足裏吉田

日記

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イアン・バンクス『ゲームプレイヤー最終章と感想』

2026 / 06 / 28  21:59
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最終章.

 

グルゲーを乗せた宇宙船「制限因子」号は、気の遠くなるような距離を旅して、ついに「カルチャー」の領域へと戻ってきた。

 

船が目的地の軌道プレートに到着すると、グルゲーは小さなバッグを一つだけ持って、雪の降る地上のプラットフォームへと降り立つ。

 

ここで、旅を共にしてきたドローン‥フレールが最後のお別れを告げます。(泣ける)

 

「さよなら、ジェルノー・グルゲー。もう二度とお会いすることはないでしょう」(嫌だよ‥泣)

 

グルゲーは去りゆくドローンのフレールを見つめながら、「あのとき皇帝が撃った光線が反射したのは偶然か、それともお前が狙ったのか?」と尋ねるが、ドローンのフレールは「その件にはお答えできません」とだけ残して、静かに空へ去った。

 

グルゲーが雪のなかを歩いて自宅に戻ると、そこには懐かしい恋人の「イェイ」と、友人の四千年生きているドローン「チャムリス」が待ってた。

 

イェイは出発前、性別を「男性」に変えてグルゲーを送り出したけど、再会したときには再び「女性(両性具有的な美しさ)」へと戻り始めていた。

 

イェイは温かいワインを淹れてグルゲーを抱きしめ、温かく迎える。しかし、グルゲーの様子は以前とは完全に違っていた。

 

顔は青ざめ、虚ろな目でワインをすすり、自分が「アザド帝国を崩壊させてしまった」ことへの割り切れない思いを抱えていた。

 

グルゲーは、自分が勝つことをカルチャーが最初から知っていたという「ハメられた真相」を二人に語る。

 

それからさらに数年が経った。

 

アザド帝国はその後、カルチャーの計画通り「崩壊するがまま」に任され、かつての特権階級は失脚し、新しい社会へと再編された。

 

グルゲーは、かつて自分が軽蔑していた「ゲーム以外のくだらないお祭りやフェスティバル」に耳を傾けるようになり、少しだけ性格が丸くなった。

 

ある夜、隣で眠るイェイを起こさないようにそっとベッドを抜け出したグルゲーは、バルコニーに出て夜空を見上げる。

 

ポケットから、あの焼け跡で拾った皇帝の「アザドの指輪」を取り出し、冷えきった両手で温めながら、遠い星々の光をじっと見つめたのだった。

 

‥終わり。

 

ではなーい。

 

「まだ終わりじゃない。まだこのわたしがいる。いままで身元を隠してきたのは意地がわるいと思うが(中略)さて、わたしはだれか?」

 

この物語を最初から最後まで、さも客観的な小説のように語ってきた「ナレーター(わたし)」の正体とは‥。

 

はい、みなさんの想像通りです‥

 

人間ではなく、まさにグルゲーをスカウトし、皇帝をハメて、アザド帝国を裏で操って滅ぼした張本人、カルチャーの超高度マインド(人工知能)自身だったのだ。

 

最後のページには、カルチャーの言語(特殊な文字コードのような記号)とともに、彼の本名が記されて物語の幕を閉じる。

 

スプラント=フレール=イムサホー=ウー

(またの名を “モフリン=スケル”)

 

グルゲーは死んだ、と書いてある

 

補足!直訳調のSF用語が並んでいるので一見わかりにくいですが、結論から言うと、これはグルゲーがただ老衰や病気で死んだのではなく、「自分の死後、遺体を宇宙の太陽(恒星)に投げ込んで消滅させてくれ」という約束(あるいは生前の契約)をドローンと交わしており、死ぬと同時にその通りに処理された、ということを意味している。

 

カルチャーの人類は、お墓を作って死体を残したり、腐敗させたりすることを嫌う傾向がある。また、何百年も生きて人生を完全にやり切ったあと、「最後は宇宙の星の光(イルミネーション)の一部になって消えたい」と願うのが、彼らにとっての洗練された、幸福な死の形(美学)なのだ。

 

「粉砕された微粒子(グルゲーの原子)のひとつひとつが何千年もかけて‥すべてを包む夜のなかに、彼ら自身の小さい無意味なイルミネーションをつけたたすために‥」(抜粋)

 

あんなに大層なチェス盤の上で踊らされ、国家を滅ぼす大冒険をしたグルゲーという大天才も、死んでしまえばただの宇宙のチリ(光の粒)にすぎない。

でも、彼は最後に自分の意志で「星の光の一部になること」を選び、ドローンは約束通りそれを叶えてやった‥という意味だと思う。

 

 

 

 

これにて、完結。

 

やっぱり、フレールがモフリンだったのか!と言うか、全てのドローン(交換可能な端末)の記憶は、マインド(人工知能)に集約されているから‥。

 

読んでいて思ったのは、『ラリー・ニーヴンの「リングワールド」、と似ている設定だなーということ。どうやら「スターウォーズ」にも似ているらしい。(私はスターウォーズを観たことがないので、この夏にでも観てみよう。)

 

(設定)

◯未来の人類は銀河系全体に広がってる

◯労働も、貨幣も、法律もない究極の自由

◯人類は、生活のために働く必要がない

◯物資は無限にある

◯病気や怪我はすぐに治る

◯寿命は7〜800歳に達する

◯性別すら自分の意思で変更可能

◯実権を握るのは、超高知能AI

◯人間はただ好きなことをして生きてる

◯政治や社会の管理・運営はAIがやる

◯AI搭載ドローンたちが平和的にこなす

 

まあ、小説の内容を一言でまとめると、「ゲーム(社会)は支配のための宗教だった」ということなのかもしれない。

 

グルゲー(不自由ない世界で生きている現代人)は、ずっとゲーム(社会)を「公平な競技」と信じていた。

 

しかし実際は、皇帝(権力者)が‥

結果を操作する

歴史は捏造されている

勝者はあらかじめ選ばれている

ゲーム(社会システム)は権力維持の道具

ということ。

 

ゆえに、グルゲーが受けた衝撃は、帝国が腐敗していた事実よりも‥自分が愛していた(信じていた)ゲーム(社会構造)そのものが、誰かの都合による支配のための仕組みで、自分もその一部に過ぎない存在だった、ということでしょうな。

 

でも、悪いことじゃないんだよ、グルゲー。

 

人間はみんな、自分の都合の良い解釈で世界を見る。つまり、自分なりの「物語」を作り、その物語の中で生きている。

 

じゃあ、その物語の外にある「世界の構造」を知ることに意味はあるのだろうか?

 

今回のグルゲーは、自分が信じていたゲームの裏側を見てしまった。けれど、それでグルゲーは幸せになったのだろうか。あるいは、知らないままの方が幸せだったのだろうか。君はどう思う?

 

私はどちらが正しいとも思わない。心地よい物語の中で生きることを選ぶ人もいるだろうし、たとえ苦しくても構造の外へ出て真実を知りたい人もいるだろう。

 

大切なのは、「どちらが正解か」ではなく、自分で考え、自分で選び、自分で行動することなのだと思う。

 

この小説「ゲームプレイヤー」は、アザド帝国の崩壊の話というよりも、「世界をどう見るか」を読者に問いかける物語なのかも。

 

‥という感じの内容な気がするので、多感な時期である中〜高校生が読むと「なんだこりゃあー」と感動するのかもしれない。

 

それに、登場人物も少ないし、内容も単純で分かりやすいので、高校生でも読みやすいと思う。

 

ただ、やっぱり英米のSF小説‥スペースオペラというのは、登場人物の人間性がものすごく浅いんだ‥笑

 

どこかメンタルが健康的というか、悩みがテンプレート(テンプレ通りに自由を愛し、テンプレ通りに孤独を気取る)で、日本文学のような「人間の業(バグ)こそ美しい」が薄い傾向がある。

 

しかし、登場する異星人は「バグの塊」なのだ。「あー、こいつキチガイだわ‥」と思わせる何かがあって愛しみを感じる。

 

主人公はみんなのヒーロー!人間のバグなんてかっこ悪いぜ!という考えがどこかにあるからこそ、人間のダメなところと捉えている「バグ」は異星人の性格キャラに落とし込んでいるのかもしれない、といつも思ってしまうんだ(笑)

 

ずっと英米SF小説を読み続けると、作中にもあったとおり、思考の偏りがでるので、合間に日本のSF小説をなり挟むと良いかもしれない‥。

 

そんなことを考えている私の好きなキャラは主人公ではなく、ゲームプレイヤーに登場する「ドローンのモフリン、チャムリス、フレール」、リングワールドに登場する「パペッティア人のネサス」‥を愛してしまう!

 

 

イアン・バンクス『ゲームプレイヤー3章-5』

2026 / 06 / 27  21:57
イアン・バンクス『ゲームプレイヤー3章-5』

 

 

5.

 

グルゲーが目を覚ますと、そこは灰が降り積もる、石造りのバルコニーだった。

 

城砦の多くの塔が崩壊し、あちこちから煙が立ち上っている。

 

かつて華やかだったゲーム会場は完全に焼け落ち、ねじれた梁や崩れた石材が積み重なる地獄絵図と化していた。

 

グルゲーは、皇帝が指にはめていた「アザドの盤面の模型」がついた指輪を灰の中から拾い上げ、ポケットに収める。

 

そこに新しいドローンがふわふわと飛んできた。

 

それは、先ほどグルゲーを庇って砕け散ったドローン(フレール)の記憶を引き継いでいる「新しい(スペア)ドローン」で、名前は「スプラント=フレール=イムサホー=ウー」。

 

ドローンのフレールは、陽気にグルゲーに挨拶します。

 

以下は、グルゲーとドローン(フレール)の会話です。

 

グルゲー:なぜ皇帝はあんな狂った命令(自国民の虐殺や会場の爆破)を出したんだ?

 

ドローンのフレール:皇帝は、自分がゲームで(カルチャーという機械文明)に負けることを事前に悟っていました。

 

アザド帝国において、ゲームの敗北は「皇帝の失脚」を意味します。

 

それに耐えられない皇帝は、「暗殺の危機が迫っている」という嘘の口実を作り、近衛兵を自分の支配下に置き、あらかじめ城砦全体を爆破して「ゲームごとすべてを白紙に戻す(道連れにする)」計画を立てていたのです。

 

あなたは利用されたんですよ、ジェルノー・グルゲー。実は、試合が始まる前の晩、カルチャーの代表であるマインド(人工知能)は皇帝と裏で「ある密約」を交わしていました。

 

もし皇帝が勝てば、カルチャーは帝国に一切手出しをしない。しかし、カルチャー側(グルゲー)が勝てば、帝国を撃破し、新しい秩序を敷く」という密約です。

 

皇帝はプライドのために、この密約乗り、そして負けたからこそ、あのような凶行に走ったのですよ。

 

グルゲー:マインド(人工知能)たちはぼくが勝つと知っていたのか?

 

ドローンのフレール:正解!カルチャーのマインド(人工知能)たちは、最初からグルゲーの能力ならアザド帝国のゲームなど100%必勝できると計算し尽くしていました。

 

つまり、カルチャーはアザド帝国を内部から崩壊させるために、一番都合のいい「無敵の天才の駒」としてグルゲーをスカウトし、完璧なシナリオ通りに帝国を破滅へと導いたのですよ。いやー、緻密な計画‥マインドには尊敬ですね‥。

 

すべての真相を知ったグルゲーは、ため息をつきながらも、これ以上この血臭い帝国に留まる意味はないと悟る。

 

ドローンのフレールに促され、上空に待機している母船の回収モジュールへと乗り込み、故郷であるカルチャーへ帰還する。

 

はい、ここまでが第3章-5の話ですな。

次の投稿で終わります。

 

 

イアン・バンクス『ゲームプレイヤー3章-4』

2026 / 06 / 20  18:01
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4.

 

ああ、ゲームの勝利はグルゲーだろう‥という空気の中。

 

グルゲーは、夜の庭を散歩する。

 

すると、いつもの派手衣装とは打って変わり、喪服みたいな服装の皇帝がやってきたので、ふたりはベンチに腰掛け会話をした。

 

以下、グルゲーと皇帝の会話。

(最初の世間話は割愛します)

 

皇帝:お前の故郷カルチャーは、マインド(人工知能)が支配する、感情のないシステムだ。栄光も、誇りも、崇拝も知らない、ただ武力を持っているだけの無気力な機械だ!

 

お前は国を代表しているつもりか? 民を代表しているつもりか? 違う。お前は自分自身以外の誰も代表していない。ただゲームをプレイするためにここへ来た!

 

それに、カルチャーの母船がアザド帝国の他の宇宙船をすべて無力化し、すでにアザド帝国が手遅れな状態(カルチャーのコントロール下)にあることくらい俺は気づいているさ!

 

グルゲー:ゲームはすでに終わっている。勝敗は最初から決まっていたんだ。なぜそんな無意味なゲームを最後まで命がけでやったのですか?

 

皇帝:カルチャーという「機械」に対して、アザド帝国という『人間(生命)』の意地と誇りを見せるためだ。そして、グルゲーという一人の男を真の絶望に引きずり下ろすためだけに、最後まで対局を続けたのだ。(ニコサールはグルゲーの顔を見つめ、残酷に笑う)お前のようなタイプには絶対に理解できないだろう。お前はただ利用されるだけだ。

 

皇帝に殴られたグルゲーは、口から血が出る。

 

皇帝:闘争こそ繁栄のもと。戦っておのれの価値を証明せよ。ゲームがわれわれに教えたのはそれだ。闘争こそ繁栄のもと。戦っておのれの価値を証明せよ。(中略)自分はその全てをやり、そのすべてをいいつくした。いまここでできるどんな説明よりも巧みに。おまえはまだ勝っていないぞ、グルゲー。

 

グルゲー:(ひとり残されるグルゲー)

 

(グルゲーは、自分のゲームの才能で、皇帝に勝ち、カルチャーの任務を果たしたと思っていたのだろう。しかし実際のところ、カルチャー(マインド)というシステムは、最初から圧倒的な武力と計算でアザド帝国を詰んでいて、グルゲーのゲームはその「お飾り」に過ぎなかったのだろう。皇帝は、そのカルチャーの残酷な意図をすべて見抜いた上で、「俺はゲームには負けたが、誇りまではカルチャーのクソ機械に売り渡さない。お前(グルゲー)も、ただの便利な駒として操られていただけの哀れな人形だ」という真実を突きつけたのだろう。)

 

翌日、ゲーム最終決戦日。

 

会場は異様な熱気に包まれていた。

ここでドローンのフレールが、ある異常に気づく。皇帝の側に立つ大佐が、光リモコンのマイクをつけ、皇帝と密かに通信してゲームの「カンニング」を行っていたのだ。

 

それだけではない。

 

皇帝は、ゲームの駒を配置しながら、「ゲームの盤面での出来事」を、現実の会場の「物理的な攻撃(爆破やレーザー銃)」と連動させていたのだ。まさにリアルバトル(笑)

 

ゲームが進むにつれ、会場のあちこちで本物の爆発が起き火災が発生し、皇帝はゲーム盤を通じて、会場全体を地獄絵図に変えていく。

 

当然の如く、会場は完全にパニックに陥る。

皇帝が「最後の火のカード」を切ると、緑色の火のオーラが広がり、皇帝の側近たちが観客に向けて「銃を乱射」した。

 

華やかな衣装を着たアザド帝国の貴族たちが次々と撃たれ、床は死体で埋め尽くされた。

 

そんな地獄の中で、皇帝は狂ったように笑いながらグルゲーに言う

 

「ゲームを現実に変えたのだ、グルゲー」

 

皇帝にとって、アザド帝国のゲームとは「闘争と虐殺そのもの」であり、完全な負けを悟った皇帝は、会場にいる自国民もろともすべてを道連れにする破壊を始めたのだった。(おもしろい)

 

しかし、ゲームの盤面そのものは、グルゲーが完璧なチェックメイト(勝利)を完成させているという皮肉。

 

その皮肉な空気‥ゲームで完全に敗北したことを知る皇帝は、ついに狂い、本物の両刃の剣を抜いてグルゲーを直接殺そうと襲いかかってきた。(おもしろい)

 

グルゲー:皇帝の腹部に蹴りを入れる。

 

二人は血まみれになって床を転がり回る。

 

皇帝:剣を振り回し、グルゲーの喉元をかすめる。もう一回突き刺そうとする。

 

その瞬間‥!

ドローンのフレールの神技により皇帝の剣を弾き飛ばした。

 

次の瞬間‥!

天井の「電子遮蔽装置」が崩落し、会場は炎と煙に包まれた。グルゲーがふと前を見ると、皇帝は仰向けに倒れていて、その額の真ん中には、煙の立つ丸い黒い穴(弾痕、または崩落の直撃による即死の傷)が空いていた。

 

皇帝は、ゲームでグルゲーに完璧に敗北し、さらに力ずくでグルゲーを殺そうとしたものの、最期は自らが引き起こした地獄の崩壊に巻き込まれる形で、惨めに死亡したのだった。

 

 

はい、ここまでが第3章-4です。

イアン・バンクス『ゲームプレイヤー3章-3』

2026 / 06 / 19  23:13
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3.

何かの「物体」が頭に衝突して、気を失っていたグルゲーは、自室で目を覚ました。

 

顔の上を飛んでいるのはドローンのフレールだが、グルゲーは「脳震盪」を起こしていてドローンのことがよく分からず記憶が曖昧になるが、徐々に回復しはじめる。

 

ドローンのフレールによると、「グルゲーの頭に衝突したのは、火の惑星の動物です。その動物はヨモナルにも襲いかかり‥そして、グルゲーがヨモナルに発砲した様子も録画されています。」

 

「誰かが、ヨモナルの外骨格を乗っ取っていたようです。皇帝が会いたがっています。しかしグルゲー、あなたは嘘をつかねばなりません。もう少し体調が復活してから‥はいはい、わかりました、行きますよ。」

 

病み上がりのグルゲーは、ドローンのフレールの忠告を無視して皇帝と会う。

 

皇帝は謝罪と事件の真相を話す。

「朕は申し訳ないと思っている。首謀者は、朕の恩師であるハミンであった。ハミンが服用している長寿薬を没収したので彼は4〜50日後に死ぬであろう。それよか、朕はグルゲーとゲームがしたい。」

 

グルゲーも「皇帝とゲームをしたい」という意志を伝え、その場を去った。

 

グルゲーが自室に戻ると、ドローンのフレールが皮肉なしでこんな発言をするので驚く。「大丈夫ですよ。何かの時は、私があなたを守りますから。」

 

(むむむ。外骨格を乗っ取ったのは、マインドではないか‥?グルゲーに「皇帝とのゲームを辞退するよう説得した」皇帝の恩師ハミンは、皇帝にとって邪魔だったのでは‥?皇帝はゲーム盤でグルゲーを倒すことで自身の力を示せるのだから‥)

 

翌日は、皇帝とのゲーム初日。

 

グルゲーは「自分の中にあるナニカが消えてしまったことに気づく。その消えてしまったナニカがゲームに重要な気がするのに‥」とモヤモヤ。

 

今日のゲームは終わって自室に戻ると、ドローンのフレールはこう言う。「部屋に取り付けられていたアザド帝国の盗聴器機能を消しました。専門じゃないので苦労しましたよ。これで、グルゲーの故郷であるマレイン語を話しても大丈夫ですよ。ああ、もっと喜んでくれると思ったのにな。」

 

グルゲーは、懐かしき響きのマレイン語でドローンのフレールと夜通し話した。

 

翌日、皇帝とのゲーム再開。

 

ここで、ゲームの勝率を話そう。

たぶん、グルゲーが勝つ。

 

なぜグルゲーの勝利がほぼ決まっているのか。

それは、グルゲーが「アザド帝国そのものの正体を理解した」からだろう。

 

簡潔にまとめると、皇帝のゲームスタイルは「アザド帝国の思想」そのものである。(勝利、支配、序列、強者が弱者を従わせる、中央集権的)

 

一方グルゲーは、カルチャーの思想(流動的、柔軟、多様、自己組織化)を戦略としてゲームを進めた。

 

要は、カルチャーという国の思想にアザド帝国が負けそう‥皇帝の人生観そのものが否定された‥という解釈にもなる。

 

そう考えると、カルチャー(マインド)がなぜ、グルゲーをアザド帝国に送り込んだのか、分かる気がする。

 

たぶんカルチャーの計画は、皇帝にゲームで勝つことによって「アザド帝国そのものを精神的に解体すること」帝国のスタイルそのものである皇帝が敗北すれば、その「統制システム」は根底から崩壊するから。

 

「やったー!俺は皇帝に勝つぞー!」と手放しに喜べないグルゲーは、わかっているのでしょう。自分が今やっていることは、ひとつの「文明を滅ぼす」一部になっているのだということを。

 

はい、ここまでが第3章-3です。

 

 

 

イアン・バンクス『ゲームプレイヤー3章-2』

2026 / 06 / 18  10:19
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2.

 

対戦相手に対し、ゲームの終盤でグルゲーが見せたプレイぶりを、ドローンのフレールはスクリーンで観察していた。

 

「いまグルゲーは、自分がそのさけびに耳をかたむけていた肉食獣のようにプレイし、盤上を徘徊し、罠や、回り道や、殺戮の場を作っているのだった。おそいかかり、追跡し、うち倒し、むさぼり食い、消化し‥。」(抜粋)

 

明らかに、グルゲーは変わった。

 

ゲームというより、グルゲーは相手を切り刻んでいる‥なにかの手術に近かった。

 

以前のグルゲーのプレイには、困惑、哀れみ、怒り、悲しみといった「人間らしい感情の揺らぎ」が体や顔に出ていたが、今のグルゲーのプレイからは、そうした感情が一切消えていた。

 

ドローンのフレールは、グルゲーが長い間、母国のマレイン語を話していないことに気づく。そう、常に「イーエ語(アザド帝国の言語)」を話しているのだ。

 

たかが言語‥されど言語‥。

 

カルチャーの言葉(マレイン語)は、音声学的にも哲学的にも、人類の頭脳が許すかぎり表現力豊かにデザインされた完璧な汎人類言語である。

 

一方、アザド帝国の言葉(イーエ語)は、ごくありふれた進化言語であり、その根底にある前提は「傷傷性を同情、攻撃性を協力と、はき違えている」という、歪んだ価値観に満ちた言語なのだ。

 

言語は思考を作る。

カルチャーの人間が、長期間に渡って他文明の言語を使い続けると、脳の「解釈構造」が変わるというデータがある。(これは、小説内に登場するマインド:人工知能の情報だが、現実の私たちも日本語を話さなくなれば思考が変わるだろう。)

 

グルゲーは、アザド帝国の「野蛮な言語」を話し続けることで、「倫理的な構造(帝国の歪んだ価値観)」に感化され始めてしまったのだ。

 

その様子を観察しているドローンのフレールは、居心地の悪さを感じてスクリーンのスイッチを切り、静かにその場を離れる。(ああ、ドローンのフレール‥なぜ助けてあげないのだ‥いや、君には君の任務があるのだろうけど。そうだ、フレールは事前にマインド:人工知能から注意されていた。グルゲーの言語と行動の変化に気をつけろ、と。)

 

その夜、カルチャーに住む親友のドローン「チャムリス」から通信が届く。(タイムラインではないので、ビデオ交換みたいな感じだ)

 

ドローンのチャムリスは、いつものようにカルチャーの日常を話すが、今のグルゲーにとっては、どれも退屈な内容だった。むしろ、賢く深い愛を持つチャムリスのことを、古くさいと機械‥思うようになっていたのだ。(な‥なんと)

 

ドローンのチャムリスは話を続ける。「いつものように、何人か集まって、グルゲーの家でパーティーをしたよ」と。それを知ったグルゲーは怒りに震えた。当たり前なカルチャーの日常の出来事であったはずなのにグルゲーは「なぜ、何の権利があって、僕が不在の間に、僕の家でパーティーをするんだ?」と自身の所有物について考えるのだった。

 

ドローンのチャムリスは続ける。「意識を抜かれた中身のないドローンが、グルゲーの家に送られてきた。多分、モフリンだった‥のであろう。どういうことなのか?」とグルゲーに問う。そこで通信は切れた。

 

グルゲーは、笑いが込み上げる。

「自分を脅したドローン、モフリンの願いを叶えることができた。よって、イカサマのビデオがカルチャーに流れることもない。俺は自由だ。」

 

グルゲーは、アザド帝国の執事にワインを持ってくるよう指示し、ワインの入ったグラスに口をつけようとすると、動物ウォッチングを終えて帰ってきたドローンのフレールが「ご機嫌ですね、何かいいことがあったのですか」とグルゲーに聞く。

 

グルゲーは、「古い友達に乾杯」とワインを飲む。

 

(ああ‥でもグルゲーのせいじゃないよ。私も常に心がけていることがあって、それは必要以上に、人と会わない‥ということだから‥。毎日複数の人間に会ったり、複数の人間が溢れている場所に一定以上身を置くと、どんなに賢い人でも、大衆の思考に流されてしまう。今の時代に何よりも恐ろしいのは、認知力低下の先にある「なりたくないものになってしまう」ということだから‥。)

 

さあ、小説に戻ろう。

翌朝、グルゲーはドローンのフレールの反対を押し切って、アザド帝国の狩猟に参加する。

 

以下は、グルゲーと、アザド人の最高権力者(以下、ヨモナル)の会話形式である。

 

ヨモナル:グルゲーは、銃で動物を撃ったことがあるのかい?

 

グルゲー:ある。

 

ドローンのフレール:生きているものを撃ったことはありません。

 

グルゲー:黙れ、物体。

 

ドローンのフレール:え‥?物体‥?

 

ヨモナル:(ドローンのフレールを蹴る。)よし、じゃあ拾って来い、グルゲー!あはは

 

ドローンのフレール:帰らせていただきます。反対ですか?グルゲー。

 

グルゲー:いや、ぜんぜん。

 

ヨモナル:あっさり行かせていいのか?

 

グルゲー:いい厄介払いです。

 

ヨモナル:(動物の仔を平然とライフルで撃ち、手負いの仔が倒れる。)正直なところ、グルゲーが狩猟(殺戮ゲーム)に参加したのは意外だったよ。

 

グルゲー:自分が上品ぶっていない証拠を見せたくて。それに、いうならば僕が狩ったものは‥

 

グルゲーがそのあとに言いかけたのは「アザド」という言葉だった。(この場合のアザドは、機械と動物、そしてすべての生命体とシステムを意味する。)

 

グルゲーの不遜な態度に、ヨモナルの顔が青ざめる。すると、何者かによる急襲がはじまった。

 

何者かに撃たれたヨモナルは、グルゲーの仕業とでも思ったのか、それとも着用している外骨格(ガンダムみたいなやつ)が何者かに乗っ取られたのか、ライフルをグルゲーに向けて這い寄ってくる。

 

アザド帝国の野蛮なゲーム脳により「肉食獣化」しているグルゲーは、恐れるどころか信じられない反応速度で動き、落ちていたレーザー銃を拾い上げ、襲いかかってくる敵を次々と迎撃する。

 

すると、あろうことか、グルゲーの撃ったレーザー銃はヨモナルの顔面に命中し、グルゲーの手によって「帝国の最高権力者」であるヨモナルの頭部が完全に吹き飛んだ。

 

しかし、ヨモナルはとまらない。

 

ヨモナルの頭がなくなっても「外骨格のシステム(ガンダムみたいなやつ)」は乗っ取られたままなのか、それとも壊れているのか、とにかく血を噴き出しながらグルゲーに突進してくる。

 

その直後、背後から巨大な何かグルゲーの頭に激突し、視界は真っ暗になって意識を失った。

 

はい、ここまでが3章-2です。

 

うーん。そもそも襲撃をしたのは誰なのか?

アザド帝国のトップを事故といえども殺害してしまったグルゲーは処罰を免れるのか?この騒動もマインド(人工知能)の計画のひとつなのだろうか?

 

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