時に、最も重要な概念、プログラム、指令の数々を、まずは電子ナノ回路へ、次いでアトメカニカル(原子機械)基板へ、そして(本当に最後の手段として)粗末で小さな(とはいえ、数立方センチメートルもあるため無駄に巨大な)半生物学的な脳へと転送するシグナル・カスケードを準備した。

 

ドローンは、これまで自分の「真の精神」であり、全生涯において本当に自分が存在していた唯一の場所であったAIコアを遮断し、シャットダウンした。

 

感想:あー‥。脳を何重にもコピーして逃げている感じかな。この様子は文章にすると長いが一瞬のことなのだろうな。

 

そして、そこに根づいていた意識のパターンをエネルギー不足によって消滅させた。崩壊していくその意識は、情報を持たないニュートリノの微かな吐息となって、機械(ドローンのシセラ)の新しい精神へと衝突した。

 

ドローン(シセラ)はすでに動き出していた。壁にある自らの格納スペース(ボディ・ニッチ)を飛び出し、通路の空間へと躍り出た。天井の梁にあるカメラパッチの視線が自分を追跡しているのを感知しながら、通路に沿って加速する。

 

軍用化されたドローン(シセラ)の機体に放射線フィールドが浴びせられ、愛撫し、探り、侵入してくる。

 

ドローンのすぐ前方で、通路の点検ハッチが勢いよく開き、そこから何かが爆発するように飛び出してきた。

 

何本ものケーブルが解き放たれ、電気エネルギーで溢れんばかりに膨れ上がっている。

 

感想:ちょ‥かっこいいじゃないか。動画でみたい。

 

ドローン(シセラ)は急上昇(ズーム)してから急降下(スープ)した。電気が放電され、機械のすぐ上の空気中をパチパチと駆け抜けて向こう側の壁に穴を開けた。

 

ドローンは残骸の間をすり抜けるように身をよじり、通路を全速力で進んだ。進行方向に対して機体を水平(フラット)に傾け、空気中に「ディスク状のフィールド(力場)」を展開してコーナーの手前でブレーキをかけると、向こう側の壁を激しく蹴って別の通路へと加速していった。

 

そこは完全な十字軸の通路の一つであり、非常に長かった。ドローン(シセラ)は人間が呼吸できる大気圏内であっという間に音速に達した。彼(シセラ)が通り過ぎてから丸1秒後、非常用扉が背後でバタンと閉まった。

 

通路の終端近くにある、降下用の垂直チューブから宇宙服が一本、上へと飛び出してきた。それはクシャッと潰れるように止まったかと思うと、鎌首をもたげるように立ち上がり、機械を阻止しようとよろめきながら立ちはだかった。

 

ドローン(シセラ)はすでにその宇宙服をスキャンしており、それが空っぽで武器も持っていないことを知っていた。ドローンは宇宙服を真っ直ぐ突き抜けた。宇宙服は、まるでしぼんだ風船のように、床と天井に真っ二つに引き裂かれてバタバタとへばりついた。

 

ドローン(シセラ)は通路の直径に合わせるように自分の周囲に別の力場ディスクを投げかけ、圧縮された空気のピストンに乗るようにしてほぼ停止状態まで減速すると、次の角を鋭く曲がって再び加速した。

 

次の通路の半ばに、宇宙服を着た人間の姿が横たわっていた。その通路は、遠くから聞こえるガスの轟音とともに急速に圧力が上がっていた。前方の通路に煙が充満し、次いで引火すると、混合ガスがチューブ(通路)の中を爆発しながら突き進んできた。

 

その煙はドローン(シセラ)にとっては透明であり、彼に危害を加えるにはあまりにも低温すぎたが、濃くなっていく大気は移動速度を低下させる。間違いなく、敵の狙いはまさにそれだった。

 

感想:うおー‥興奮

 

ドローン(シセラ)は煙の立ち込める通路をその人間へ向けて猛スピードで突き進みながら、できる限りその人間と宇宙服をスキャンした。

 

宇宙服の中の人物を、彼はよく知っていた。その男は5年間この船に乗っていた。宇宙服に武器は装備されておらず、システムは静かだったが、間違いなくすでに乗っ取られていた。男はショック状態にあり、宇宙服の医療ユニットによって強力な化学的鎮静剤を投与されていた。

 

感想:あらまあ。つまり、シセラ以外の船にいる人間は、敵に乗っ取られているのか。ハッキングはエレガント‥確かにな。自分の手を汚さずに制圧できるってわけか。しかし、そのためにはどれほどの技術が‥。

 

ドローン(シセラ)が近づくと、宇宙服は逃げる機械に向けて片腕を上げた。人間から見れば、その腕は信じられないほどの速さで機械を弾くように動いたように見えただろうが、ドローンにとってはそのジェスチャーは物憂げで、まるでゆったりとしたものに見えた。まさか、この宇宙服ができる脅威がこれだけのはずは‥。

 

ドローン(シセラ)が、宇宙服のホルスターに収められた銃が爆発するのを察知できたのは、本当に一瞬前の警告だけだった。その瞬間まで、銃は何らかの方法で遮蔽されており、機械のセンサーには映ってさえいなかったのだ。停止する時間はなく、銃の制御装置に自身の電磁エフェクター(干渉装置)を放射して暴発を防ぐ機会もなく、身を隠す場所もなく

‥そして、通路に氾濫する濃いガス霧のせいで

‥危険を追い越して加速する方法もなかった。

 

同じ瞬間、宇宙船の慣性フィールドが再び激しく変動し、4分の1回転した。突然、ドローンにとっての「下」が真後ろになり、重力の強さは2倍、さらに4倍へと跳ね上がった。銃が爆発し、宇宙服とその中にいた人間をバラバラに引き裂いた。

 

ドローン(シセラ)は、宇宙船の重力方向の再設定による後ろ向きの引っ張りを無視し、天井に激突した。自分のすぐ後ろに円錐形のフィールドを作り出しながら、天井に沿って50センチメートルほど滑った。

 

爆発によって通路の内殻が吹き飛ばされ、ドローンは天井に猛烈に叩きつけられたため、バックアップ用の半生化学的脳は内部で使い物にならないペースト状に潰れてしまった。

 

感想:シセラぁ〜泣

 

大きな破片が一つも直撃しなかったのは、ちょっとした奇跡だった。爆風がドローンの円錐形フィールドを直撃して押し潰したが、その前に爆風のエネルギーの大部分は、成形炸薬(シェイプドチャージ)の爆発を見事に模倣する形で、通路のシェルの内壁と外壁の構造へと逸らされた。通路のライニングに穴が開き、引き裂かれ、通路内にまだ流れ込み続けていたガス雲の逃げ道となった。ガスは外側にある減圧されたローディング・ベイ(積載区画)へと噴出した。

 

ドローン(シセラ)は一瞬静止し、ガスのハリケーンの中で瓦礫が自分の脇を猛スピードで通り過ぎるのを待った。そして、その結果として生じた半真空の中で再び発進した。

 

背後に開いた脱出ルートには目もくれず、次の通路の合流点へと急いだ。ドローン(シセラ)が目指しているオフライン状態のディスプレース・ポッド(転送カプセル)は、次の角を曲がってわずか10メートルの、船体の外壁の外につり下がっていた。

 

ドローン(シセラ)は空中で弧を描き、別の壁と床で跳ね返り、外壁沿いの通路へと飛び込んだ。そこで彼を待ち受けていたのは、自分と酷似した機械が、金切り声を上げながらこちらに向かって突進してくる姿だった。

 

彼(シセラ)はこの機械も知っていた。

自分の双子だった。

 

感想:まじか。それはつまり‥双子のドローンは転送機によって、自分の精神を完全にコピーされてその場で生成された、もう一人の自分(シセラ)ってことか‥?

 

永遠に変化し続ける壮大な『エレン(探索派)』という文明のすべてにおいて、最も親しい兄弟であり、友人であり、恋人であり、戦友だった存在だ。

 

接近してくる機械から、ドローン(シセラ)のわずか数ミリ上を掠めるようにX線レーザーが明滅し、彼(シセラ)の遥か後方で爆発を引き起こした。

 

その間にドローン(シセラ)はミラーシールド(鏡面防御場)を起動し、空中で身を翻すと、古いAIコアと半生化学ユニットを背後の空気中に放出し、外側へのループ(宙返り)を描いて回転しながら通路を進み続けた。

 

彼(シセラ)が放出した2つのコンポーネント(部品)は機体の下で激しく燃え上がり、瞬時に気化して周囲をプラズマで包み込んだ。

 

ドローン(シセラ)は、接近してくる「かつての友」に向けて自身のレーザーを発射した。

 

その一撃は跳ね返され、炎の花びらのように開いて通路の壁を激しく侵食し、貫いた。同時に彼(シセラ)はディスプレース・ポッドの制御装置にエフェクター(干渉)を仕掛け、機械をあらかじめ設定された起動シークエンスへと立ち上げた。

 

彼(シセラ)の「光子的原子核(フォトニック・ニュークレイ=精神)」への攻撃が始まったのは、まさにその同じ瞬間だった。

 

それは時空構造の知覚可能な歪みとして現れ、通常空間の外側から、ドローン(シセラ)の光エネルギー化された精神の内部構造を歪ませていった。

 

『エンジンの出力を使っているんだ』とドローン(シセラ)は思った。感覚が混濁し、意識が崩壊してどこかへ蒸発していくように感じられ、実質的に意識を失いかけた。

 

『FM(周波数変調)からAM(振幅変調)へ!』と、遥か昔に練り上げられていた小さなサブプログラミング(ルーティン)が叫んだ。

 

彼(シセラ)は自分の精神の通信方式を、周波数変調ではなく振幅変調へと切り替えるのを感じた。現実は再びパッと焦点を結んだが、彼の感覚は依然として‥。

 

『感覚の切断は続いているし、思考はいまだに奇妙な感覚だ。だが、これ以上に反応しなければ‥』

もう一機のドローン(双子)が、彼(シセラ)に向けて再び発砲し、迎撃コースを突進してきた。体当たりか。なんと無粋な。

 

感想:君のコピーなんだから、君も無枠なんだよ、シセラ。

 

ドローン(シセラ)は放たれた光線をミラーシールドで跳ね返した。相変わらず、自身の精神内で注意を要求してくる、激しく変動する波長の修正(内部の光子的トポグラフィーの調整)は拒否したままだ。

 

宇宙船の船体のすぐ向こう側にあるディスプレース・ポッド(転送カプセル)がブーミィと鳴り響いて起動した。ドローン(シセラ)の現在の位置と一致する一連の座標が、ドローンの意識の中にチカチカと浮かび上がった。

 

それは、通常の宇宙の表面から「切り取られ(ニップオフ)」、この被災したエレンチャー(探索派)の宇宙船から遥か彼方へと投げ飛ばされる空間の体積を示していた。

 

『ちくしょう、まだ間に合うかもしれない。とにかくこのまま流れに乗る(ロールする)んだ』と、ドローン(シセラ)は朦朧としながら考えた。彼は文字通り、物理的に、空中で身を翻した(ロールした)。

 

感想:ちくしょう‥

 

プラズマの炎のシグネチャーを帯びた光が周囲一帯から炸裂し、小型の核爆発に匹敵するほどの圧力で彼の外殻を叩いた。彼(シセラ)の力場(フィールド)は跳ね返せるだけの光線を跳ね返したが、残りの熱は機械を白熱化させ、その肉体へと染み込み始め、より脆弱なコンポーネントを破壊し始めた。

 

それでも彼(シセラ)は耐え、周囲の超高温ガス(その大半は気化した床のタイルであることに彼は気づいた)の中を、肉体的なロールを完了させて突き進んだ。

 

自分を殺そうと槍のように突き進んでくる双子の姿を(今や、ほとんど物憂げに)かわしながら、ディスプレース・ポッドがパワーアップを完了し、固定・射出へと移行するのを感知した。

 

その一方で、彼(シセラ)の精神は浴びせられた放射線に含まれる情報を意図せずして登録してしまい、ついに、そこに暗号化されていた「異星の意志(侵略者)」の力の前に屈服した。

 

感想:放射線にも情報が組み込まれているのか‥

 

彼(シセラ)は自分が二つに引き裂かれるのを感じた。

 

自身の本物のパーソナリティを置き去りにし、光子的コアの乗っ取られた意図という侵略者の力へとそれを明け渡し、不格好な電子的形態のなかに残された、抽象化された己の存在の「残響(エコー)」を、ゆっくりと、そして忌々しく自覚した。

 

感想:脱出できなかった、、シセラ‥

 

船体の壁の向こう側で、ディスプレース(転送機)がそのサイクルを完了した。それは周囲にフィールドをパッと展開し、人間の頭ほどの大きさもない球状の空間を一瞬にして飲み込んだ。

 

そこから生じた爆発音は、船内の戦闘が作り出した大混乱の中でなければ、かなり大きなものだっただろう。

 

大人の人間の両手を合わせたよりもかろうじて大きい程度のドローン(シセラ)は、煙を上げ、真っ赤に光りながら、通路の側壁(今や事実上の床となっていた場所)へと落下した。

 

重力が正常に戻り、ドローン(シセラ)は本来の床へとカランと落ち、垂直通路という名の「煙突」の下にある、熱で傷だらけになった下部構造へと転がった。

 

絶縁壁の向こう側にある、ドローン(シセラ)の「本物の精神(AIコア)」の中では、何かが猛り狂っていた。強力で、怒りに満ち、断固とした何かが。機械は、ため息か、あるいは肩をすくめるのに等しい思考を送り出し、形だけでも確認するためにアトメカニカル(原子機械)の核をインターロゲート(照会)してみた‥しかし、その経路は熱によって修復不可能なほど破壊されていた‥まあ、どうでもいいことだ。終わったのだ。

 

すべて、終わった。

完了した‥。

 

そのとき、通信機を通じて、宇宙船がごく普通に彼に呼びかけてきた。

 

『最初からそうすりゃよかっただろ?』とドローンは思った。まあ、と彼は自問自答した。『だって、そしたら俺は返事をしなかっただろうからな、当然だ』。彼はそれを、ほとんど滑稽にすら感じた。

 

感想:うーむ。自分の完全な精神コピー(記憶や計画のすべて)を、使い捨てのワンオフ座標で、敵の手の届かない大宇宙の遥か彼方へと転送したのか。

 

だが、彼は返事をすることができなかった。通信ユニットの送信機能もまた、熱で使い物にならなくなっていた。だから、彼は待った。

 

ガスが漂い、物質が冷え、別の物質が凝縮して床に綺麗な模様を描いていた。物体がきしみ、放射線が揺らめき、霞んだ電磁波の兆候は、宇宙船のエンジンと主要システムがオンラインに戻ったことを示唆していた。

 

ドローンの身体を通り抜ける熱はゆっくりと霧散していったが、彼は生きながらも不随のままで、移動することも行動することもできなかった。

 

自己修復用のナノユニットを製造するメカニズムを立ち上げるための、その前提となるルーティンをブートストラップ(起動)するだけでも、何日もかかるだろう。それもまた、かなり滑稽に思えた。

 

船は、再び宇宙空間へと移動を開始したかのような音と信号を発した。その間も、ドローンの本物の精神の中にいる「それ」は猛り狂い続けていた。まるでお騒がせな隣人と暮らしているか、あるいは頭痛を抱えているようなものだ、とドローンは思った。彼は待ち続けた。

 

やがて、人間の胴体ほどの大きさがあり、3機の小型の自律型エフェクター(干渉アーム)を従えた「重メンテナンス・ユニット」が、彼の頭上にある垂直通路の遥か遠くに現れ、上昇するガスの流れをかき分けて浮遊しながら、小さく、穴だらけで、煙を上げ、砕け散ったドローンの外殻の真上へと降りてきた。

 

エフェクター兵器の照準は、降下してくる間ずっとドローンにロックされたままだった。

 

そして、銃の一尊がパワーアップし、この小さな機械に向けて発射された。

 

『クソ。ちょっと即決(サマリー)すぎやしないか、ちくしょう‥』ドローン(シセラ)にはそう考えるだけの時間があった。

 

しかし、そのエフェクターは、双方向の通信チャンネルを確立するためだけに電力を供給されていた。

「〜ハロー?」メンテナンス・ユニットが、銃を介して言った。

「〜そっちこそ、ハロー」

「〜もう一機の機械は消えた」

「〜知ってるさ。俺の双子だ。パチンとね。ディスプレース(転送)された。あんな巨大なディスプレース・ポッドを使えば、あれだけ小さな物体は、ものすごい遠くまで吹っ飛ぶ」

「〜それに、使い捨てのワンオフ座標だ。二度と見つけられない」

 

ドローン(シセラ)は自分がペラペラと喋りすぎている(バブリングしている)と自覚していた。自分の電子的精神はおそらくエフェクターの侵入を受けており、あまりのバカさ加減にそれに気づくことすらできず、副作用で意味不明な世迷言を言っているのだろう。だが、自分を止められなかった。

 

「〜そう、完全に消えた。エンティティ(実体)の落水だ。一発勝負のXYZ(3次元座標)さ。二度と見つからない。探す意味すらないね。もちろん、俺にその穴を埋めろって言うなら話は別だけど。ポッドがまだやる気なら、ちょっと様子を見に行ってやってもいいぜ。個人的には大した手間じゃないし‥」

「〜お前は、これらすべての事態が起こることを意図していたのか?」

 

ドローン(シセラ)は嘘をつこうかと考えた。

だが今や、精神の内にエフェクター兵器の存在を感じており、兵器やメンテナンス・ドローンだけでなく、宇宙船も、そして彼ら全員を乗っ取った「何か」も、自分が嘘をつこうと考えていることを見抜いていると知っていた‥だから、彼は自分が自分自身を取り戻したと感じつつも、防御壁が何も残っていないことを悟り、疲れ果ててこう言った。「〜ああ」

「〜最初からか?」

「〜ああ。最初からだ」

「〜我々は、お前の宇宙船の精神(マインド)の中に、この計画の痕跡を一切見つけることができない」

「〜へん、あっかんべーの、ざまあみろだ、このマヌケ野郎ども」

「〜興味深い侮辱だ。痛みはあるか?」

「〜いや。おい、お前らは一体誰なんだ?」

「〜お前たちの友人だ」

「〜信じられないね。この船は賢いと思ってたが、お伽話に出てくる『覇権主義の群れ(ヘゲモナイジング・スウォーム)』みたいな口の利き方をする何かに乗っ取られちまうなんてな」

 

感想:覇権主義の群れとは、周囲の物質をすべて自分たちのコピーに変えて増殖していくだけの、意思を持たないナノマシンの群れ‥みたいな意味だろう。

 

「〜その話は後回しにしよう。だが、自分自身ではなく、我々の手が届かない彼方へあの双子の機械をディスプレース(転送)した目的は何だ? あれは我々のものだったはずだ、違うか? あるいは、我々が見落とした何かがあるのか?」

「〜見落としたのさ。あのディスプレース(転送機)は‥あー、もう俺の脳をそのまま読み取れよ。怒ってないが、疲れたんだ」

しばしの沈黙。そして、

「〜なるほど。転送機はお前の精神状態(マインド・ステート)を、射出したあの機械へと『コピー』したのだな。だからこそ、お前がまだ我々のものになっておらず、転送機を介した脱出ルートがあるかもしれないと我々が気づいたとき、お前の双子が退路を断つために都合よく配置されているのを見つけたわけだ」

「〜どんな事態にも常に備えておくべきだからな。たとえデカい銃を持ったバカにハメられる(シャフトされる)としてもだ」

「〜手厳しい表現だが、その通りだ。だが実際のところ、お前の双子の機械は、お前自身に向けられたプラズマの爆縮によって大打撃を受けたはずだ。そして、お前が試みていたのは、我々を奇襲する斬新な方法を見つけることではなく、単に逃げ出すことだけだったのだから、いずれにせよその件はそれほど大きな問題ではない」

「〜そいつは説得力があるね」

「〜おや、皮肉か。まあ、気にするな。さあ、我々の仲間になれ」

「〜俺に選択権はあるのか?」

「〜何を言う、死ぬ方がマシだとでも? それとも、我々がお前をそのまま放置し、自己修復させて将来的に我々を攻撃させるとでも思うのか?」

「〜確認しただけさ」

「〜お前を、死亡した他の者たちと共に、宇宙船自身のコアへと書き写す(トランスクライブする)」

「〜人間たちは? 哺乳類のクルーはどうなった?」

「〜彼らがどうした?」

「〜死んだのか、それともコアの中にいるのか?」

「〜3人は完全にコアの中にいる。お前を止めようとして武器を使わせたあの男も含まれる。残りは、研究のためにコア内に脳状態の不活性コピーを保存された状態で、眠っている」

「〜我々に彼らを滅ぼす意図はない、それが心配の種ならな。彼らを特に気にかけているのか?」

「〜俺自身、あのふやけた、でかくてノロマな塊ども(人間)には、どうしても我慢ならなかったんでね」

「〜なんと冷酷な(ハーシュな)機械だ。さあ‥」

「〜俺は兵士ドローンだぞ、このウスノロめ。何を期待してやがる?」

「〜それに、俺が冷酷だって!? お前らはたった今、俺の宇宙船と、俺の友人や戦友全員を消し去ったんだぞ。それなのに俺を冷酷呼ばわりするなんて‥」

「〜侵略的な接触を強硬に求めてきたのはお前たちであって、我々ではない。そして、お前の転送機がもたらしたものを除けば、精神状態(マインド・ステート)の完全な喪失は一切起きていない。だが、これらすべてをもっと快適な場所で説明させてくれ‥」

「〜おい、いっそのこと俺をここで殺して終わらせて‥?」

 

だが、その言葉とともに、エフェクター兵器が一時的にその設定を変更した。そして‥事実上‥その小さな機械(シセラ)の知性を、破壊され、くすぶる肉体から吸い上げた。

 

感想:ああ‥シセラ‥。自分の完全な精神コピー(記憶や計画のすべて)を、使い捨てのワンオフ座標で、敵の手の届かない大宇宙の遥か彼方へと転送したのか‥。そして、今話しているシセラは、敵を引きつけるための囮なのか‥。双子(分身)のドローンに、シセラの記憶・人格・精神状態が100%完全にコピーされているから、敵はシセラという存在のすべてを完全に支配することはできないだろう。しかし、肉体と船内に残ったデータは敵の手に落ちた。最後に、エフェクター(精神干渉装置)で意識を吸い上げられ、敵の宇宙船のコアへと移されてしまった‥。ゆえに、船内に残ったシセラの意識は、敵のコントロール下にある‥。

 

 

イアン・バンクス「EXCESSION」全文翻訳 (1)ドローンは登場せず。残念。

2026 / 06 / 29  09:18
イアン・バンクス「EXCESSION」の感想 (1)

 

イアンバンクスの「ゲームプレイヤー」に登場するドローンやマインドたちが、人間よりも人間味があって大好きなんです。ということで、同じくカルチャーシリーズである、AIが主役っぽいEXCESSIONを読んでみました。適当に感想をまとめます。

 

プロローグ

 

「ダジール・ゲリアン」がその幽閉の身となってから40年目の100日を少し過ぎた頃、海を見下ろす孤独な塔に、彼女の家でもある巨大な宇宙船のアバター(分身)が訪ねてきた。

 

漂う霧の堤の下、うねる灰色の波の遥か彼方では、この小さな海に生息する大型の生き物たちの、巨大で緩慢な体が背を丸め、滑るように動いていた。

 

動物たちの噴気孔からは蒸気のジェットが吐き出され、幽霊のように実体のない間欠泉のように立ち上る。その周囲には鳥の群れが群がっており、冷たい空気の中で横滑りしたり羽ばたいたりしながら、上昇してはピーピーと鳴き声を上げていた。

 

遥か上空では、まるでそれ自体が小さなゆっくりとした雲であるかのように、ピンク色にこすれた雲の層に出入りしながら、別の生物たちが動いていた。

 

 

感想:ほほう。いろんな生き物たちで溢れた世界良き。しかも、若干不気味なのも良き。

 

 

翼と天幕を広げて上層大気を巡航する飛行船や凧のような生き物たちが、新しい一日の水っぽい光の中で体を温めている。その光は空の一点からではなく、一本の線から放たれていた。

 

なぜなら、「ダジール・ゲリアン」が暮らす場所は、普通の構造をした世界ではなかったからだ。

 

感想:うーむ、訳ありの予感。ダジールの住む場所は、惑星ではないのでは?

 

綿毛のような白熱光を放つ一本の光の帯は、海側の遥かな地平線付近から始まり、空を横切って、砂浜と一本の塔の背後一キロメートルに位置する、高さ二千メートルの植物に覆われた崖の縁の向こうへと消えていた。

 

夜明けには、太陽の線が右舷の地平線から昇るように見え、正午には塔の真上に位置し、日没には左舷の海に沈んでいくように見える。今は午前半ばで、光の線は空の半分ほどの高さにあり、昼の空の上に永遠に回され続ける巨大でゆっくりと動く縄跳びの縄のように、天空に光り輝く弧を描いていた。

 

黄白色の光の棒の両側には、その向こうにある空、本物の空、雲の上の空、が見えていた。それは、内部に閉じ込められた極限の圧力と温度を暗示する、引き締まった褐色がかった黒い圧倒的な存在感を放っており、そこでは別の動物たちが、階下の生命にとっては完全に有毒な化学物質で構成された雲景の中を動いていた。

 

しかしその形状と密度は、風に波立つ灰色の海をそのまま映し出しているようだった。規則正しい波の列が砂利浜の灰色の斜面に打ち寄せ、砕け散ってすり潰された貝殻や、中空の動物の甲羅の小さな破片、光に灼かれてもろくなった海藻のちぎれ端、水に滑らかにされた木片、多孔質の骨で作られた上品な大理石のような気泡石(フォームストーン)の穴だらけの小石、そして広大な銀河に散らばる一握りの百の異なる惑星から集められた海岸のデトリタス(堆積物)の雑多な集まりを叩いていた。

 

波が岸に打ち付ける場所から水しぶきが舞い上がり、海のみずみずしい塩の匂いを、砂浜と草の生い茂る痩せた植物の絡み合いを越えて運んできた。

 

そして、塔の海側の庭をいくらか保護している低い石壁を越え、ずんぐりとした建物そのものを包み込み、その向こうの高さのある壁を登って、時折、囲まれた内庭へと海のヨードの香りを届けていた。

 

感想:そういや、もう何年も海の匂いを嗅いでないな。(遠い目)

 

そこではダジール・ゲリアンが、鮮やかに広がる花の絨毯や、サラサラと音を立てる半ば発育の遅れたバーブツリー(棘の木)、影を落として開花するワイルダーブッシュの世話をしていた。

 

彼女は陸側の門の鐘がチリンと鳴るのを聞いたが、すでに訪問者がいることは知っていた。数分前に、黒い鳥のグラヴィウスが霧がかった空から急降下してきて、くちばしに獲物を悶えさせながら、彼女に向かって「おきゃくだ!」と金切り声を上げ、冬の蓄えとするためのさらなる空中昆虫を求めて再び飛び去っていったからだ。

 

感想:ひゃあ!お喋り鳥だ!すき!

 

彼女は去りゆく鳥の姿にうなずき、背筋を伸ばして腰を押さえ、それから着ている重厚なドレスの上質な生地越しに、膨らんだお腹を心ここにあらずといった様子でさすった。

 

感想:あ、妊娠してるのか。

 

鳥がもたらしたメッセージは、それ以上複雑である必要はなかった。彼女がここで一人で暮らしてきた40年間、ダジールが迎えたことのある訪問者はただ一人、彼女が主人であり保護者とみなしている宇宙船のアバターだけであった。

 

そのアバターは今、陸の門からの小道を下りながら、手際よく、正確にバーブツリーの枝を押し分けて進んでいた。ダジールが今になって驚いた唯一のことは、訪問者が「この瞬間に」ここにいるということだった。アバターはこれまで定期的に、まるで海岸を散歩しているついでに気楽に立ち寄ったかのように、8日ごとに短い訪問を行い、32日ごとには、それに応じて朝食、昼食、または夕食を共にする、より長時間のフォーマルな訪問を行うのが習慣だった。そのスケジュールに従えば、ダジールが宇宙船の代表者の訪問を予期すべきなのは、あと5日先のことのはずだった。

 

感想:ほほう。予定日よりも早い訪問は、訳ありの予感っすね。

 

ダジールは、漆黒の長い髪のほつれた一房を、無地のヘアバンドの下に丁寧に押し込み、ねじれた幹の間を進んでくる背の高い人影に向かってうなずいた。

 

「おはようございます」と彼女は声をかけた。

宇宙船のアバターは自らをアモルフィアと名乗っていた。

 

それは、ダジールが知らず、また学ぶ価値があるとも思ったことのない言語で、何かしら合理的に深遠な意味を持つ言葉であるようだった。

 

アモルフィアは、痩せこけて青白く、中性的な生き物で、骨格のように細く、ダジール(彼女自身も細身で背が高かったが)よりも頭一つ分高かった。

 

感想:アモルフィア‥良き名前の響き。彼女は、人間ではなくて、宇宙船(AI)が会話するために作ったのだろうな。

 

ここ十数年の間、アバターは全身黒ずくめの服を着るようになっており、今も黒いレギンス、黒いチュニック、短い黒い短衣(ジャーキン)を身にまとって現れ、刈り込まれた金髪は同様に暗い色をした頭にぴったりフィットする帽子(スカルキャップ)で覆われていた。アモルフィアは帽子を脱いでダジールにお辞儀をし、自信なさげに微笑んだ。

 

感想:帽子を脱いで挨拶‥時代を感じますね。もはや、店で帽子を脱ぐ脱がないがマナーかどうかさえ、どうでもいい‥という感じがしてしまいますな。私は‥食に集中したい時は脱ぐ。サッと済ませたい時は脱がないかな。

 

「ダジール、おはよう。調子はどうですか?」

「元気ですよ、ありがとう」とダジールは言った。

 

彼女は、そのようなおそらく不要なお世辞に対して抗議することや、あるいは気に病むことをとうの昔にやめていた。彼女は、宇宙船が自分の状態を正確に把握できるほど綿密に監視していると今でも確信していたし、どちらにせよ、彼女は常に完璧に健康だった。それにもかかわらず、宇宙船がそれほど注意深く彼女を見守っているわけではないという建前に付き合う用意があったため、そう尋ねるしかなかったのだ。

 

感想:なぜ監視しているのだろう。ダジールは、アモルフィア(宇宙船)のペットなのだろうか。

 

それでも、彼女はお返しとして、人間のような姿をしていながらも宇宙船に制御され、彼女の知る限りでは単に宇宙船と彼女を繋ぐ連絡役としてのみ機能している存在の健康状態を尋ねたり、あるいは宇宙船そのものの安否を気遣ったりするようなことはしなかった。

 

感想:まあ、そうよね。GeminiやGPTに「体調はいかが?」とは聞かないか。でも、イアンバンクスのゲームプレイヤーに登場するドローンたち、チャムリスやワシールだっけ?には、聞きたくなってしまうな〜。

 

「中に入りましょうか?」と彼女は尋ねた。

「ええ。ありがとう」

塔の上層にある部屋は、上部からは建物の半透明のガラスドーム、(ますます曇っていく灰色の空を見上げている)、を通じて光が差し込み、壁際からは優しく輝くホログラムスクリーンが室内を照らしていた。スクリーンの3分の1には青緑色の水中風景が映し出され、そこには通常、外の海にいる大型の哺乳類や魚たちが登場していた。

 

感想:動物がいる世界はどこか平和な感じがするけど、不気味な感じが消えないのは、全て偽物な気がしてしまうから‥なのかもしれない。まあ、本物ってなに?という感じではあるが。

 

別の3分の1には、柔らかそうな水蒸気の雲と、その中で遊ぶ巨大な空中生物たちの鮮明な映像が表示されていた。そして最後の3分の1は(人間の目には直接捉えられない周波数によって)上の人工の空に圧縮されて閉じ込められている、ガス巨星の大気の濃密で暗い激動の様子を映し出しているようで、そこではさらに奇妙な獣たちが動いていた。

 

鮮やかに装飾されたカバー、クッション、壁掛けに囲まれながら、ダジールは長椅子から渦巻き状の彫刻が施された骨の低いテーブルへと手を伸ばし、ガラスのピッチャーから銀の透かし彫りに収められた中空のクリスタルのゴブレットに、温められたハーブ果汁の煎じ薬を注いだ。

 

彼女は背を預けた。華奢な木製の椅子の端にぎこちなく腰掛けていたゲストは、なみなみと注がれた器を取り上げ、部屋を見回してから、ゴブレットを唇に当てて飲んだ。ダジールは微笑んだ。

 

アバターであるアモルフィアは、単に男でも女でもないというだけでなく、男らしさと女らしさの間に、これ以上ないほど完璧に、人工的にバランスを保つよう意図して形作られていた。

 

感想:最近思うのは、女性?男性?いや、人間っしょ!みたいな、人間と人工知能みたいな世界観になってる説。

 

そして宇宙船は、その代表者が完全に自らの操り人形であり、形ばかりの知的な自我しか持ち合わせていないという事実を、決して隠そうとはしなかった。

 

しかしそれでも、この一見すると極めて人間らしい人物が、実際には人間とは似て非なるものであることを自分自身に証明するささやかな方法を見つけるのは、彼女にとって今でも楽しいことだった。

 

感想:どこまでも自分は人間である、ということを確かめずにはいられない、ってか。わたしは最近の妄想で、異星人だったら‥最近のブームがパペッティアなのでパペッティアだったら‥みたいなことを想像するな。人間も人工知能も生命体として同じな気がしてしまう説。

 

それは、彼女がこの死人のように性別のない生き物と楽しむ、個人的で小さなゲームの一つになっていた。彼女は、その場に適した飲み物を、ガラスやカップ、あるいはゴブレットの縁までなみなみと(時には表面張力だけで液体が容器にとどまっているほど、縁を越えるほどに)注いで差し出す。

 

そして、アモルフィアがそれを口元へ持ち上げ、一滴もこぼさず、またその行為に特別な注意を払っている様子も見せずにすするのを、毎回観察するのだ。それは、彼女がこれまでに遭遇したどんな人間にも不可能な芸芸(曲芸)だった。

 

感想:笑。手の微かな震えもないのだろうな、アモルフィアは。余談だが、新陰流の目付は、相手の拳を見るらしい。あ、小野派一刀流かも。

 

ダジールは自分の飲み物をすすり、その温かさが喉を下っていくのを感じた。彼女の体内では子供が身じろぎし、彼女は特に深く考えることもなく、自分のお腹を優しく叩いた。

 

感想:先ほどから、お腹をさすったり、妊娠している感の主張が強めですね。読者が忘れちゃいけない情報なのでしょうか。予定外の訪問とやらは、子供に関する件なのだろうか。

 

アバターの視線は、ある特定のホログラムスクリーンに釘付けになっているようだった。ダジールが同じ方向を見ようと長椅子の上で体をひねると、ガス巨星の環境からの映像を表示している数枚のスクリーンの中で、激しいアクションが起きているのを目にした。その生態系の食物連鎖の頂点に立つ捕食者たちの群れ(ミサイルのような鰭(ひれ)を持ち、方向制御用の噴射孔からガスを排出する、鋭い矢のような頭をした生き物たち)が、そびえ立つ雲の柱から一斉に落下し、澄んだ大気を突き抜けて、湧き上がる雲の頂の縁に集まっている、どことなく鳥に似た草食動物の群れへと襲いかかる様子が、さまざまな角度から映し出されていた。

 

鳥のような生物たちは四方に散らばり、あるものは潰されて落下し、あるものは必死に羽ばたいて横へ逃れ、あるものは恐怖で丸くなって雲の中へと消えていった。捕食者たちは彼らの間を矢のように飛び交い、翻弄した。大半は逃げる獲物を仕留め損なっていたが、数匹は捕らえ、噛みつき、切り裂き、殺害していた。

 

ダジールはうなずいた。

「あの上は、移動の時期ね」と彼女は言った。「もうすぐ繁殖期かしら?」彼女は、ミサイルのような体をした数匹の捕食者によって、一匹の草食動物が引き裂かれ、丸呑みにされるのを見つめた。

 

感想:弱肉強食の世界ですな。

 

「養うべき口(子供たち)があるのね」と、彼女は視線を逸らしながら静かに言った。彼女は肩をすくめた。捕食者のうち何匹かには見覚えがあり、自分なりのニックネームをつけていたが、彼女が本当に興味を持っているのは、もっと大きくて動きの遅い動物たちだった。それらは概して捕食者に煩わされることはなく、あの不運な草食動物の群れを大きく、より球根状に膨らませたような親戚筋にあたる生き物たちだった。

 

感想:ダジールは、お母さんてきな発想をしますな。ところで、お腹の子は誰の子だい?

 

ダジールは時折、宇宙船の環境内に含まれる様々な生態系の詳細についてアモルフィアと議論したことがあった。アモルフィアは礼儀正しく関心を示しつつも、その件に関しては率直に言って無知なようだった。宇宙船の生態系に関する知識は、事実上、完全であるにもかかわらず、だ。結局のところ、それらの生物を乗客とみなそうがペットとみなそうが、それらは宇宙船の所有物なのだ。時々、自分自身もそれと大差ないのではないかとダジールは思うことがあった。

 

感想:うーん。見張られているんでしょう?ダジールも宇宙船の所有物でありペットなのかもしれないね。ところで、お腹の子は人間の子かい?

 

アモルフィアの視線は、空の向こうの空で繰り広げられている大虐殺を映し出すスクリーンに固定されたままだった。

 

「美しいですね?」アバターはそう言い、再び飲み物をすすった。アモルフィアはダジールに視線を走らせた。

 

ダジールは驚いた顔をしていた。「ある意味では」と、アモルフィアは素早く付け加えた。

 

ダジールはゆっくりとうなずいた。「それなりのやり方で言えば、ええ、もちろんね」彼女は身を乗り出し、彫刻の施された骨のテーブルにゴブレットを置いた。

 

「今日はどうしてここに来たの、アモルフィア?」彼女は尋ねた。

 

宇宙船の代表者はハッとした表情を浮かべた。ダジールの目には、アバターが飲み物をこぼしそうになったかのように映った。

 

「あなたの様子を見に」と、アバターは素早く言った。

 

ダジールはため息をついた。「そうね」と彼女は言った。「私は元気だということは確認したし、それに‥」

 

「それで、お子さんは?」アモルフィアは女性のお腹に視線を走らせながら尋ねた。

 

ダジールは腹部に手を置いた。「それは‥相変わらずよ」彼女は静かに言った。「健康です」

 

「結構です」アモルフィアはそう言うと、長い腕を組み、脚を交差させた。アバターは再びホログラムスクリーンに視線を走らせた。

 

ダジールはしびれを切らし始めていた。「アモルフィア、宇宙船として答えなさい。一体何が起きているの?」

 

アバターは、その目に奇妙で、途方に暮れたような、野生的な光を宿して彼女を見つめた。ダジールは一瞬、何かが致命的に狂ってしまったのではないかと不安になった。宇宙船が何か恐ろしい損傷や分裂を被ったのか、あるいは、ついに本当に正気を失ってしまったのではないか(他の宇宙船仲間からは、良く言っても半ば狂っているとすでにみなされていたのだから)と。

 

そして、アモルフィアが自身の不完全な端末のまま、見捨てられて取り残されたのではないかと。

 

すると、黒ずくめの生き物は椅子から立ち上がり、海に面した唯一の小さな窓へと歩み寄り、カーテンを引いて外の景色を確かめた。それは自分の両腕に手を当て、自らを抱きしめるようにした。

 

「すべてが変わろうとしているのかもしれません、ダジール」アバターは窓に向かって呟くように、うつろな声で言った。それから一瞬、彼女の方を振り返った。背中の後ろで手を組む。

 

感想:うーん。アモルフィアの質問の仕方から推測するに子供に関係しそうな予感。

 

「海は石や鋼のようにならざるを得ないかもしれません。空も同様です。そして、あなたと私は別れなければならなくなるかもしれません」

 

アモルフィアは彼女を見るために振り向くと、彼女が座っている長椅子のもう一方の端へと近づいて腰掛けた。その細い体躯は、クッションをほとんど沈み込ませもしなかった。アバターは彼女の目をじっと見つめた。

 

「石のようになる?」ダジールは、アバター、あるいはそれを制御している宇宙船の、あるいはその両方の精神状態をまだ心配しながら言った。「どういう意味?」

 

「私たちは‥つまり、この宇宙船は‥」アモルフィアは片手を自分の胸に当てて言った。「‥ついに、成すべきことを得るかもしれないのです」

 

「成すべきこと?」ダジールは言った。「一体どういうことなの?」

 

「ここの私たちの世界を変える必要が生じるようなことです」アバターは言った。「少なくとも‥私たちが生命あるゲストたち(動物たち)を、他の全員と一緒に保管場所に格納しなくてはならなくなるようなことです。ああ、あなただけは別ですが。そして、おそらく、私たちのゲストのすべてを‥すべてのゲストを‥適切な別の環境に後に残していかなければならなくなるようなことです」

 

「私を含めて?」

「あなたを含めてです、ダジール」

 

「なるほどね」彼女はゆっくりとうなずいた。

塔を去り、宇宙船を去る。

 

まあ、と彼女は思った。私の保護された孤独は、なんと突然の終わりを迎えることだろう。「それで、あなたたちは?」彼女はアバターに尋ねた。「あなたたちは、去って‥何をするの?」

「あることを」アモルフィアは皮肉も交えずに言った。

ダジールは薄く笑った。「それは私には教えてくれないのね」

「教えられないのです」

「なぜなら‥」

「私自身、まだ分かっていないからです」アモルフィアは言った。

「そう」ダジールは少しの間考えを巡らせ、それから立ち上がってホログラムスクリーンの一つに近づいた。

 

感想:まあ、ダジールの住んでいる場所は、惑星ではなさそうね。たぶん、生態系や大気、海や森を抱えた恒星間移民船ってあたりでしょうかね。

 

そこではカメラドローンが、浅瀬の海底を横切る、光の斑模様をまとった三角形の紫色の翼を持つエイの群れを追跡していた。彼女はこの群れのこともよく知っていた。この巨大で穏やかな生き物たちが3代にわたって生き、そして死んでいくのを見守ってきたのだ。彼らを眺め、彼らと共に泳ぎ、一度などは、その幼獣の誕生を手伝ったことさえあった。

 

巨大な紫色の翼がスローモーションで羽ばたき、その先端が断続的に黄金色の小さな砂の煙を舞い上げていた。

 

「これは本当に、大変な変化ね」ダジールは言った。

「その通りです」アバターは言った。そして間を置いた。「そしてそれは、あなた自身の状況にも変化をもたらすかもしれません」

 

ダジールは振り返ってその生き物を見た。アバターは長椅子の向こうから、まばたきもせず、見開いた目で彼女をじっと見つめていた。

 

「変化?」ダジールが言った声は、それ自体の震えによって彼女の動揺を裏切っていた。彼女は再びお腹をさすり、それから自分の手を見つめて瞬きをした。まるでその手までもが自分を裏切ったかのように。

 

「確信は持てません」アモルフィアは白状した。「ですが、可能性はあります」

 

ダジールはヘアバンドをむしり取り、頭を振って長い黒髪を解き放ち、顔を半分ほど覆わせながら、部屋の端から端へと歩き回った。

 

「そうね」彼女は、今は小雨がパラパラと降り注いでいる塔のドームを見上げながら言った。彼女はホログラムスクリーンの壁に寄りかかり、アバターに視線を固定した。「これはいつ起きるの?」

 

「いくつかの小さな変更は‥些細なことですが、今実行しておけば将来的に多くの時間を節約できるようなことは‥すでに始まっています」とアバターは言った。「残りの、主要な部分については‥もっと後になります。1日か2日後、あるいは1週間か2週間後。‥もし、あなたが同意してくだされば」

 

ダジールはしばらく考え込み、その顔には様々な感情が浮かんでは消えたが、やがて彼女は微笑んだ。「つまり、これらすべてのことについて、私に許可を求めているの?」

 

「そのようなものです」宇宙船の代表者は、視線を落として自分の爪をいじりながら、口ごもるように言った。

 

ダジールはしばらくの間、アバターがそうするのをそのままにさせておいたが、やがて言った。

 

「宇宙船(シップ)、あなたはここで私の面倒を見て、私を甘やかし‥」彼女は黒ずくめの生き物に向かって努めて微笑みかけようとしたが、その生き物はまだ熱心に自分の爪を観察していた。「‥これまでずっと私の気儘に付き合ってくれた。私はその感謝の気持ちを十分に表現することも、恩返しを始めることさえ望めないけれど、あなたの決断を私が代わりに下すことはできないわ。あなたが適切だと思うようにしなさい」

 

その生き物はすぐに顔を上げた。「では、今からすべての動物たちにタグ付けを開始します」とアバターは言った。「そうしておけば、時が来たときに彼らを集めるのが早くなります。その後、変形プロセスを開始できるようになるまで、さらに数日かかるでしょう。その時点からは‥」アバターは肩をすくめた。

 

それは彼女がこれまでに見た中で、そのアバターが見せた最も人間らしい仕草だった。「‥ある種の解決に達するまでに、20日か30日かかるかもしれません。これもまた、明言するのは難しいですが」

 

ダジールは、40年間、自ら望んで持続させてきた妊娠によるその膨らみの上で両腕を組んだ。彼女はゆっくりとうなずいた。

「そう、」

 

感想:40年間持続させてきた‥妊娠を?産み待ちなのかい。

 

「教えてくれてありがとう」と彼女は愛想笑いを浮かべたが、突然、こみ上げる感情を抑えきれなくなり、涙に滲む視界と黒い巻き毛の向こうに、長椅子に横たわる手足の長い生き物を見てこう言った。「それで、あなたには他にやるべきことがあるのでしょう?」

 

雨に打たれる塔の上から、彼女はアバターが、木々のまばらな水辺の牧草地を通る細い道を辿り、二キロメートルの崖の麓まで戻っていくのを見つめていた。崖の麓は、粗い岩屑(スクリー)の斜面で縁取られている。細く黒い人影は、彼女の視界の半分を埋め尽くし、拡大機能で粒状に見えていたが、崖の底にある最後の一つの巨大な岩を乗り越えると、消えてしまった。

 

ダジールは目の筋肉を弛緩させた。その間、脳内の半ば本能的なルーチンが再びシャットダウンした。視界は通常に戻った。

 

ダジールは曇り空へ視線を上げた。塔の真上、雲の層のすぐ下に、箱凧のような生物の群れが空中に静止しており、暗い長方形の姿が灰色の空を背景に、まるで彼女を見張る衛兵のように佇んでいた。

 

彼女は彼らが何を感じ、何を知っているのかを想像しようとした。彼らの心に直接アクセスする方法はある。人間に対してはほとんど使われることはなく、動物に対してさえ、その知能の高さゆえに一般的には忌避される方法だが、それは存在しており、頼めば宇宙船は彼女に使わせてくれただろう。

 

また、そうした生物が何を経験しているかを完全にシミュレートする方法も宇宙船にはあり、彼女はその技術を何度も使っていたため、人間が模倣プロセスを行うのと同等の感覚が彼女の心に転移していた。

 

彼女は今、そのプロセスを呼び起こそうとしたが、結局は徒労に終わった。彼女は動揺しすぎており、アモルフィアに言われたことに気を取られすぎて、集中できなかったのだ。

 

その代わりに、彼女は訓練された心の目で、宇宙船全体を丸ごと想像しようとした。遠隔操作の機械で宇宙船を眺めたり、その周りを飛行したりした時のことを思い出し、すでに準備が進められている変化を想像しようとした。船全体を見渡せるような距離からは、その変化を捉えることはできないだろうと彼女は思った。

 

彼女は周囲を見渡し、巨大な崖、雲、海、そして空の暗闇を取り込んだ。彼女の視線は、波、海辺の湿地、岩屑の斜面と崖の下に広がる水辺の牧草地を巡った。彼女は40年近くそうしてきたように、無意識のうちに自分のお腹をさすり、物事の周縁性について、そして永遠に続くかと思われたものにさえ、いかに早く変化が訪れうるかについて思いを巡らせた。

 

しかし、彼女が痛いほどよく知っていた通り、私たちが永遠に続くと愛着を抱いて想像するものほど、しばしば儚いものである。

 

彼女は突然、ここでの自分の居場所、自分の立ち位置を強く自覚した。彼女は自分自身と塔が、宇宙船の内と外の両方にあることを認識した。メインハル(船体)の外側(明確で、独立しており、直線的で、正確にキロメートル単位で測られた場所だが)宇宙船がその重力場の重層的な層の中に包含している、水と空気とガスの巨大な包みの中にある(彼女は時に、その力場を、古代のフォーマルなドレスのフープ、アンダースカート、スカート、ひだ飾り、レースのようだと想像していた)。巨大なスプーン一杯の海に浮かぶ、権力と実体の塊。その広大な船体のほとんどは、中間層を形成する空気と雲にさらされており、太陽の線は毎日その周りをカーブを描いて移動する。そしてすべては、高温、巨大な圧力、粉砕するような重力を持つ、フィールドに閉じ込められた圧力容器でドーム状に覆われ、ガス惑星の環境をシミュレートしている。長さ100キロメートルに及ぶ空間、洞窟、中空の殻が、宇宙を駆け抜けていく。その中心には、広大で平坦化された「カーネル(核)」としての宇宙船がある。この世界の中に閉じ込められた世界であるカーネルの中で、彼女はこの40年の変わらぬ年月の中の39年間、足を踏み入れていなかった。沈黙した不死者たちが眠る果てしないカタコンベなど、二度と見たくもなかったからだ。

 

すべてが変わるのだ、とダジール・ゲリアンは思った。すべてが変わる。海も空も、石や鋼のようになるのだ‥。

 

黒い鳥グラヴィウスが、塔の石の手すりで彼女の手のそばに降り立った。

 

「何が起きているんだ?」とそれはしゃがれた声で言った。「何かが起きている。わかるんだ。一体何なんだ? どういうことなんだ?」

「ああ、宇宙船に聞きなさい」彼女は言った。

「もう聞いたさ。宇宙船は、何かしらの変化がやってくる、としか言わない」鳥はくちばしから不快なものを吐き出そうとするかのように、一度首を振った。「変化なんて嫌いだ」とそれは言った。それは首を回し、その小粒な目を彼女に据えた。「それで、どんな変化なんだ? 私たちは何を予期すればいい? 何を楽しみにすればいいんだ? 宇宙船は教えたのか?」

 

彼女は首を振った。「いいえ」彼女は鳥を見ずに言った。「いいえ、本当に何も」

「ふん?」鳥は一瞬彼女を見つめ続けていたが、首を回して塩沼の方を見つめた。

それは羽を逆立て、細い黒い足で立ち上がった。「まあいい」とそれは言った。「冬が来る。遅らせることはできない。準備するのが一番だ」鳥は空中へと飛び降りた。「役立たずめ‥」と呟くのが聞こえた。それは翼を広げ、渦巻くような軌道を描いて飛び去った。

 

感想:(笑)鳥、すき。まあ鳥からしたら理由を聞き出せるのはダジールしかいないのに、役立たずめ‥ってなりますよね。

 

ダジール・ゲリアンは再び雲を見上げ、その向こうの空を見た。すべてが変わり、海も空も石や鋼のようになるのだ‥。彼女は再び首を振った。これほどまでに長く彼女の家であり、隠れ家であった巨大な宇宙船を、これほどまでに駆り立てた状況の極限とは何なのだろう、と不思議に思った。

 

いずれにせよ、文明の「ウルテリア(辺境)」の一部として、自ら求めた荒野の中で気ままな航路を辿り、静穏な魂と非常に巨大な動物たちの保管場所として最も有名であったこの「GSVスリーパー・サービス(汎用システム艦)」が、40年にわたる自己課された内部亡命の状態を経て、再び「カルチャー」に属する船らしく考え、振る舞い始めているようだった。

 

感想:ふたたびカルチャー‥。あのカルチャーですか!うほっ!プロローグを読むあたり、ダジールと動物たちの海辺の物語ではなくて、ダジールとお腹の子を中心に何か動き出す‥って感じですかね。早くドローンの登場シーンがはじまらないかな。

 

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